シン・ウルトラマン / Shin Ultraman

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman

『シン・ウルトラマン』とは、脚本・庵野秀明、監督・樋口真嗣による、人類のために戦う異星人ウルトラマンと、その周囲の人々の活躍を描いた映画作品。日本を代表するクリエイターによる伝説的な特撮作品のリブートということで、公開前から大きな話題となった。
突如日本に出現し始めた巨大生物、禍威獣。その脅威に対抗するため結成された禍特隊の前に、銀色の巨人が現れる。ウルトラマンと名付けられたその巨人は禍威獣から人々を守るように振る舞い、禍特隊がその謎を追う一方、地球にはかつてない危機が迫っていた。

シン・ウルトラマン / Shin Ultramanのレビュー・評価・感想

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シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
8

『エヴァンゲリオン』の庵野監督が本当に作りたかったもの!?特撮に魅了された男が作るウルトラマン!

元々、幼少時代に観ていた『ウルトラマン』に強い影響を受けていた庵野監督。
大学時代には、自身で『ウルトラマン』の8mm映画を自作するほどの酔狂ぶりで、そんな庵野監督が作り上げたのが『シン・ウルトラマン』です。

この『シン・~』シリーズは『エヴァンゲリオン』『ゴジラ』『ウルトラマン』『仮面ライダー』の4つがあり、特に『エヴァンゲリオン』は世間での庵野監督の立ち位置を確固たる位置にした作品です。その『エヴァンゲリオン』の特徴が『シン・ウルトラマン』の随所に現表現されています。

例えば、エヴァンゲリオンは背中のアンビリカルケーブルが切れると内部電源に切り替わり、そこから制限時間がかかる仕様となっていますが、これはウルトラマンのカラータイマーからインスピレーションを得ていたりします。
なので、『エヴァ』が好きな方は『ウルトラマン』を見ることで、エヴァの中に隠されていたウルトラマンの要素に気づくかもしれません。逆にウルトラマンが好きな方はエヴァを見ると「おや?」と思うシーンがいくつか出てくると思うので、そういう視点で見るのも面白いかもしれませんね。

さて、『シン・ウルトラマン』ですが、世界各国ある中でなぜか日本にだけ巨大不明生物「禍威獣(かいじゅう)」がやってくる世界となっています。
その「禍威獣」の対応をしているのが防災庁の禍威獣特設対策室、その名も「禍特対(かとくたい)」。
禍特対のメンバーはそれぞれ個性的な長所があり、それを活かしてこれまで様々な禍威獣を退治し、禍威獣に対する知見もたくさん持っていました。ところがある禍威獣が来襲した際に対策室メンバーの1人である神永新二が、避難に遅れた子供の救出に出た際に、空から謎の飛来物が落ちてくるのを目撃します。この飛来物と神永新二によって、この物語は急加速をしていきます。

見所としては、時代背景を現在の時代に設定していることです。そのため国際政治に関わる背景やそこに付け入ろうと考える知的な禍威獣も出てきたりするなど、全体的にキャラが際立っている印象があり、見るものを飽きさせない構成となっています。

過去の『ウルトラマン』を幼少期に見ていた自分としては、ゼットンとゾフィー(本作ではゾーフィ)の関係性が「え?」っていう感じで良い意味で裏切ってくれることで、リメイク作品としてしっかり違いをつけているところがさすがだなと感じました。
ぜひ、まだ見ていない方は見てみてください!

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
8

楽しい空想特撮映画、シン・ウルトラマン

2022年5月に公開された映画「シン・ウルトラマン」。アマゾン・プライムビデオで視聴できます。

ウルトラマンを初めて目にした世界。
この世界に初めて触れた方にも分かりやすい展開となっていますが、 子供のころ、ウルトラマンの活躍に胸を躍らせた方には特別なプレゼントです。

ここからはネタバレです。

舞台は巨大な生物「禍威獣(かいじゅう)」が出現して多くの被害が出ている日本。政府は防災庁に禍威獣特設対策室(略称・禍特対=カトクタイ)を設立した。 そんな中、禍威獣ネロンガが出現した。対策に窮しているとき、上空から正体不明の巨人が降着。巨人は瞬く間にネロンガを撃退した後、飛び去り中空で消えた。
禍特対は禍威獣対策だけでなく、巨人の調査も行うことになった。

半世紀前のテレビ作品「ウルトラマン」のエピソードがふんだんに盛り込まれています。50~60代の方々にはたまらないシーンばかりです。
また、現実の政治社会への批評もちりばめられています。
しかし、「空想特撮映画」と名付けているように、リアリズムよりも夢の中のお話として楽しめる作品となっています。肩ひじ張らない、家族で見るのにふさわしい映画と言えるでしょう。

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
7

大いなるごっこ遊びに付き合える度量を持て

東宝のマークが流れたあと、円谷の流星ロゴが続き、そこでふと『ウルトラマンの映画配給は松竹』が続いていた事を思い出します。
最初期の劇場版ウルトラマンを除くと殆どの配給は松竹系の劇場で公開され、長年それが当たり前としてさしたる疑問を挟む事も無く続いていたので、今回の東宝と円谷の並びは知る者には懐かしく感じる所もあったかと思います。
さてそのノスタルジーを吹き飛ばすシン・ゴジラのロゴとそれに続くシン・ウルトラマンのタイトル。
そして繰り返し襲い来る巨大不明生物による脅威と人類側の必死の反撃が描かれ、終わりの見えない「禍威獣(かいじゅう)」への対抗措置として専門分析部隊、通称「禍特対(かとくたい)」が設立されるまでが映像と字幕で一息に説明される辺りはまるで過去にそういった番組があって、それをダイジェストにまとめたかのような省略っぷりが小気味良くこれだけで番組が出来そうに思える程。
禍特対が新たに表れた禍威獣・ネロンガへの対応中突如降り立った”銀色に輝く巨人”が現れ、腕から光の奔流をぶつけネロンガを消し去ると空中に飛びあがり消えてしまう。
シン・ゴジラの時は取り込んだ核物質の冷却を行なうといった「生物としての特性」の分析に重点を置くことでリアリティを高めていたように思います。
それが今回は禍威獣の行動パターンや過去のデータとの照合の結果として対抗方法を探るといった、より排除への明確な目的を持って動いている為展開が非常に速いです。
一部、ウルトラマンの仮の姿である神永の行動があからさまに奇妙だったりするのは、ご愛敬でしょうか。

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
10

光の巨人は美しかった!

オリジナルの『ウルトラマン』へのオマージュをたっぷり盛り込みながら、現代の科学的考証と実在の自衛隊の装備を駆使して怪獣と戦う人々と、"ウルトラマン"を描く、それは全く新しい"空想特撮映画"でした。
長きにわたりスーツアクターが演じていたウルトラマンや怪獣の姿を精緻なフルCGで描き、その動きを庵野監督が自らモーションキャプチャーで演じたというその拘りっぷりが画面から炸裂して、見る者の心を鷲掴みにしています。
そして、その中で描かれているさまざまな陰謀や不条理がなかなかに辛辣で、ウルトラマンは完全な正義ではなく、そして地球人の存在と平和が至上の命題ではないということが大変興味深いです。
地球人類だけでなく、ウルトラマンを含む”外星人”にもいろいろな思惑があり、勧善懲悪ではない物事の流れの中で、しかし危機的状況に陥った地球人類を如何にして守っていくか…という究極の選択を迫られたときに、ウルトラマンは何を思い、誰とどう戦っていったのか…スピーディな展開のなかで、ウルトラマン=光の巨人は美しく、そして彼(?)自身が得た結論にたどり着くために身を投じていくのです。
最初は無機質な姿に見えたウルトラマンでしたが、その内面に変化がおこると、次第にその表情は柔和に見えて、口元に微笑みすら感じるようになりました。
地球人との融合がもたらしたその変貌もこの作品の大きな見どころです。

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
10

こんな”ウルトラマン”を待っていた!

近未来かもしれないし、現代かもしれない、そんな日本にいきなり怪獣が現れたら、日本の政府、政治家と役人はいったいどう対応するのだろうか…という結構シビアなテーマの中に、チート的に表れた”外星人”、それがのちに”ウルトラマン”とよばれることになる存在です。
銀色に光る巨人は神々しいまでの美しさで周囲を圧倒し、暴れて甚大な被害をもたらした禍威獣(=怪獣)を制覇していくのです。
本作の見どころは、人間(日本人)がいかにその猛威を振るう禍威獣と対峙するかという笑えない駆け引きと陰謀、そしてウルトラマンの存在そのものなのです。
その双方を取り持つのが”禍威獣特設対策室(禍特対)”の神永(斎藤工)の存在でした。
彼はその命と引き換えにウルトラマンと一体化し、外星人と戦うことを選ぶのです。
本作ではオリジナルの初代ウルトラマンの作中に登場した怪獣や異星人らが登場し、そこに新たな解釈を加えた新しいキャラクターとして物語のカギになっていきました。
ウルトラマンだけでなく、子供のころに見たそんな怪獣たちに新たな命が吹き込まれてスクリーンで大暴れしてくれた、というだけで、長年のファンにはたまらないシーンが続きますし、新しいウルトラマンで育っただろう平成世代にはそのシンプルさが新鮮なのです。

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
7

『シン・ウルトラマン』で描かれる「人間讃歌」に迫る

『シン・ウルトラマン』は「ウルトラマン」の存在を「理解不能」な存在にすることに特化した作品だ。
彼らは「光の星」に住む宇宙人で、人間よりも高度な存在であることが今作では描かれる。
いわゆる「一個体」として完成された存在というわけだ。つまり「神」にも等しい存在だとも言える。
しかし、この物語で「神」にも等しい「ウルトラマン」は人間に「愛着」を持ってしまう。
人間は、「ウルトラマン」のように「一個体」で完成された存在ではない。
むしろその逆で「集団」で生活し、「群れをなすことでしか生きられない不完全さ」を持っている。

神にも等しい「ウルトラマン」が、なぜ「不完全な人間」を好きになったのか?
『シン・ウルトラマン』はその謎に迫る作劇になっている。
それは、「ウルトラマン」という高度な存在が、どれほど努力しても「人間」を「理解できない」からだ。

なぜ「群れで生きるのか?」「他者を愛するのか?」「傷ついても、他人を愛せるのか?」
高度な存在がどれほど深く理解しようとも、この謎に答えが出せない。
だからこそ、「ウルトラマン」は「人間を好き」になったことを最後に告白する。

これは我々も共感できることだ。
我々も「他人」を完全に「理解」することはできない。
それでも「他人」のことを「好き」になるし「愛する」こともある。

そんな「理解不能」である「人間」の素晴らしさをこの作品は示してくれているのだ。
つまり「人間讃歌」が描かれているとも言える。
この「人間讃歌」の描かれ方が、個人的に大変印象に残る作品であった。

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
8

そうそう、これでいいんだよ

『シン・ゴジラ』のスタッフが描く本格特撮映画です。
主人公は演技派俳優の斎藤工、その彼が所属する怪獣対策チーム禍特対の活躍を描いたストーリーとなっております。
物語の序盤で命を落としてしまう斎藤工演じる神永新二、その体にウルトラマンが宿るのは旧ウルトラマンを観たことがある人にはある種お馴染みの展開です。
怪獣の造詣は素晴らしくザラブ星人やメフィラス星人といったメジャー怪獣との戦いも丁寧に描かれていて好印象。
なによりウルトラマンの細身な造詣が素晴らしくスペシウム光線を撃つ姿は見ていて鳥肌ものです。
全体を通して特撮が本当に好きな人が作ったのだろうなとリスペクトを感じる作品です。
メフィラス星人との居酒屋でのやり取りはいかにも庵野監督ならではの演出でウルトラセブンのメトロン星人とモロボシダンのちゃぶ台越しの会話にも通じるものを感じました。
他にも長澤まさみ演じる浅見弘子が巨大化するシーンも見もので、いかにもウルトラマンならこの演出はアリだなと感じるものでした。
物語のクライマックスでゼットンを倒すために有岡大貴演じる滝明久が地球を救う数式を編み出すシーンは鳥肌ものでした。
その協力もあって見事にゼットンを倒した後のゾフィーとのやり取りを得て地球に帰還した神永を、禍特対のメンバーで迎え入れるシーンにはカタルシスがありました。
一度観ただけでは拾いきれない情報が沢山あるので二度、三度と観たい映画でした。

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
9

日本映画の最高傑作!シン・ウルトラマン

これから日本映画を語る上で、避けることできない映画です。
昭和で再現できなかったことを、令和の技術で完全再現。初代ウルトラマンのことを無知でも問題ありません。ウルトラマンのこと知らなかった人でも十分に楽しめる映画に仕上がっており、高評価を得ています。ウルトラマンファンなら、さらに楽しめて興奮すること間違いなしです。初代ウルトラマンのオマージュ、当時のBGMや効果音が使われており、制作スタッフのウルトラマンへの尊敬を感じられます。本作は、現代に怪獣やウルトラマンが出現したらどうなるか?を見事に描いています。ただの仕切り直されたウルトラマン映画になっていません。ウルトラマンを観ているが、ウルトラマンを観ていることを忘れさせられました。ウルトラマンの文化と新しい要素のバランスが絶妙で、怪獣やウルトラマンのアクションはもちろん、禍特隊の人間関係、社会の影響、政治の反応、など具体的に表現しています。細かい演出やサプライズも多数ある為、1回では全てを把握しにくいかもしれないので、2回ぐらい観ることお勧めします。

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
8

懐かしの初代ウルトラマンが最新技術で蘇った!

庵野秀明製作、樋口真嗣監督による実写映画です。
まずキャストがすごい。主演の斎藤工はあえて表情を抑えた演技に徹し、、東宝の看板女優となった長澤まさみが反対に表情豊かで溌剌とした演技でサポートしている。ドライブ・マイ・カーで主演の西島秀俊も出演しているし、特撮物のリメイク作品という位置づけでは終われない豪華な布陣で作られているところに驚かされる。タイトル映像が50年以上前のオリジナル作品のオマージュというか、ほぼ同じものを現代の技術で美しく描きなおしたもので秀逸。こういうカオスな感じの映像を現代の子供たちはどう感じるのか聞いてみたい気がする。
途中、チームの会話の中で、様々な考証が矢継ぎ早に語られていくあたり、庵野秀明の真骨頂とも言える。こういう場面がかなり長く専門的な話が多いので、観客のほとんどは取り残されていると思われるのだが、スピード感のある映像とエピソードの連続の中に紛れ込ませてあるのでBGM的に流すことができてしまう。非常に巧い造りだと思う。
後半になってウルトラマンが登場するカットが何度か登場するのだが、それもオリジナル版をそのままに模写していて、当時テレビで観ていた世代にとっては懐かしさに声が漏れてしまうような場面になっている。テレビシリーズ最終回に登場する宿敵ゼットンがオリジナルより巨大に更に強靭無敵で容赦ない存在として描かれている。
また、光の国からの使者として登場するゾフィの語りから、彼らはあくまでも中立的で、最初から地球や人間の味方ではないという内容がはっきりとする。しかしこれはとても重要な事で、宇宙的な存在からすれば大宇宙の中のひとつの惑星とそこに住む知的生命体は取るに足らないもので、将来的に自分たちに害を為す可能性があるなら簡単に排除するというのはとても理に適った考えなのだ。地球に住み、地球人に興味をもったウルトラマンだけがこの星に感情移入して守ろうとする。そういうことをはっきりと描くことで空想のおとぎ話にリアリティを持たせる手腕はさすがの一言に尽きる。
エンドロールを観ても、庵野秀明の名前があらゆる役割の中に登場する。題字のデザインまで彼が描いているようで、隅々まで彼の目が行き届いているからこそこういう作品が出来上がるのだろう。
蛇足ながら、エヴァンゲリオン風の顔を斜め上方向から撮影するカットも登場するし、ウルトラマンのファンだけでなく、庵野マニアにも受け入れられる作品だろう。

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
8

新しい特撮映画

『シン・ウルトラマン』は特撮映画に興味がない、見たことない映画ファンにこそ、ぜひ見てほしい。
筆者は『シン・ゴジラ』が大変好きで、庵野監督のその他の作品も好きである。
今回も庵野監督だから見に行ったのが正直で動機であり、特撮映画自体はまったくと言っていいほど興味がなかった。
特撮は、背景やジオラマが嘘に見えてしまい、そればかりに目が行き、話そのものになかなか意識を向けれない点が苦手な理由であった。
しかし、映画のはじめからジオラマ全開でありにも関わらず映画の没入感がすごく、違和感なく楽しめた。
特撮のセットに気合を入れていたというのもあるだろうが、一番はテンポの良いシーンの編集と庵野監督らしいアングルカットである。
その代表的なシーンの1つに怪獣視点でウルトラマンを追い詰めるシーンがある。
これはかなり印象的である。怪獣とウルトラマンと2つの対比を延々と見せる単調になりがちなバトルシーンがとても迫力のあるシーンになっており、かなり好感をもてた。
またストーリーの展開とあわせてカット数もかなり多く、邦画にありがちなダラダラ感はまったく感じさせずテンポよくストーリーが進むのもかなり好感を持てた。
特撮映画が苦手という方は、ぜひ『シン・ウルトラマン』で新しい特撮映画を体験してほしい。