ブレーメンII(Bremen II)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブレーメンII』とは、白泉社の『PUTAO』にて1998年に連載を開始した川原泉によるSF漫画。遺伝子工学によって進化した「ブレーメン」と呼ばれる動物たちと宇宙を股に掛けた航海に出る大型輸送船「ブレーメンII」だったが、行く先々でトラブルに巻き込まれる。ほのぼの、まったりとした絵柄とは裏腹の、哲学的かつ計算されつくしたストーリー。深いのに重くなりすぎないSF漫画である。「人間並みの知性を持った動物とお仕事」というある種メルヘンチックな題材の裏にある深いストーリーが魅力。

機関長を務める心優しいヒグマ。部下にシロクマのニュート機関士がいる。

ピピン

ブタの通信士。

その他

エルンスト・ヘルツォーク

複数の博士号を持つ完全主義者。天才的頭脳を持ちながら、精神がその頭脳に追いついていないという「幼稚な天才」。周囲を見下す。
麻薬の類やナノマシンを開発。自分を慕うカインの肉体を取り込むなどするが、シャキールの方に興味を抱き、「もう黒ヤギはいらない」と言い放った。
カイン曰く「見たいものしか見えず、聞きたいことしか聞こえない」性分。徐々に怪物のような容姿(ブレーメン曰く「変な顔」)となり、最終的にはナノマシンの暴走で死亡。

カイン

アベルとはクローンにして双子、しかし黒ヤギである。学問肌のアベルと違い、スポーツマン型。アベルは彼の思考を読み取れるが、カインにその能力はなく「訳の分からないことを言っている」と見下した態度をとっていた。ヘルツォーク博士を慕い、それが為利用された挙句「いらない」とされ初めて己の立場を悟る。シャキールの相棒、アレンにヘルツォークの開発していた新たな凶薬「天国の門」に関する知識を与え、消滅した。

シャキール

ブレーメン第一期生のシベリアン・タイガー。ブレーメン仲間から「伝説」として尊敬される連邦捜査官。なまじ第一期生として偏見の目、風当たりは強かったようだ。「虎と組むより新人の方がまし」と、相棒が見つからないためにずっと内勤状態が続いた過去がある。シャキール氏が潜入捜査中の相棒(人間)と合流すべくブレーメンIIに乗船した際、キラ船長に対しても少しそっけなく、四角四面な態度だった。
それでも相棒、アレン捜査官のおかげで一人前の捜査官となることができ、色々救われたよう。彼が亡くなった際落ち込んでいたが、「お前はもう大丈夫」との言葉が多少の励みになったのか、回復後は少し性格が丸くなった。

ポー

黒ネコのブレーメン。同じ単語を繰り返すように喋るのが特徴。惑星ハッブルにあるグレイソン・ファームのハッブル茸栽培場で働いていた。
辺境ともいえる星になると「餌」と称した食事を恩着せがましく渡す、名前で呼ばない、遂には所有しているだけで罪となる電撃鞭を使用しての「お仕置き」を加えるなどの「人権無視」的な扱いが横行。実際ブレーメンの法的権利はしっかりとした規定が作られておらず、虐待を受けても訴えようがない状態だった。
耐え切れなくなったブレーメン達は、ポーに博士に虐待の事実を訴えることを託した。ポーは従順な性格のブレーメンだが人間不信となっており、人間の乗組員であるキラ船長、ナッシュとは口を利かず、ブレーメンの乗組員としか話をしない状態。ブレーメンと長く接し彼らを「仲間」として見るキラ船長たちはポーと食事をした。一流レストラン並みのカッシーニでの食事や、懐柔目的ではない、真の温かい言葉にようやくポーも心を開き、虐待の真相を話した。

『ブレーメンII』(Bremen II)の用語

ブレーメンII

劇中の主な舞台。大企業スカイ・アイ社所有の宇宙船で、全長1.6キロ、最大全幅1.12キロ。宇宙船ながら内部に公園、農園がある他「カッシーニ」と呼ばれるセルフ・サービスの食堂に至るまで中々に快適な職場である。このブレーメンII、並びに船員たちが、立ち寄った星や航路であらゆる人助けに尽力することとなる。

『ブレーメンII』(Bremen II)の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ほのぼのに隠されたブレーメン達の境遇・偏見

キラ船長は、宇宙に飛び立ってすぐ船内を案内してもらうことになる。案内係、カエルのマエダは「こんな一流企業に就職できて嬉しい」と語り、各々が不平不満を言わず、楽し気に自分の仕事に従事している。皆「動物」ではあるが極めて優秀。副長であるゴリラのダンテはキラ船長が船内探索中、いきなり「全権を任せられた」ことで「信頼されている」と感涙。航中図師のウサギのシルビアは「自分の計算結果を疑いもされなかった」こと、航宙士を務めるクロヒョウのオスカーは「航行技術を褒められた」ことをそれぞれ喜ぶのだ。
それは単純な理由からではなかった。シルビアは先のセリフの直前、「ウサギだからという理由で、よく計算結果を疑われる」と口にしていたのだ。
マエダの話からキラ船長は悟った。ほとんどのブレーメン達は、鉱山採掘など「人がやりたがらない仕事」に、就職の名のもと追いやられる「体のいい労働力」なのだ。
「動物」に対する偏見もあり、衛生面を理由に飲食店への出入りができない事態も起こる。爽やかな星で突き付けられた現実。ほのぼのした印象の中、徐々にブレーメンを取り巻く闇も明るみになっていく。

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