スキップとローファー(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
『スキップとローファー』とは、石川県から上京してきた少女が高校生活の中で成長していく様を描いた、高松美咲による漫画作品。人間関係の巧みな描写と丁寧な展開で高く評価され、2020年のマンガ大賞では3位に輝いた。
故郷の石川県では“神童”と称えられた岩倉美津未は、官僚になるという夢を叶えるために東京の高校に進学する。地元とはまるで違う空気、文化、人間関係に戸惑いながらも、美津未はマイペースに東京に順応し、志摩聡介や江頭ミカといった新しい学校での友人を増やしていく。
『スキップとローファー』の概要
『スキップとローファー』とは、石川県から上京してきた少女が高校生活の中で成長していく様を描いた、高松美咲による漫画作品。
人間関係の巧みな描写と丁寧な展開で注目され、「日常系漫画」の新たな傑作と高く評価される。2020年のマンガ大賞では3位に輝き、2023年にはアニメ化を果たした。
故郷の石川県では“神童”と称えられた岩倉美津未(いわくら なつみ)は、「官僚になるという」夢を叶えるために東京の高校に進学する。地元とはまるで違う空気、文化、人間関係の機微に戸惑い、時に幼馴染の遠山文乃(とおやま ふみの)に電話で泣きつきながらも、美津未はマイペースに東京に順応していく。
純朴で穏やかで頭脳明晰な彼女の周囲には、やがて志摩聡介(しま そうすけ)や江頭ミカ(えがしら ミカ)といった友人が増えていく。同時にそれは、美津未の東京での新しい日々の始まりでもあった。
『スキップとローファー』のあらすじ・ストーリー
入学式と新たなクラス
故郷の石川県では“神童”と称えられた岩倉美津未(いわくら なつみ)は、官僚になるという夢を叶えるために東京の高校に進学する。入学式では答辞を任されるも、道に迷っていきなり遅刻することとなってしまう。同じく遅刻した新入生の志摩聡介(しま そうすけ)と共になんとか学校に向かうと、なんとか答辞のタイミングには間に合うも、今度は原稿を持たないまま壇上に上がってしまう。咄嗟に暗記していた内容を口にして事無きを得る美津未だったが、緊張と精神的疲労でステージを降りるなり嘔吐するのだった。
入学式での振る舞いから、美津未は新入生の中でも目立つ存在となる。学級委員に就任して張り切る美津未だったが、同じく学級委員となった聡介がイケメンだったことから、彼を狙うクラスの一部女子から反感を買ってしまう。特に江頭ミカ(えがしら ミカ)という少女からは露骨に警戒され、石川県の高校に進学した幼馴染の遠山文乃(とおやま ふみの)に電話で愚痴るほどヘコたれる。
一方、そういった雰囲気を嫌うクラスメイトの村重結月(むらしげ ゆづき)からは案じられ、東京で最初の友人となる。これに勇気づけられた美津未は、「ここで新しく友人を作っていく」ことに前向きになっていく。
ある日、演劇部の2年生である兼近鳴海(かねちか なるみ)という少年が教室に現れ、新入生の中でも話題となっている美津未を「演劇部に興味は無いか」と誘ってくる。その兼近は聡介を見て「かつてファンだった有名な子役だ」と驚くも、彼から「昔のことを詮索するな」と強く告げられて口をつぐむ。
生徒会への扉
新入生が高校生活に慣れ始め、クラスメイトたちが次々と部活を決めていく中、美津未は生徒会に入ろうと考える。「東京の大学を出て、官僚として活躍し、引退後は故郷で市長になる」という人生のロードマップを思い描く美津未にとって、生徒会での活動は絶対に外せないものだった。しかし生徒会は現在は新たな役員を募集しておらず、「次の選挙前に生徒会の雰囲気を知りたいなら、つばめ会という一般生徒たちにより二次組織に入るのがベター」とアドバイスをもらうに留まる。
この時、一緒に生徒会の戸を叩くこととなったのが、クラスメイトの久留米誠(くるめ まこと)だった。誠は地味で真面目な少女で、結月のような見た目が派手な生徒も、そんな彼女と親しくなった美津未のことも「自分とは合わない」と一方的に決めつけていた。しかし「一緒に生徒会を見学した縁」として美津未にお茶に誘われ、彼女を通して結月とも仲良くなり、自分が偏見に囚われていたことを知る。
春の大型連休を東京見物して過ごした美津未は、一部のクラスメイトたちが早くもテスト勉強を始めていたことを知り、「このままでいいのか」と思い悩む。担任の花園に相談すると、美津未は「学校で一番ストイックな生徒」と評判の生徒会の高峰十貴子(たかみね ときこ)から学ぶことを勧められる。高峰は分刻みでスケジュールを組み、その合間を縫って勉強に励む生真面目な人物で、「こんなにすごい努力を続けられるなんて」と美津未を驚かせる。
しかし「勉強法を教えてほしい」と言って近づいてきた美津未を見る内、高峰もまた「自分はあまりに余裕のない過ごし方をしているのではないか」と己を顧みるようになる。中学受験に失敗したという自分の過去を明かすと、高峰は美津未に「何が正しかったのかなんて後にならないと分からない、自分に合った方法を探すべきだ」とのアドバイスを送るのだった。
球技大会
中間テストが終わり、球技大会が開かれる。美津未のクラスは「どうせなら優勝しよう」と盛り上がっており、短い時間をやりくりして個々の生徒が練習に励む。これまで運動が苦手なことを隠してきた美津未は、それがバレることを恐れ、自身が出場することとなったバレーボールの練習相手になってほしいとミカに頼み込む。
「なんで自分が」とは思いつつ、“親切な女子生徒”というキャラクターを維持したいミカはこれに応じる。その中で、ミカは「美津未の周囲に次々と友人ができていくのは、彼女が基本的に誰かを害するようなことを考えない優しい性格であること、他人の美点を見付けるのが上手だからではないか」と悟り、他人からの評価ばかり気にしている自分のやり方に疑問を感じていく。
美津未のクラスはいくつかの競技で勝ち進んでいくも、女子のバレーボールは2位で敗退。一方男子のバスケは優勝し、以前から学校の女子生徒たちに注目されていた聡介は多くのファンに囲まれる。愛想よく笑顔を振りまく聡介だったが、「おめでとう」を言おうと近づく美津未に気付いて彼女を見詰める。その様を見たミカは、「聡介が美津未の近くにいるのは、人の外面ではなく内面を評価する彼女に特別なものを感じているからではないか」と考えるようになる。
期末テストと恋心
一学期の期末テストが近づく中、聡介が不意に学校を休む。病気ではなく、単に寝坊したからそのままサボっただけで、テスト前にそんなことでいいのだろうかと美津未はもやもやした気分を抱える。聡介のサボり癖は中学時代からのことで、当時は結構夜遊びもしていたらしい。やがて学校に来た聡介にその態度について意見すると、「個人の自由でいいじゃないか」と言い返され、一理あるとは思いながらも美津未は自分が本当は何を言いたかったのか分からず思い悩む。
友人たちに相談した美津未は、結局のところ「聡介がいないと楽しくないから、できれば学校に来てほしい」と彼に伝えたかったのだと気付く。改めて聡介にそれを告げると、彼は自分の家が放任主義であること、夜遊びというのは知り合いの家で夕飯を御馳走になったのを大袈裟に広められただけであること、美津未にはそんな話を信じてほしくないことを訴える。「こんなふうに女の子と友達になるのは初めてだ」と語る聡介を見た美津未は、なんだか恥ずかしくなってその場を走り去り、妙に頬が火照るのを感じながら「もしかして自分は聡介が好きなのだろうか」と考える。
期末テストと前後して生徒会の人員も一新され、美津未は正式に書記としてここに加わる。美津未は「次の生徒会長は真面目で優秀で実績もある高嶺だ」と確信していたが、選挙の結果新しい生徒会長は元サッカー部の風上紘人(かざかみ ひろと)という少年に決まってしまう。思い切り肩を落とす高嶺だったが、美津未や兼近に不器用に励まされ、「会長にはなれなかったが、副会長としてできることも学べることもたくさんある」と意識を切り替える。
夏休みを目前に控え、生徒たちはそれぞれに夏の予定について話し合う。美津未が「パンダを見に行きたい」と語っていたことを覚えていた聡介は、彼女に動物園が空いている時間について助言する。これを聞いた美津未は、「みんなで行こう」と言おうとして「2人で行こう」と言ってしまう。これではまるでデートに誘っているみたいだと、美津未は慌てて「言い間違えた」と弁解しようとするが、それを遮るように聡介は誘いを了承。予想外の展開に美津未が大いに焦る中、他校の女子生徒が教室に入ってくる。西城梨々華(さいじょう りりか)というその少女はモデルとして活動する人気者で、美津未を見るなり「あなたがそうなのか」と意味ありげな言葉を口にする。
後日、「これでよかったのか」とは思いつつ、美津未は約束した通りに聡介と動物園に向かう。2人が学校で話しているところを聞いてしまったミカは、こっそり様子をうかがうために後をつけ、美津未が心配で様子を見に来た彼女の叔母のナオこと岩倉直樹(いわくら なおき)と遭遇。一緒に美津未たちを尾行することとなる。美津未たちは普通の友人として動物園を巡り別れるものの、聡介はお土産を買う際に「何を買えば歳の離れた弟が喜ぶのか分からない」と漏らし、憂いのある表情を浮かべる。
聡介と梨々華の過去
美津未、ミカ、結月、誠は次第に友人として打ち解け、勉強会を兼ねたお泊り会を開くこととなる。美津未の家がその舞台となり、一行は場所を提供してくれたナオに感謝しつつ勉強と女子トークを楽しむ。気後れしたミカは「家族と夕飯を食べる約束がある」と途中で抜けようとするも、彼女が己のプライドと友情の間で迷っているのを見て取ったナオに背中を押され、結局美津未たちと一緒に過ごすことを選ぶのだった。
同じ頃、聡介は梨々華に呼び出されてむりやり付き合わされていた。実は梨々華は、4年前に聡介によって当時の彼の不良仲間に引き合わされ、彼らが飲酒騒ぎを起こしたことで自身も巻き込まれて猛烈なバッシングを受けたことがあった。私生活にもモデルの仕事にも大きな影響が出る事態となり、梨々華が聡介に刺々しいのはこれを今でも恨んでいるためだった。「自分のせいで苦しませることになった」という負い目を持つ聡介は、梨々華に強く出られないまま振り回される日々を続けていく。
夏休みが終わると、学校は文化祭の準備に向けて慌ただしくなっていく。能登の実家に帰省していた美津未は、友人にお土産を配って休み中の話で盛り上がるが、梨々華から「自分だけ楽しく高校生活を送れると思うな」と言われたことが引っかかっている聡介は彼女たちから微妙に距離を取る。「なんだか元気がなさそう」だと彼を心配した美津未は、お土産の煎餅を他の人より多く渡して聡介を励ます。美津未の素朴な激励に、聡介は少しだけ救われた気分になるも、クラスの出し物が演劇に決まると複雑そうな様子を見せる。
かつて聡介は“周囲の誰かに望まれた”という理由から子役に打ち込んでいた。特に母親が自分の活躍を喜んでくれるのが嬉しくてがんばっていたのだが、ふとしたきっかけから両親は離婚し、聡介は役者を続ける最大のモチベーションを失ってしまう。そこに梨々華の事件が重なり、自分にも演劇にも嫌気が差して役者をやめたというのが聡介の半生だった。
波乱の文化祭
文化祭の準備が進む中、聡介は自分が美津未の「かつての自分と同じ“周囲の誰かを喜ばせたい”という気持ちでがんばり続ける」ところに不安と興味を感じていることに気付く。その美津未は初めての文化祭に入れ込み、オーバーワークが過ぎて空回りしたあげく、「抱え込み過ぎて途中で投げ出すくらいなら最初から引き受けないでほしい」とクラスメイトが悪口を言っているのを聞いてしまう。
美津未がかつての自分と同じく自暴自棄になってしまうのではないかと案じる聡介だったが、彼女は「自分はよく落ち込むが立ち直るのも早い」と笑顔を見せて鮮やかに吹っ切り、何事も無かったように悪口を言ったクラスメイトとも話し合って準備を進めていく。これを見た聡介は、自分とは違う心の強さを持つ美津未に改めて敬意を抱くようになる。
やがてやってきた文化祭当日。美津未たちのクラスの演劇は好評となり、多くの観客が訪れる。その中には聡介の母の姿もあったが、ここで聡介の弟が迷子になってしまう。美津未たちが慌てて対処して無事に彼を保護する一方、「聡介が舞台に立つ」ことを知った梨々華もまた文化祭に沸く学校に乗り込み、美津未たちのクラスへとやってくる。
梨々華が聡介にぶつけていることをなんとなく察した美津未は、咄嗟にその間に割って入り、チケットの案内を口実にして彼女を追い払う。周囲に守られながら楽しく学園生活を送る聡介に梨々華がますます苛立ちを募らせる一方、聡介はここ最近ずっと感じていたもやもやした気持ちが、無邪気に文化祭を楽しむクラスメイトや先輩たちへの嫉妬と羨望だったことを理解する。
梨々華との関係を今のままにしては先に進めないと考えた聡介は、改めてスキャンダルに巻き込んだことを彼女に詫びつつ、「もう過去ばかりを悔いて周囲を傷つけるのはやめてほしい。それは梨々華自身も含めて誰も幸せにしない」と訴える。梨々華は「どの口が言うんだ」と怒り出すが、かつてスキャンダルによって仕事を失ったのが聡介のせいばかりとはいえないことを、自分の責任も大であることを自身も内心では理解していた。結局ケンカ別れのような形で2人は決裂するも、過去の負い目にひとまずの決着をつけた聡介は歳相応の少年としての素顔をようやく表に出す。
そんな聡介の変化に最初に気付いたのは美津未だった。1人の少年として、今さらながら文化祭と学校生活を楽しもうと考えた聡介は、打ち上げにも文化祭の片づけにも積極的に参加する。生徒会としての活動で美津未が忙しいのを見て取ると、聡介は「自分も手伝う」と言い出し、2人は後で連絡を取り合うことを約束していったん別れる。東京に来てからの数か月のことに想いを馳せながら、これからも続いていくだろう新たな友人たちとの日々を楽しく実りのあるものにしようと、美津未は改めて誓うのだった。
『スキップとローファー』の登場人物・キャラクター
1年生
岩倉美津未(いわくら みつみ)
CV:黒沢ともよ
主人公。純朴で天然気質、真面目で頭脳明晰で一生懸命な少女。故郷の石川県では“神童”と称えられており、「官僚になる」という夢を叶えるため東京の高校に進学した。
志摩聡介(しま そうすけ)
CV:江越彬紀
美津未のクラスメイト。ふんわりした雰囲気の少年で、入学初日から美津未と親しくなる。
過去に子役俳優として活躍していた時期があるも、今ではその過去を封印している。