大人にこそ染みる青春漫画『スキップとローファー』
高校を舞台とした少女漫画は数えきれないほどある。だいたいの作品は主人公が好みの男性と出会って徐々に仲良くなり、別の同級生からも好意を寄せられ三角関係に陥りつつも最終的に好きな相手と結ばれる、というお決まりパターンで展開する。
『スキップとローファー』も始まりは同じだ。北陸の田舎から上京してきた主人公がイケメンな男子に出会い、打ち解けていく。
展開こそベタだが、キャラクターの解像度が圧倒的に違う。恋愛に焦点を置いている、というよりも思春期真っ只中の登場人物たちが人として成長する人間模様に重きを置いており、ご都合主義で動く恋愛漫画とは一線を画している。
読んで驚くのが、繊細な感情描写がとてつもなく上手い点。高校生だった当時言語化できなかった感情をばっちり表現していて、感涙することもしばしば。「自分にも主人公のような存在がいてくれたら…」なんて思いながら、1ページ1ページ大事に読み進めた。『アフタヌーン』で連載しているのも納得の、大人にこそ響く漫画である。
とはいえ少女漫画なので、恋愛的描写も多く含んでいる。しかし、主人公の相手役の志摩くんが過去にトラウマを抱えているなんとも陰のあるキャラクターで、一筋縄では展開しない。「少女漫画史に残る名シーンでは」なんて話もたくさんあるのだが、まだまだ結ばれるには先が長そうなので、これからの展開が待ち遠しい。