無機質で、混沌とした残酷な世界「宝石の国」
宝石の国は名前の通り、「宝石」達が暮らす世界。
身体は鉱石、内包する微生物のインクルージョンが各々の性格や記憶といった部分に左右される不死の生物が主人公です。
彼は「フォスフォフィライト」であり、周囲の宝石からは「フォス」と呼ばれています。
彼は硬度と靭性の面から身体が脆く、身体能力も高くない上に不器用。そして明るく無鉄砲なトラブルメーカー。
しかも天敵である月人に好かれる色をしているので、戦争に行くことは出来ないと落ちこぼれ。
末っ子ながら300歳を超えるというのに、皆の親のような存在である「金剛先生」から仕事を与えられません。
1話で彼は金剛先生から「博物誌」の作成を頼まれ、それがきっかけで孤立している「シンシャ」と半ば無理やり交流を持つことになります。
フォスは自分の身体の鉱石を、回を重ねるごとにどんどん喪失していきます。
騙されて海で砕け、月人に一部を持っていかれ、流氷に落ちて喪失し、ついには自分の鉱石の比率よりその他の比率が上回る。
しかも鉱石に含まれるインクルージョンも一緒に減ってしまうので、記憶がどんどん欠落していきます。
歳上の宝石の名を忘れたり、地名を忘れたりと過去の思い出がどんどんと消えてしまう。
喪失するごとに身体は強化されていきます。フォスの身体より強いものでツギハギしてるためです。
落ちこぼれのフォスは苦労や努力によって強くなる主人公ではない。
落ちこぼれの自分を物理的に削り、記憶を欠落しないと強くなれません。
最初は素直なトラブルメーカーだったフォスが大人びて、歪に強くなり、空元気のような明るさを見せるようになります。
かつての幼いフォスは「かつてフォスである何か」に近づきながら、彼なりに月人に攫われた仲間たちの救出を目指します。
その最中で肉の身体を持つアドミラビリス族という巨大カタツムリのような生物と交流を持ち、月人の考えや文化に触れていきます。
世界は美しく透き通っているのに、歪で残酷でままならない。
唯一無二の美しく歪な世界で、自身を削って強くなっていく主人公。
重く悲しい物語ですが、会話の軽妙さや独特の無機質感などが癖になっていきます。
アニメ化もしていることでより手に取りやすくなっているので、とてもおすすめです!