シン・ウルトラマン / Shin Ultraman

シン・ウルトラマン / Shin Ultraman

『シン・ウルトラマン』とは、脚本・庵野秀明、監督・樋口真嗣による、人類のために戦う異星人ウルトラマンと、その周囲の人々の活躍を描いた映画作品。日本を代表するクリエイターによる伝説的な特撮作品のリブートということで、公開前から大きな話題となった。
突如日本に出現し始めた巨大生物、禍威獣。その脅威に対抗するため結成された禍特隊の前に、銀色の巨人が現れる。ウルトラマンと名付けられたその巨人は禍威獣から人々を守るように振る舞い、禍特隊がその謎を追う一方、地球にはかつてない危機が迫っていた。

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シン・ウルトラマン / Shin Ultraman
8

懐かしの初代ウルトラマンが最新技術で蘇った!

庵野秀明製作、樋口真嗣監督による実写映画です。
まずキャストがすごい。主演の斎藤工はあえて表情を抑えた演技に徹し、、東宝の看板女優となった長澤まさみが反対に表情豊かで溌剌とした演技でサポートしている。ドライブ・マイ・カーで主演の西島秀俊も出演しているし、特撮物のリメイク作品という位置づけでは終われない豪華な布陣で作られているところに驚かされる。タイトル映像が50年以上前のオリジナル作品のオマージュというか、ほぼ同じものを現代の技術で美しく描きなおしたもので秀逸。こういうカオスな感じの映像を現代の子供たちはどう感じるのか聞いてみたい気がする。
途中、チームの会話の中で、様々な考証が矢継ぎ早に語られていくあたり、庵野秀明の真骨頂とも言える。こういう場面がかなり長く専門的な話が多いので、観客のほとんどは取り残されていると思われるのだが、スピード感のある映像とエピソードの連続の中に紛れ込ませてあるのでBGM的に流すことができてしまう。非常に巧い造りだと思う。
後半になってウルトラマンが登場するカットが何度か登場するのだが、それもオリジナル版をそのままに模写していて、当時テレビで観ていた世代にとっては懐かしさに声が漏れてしまうような場面になっている。テレビシリーズ最終回に登場する宿敵ゼットンがオリジナルより巨大に更に強靭無敵で容赦ない存在として描かれている。
また、光の国からの使者として登場するゾフィの語りから、彼らはあくまでも中立的で、最初から地球や人間の味方ではないという内容がはっきりとする。しかしこれはとても重要な事で、宇宙的な存在からすれば大宇宙の中のひとつの惑星とそこに住む知的生命体は取るに足らないもので、将来的に自分たちに害を為す可能性があるなら簡単に排除するというのはとても理に適った考えなのだ。地球に住み、地球人に興味をもったウルトラマンだけがこの星に感情移入して守ろうとする。そういうことをはっきりと描くことで空想のおとぎ話にリアリティを持たせる手腕はさすがの一言に尽きる。
エンドロールを観ても、庵野秀明の名前があらゆる役割の中に登場する。題字のデザインまで彼が描いているようで、隅々まで彼の目が行き届いているからこそこういう作品が出来上がるのだろう。
蛇足ながら、エヴァンゲリオン風の顔を斜め上方向から撮影するカットも登場するし、ウルトラマンのファンだけでなく、庵野マニアにも受け入れられる作品だろう。