スキップとローファー / Skip and Loafer

『スキップとローファー』とは、高松美咲による日本の漫画作品。『月刊アフタヌーン』(講談社)にて、2018年10月号より連載されている。
官僚を目指すため過疎地から東京の高偏差値高校に進学した岩倉美津未を主人公とする、都会の高校生活を描いた青春コメディ漫画。勉強こそできるものの純粋で少し天然な美津未が、本人も気づかぬうちに都会の高校生であるクラスメイトたちの心をほぐす日常を、ユーモアを交え軽やかに描いている。恋愛だけではなく、思春期の人間関係や自意識、家族との関係もテーマとして取り扱っている。ほんわかとした雰囲気の中にも、思春期特有のリアルな心理描写や人物描写が魅力。
「このマンガがすごい!2020」オトコ編では第7位、「マンガ大賞2020」では第3位にランクインした。2020年第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門にて審査委員会推薦作品に選ばれた。2021年11月にテレビアニメ化が発表されている。

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スキップとローファー / Skip and Loaferのレビュー・評価・感想

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スキップとローファー / Skip and Loafer
10

大人にこそ染みる青春漫画『スキップとローファー』

高校を舞台とした少女漫画は数えきれないほどある。だいたいの作品は主人公が好みの男性と出会って徐々に仲良くなり、別の同級生からも好意を寄せられ三角関係に陥りつつも最終的に好きな相手と結ばれる、というお決まりパターンで展開する。
『スキップとローファー』も始まりは同じだ。北陸の田舎から上京してきた主人公がイケメンな男子に出会い、打ち解けていく。
展開こそベタだが、キャラクターの解像度が圧倒的に違う。恋愛に焦点を置いている、というよりも思春期真っ只中の登場人物たちが人として成長する人間模様に重きを置いており、ご都合主義で動く恋愛漫画とは一線を画している。

読んで驚くのが、繊細な感情描写がとてつもなく上手い点。高校生だった当時言語化できなかった感情をばっちり表現していて、感涙することもしばしば。「自分にも主人公のような存在がいてくれたら…」なんて思いながら、1ページ1ページ大事に読み進めた。『アフタヌーン』で連載しているのも納得の、大人にこそ響く漫画である。

とはいえ少女漫画なので、恋愛的描写も多く含んでいる。しかし、主人公の相手役の志摩くんが過去にトラウマを抱えているなんとも陰のあるキャラクターで、一筋縄では展開しない。「少女漫画史に残る名シーンでは」なんて話もたくさんあるのだが、まだまだ結ばれるには先が長そうなので、これからの展開が待ち遠しい。

スキップとローファー / Skip and Loafer
10

心の機微を繊細に描いた作品

「高校生が主人公?ハイハイ、青春群像劇ね」などと読むのをパスしている方は早合点です!
この作品はただの青春ストーリーではないのです。
ヒロインの岩倉美津未(いわくら みつみ)は石川県の田舎育ち。彼女は官僚になるという大志を抱き、東京の高偏差値高校へ入学するために上京します。
入学式当日、迷子になり途方に暮れていた美津未に手を差し伸べてくれたのは、同じ高校の新入生である志摩聡介(しま そうすけ)でした。
見るからに都会の洗練された男子という風貌の彼は、寝坊を理由に入学式をサボる気でいたのですが、ローファーを脱ぎ必死の形相で学校を目指して走る美津未の姿に感化され、どこか楽しそうで嬉しそうな表情を浮かべながら学校に向かって一緒に走るのです。
このように、美津未の真っすぐさは無自覚のうちに周囲へ影響を与えます。
2人の今後の関係性も気になるところではありますが、この作品の魅力は登場人物それぞれの心の機微を繊細に描いている点です。
打算的に人付き合いをする世渡り上手な自分に対する嫌悪感、友人の悩みを心の底から理解してあげられないもどかしさ、自分の気持ちと向き合い認めることの怖さなど、青春時代に皆が多かれ少なかれ経験したであろう心の動きを細やかに描いています。
高偏差値の学校故に派手な大事件は起こらないのですが、読むとグワングワンに感情を揺さぶられる良作です。

スキップとローファー / Skip and Loafer
9

マンガ大賞2020ノミネート作、『スキップとローファー』

マンガ大賞2020で初めて知った高松美咲さんによる漫画「スキップとローファー」(講談社)。
まず、筆者のことになるが、膨大な量の漫画を読んできた。冊数にすると1万冊はゆうに超えるだろう。
その中で非常にお勧めしたい作品の1つである。

作品を一言で表すると、『青春時代に回顧し、心洗われる』。
主人公は、石川県から上京し、偏差値の高い高校に入学した、岩倉 美津未(いわくら みつみ)ちゃん(通称:みつみちゃん)。
「首席で卒業し、将来は官僚」と夢を持ち上京し、地元では神童と呼ばれるも都会と田舎のギャップに困惑しながら、乗り越えていく。

学校が舞台なので都会のクラスメイトが多数登場する。純粋無垢なみつみちゃんは天然な一面があり、クラスメイトとの価値観のズレや、田舎では当たり前だった事、自分がおかしいのか、そんな葛藤や描かれている反面、友人であるクラスメイト1人1人にも過去の辛い経験、「実はこうなりたい」という理想と現実のギャップがあり、「変わりたい!けど変われない…。」そんな思春期誰もが経験している葛藤と感情が非常に丁寧に描かれている。

前述した通り、多くの登場人物が出てくるが、丁寧に描かれているが故に感情移入しやすく、絵のタッチがまたそれにマッチする。
手に取ったその日にページが進む、進む。最新刊まですぐに読み終えてしまった。

読み終えた後こみあげてきた気持ちは、完璧な人間なんて誰ひとりいなくて、人間はいつも皆1人で生きている。
それでも皆が少しずつ支え合っているんだ。自分の交友関係を改めて大事にしたい。この頃の気持ち、忘れていたな。

忘れてた大事な何かを主人公のみつみちゃんの純朴さと天然さ、都会育ちのクラスメイトとのやり取りで思い出させてくれたような気がする。

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