ヘルボーイ(Hellboy)のネタバレ解説・考察まとめ

「ヘルボーイ」とはアメリカの人気コミックを映像化した2004年制作のアメリカ映画。異界から産み落とされた悪魔の子ヘルボーイが、人間によって育てられ、正義のヒーローとして、半魚人や念動発火能力を持つ女性と共に、邪悪な者たちと戦うアクション・アドベンチャー。監督は、「ミミック」「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロ。個性的な風貌のロン・パールマンがヘルボーイを快演し、彼の代表作のひとつとなった。

『ヘルボーイ』の概要

ダークホースコミックス(dark Horse Comics)で漫画家マイク・ミニョーラが生み出した人気アメコミ「ヘルボーイ」を、ミニョーラの大ファンであったギレルモ・デル・トロが念願の映画化を果たした作品。
なんでも、デル・トロが長年夢見ていた企画だったそうだが、ヘルボーイ役にロン・パールマン起用を強く主張するデル・トロが、有名スターを望むスタジオと対立し、スタジオのゴーサインが出るまでに7年もかかり、製作費を削られながらも映画化にこぎつけることができたらしい。
共演は、「エイリアン」「ミッドナイト・エクスプレス」の名優ジョン・ハート、「クルーエル・インテンション」のセルマ・ブレア、「メリーに首ったけ」「グリンチ」のジェフリー・タンバー、「パンズ・ラビリンス」「ファンタスティック・フォー 銀河の危機」など数々の着ぐるみメーキャップによるクリーチャーを演じたダグ・ジョーンズ。
作品は全米№1ヒットとなり、4年後に主要キャストが続投した続編「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」(04)が作られ、1作目を上回る全米大ヒットを放った。

『ヘルボーイ』のあらすじ・ストーリー

第二次世界大戦の末期。敗色濃厚だったナチス・ドイツは、怪僧ラスプーチンと手を組み、科学とオカルトを融合させた「ラグナロク計画」を実行に移そうとしていた。
それは、異界の扉を開き、邪悪な神をこの世に呼び寄せ、世界を破滅に導こうとするものだった。
だが、ヘル・ホール発生機を作動し、ラスプーチンのグローブが異界の扉を開き始めたとき、アメリカ軍が急襲。ラスプーチンは、異界に飲み込まれてしまい、発生器は破壊された。
ナチスの計画は未然に阻止することができたが、ラスプーチンと引き換えに、異界から、右腕が大きな岩石状の真っ赤な色をした悪魔の子が地上に産み落とされた。
アメリカ軍のアドバイザーとして参加していた、オカルト分野に詳しい超常現象学者トレヴァー・ブルーム教授は、その子をチョコバーで手なずけ、ヘルボーイと名付けて、アメリカに連れ帰って自分で育てることにした。

それから60年後、ヘルボーイは、ブルーム教授が設立した極秘の超常現象調査防衛局(BPRD)のトップ・エージェントとして魔物と戦い続けていた。
BPRDには、ヘルボーイの良き相棒でもある、過去や未来を読むサイコメトリー能力を持った水棲人間(半魚人)エイブ・サピエンがいた。
ある日、BPRDに、ブルーム教授が選んだ新人捜査官ジョン・マイヤーズがヘルボーイの世話係として赴任してきた。
世間では伝説として語られているヘルボーイを目の当たりにし驚くジョンだったが、その時、博物館に魔物が出現したとの報告がBPRDに入った。

ヘルボーイやエイブがBPRDメンバーと共に博物館に到着すると、育ての父であるブルーム教授が待っていた。
短気で気難しく、規則を無視してばかりのヘルボーイに業を煮やしたブルームは、彼と口を利かない状態が続いていて、久しぶりに父を目にし苦笑いを浮かべるヘルボーイ。
彼は、一人で魔物が出現した場所に踏み込むと、魔物サマエルが待ち構えていた。
サマエルと激しいバトルを繰り広げるが、その最中、60年前に異界に飲み込まれたはずのラスプーチンが現れた。

実は、ラスプーチンの忠実なしもべであり、彼によって永遠の若さを授かったナチスの女将校エルザとナチスの殺し屋ナンバーワンのクロエネンが、血の儀式によって彼を現生に蘇らせていたのだ。

ヘルボーイは、ラスプーチンの出現に不審を抱きながらも、博物館から逃げ出したサマエルを追いかけた。
そして、サマエルを地下鉄のレール上に追い詰め、高圧電流を流して、やっと消滅させることができた。

博物館では、エイブが残っている破片などから、そこで何が起こったかをサイコメトラー能力で探り当て、その映像を教授の脳に伝達した。
そして教授は、ラスプーチンが蘇り、しもべ達と共に博物館を襲い、美術品に封印されていた凶暴な魔物復活させたことを知った。

サマエルを倒したヘルボーイは、ジョンたちの前から姿をくらました。
彼が訪れた先は、BPRDの一員だったエリザベス・シャーマン(略称リズ)がいる精神病院。
彼女は、体から炎を出す念動発火の能力を持っていたが、その力を自分でコントロールできず、それが怖くて自ら入院し能力を封じ込めていた。
ヘルボーイは、途中で盗んだ缶ビールを手土産に、彼女と病院の庭先でひと時過ごすが、彼女を愛しいと思っていながらも、自身の容姿を気にして、なかなか想いを告げられないでいた。

BPRD本部に戻ったヘルボーイは、体にサマエルの卵が産み付けられいたことが分かり除去するが、地下鉄構内に他に産み付けれていないか調べることになった。
ヘルボーイとエイブは、BPRDエージェントとともに地下鉄構内捜査を開始する。エイブは水中を捜査している最中にサマエルに襲われ重傷を負ってしまう。
また、ヘルボーイは突如現れたサマエルと取っ組み合い、通風孔の中を滑りながら、大勢の乗客がいた地下鉄のプラットフォームに落ちる。
激しいバトルの末、なんとかサマエルをやっつけたヘルボーイがエージェントたちのところへ戻ると、彼らは他のサマエル達に襲われ絶命していた。
まだかすかに息のあったエージェントの傍らには、彼と刺し違えたのかクロエネンの死体が横たわっていた。

その頃、病院で眠っているリズのそばにラスプーチンが現れた。
ラスプーチンは、特殊な能力のせいでイジメにあい、それゆえに念動発火を起こして多くの人間を傷つけたリズの辛い過去を夢の中で再現した。トラウマに直面したリズは能力を暴走させ、病院を半壊するほどの大火災を起こしてしまう。

リズの身を心配したジョンは、BPRDに戻るように説得し、彼女も仕方なくそれに応じることとなった。
リズが戻ってきたことに内心大喜びのヘルボーイだったが、彼女がジョンと親しくしていることにジェラシーを覚え、ジョンと一緒に出掛けると聞くと隠れて二人の後をつけた。

ヘルボーイ達がいない間、ブルーム教授はクロエネンの死体を調べていた。
そして、彼の衣服の中からある手がかりを見つける。それは、モスクワにあるラスプーチンの墓の場所を記した紙切れだった。
その時、死んでいたはずのクロエネンが現れた。彼は死んだふりをしてブルーム教授に近づいたのだ。
次いでラスプーチンが教授の前に姿を現した。
ラスプーチンは教授に対し、ヘルボーイを使って60年前に成し遂げられなかった野望を再び実行に移すことを宣言し、そのために教授には死んでもらうと言い放つ。その後、教授はクロエネンの刃に倒れてしまう。

父と慕う育ての親、ブルーム教授の死に、深く悲しむヘルボーイだったが、気をとり直し、教授の残した手掛かりをもとに、リズ、ジョン、FBI局長のマニング等と共にモスクワへ旅立った。

モスクワの広い霊園に到着すると、ヘルボーイは埋葬されていたミイラを呼び覚まし、ミイラを案内役にマニング一行と共にラスプーチンの墓に入っていった。
だが仕掛けられたトラップにより、ヘルボーイとマニングは、リズやジョン達と離れ離れになってしまう。
仕方なく奥へと進んだヘルボーイ達は、クロエネンと遭遇。
激しいバトルの末、クロエネンを鋭い針が幾つも突き出ている落とし穴に落とし、大きな歯車で押し潰した。
その頃、リズとジョン達は、サマエルの巣に迷い込み、幾多のサマエル達に襲いかかられていた。
もはやこれまでと覚悟した時、壁を突き破ってヘルボーイが現れ、サマエルの群れに前に立ちはだかった。
しかし、サマエルの群れに苦戦を強いられるヘルボーイ。
リズは、ジョンに自分の頬を叩かせ感情を高ぶらせると、体を発火させ、猛烈な炎の勢いと強烈な熱でサマエルやサマエルの卵をことごとく焼き尽くしてしまった。
でも、その衝撃でジョンやリズはおろかヘルボーイまで気絶してしまう。

ヘルボーイとジョンが目が覚めた時、手枷をはめられ、鎖につながれていた。
目の前にはラスプーチンとイルザがいた。
そして、彼らの後ろには大きな石版があり、傍らにリズが眠るように横たわっていた。
ラスプーチンは、リズを助けたかったら、自分の本当の名前(異界で名付けられた名前)を言えと、ヘルボーイに迫る。
本当の名前を口にすると、悪魔の子としての本能が目覚め、人間の心を失うことになるのだ。
石版は異界に通じており、彼の岩石状の大きな右腕は異界の扉を開ける鍵だった。
ラスプーチンは、60年前に果たせなかった「ラグナロク計画」を実現させるため、計画を立て、ヘルボーイをモスクワまでおびき寄せたのだ。
ヘルボーイはなんとか抵抗しようとするが、ラスプーチンが、リズ彼女の生気を吸い取ろうとするのを見せられ、やもなく悪魔の子としての名前を言う。
途端に人間の心を失い、ラスプーチンの言うがままに石版の3つの穴に右腕を入れていくヘルボーイ。
最後の穴に腕を入れようとした時、ジョンが手錠を何とか外し、十字架をヘルボーイに投げつけ、自分が何者なのか思い出せと叫んだ。
十字架によって手のひらに十字の火傷を負ったヘルボーイは、暗闇から目覚めたように人間としての意識を取り戻した。
そして、ラスプーチンを倒し、開きかけた異界の扉は再び閉じられた。
しかし、死んだ彼の胸から異界の魔物ビヒモスが飛び出してきた。
ジョンやリズを安全な場所に避難させると、ヘルボーイは、どんどん巨大化するビヒモスに立ち向かっていく。
ビヒモスに飲み込まれてしまうが、マニングが用意していた強力爆弾をビヒモスの腹の中から爆破させ、木っ端微塵にしてしまう。

リズのもとに戻ったヘルボーイは、息をしなくなった彼女に「許してくれ、俺がバカだった」と初めて自分の正直な気持ちを打ち明け抱き寄せた。
すると、彼の言葉によって、あの世から呼び戻されたように意識を取り戻したリズは、ヘルボーイを強く抱きしめる。
見つめ合い、口づけを交わすヘルボーイとリズ。彼女の発した青い炎に包まれながら、二人は互いの愛を確認するのだった。

『ヘルボーイ』の主な登場人物・キャラクター

ヘルボーイ(演:ロン・パールマン、日本語吹替:谷口節)

異界から人間界に迷い込んだ悪魔の子。赤い体で怪力の持ち主。右腕が大きな岩石状の物質で出来ていて、戦いのときは彼の最大の武器となる。
BPRD(超常現象調査防衛局)のトップエージェントで、基地の中では十数匹の猫と暮らしており、好物はチョコバー。短気で気難しく、おまけに嫉妬深いが、心優しい面もあり、BPRDでの信頼は厚い。
育ての親ブルーム教授を本当の父のように慕ってはいるが、バカを仕出かしては彼を困らせ、少し距離を置かれている。BRPDメンバーだったリズに好意を寄せているが、自分の容姿を気にし、なかなか本心を伝えられずいる。

エリザベス・シャーマン / リズ・シャーマン(演:セルマ・ブレア、日本語吹替:本田貴子)

体から炎を出す念動発火能力を持っているが、子供の頃にその能力のせいでイジメや迫害を受けた暗い過去があり、今もそれを心に引きずっている。
BPRDのメンバーだったが、自分の能力をコントロールできないことを恐れ、自ら精神病院に入院し、力を封じ込めていた。能力をコントロールできるようになったのは最近だが、ラスプーチンに操られ病院を吹き飛ばす大発火を引き起こしてしまい、ジョンの説得に応じ、BPRDに復帰する。
自分へのヘルボーイの愛に薄々気づいていて、彼女も彼に惹かれてはいるが、その気持ちをうまく伝えられずにいる。

エイブラハム・サピエン / エイブ・サピエン(演:ダグ・ジョーンズ、日本語吹替:てらそままさき)

触れた物体から過去や未来を読み取ることができるサイコメトリー能力を持つ半魚人。サイコメトリー中のエイブに接触することで、彼の脳裏に浮かんだ映像を接触した者も見ることができる。
小児病院の秘密の部屋のカプセルにいたところを発見され、ブルーム教授に引き取られてBPRDエージェントになった。
性格は温厚で、読書好き。好物は腐った玉子。

ブルーム教授(演:ジョン・ハート、日本語吹替:山野史人)

ヘルボーイの育ての親で、BPRD(超常現象調査防衛局)の設立者。
悪魔の子をヘルボーイと名付けたのも教授で、わが子のように愛情を注いでいるが、ヘルボーイの無茶な行動に手を焼くこともしょっちゅう。
余命がわずかだと病院で診断され、自分の亡きあとヘルボーイの世話をする人間として、若くて純真な新人捜査官ジョンを選ぶ。

ジョン・マイヤーズ(演:ルパート・エヴァンス、日本語吹替:置鮎龍太郎)

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