人生のガイドブックになりうるハートフルストーリー
富山県出身の漫画家・高松美咲による青春漫画作品。今作品は「月刊アフタヌーン」（講談社）にて2018年から連載されており、2023年にはテレビアニメ化された。
主人公の岩倉美津未は、田舎から東京の高偏差値の高校に首席で入学した高校1年生。将来は過疎化が深刻な故郷の役に立ちたいと、官僚になることを夢見ている。そんな美津未は入学式当日、大都会の通勤ラッシュに巻き込まれ、完全に迷子になってしまう。駅で落ち込んでいる美津未に同じ制服を着た志摩聡介が声をかけ、一緒に入学式へ向かうところから物語が始まる。
この作品に触れた全ての人があの学生時代に抱いた懐かしい気持ちを思い出すだろう。
美津未は真面目で勉学に励むおかっぱ頭の女の子。純粋でまっすぐで何事にも一生懸命だが、天然な一面もありどこか危なっかしい。失敗してしまっても空回っても諦めず、目の前にあることと向き合う。
高校での新しい生活が始まり、人間関係など様々なことに悩む美津未。きっと誰もが経験したことがあるであろうどこかモヤモヤした気持ちと美津未も自分なりに向き合う。どんなに躓き、転んでも何度だって立ち上がる。そんな美津未を見ていると応援せずにはいられない。しかし読み進めているといつの間にか美津未のその健気なまっすぐな姿に励まされていることに気づくだろう。
またこの作品の魅力的なポイントはどの登場人物の心情にも共感できるところである。一見、少し意地悪だったり無愛想に感じる人物であっても話を重ねるごとにどこか憎めなくなる。主人公の美津未だけでなく、彼女を取り巻くクラスメイトたちひとりひとりも丁寧に描かれていることもこの作品の素晴らしさである。
新しいことに挑戦しようとしている人や人間関係など何か悩んでいる人にぜひ読んでほしい。そっと背中を押してくれる、心温まる漫画作品である。