宝石の国 / Land of the Lustrous

宝石の国 / Land of the Lustrous

『宝石の国』とは、市川春子による漫画作品、および漫画を原作としたアニメ作品。アニメーション制作は「オレンジ」が担当した。今から遠い未来、星の生物は不死の体を持つ宝石になっており、宝石を装飾品にするために月から飛来する「月人」と28体の宝石たちとの戦いを描いている。美しい作画と作中に散りばめられた謎が魅力の作品となっている。

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宝石の国 / Land of the Lustrousのレビュー・評価・感想

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宝石の国 / Land of the Lustrous
10

「宝石の国」の底知れなさ

とにかくびっくりするというか、作者のその世界観に驚愕する作品です。この世界の始まりと終わりとそこに至るまでの道程を記した記録本のようなものなのかも知れないです。

宝石が人のような姿をして人のような感情を持ち、なんとも閉ざされた世界で生きていて、その狭い世界にも外的な力の介入がある。
でもそれも勝手に敵とか味方とか思わされてるところに主人公のいろんな葛藤の末のある疑問から、どんどん「人とは、世界とは一体なんなのか?」「本当の本当は?」「好きという気持ちはなんなのか?」「親や権威のいうことは本当のことか?」「そもそも本当って何が本当ってことなのか」「誰の本当なのか?」「私とは?」「自分とは?」と、めちゃくちゃいろんなものが渦巻いてどんどん主人公がぐちゃぐちゃになっていく。

人の役に立ちたい。そんな自分でありたい。そうであることに価値がある。大切に思うもののために、成長し続ける主人公。
それが主人公の視点をどんどん拡大させていき、大きな大義に利用されるところは、もう見ている側の心臓を抉り取られて息をするたび妙な心地に包まれます。

大義の前の一つの存在、大義の前の大勢と個人、ほんの小さな微かな心の声はどこにも届かず踏み躙られるだけなのか。見ている側がどういう視点で見るのかで、相当大きく物語の意味が違って捉えられるような作品です。

宝石の国 / Land of the Lustrous
10

美しい地獄

強くて脆い、宝石たちの物語。
そんなキャッチコピーが目印の漫画が『宝石の国』である。
人類が滅びた地球で暮らす宝石(人型の生命体)とその宝石を装飾品にしようと""戦争""を仕掛ける月人たちの話なのだが、かなり奥が深い。
主人公のフォスフォフィライトは何をやってもダメで不器用で硬度も低く、脆い宝石である。しかし、先生の役に立ちたい、シンシャの為になりたいという気持ちから一生懸命に努力をする。しかし、そんなフォスフォフィライトに訪れたのは成長ではなく変化だった。強さとは、幸せとは何かを考えさせられる今作の1番の見どころは主人公の変化だろう。私はフォスフォフィライトほど変化した漫画の主人公を見たことがない。
成長といってもいいのかもしれないが、わたしはあえて変化といいたい。
気持ち、見た目、強さ…様々な点からフォスフォフィライトは変化する。
研磨され光り輝く宝石のように。
宝石たちは不死身である。折れたり割れたりしても元通りになる体である。しかしそれは本当の幸せなのだろうか?数々の地獄を乗り越えて強くなったフォスフォフィライトは本当に強いといえるのだろうか?そんな疑問を持ちながらも美しい描写で描かれるストーリーは一度読んだら何度も読み返したい濃厚で残酷な美しい地獄である。

宝石の国 / Land of the Lustrous
8

脆く美しい幻想世界

他に類を見ない独特な世界観を持った、とても美しく幻想的な作品です。
登場人物はタイトル通り「宝石」(鉱物結晶)であり、透明感と色彩でうまく表現されています。
フルCGでの作画が、この作品においては最大限活かされていると感じました。
主人公のフォスフォフィライトをはじめ、皆宝石の名前になっていますが、イメージとしては宝石そのものが人の形をしているという感じでしょうか。
坊さんの姿の「先生」以外は全て女性に見えますが、実のところ性別があるかどうかも判りません。
物語は、宝石たちを装飾品にしようと襲ってくる「月人」との戦いがメインで、3DCGによる作画が美しく効果的に「宝石らしさ」を表現しています。
月人とのバトルで負傷した宝石は、腕や脚が折れるのではなく「砕ける」描写が見事です。
また、髪の透明感、サラサラでありながら無機質の質感が素晴らしい。
どのような世界なのか、なぜ宝石が人の形をしているのか、月人とはどのような生命体なのか…一切説明は無いので謎だらけですが、
その事が本作をより幻想的に仕立てているのかもしれません。
ただ、最終回が中途半端だったので、ぜひ続編を作ってこの美しい映像を再び披露してほしいです。

宝石の国 / Land of the Lustrous
9

無機質で、混沌とした残酷な世界「宝石の国」

宝石の国は名前の通り、「宝石」達が暮らす世界。
身体は鉱石、内包する微生物のインクルージョンが各々の性格や記憶といった部分に左右される不死の生物が主人公です。
彼は「フォスフォフィライト」であり、周囲の宝石からは「フォス」と呼ばれています。
彼は硬度と靭性の面から身体が脆く、身体能力も高くない上に不器用。そして明るく無鉄砲なトラブルメーカー。
しかも天敵である月人に好かれる色をしているので、戦争に行くことは出来ないと落ちこぼれ。
末っ子ながら300歳を超えるというのに、皆の親のような存在である「金剛先生」から仕事を与えられません。
1話で彼は金剛先生から「博物誌」の作成を頼まれ、それがきっかけで孤立している「シンシャ」と半ば無理やり交流を持つことになります。
フォスは自分の身体の鉱石を、回を重ねるごとにどんどん喪失していきます。
騙されて海で砕け、月人に一部を持っていかれ、流氷に落ちて喪失し、ついには自分の鉱石の比率よりその他の比率が上回る。
しかも鉱石に含まれるインクルージョンも一緒に減ってしまうので、記憶がどんどん欠落していきます。
歳上の宝石の名を忘れたり、地名を忘れたりと過去の思い出がどんどんと消えてしまう。
喪失するごとに身体は強化されていきます。フォスの身体より強いものでツギハギしてるためです。
落ちこぼれのフォスは苦労や努力によって強くなる主人公ではない。
落ちこぼれの自分を物理的に削り、記憶を欠落しないと強くなれません。
最初は素直なトラブルメーカーだったフォスが大人びて、歪に強くなり、空元気のような明るさを見せるようになります。
かつての幼いフォスは「かつてフォスである何か」に近づきながら、彼なりに月人に攫われた仲間たちの救出を目指します。
その最中で肉の身体を持つアドミラビリス族という巨大カタツムリのような生物と交流を持ち、月人の考えや文化に触れていきます。
世界は美しく透き通っているのに、歪で残酷でままならない。
唯一無二の美しく歪な世界で、自身を削って強くなっていく主人公。
重く悲しい物語ですが、会話の軽妙さや独特の無機質感などが癖になっていきます。
アニメ化もしていることでより手に取りやすくなっているので、とてもおすすめです!

宝石の国 / Land of the Lustrous
8

美しい世界観に飲まれていく

まず作り込まれた美しいグラフィックに私は引き込まれました。宝石たちの髪の質感が素晴らしいです。透明でキラキラとして髪の毛の揺れるところは本当に見惚れてしまいます。美しいモノが好きな方にはまずおススメしたいです。その他に戦闘シーンがとても良かったです。躍動感がある中に美しさも兼ね備えていて何度も観たくなります。
その他にも世界観が素晴らしいです。人の容姿を持った人外、女でも男でもないという設定。中性的な美しさが好きな自分にはかなり刺さりました。宝石たちは自身のあり方に疑問を抱き葛藤しつつも戦いの中で成長していきます。主人公のフォスフォフィライトの変化していく姿が特に印象的で、個人的にはとても好きです。最初は弱くて戦闘すらできず何も役に立てなく、それでいて迷惑ばかりかけていた主人公がある出来事をきっかけにして、戦場で活躍するようになり更に性格までも大きく変わっていきます。その姿が私にとってなんとなく切ないなと感じました。何も知らなかった、痛みも悲しみも知らなかった子供が残酷な出来事に直面し守りたい力をつけたいと思うようになり変わっていってしまう。力はついたのに幸せだったあの頃の自分とは違う。変わるという事になにか大切な物を置いてきてしまったような悲しみや哀愁があり、この作品にはそれを感じ取りました。

宝石の国 / Land of the Lustrous
8

独特な世界観をもつ作品

最初は興味本位で手に取った作品でした。というのも、わたしの好きな絵師さんがよくこの作品のイラストを描いていたので気になり始めました。
宝石に命があり、人間のように動く…とても不思議な世界の中で、月からやってくる敵と戦っていく。なぜ彼らは襲ってくるのか、そしてなぜ宝石たちを連れて行ってしまうのか、非常に謎が多い始まりです。
最初は世界観についていくのがやっとで話についていけないかも…と読むのを諦めかけたこともありました(笑)しかし読み進んでいくうちにどんどん引き込まれ…1日、徹夜して読みふけっていましました。

主人公のフォスが最初はダメダメな子なんです。一番若い宝石で、戦いも下手で、頭も悪い。ほかの宝石たちも「手がかかるわ~」みたいな感じで呆れちゃってるわけなんですが、作品を通して成長…というかなんというか、とても変化をするんです。外見も内面もかなり変わります。恐らく最新刊だけ見た人は1巻の彼を見たら驚くんじゃないでしょうか。フォスのせいでさらわれた宝石のアンタークという宝石がいるのですが、彼がさらわれてからのフォスは不気味なくらい変わります。
といった感じで宝石たちの変化に目が離せないですし、深まっていく謎に様々な考察が止まらないです。
好みはかなり分かれる作品だと思います。自分としてはかなりお勧めしたい作品です。

宝石の国 / Land of the Lustrous
9

他に似た作品を知らない。唯一無二のキラキラ世界

序盤から展開される独特の世界観、設定にただただ圧倒されます。
人間のいない世界で生きるヒトの姿に似た宝石たち。彼女たちを理解するのに少し時間が掛かりました。視聴前は、ヘタリアや艦これといった最近流行りの擬人化モノなのかと思っていたのですが、単に人になるということではありませんでした。
簡単に何度も何度も壊れてしまう宝石たち、しかし条件が揃えば再生可能で、死の概念が無い…。一度死ねば終わりという作品に慣れていたので、この感覚は新鮮でした。主人公なのにあっさりと手足がもげてしまうフォスは衝撃です。
宝石たちが住む学校、先生と呼ばれる存在、そして宝石たちを攫いに来る月人。不思議な関係性です。

アニメ化もされましたが、CGは動きも滑らかで、ダイナミックなカメラワーク、美しい背景、そしてキラキラ輝く宝石たちの作画は最初から最後までハイクオリティでした。とにかく細部まで作り込まれた世界は、よくある『現実社会をベースにしたような異世界』とは違い、完全に独立したそれでした。どっぷりと非日常に浸りたい人にはオススメです。そして徐々に明かされ始める宝石たちの秘密、フォスに訪れる変化、次々と先が気になる展開が訪れ、目が離せなくなります。

宝石の国 / Land of the Lustrous
9

今1番面白いSFファンタジー

宝石の体を持つ人型の生物がでてくるSFファンタジーです。あくまで宝石(無機物)なため登場人物たちはいわゆる不死身です。体が割れたり破損することがありますが、修理することが可能です。また、痛覚や温度を感知することもできません。登場人物である宝石たちは、共同生活の中で各々仕事を持ちながら協力して生活しています。そんな宝石たちを連れ去らい装飾品としようとするのが「月人」と呼ばれる敵です。月人との熾烈な戦いが描かれています。
主人公はフォスフォフィライトという宝石で、ほかの宝石たちと比べて割れやすい性質を持ち、天真爛漫な性格ですが、とても不器用なため仕事を任せて貰えません。また、月人好みの色をしているらしく、真っ先に標的にされてしまうため戦いには出して貰えません。ですがひょんなことから月人との戦いに出して貰えるようになるのですが...
そんな月人たちとの戦いの中で主人公は成長していくのですが、その姿は成長と言うより豹変とも言えます。
2017年にアニメ化もされました。私はアニメから見始めたのですが、あまりにも面白くて全巻一気に買ってしまいました。現在8巻まで発売されています。巻をますごとに宝石たちや月人の秘密がわかっていき衝撃の展開になっていきます。

宝石の国 / Land of the Lustrous
9

儚い宝石たちの陰影

主人公を含め、登場人物たちはなんと宝石なんです。舞台は遥か未来、かつて人間と呼ばれていたものが、肉は海の底に沈み、魂は月に登って、骨は地上で宝石になってしまった世界です。宝石たちはそれぞれの硬度にもよりますが、衝撃で簡単に壊れてしまうような、脆くて儚いモノとして描かれています。しかし、どんなにバラバラにされても決して死ぬことはありません。
宝石たちは月からの襲撃を受けており、月人たちは宝石を襲ってバラバラに砕いては、装飾品や武器として加工するために回収して月に持ち去ってしまいます。宝石たちは月からの襲撃を返り討ちにしつつ、地上で過ごしています。
主人公は美しい色を持っていますが、最も硬度が低くて壊れやすい宝石です。その壊れやすさが故に、月人に立ち向かう事すら出来ずにいました。
巻が進むにつれ、主人公が強くなっていき、海と月と宝石たちの謎も解明されていきます。ただ一巻の頃の、弱い自分が嫌で変わろうとするかわいらしい主人公が、変わって行くと言うよりもむしろ失われていってしまうと言えるような展開に寂しさも感じます。
登場人物たちは性別を感じさせない、淡々とした線で描かれており、特徴のある陰影表現が画面にメリハリを持たせています。絵も話も美しい作品です。

宝石の国 / Land of the Lustrous
10

生とは死とは何か、考えさせられる作品『宝石の国』

この作品はいろいろ考えさせられる作品です。
舞台となるのは、はるか昔に人間が存在していたと伝えられる世界。長い年月をかけて人型の宝石が暮らしています。この世界には、宝石をさらう『月人』という敵がおり、宝石たちはこの月人と戦いながら暮らしています。

私はこの作品を通して、生きるとは何かを考えさせられました。この宝石たちには死という概念が存在していません。もちろん壊れること自体はありますが、何百年も生き続けています。そんな中、主人公は偶然にも死ぬことができる生命体と出会い、二人で死について話します。二人の会話では、死があるからこそ生きることが価値あるものとなる、というような会話でした。マイナスがあるからこそプラスがプラスとして価値がつく。とても奥が深く心揺さぶられました。
主人公は月人に狙われやすい色をしており、なおかつとても壊れやすい、そしてなにより何をやらせても不器用で、他の宝石たちにはあまり相手にされない存在でした。そして、出会いや裏切り、自身の欲によって体の一部分をなくし、新しい宝石をつなぎ合わせることで他の宝石たちにはない力を手に入れて成長していきます。しかし、それには代償があり、自身の記憶、そして大切な仲間を失っていきます。良くも悪くもどんどん変わっていく主人公を読んでいて応援したくなってきます。本当に面白い作品です。

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