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美しい地獄
強くて脆い、宝石たちの物語。
そんなキャッチコピーが目印の漫画が『宝石の国』である。
人類が滅びた地球で暮らす宝石(人型の生命体)とその宝石を装飾品にしようと""戦争""を仕掛ける月人たちの話なのだが、かなり奥が深い。
主人公のフォスフォフィライトは何をやってもダメで不器用で硬度も低く、脆い宝石である。しかし、先生の役に立ちたい、シンシャの為になりたいという気持ちから一生懸命に努力をする。しかし、そんなフォスフォフィライトに訪れたのは成長ではなく変化だった。強さとは、幸せとは何かを考えさせられる今作の1番の見どころは主人公の変化だろう。私はフォスフォフィライトほど変化した漫画の主人公を見たことがない。
成長といってもいいのかもしれないが、わたしはあえて変化といいたい。
気持ち、見た目、強さ…様々な点からフォスフォフィライトは変化する。
研磨され光り輝く宝石のように。
宝石たちは不死身である。折れたり割れたりしても元通りになる体である。しかしそれは本当の幸せなのだろうか?数々の地獄を乗り越えて強くなったフォスフォフィライトは本当に強いといえるのだろうか?そんな疑問を持ちながらも美しい描写で描かれるストーリーは一度読んだら何度も読み返したい濃厚で残酷な美しい地獄である。