主人公のまっすぐな姿に背中を押される漫画
石川県のはしっこ。同級生が8人しかいない過疎化が深刻な地元で、家族や親友たちとのびのび育った岩倉美津未(いわくらみつみ)。「官僚になる!」という大きな野望を叶えるため、東京の進学校・つばめ西高校に入学した。
地元には無かった広くて複雑な人間関係に戸惑いつつも、裏表のない真っすぐな性格で周囲に影響を与えながら、自身も成長していく学園青春ストーリーである。
「スキップとローファー」の魅力は、登場人物の共感できる裏表である。
東京で美津未の出会う同級生はみな裏がある。裏があるというと悪い意味での表現にも聞こえるが、そうではなく。表から見えている印象に隠れた、弱い部分を持っているという意味である。
例えば、入学式に美津未を助けてから仲良くなり、お互いに特別な感情を抱くようになる志摩聡介は「誰からもモテる、ゆるふわイケメン」。しかし内側には、複雑な家庭環境や過去の子役時代におきた過ちのせいで、自信がなく全て一歩ひいてみてしまうような劣等感を抱えている。
他にも、「容姿端麗な美人」はその目立つ存在のせいで過去の人間関係がうまくいかず、周囲に壁をつくってしまったり、「おしゃれにも敏感な、いまどき女子」は自分の立ち位置を確立しようとするあまり、打算的に動いて自分に素直になれない。
そんな登場人物の内面が、田舎から出できて常に真っすぐな美津未と過ごすうちに、ぽろぽろと露呈して、自分の弱い部分と向き合って成長していく。
大人になればたいしたことないと思えることも、学生にとっては大きな悩みだった。そんな気持ちを思い出して共感するうちに、どのキャラクターのことも好きになっている。
見ている私たちも気づけば、裏表のない美津未の真っすぐな姿に背中を押されるような、前向きになれる作品である。