木島日記(漫画・小説)のネタバレ解説・考察まとめ

『木島日記』とは大塚英志原作、森美夏画による漫画及び大塚による小説である。漫画は1998年5月号から2003年まで連載され、単行本は4巻まで刊行された。漫画では未完であったが、2017年に小説『もどき開口 木島日記完結編』が刊行され、小説の形で物語は完結した。同原作者及び漫画家による三部作の第二部にあたり、第一部として『北神伝綺』、第三部として『八雲百怪』がある。仮面の男の書店店主・木島平八郎が主人公のオカルト伝奇ミステリーで、昭和初頭の複雑怪奇な世相がその魅力である。

『木島日記』の概要

『木島日記』とは大塚英志原作、森美夏画による漫画及び大塚による小説である。漫画は1998年5月号から『エースダッシュ』にて連載がスタート。『月刊エースネクスト』、『エース特濃』vol.1と掲載誌を変えながら2003年まで連載された。漫画のストーリーは未完のまま連載が終了されたが、2017年に小説『木島日記 もどき開口』が刊行され、小説により補完する形で物語は完結した。漫画は単行本で2003年までに4巻刊行されたが、2009年に再編され上中下の3巻に変わり刊行された。民俗学者・折口信夫(おりくちしのぶ)と仮面の仕分け屋・木島平八郎(きじまへいはちろう)が主人公のオカルト伝奇ミステリーで、昭和初頭の独特で複雑怪奇な様相が描き出され、多くの人々を魅了している。
原作者の大塚によると、本作は大塚著作の「偽史三部作」の第二部であるとされている。第一部として柳田国男(やなぎだくにお)が主人公の『北神伝綺』、第三部として小泉八雲(こいずみやくも)が主人公の『八雲百怪』があり、いずれも「誰もが知っている著名な民俗学者」と「キテレツなギミックを持つ探偵役」からなるバディの探偵もののシリーズだ。シリーズ全て実在の人物と同名の人物や名称が登場するが、作中においてはあくまで虚構である。

『木島日記』のあらすじ・ストーリー

折口と木島

民俗学者・折口信夫(おりくちしのぶ)は道に迷い古書店八坂堂を見つける。古書が棚を埋める中、まだ書きかけのはずの自身の論文の本が置かれていた。不審に思った折口だったが、店主の木島平八郎(きじまへいはちろう)に勧められ、その本を読む。中に描かれていたのは木島平八郎の過去だった。
それをきっかけに折口は、木島の周辺で起こる奇妙な事件に巻き込まれていく。木島は「組織」と呼ばれる団体の命令でこの世にあってはならないものとそうでないものを仕分け、あってはならないものを始末する「仕分け屋」だった。人魚や巨人、ムー大陸やUFOなど、様々なこの世ならざるものの話が集まってくる。陸軍、海軍、ナチス、ジプシーなど様々な人や組織が入り混じり、昭和初頭の異様な様相を作り上げていく。

美蘭の登場編

折口との出会い

八坂堂を訪れた折口が急に現れた謎の男から手渡されたのは、美蘭(メイファン)と名乗る少女だった。「あなたのお役に立ちます」と語る彼女は人間の心を読み取る力を持っていた。正体は東方協会が連れてきたシャーマンの少女で、機関の人間が木島と間違え、折口に預けてしまったのだ。女性が苦手な折口だったが何故か彼女に心を惹かれていく。それに呼応するように美蘭も折口を慕い、義理の娘となる。
アーヴィング博士による人間コンピューターの実験のために満州から連れて来られた美蘭は、真空管となった子どもたちの思考を束ねる集積回路の役割を担うが、クライアントである日本の意にそぐわず失敗。その後も日本に残り続けることとなる。
身寄りの無かった美蘭は陸軍中尉の一ツ橋と結婚し、日本に定着することとなるが、木島やアーヴィング博士の手により様々な事件に巻き込まれていく。

偽天皇

ある集落に本物の天皇家が存在し、伝説のクサナギの剣が祀られているという噂を聞いたアーヴィング博士に、その真贋を見極めさせるために駆り出された美蘭。しかし、実際行ってみると天皇と呼ばれる怪しげな少年といかがわしい宗教組織が存在するだけで、居合わせた木島や折口も訝しがった。しかし、アーヴィング博士が美蘭と天皇と呼ばれる少年との結婚をエサに神官に剣のことを尋ねると、今度は地下の秘密の祭事場へ案内される。そこで、元軍人の神官たちが少年ではない本物の天皇に呪いをかけている現場に遭遇する。祀られていたのは、アーヴィング博士が探し求めていたロンギヌスの槍だった。槍は奪い合いとなり、天皇と呼ばれる少年が命を落としてしまうが、結局木島にニセモノだと仕分けられ破壊されてしまう。折口があることに気づく。神官たちがかけていた呪いは天皇に向けられているものだった。そして天皇と呼ばれる少年が死んだ。少年は本物の天皇だったのかもしれない。

安江大佐の暗躍編

ヒトラーの産湯

陸軍でナチスとの交渉を専門にする安江仙弘(やすえのりまさ)は瀬条機関やナチスを渡り歩き、持ち前の強引で突飛な手段により戦時下の日本を暗躍していた。同性愛者のドイツ人、ミハエル・ヘーガーが木島のもとへ持ち込んだものはアドルフ・ヒトラーの産湯だった。ミハエルの持つジプシーのハーブを使えば水の記憶を再生することができ、産湯からアドルフ・ヒトラーの出自を暴くことができる。日本に自分のような同性愛者やジプシーをナチスの手から守ってもらえるよう、木島に仕分けを持ち込んだのだ。それに目を付けた安江は、産湯をナチスとの交渉のための手札にすべく手に入れようとする。実際に記憶を再生してみると、産湯はアドルフ・ヒトラーの父、アロイス・ヒトラーのものだった。しかし、手札としては十分な効果があった。ナチスのハインリヒ・ヒムラーが交渉の場に現れたのだ。
結局、東方協会がジプシーのハーブを科学的に合成していたため、それを手に入れたナチスとの交渉は決裂。ミハエルは強制送還されることとなった。それぞれが成果を得られない中、安江だけが「河豚計画」の前進を実感していた。

神隠し

巷では子どもの失踪が相次ぎ、神隠しと騒がれていた。折口と美蘭は偶然親子心中の現場に居合わせる。母親だけが死に、子はその場に取り残されていた。そこへ瀬条機関の研究員・土玉(どたま)が研究のため現れるが、折口と土玉が話している途中、その子どもが石塔に吸い込まれるように消えていった。一同、神隠しを目の当たりにして驚く。一緒に調べに行こうという土玉を断ろうとしていた折口だったが、メイファンまでも石塔の中に消えてしまい、しょうがなく付き合うことにする。行く先に検討はついていた。石塔に安江仙弘と書かれていたからだ。
安江大佐のもとに辿り着くと、そこにいたのは瀬条機関の信仰物理学者・日下四郎(くさかしろう)博士だった。博士は石の持つ力を利用し、石塔を介して子どもを別の場所に転送する装置を研究していた。ちょうど身寄りのない子どもたちを集めて満州へ転送する実験を行うところだった。しかし、転送を始める間際に安江と口論となる。結局、安江大佐の「転送装置を発展させ軍人の大量移送をしたい」とゆう目論見がバレてしまい、日下博士と仲違いになる。瀬条機関への陸軍からの支援は中止。実験も中止をせざるを得なくなる。ただ、日下博士は諦めず、装置を発展させ、かぐや姫や桃太郎のように子のない老人に子どもを送り届ける装置を作ることを発案。また、前向きに研究に取り組むことになった。
一方、実験の中止を知らされず子どもが転送されるのを満州で待っていた木島は、中々子どもが転送されてこないため、転送のための石塔をあるべきではないものとして仕分け、破壊した。

フーファイターズ編

戦時下の日本では空を飛ぶ謎の戦闘機「フーファイターズ」の話題で持ちきりになっていた。ナチスの新兵器だと噂されていたが、実際その情報は日本政府が隠していた情報だった。石原莞爾(いしはらかんじ)の部下で陸軍の辻(つじ)少佐がロシアの革命家トロツキーを通じ、その設計図を手に入れたのだ。兵器はナチスが開発したもので、本当の名を「V7」と呼ぶ。陸軍はV7を戦争の切り札としようとしていた。
一方、木島のもとにヴリル協会の地政学者でヒトラーの右腕だったカール・ハウスホッファーが現れる。彼は辻少佐とは全く別のルートでV7の設計図を入手し、日本に持ち込んでいた。それを仕分けしてほしい、と木島に持ち込んだのだ。カール・ハウスホッファーが瀬条機関の前身である緑竜会の創設メンバーであると知り、木島は仕分けを受ける。
辻の持つ設計図の審議を確かめるため、木島はトロツキーに扮したスパイMを彼のもとへ送り込む。すると、トロツキーと面識がないことが明らかになり、早々に辻の嘘はバレてしまう。これで木島に持ち込まれた設計図の信憑性が高まったが、瀬条機関の長・瀬条景鏡(せじょうかげあきら)博士にこれを見せたところ、「これは飛ばない」と断言されてしまう。
日本のV7獲得は潰えてしまったがまだその思惑は残り続け、カール・ハウスホッファーを探す軍人たちが度々八坂堂を襲撃する。その熱は一般の人々まで伝播し、フーファイターズに群衆が熱狂していく。遂にそれを呼び寄せると宣う男が現れる。フーファイターズこと空飛ぶ円盤は実は火星人の乗り物で、地球代表の自分が神宮球場へ呼び寄せるとラジオで公言した。日本中が熱狂し、陸軍だけでなく海軍までも神宮球場へ訪れる。そして、遂に空飛ぶ円盤が人々の眼前に現れる。しかし、それは円盤ではなくヘリコプターであった。瀬条機関が計画した最新式ヘリコプターのデモンストレーションだったのだ。これにより瀬条機関はナチスを含む他国を牽制することに成功した。一方、V7の設計図を持ったまま日本を出国したカール・ハウスホッファーは、それを海に沈める。もとあった場所Mu大陸へと届くように。

『木島日記』の登場人物・キャラクター

主要人物

木島 平八郎(きじまへいはちろう)

本作品の主人公。常に仮面を被っている。以前は研究員として科学者組織「瀬条機関」に所属していたが、そこで実験体であった女性・月と出会う。木島は彼女に心惹かれていくが、彼女は自殺してしまう。死を受け入れられない木島は月の死体を使って「死人返り」の実験を行うものの失敗、月の死体は爆発し、飛び散った肉片が顔にへばりついて離れなくなる。木島が仮面を被っているのは、この肉片を保護するため。事件後、大学を離れ、偽書専門の古書店「八坂堂」を開くが、組織との繋がりは続いており、「組織」の研究や実験の結果発生したものを、この世に「あってはならないもの」とそうでないものに「仕分け」する「仕分け屋」をしている。
木島のビジュアルについて著者の大塚は、角川映画の中での佐清の怪し気なゴムマスクに触発されて、佐清が探偵の方がおもしろいと考えたのが発端だとしている。

折口 信夫(おりくちしのぶ)

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