宝石たちの織り成す幻想と美
どこかの世界に暮らす「宝石」たちは、自分たちを攫いに来る「月人」たちと日々戦っていた。そんな中、最も弱くて戦闘に向かないフォスフォフィライトは、金剛石の指示により博物誌の編纂を始める……。
この漫画は美に包まれています。市川春子の描く、キャラクターと世界の美。その一場面一場面が、ずっと眺めていたくなるような美しい絵で構成されています。宝石たちはそれぞれ美しいけれど、決して同じ者は存在しない唯一無二のキャラクターとして描き分けられ、心を躍らせます。
そして、悲しみの美。理不尽に襲われる宝石たちは敵を恐れ、仲間との別れに苦しみ、時には誰かを疑うこともあります。彼らをとりまく人間じみた悲しみの感情が、ストーリーにより美しさと深みを加えていきます。
さらに、幻想の美。宝石たちは少しずつ世界の謎に迫っていきます。自分たちを取り巻く世界の真実が明らかになっていくと、そこに広がるのは更なる眩暈のするような幻想の世界です。どこまでも連なる謎が世界に美しさを加えていきます。
美しさを極限まで追求することによって生まれたような非常に稀有な漫画で、いつまでもこの世界に浸っていたい、そんな気持ちにさせてくれるものでした。