ジョーカー・ゲーム(ジョカゲ・Joker Game)のネタバレ解説・考察まとめ

『ジョーカー・ゲーム』とは、柳広司による日本の短編ミステリー・スパイ小説および、それを原作とした漫画、アニメ作品である。「D機関シリーズ」と呼ばれている。2016年4月から6月までAT-X、TOKYO MX他にて放送された。第二次世界大戦前の帝国陸軍内に結城中佐によって、秘密裏に設立されたスパイ養成部門「D機関」。アニメでは、そのD機関員たちが世界で暗躍する全12話のストーリーが描かれている。

D機関のモデル「陸軍中野学校」

諜報・謀略ができる人材を育てるために昭和13(1938)年に設立された。敗戦までの7年間、2000余名の卒業生を輩出したが、全貌は未だ不明な部分も多い。校名の中野は実際に中野区にあったためである。陸軍士官学校出身者は軍人精神を叩き込まれた軍人は民間に潜り込んだ際にばれる可能性が高いという理由で採用されず、下士官、一般兵士、予備士官学校の生徒から選抜されていた。校風は当時としては自由であり、軍服を着ることは禁止され平服、長髪でいることが推奨された。また家族にはスパイとして教育を受けている以上のことをいうことはできなかった。
「功は語らず、語られず」が諜報活動をするものの鉄則であると説き、自分たちが命を捧げるのは政府、軍、天皇ではなく日本民族のためであるという精神を涵養した。そのため卒業生の中には一般人となって敵地に溶け込みながら諜報活動を行うものの、人知れず敵地で亡くなり民間人扱いになっている人も少なくない。

陸軍中野学校が設立された背景

斎藤充功『陸軍中野学校』(平凡社 2006年)によると、満州国のグランド・デザインを引いた石原莞爾は1935年、陸軍参謀本部第一部作戦課長として着任する。石原は「我が陸海軍には作戦計画はあるものの、戦争計画はない。速やかに戦争計画を策定し、国防大綱を制定する」必要があると主張した。そして1936年に起きた二・二六事件を契機に、参謀本部の改編作業に着手した。その改編作業において、石原は日本とソ連の関係を重視し、ソ連担当部門を第6課(欧米課)から分離・独立させ、新たに第5課(ロシア課)を新設して対ソ情報収集の強化をする。石原による組織改革ではのち「後方勤務要員養成所」所長となる秋草俊中佐が第5課第5班長(文書諜報班)に就任した。
一方、軍政を担当する陸軍省では、1936年7月に兵務局が新設され、同年12月から「防共」に関する業務を行うことになった。そして3年後1月には防衛課が新設されて、この課で防共業務を担当することになる。防衛課が新設されると、外諜防衛を進めるため「防諜」(カウンター・インテリジェンス)という言葉が使われるようになる。1936年9月、兵務局初代局長である阿南惟幾は国際情勢に即応して「科学的防諜機関」を至急設立する必要があるので、極秘裏に防諜機関の設立を準備するよう、田中新一、岩畔豪雄、福本亀治、秋草俊の四人に対して科学的防諜機関設立を企画させる。この企画の中心となったのが岩畔と福本であり、二人は陸軍軍医学校と衛戌病院の敷地の一画(現在の新宿区戸山一、二丁目)に設立し、兵務局分室として陸軍大臣直轄の軍事資料部の極秘機関(通称「ヤマ機関」)となり、国内防諜の要になっていく。それとは別に翌1938年1月、後方勤務要員養成所が阿南兵務局長の指示のもと、秋草、岩畔、福本によって兵務局内に設置される。この後方勤務要員養成所こそが陸軍中野学校の原型であった。

陸軍中野学校のカリキュラム

D機関のモデルと言われている陸軍中野学校のカリキュラムだが先述の斎藤充功『陸軍中野学校』(平凡社 2006年)によると、一般教養基礎学(国体学、思想学、統計学、心理学、戦争論、日本戦争論、兵器学、交通学、築城学、気象学、航空学、海事学、薬物学)、外国事情(ソ連、イタリア、ドイツ、英国、米国、フランス、中国、南方地域の軍事、戦略、兵用地誌)、語学(英語、ロシア語、中国語)、専門学科(諜報勤務、謀略勤務、防諜勤務、宣伝勤務、経済謀略、秘密通信法、防諜技術、秘密兵器、暗号解読)、実科(秘密通信、写真術、変装術、開緘術、開錠術、自動車運転、航空機操縦、剣道、合気道)、特別講義(忍法、犯罪操作、法医学、回教事情、ポーランド事情、トルコ事情)があったという。
任地において情報を得るために非合法に外国公館や軍事施設、あるいは目をつけた会社などに潜入して金庫を開けることがある。伝授をしたのはベテランの「錠前師」であり、本職は泥棒だという。中野学校教官には現役の陸士や陸大教官、軍医学校教官、兵器行政本部技官、憲兵学校教官、経理学校教官、自動車学校教官、通信学校教官、陸軍省、参謀本部の将校などが派遣されていた。

アニメカバーバージョンの原作小説が発売

柳広司が発表している原作小説シリーズには、『ジョーカー・ゲーム』とその続編『ダブル・ジョーカー』『パラダイス・ロスト』『ラスト・ワルツ』の既刊4巻がある。
2016年のアニメ化に伴い、通常仕様とは異なるアニメカバーバージョンが発売された。

『ジョーカー・ゲーム』の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):QUADRANGLE「REASON TRIANGLE」

作詞・作曲:HIDEO NEKOTA/編曲:QUADRANGLE

ED(エンディング):MAGIC OF LiFE「DOUBLE」

「ジョーカー・ゲーム」ED「DOUBLE」MAGIC OF LiFE(Fuli)

作詞・作曲:高津戸信幸/編曲:MAGIC OF LiFE、宮井英俊

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