
『WAHHAMAN(ワッハマン)』とは、漫画雑誌『モーニングパーティ増刊』『月刊アフタヌーン』で連載されていたあさりよしとおの漫画作品である。1万年前のアトランティス文明の生き残りである骸骨のような顔をしたワッハマン。宿敵・パパを倒す宿命を背負いながらも、現代では浮草のような暮らしをしていた。一見とぼけたような作風とは裏腹に、シリアスで救いのない物語が特徴の作品である。
「パパ」が送り込んだ三体目の対ワッハマン用アンドロイド。しかし、ワッハマンを殺すという目的のみで、イシュタルはおろか、自分を送り込んだパパのことさえ知らなかった。人間形態は10代後半くらいの女性。登場時、変身するため全裸になる、服を着たまま変身しても服が破れるので変身が解けたらやっぱり全裸状態になるなどするが、お色気担当というよりもルミに誤解させるための要素に思われる。レミィと同じく羞恥心がないらしく、男性陣の中でも下着を着けず平気でうろうろするが、「分室」メンバーは皆彼女の正体を知っているため見ないようにしたり「パンツくらい履け」と注意している。人間バージョンだと北海道弁を使用。自己修復能力を持ち、戦闘で負傷する度欠点を補うがごとくパワーアップするため、「なら一気に強くなろう」と空から落下。粉砕状態になるが強くはなれず。実はオシリスというのもデータ収集用の存在で、イシスという別人格が存在。精神部分の大半を司るイシスが砕け散ったと同時にオシリスは記憶しかない状態になる。
ゲルダと合体後は、相変わらず北海道弁で話すが、焦点のあっていない、精神がうまく合致していない状態だった。当初はワッハマンと会わせたらどんな反応をするか分からないと言われていた。戦闘の際ワッハマンと会うものの、記憶こそ強烈に残っていても感情が伴わず。インガーにより内部に複数の武器を隠し持つが、主にニードルガンを使用。イシュタルの襲撃で、インガー共々爆死。
プロトタイプ・レミィ
月から帰還したレミィが中国の飛行機(国内線)にしがみつき、中国から出られず途方に暮れていた時に出会った少女。その名の通り、レミィのプロトタイプ。顔つき自体は同じだが黒髪。そしてボディはメカが露出した、ロボット然りとした姿。レミィ同様、パパを慕う気持ちから量産型のアンドロイドと同じ扱いであることに不満を抱き、命令に逆らってまでレミィと交戦。本物のレミィになると言い、無関係の人間を巻き込みながら攻撃するが、ハンババ状態に変形する前のレミィに殴り飛ばされそれきり姿を消した。戦闘の後、レミィは姉と呼べるプロトタイプに、「どっちが本物でもよかったじゃないか」と独り立ちした。
綾重(あやしげ)
最初にワッハマンを拾った造形屋の女性。特撮の着ぐるみなどを作っており、「ガイコツが一番人間の美しい形態、ワッハマンが理想のタイプ」と語るなど、可愛らしい顔立ちながら少々変わった感覚の持ち主。ワッハマンのことは「コッ君」と呼んでいた。少々変わっていてもプロの造形屋であり、ワッハマンに食事の補助用と思われるマスクを作ったりもした。しかし、挑発の為、危険溶剤による事故に見せかけ殺される。
『ワッハマン』の用語
アトランティス
ワッハマンのベースとなる男性のいた国であり、パパより滅ぼされた国。
オリハルコン
エネルギーを禁賊に凝縮した物。オリハルコン同士でしか傷を与えられないもので、ワッハマンを不死身たらしめているものでもある。ただ、飽くまで不死身なのは肉体のみで、精神が耐えられないこともある模様。
防衛庁技術本部第四研究所特別分室
ワッハマンを監視し、調査をするため作られたもの。正式名称は防衛庁技術本部第四研究所特別分室。通称「分室」。見た目は廃工場。長沼曰く「諜報員としての自覚の名居場所」で、自衛隊の秘密基地として近所の小学生にすら隠れ蓑になっていない状況。
『ワッハマン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
「死ねない」ということ

役目を果たしても死ねない。
戦闘モードのワッハマンははっきり言って「最強」クラス。何せ「傷を負わない、死なない体」を持っている上「オリハルコン」はエネルギーの凝縮体。その気になれば戦闘用の刺客アンドロイドだって戦闘不能に追い込める。
しかしコメディタッチだった序盤から描かれていた「不死身、不滅の肉体」というもの、意外に厄介である。むしろ、人間の精神では異常をきたすのではないかと思わせるものでもある。
とある別作品の話だが、不死を手に入れた男が大喜びで「これからどうするか」を計画するというものがある。最初の100年は思い切り遊んで、次の100年は思い切り勉強する。その次の100年は、勉強したことを生かす。いい人生設計だが、300年でやることが尽きてしまうのだ。
他作品からも「死ねない」ことについて考える・『火の鳥』編

『火の鳥』より、平清盛1000歳。
手塚治虫の『火の鳥』でも「死なない体」にされた主人公が登場する。『未来編』の山之辺マサトと、『乱世編』の平清盛だ。マサトも清盛も、「死ねない」ことに絶望することは共通している。話し相手もいない、地獄のような場所でたった一人で生き残らされたら、不死身だと喜んでいられない。
【平清盛】
『乱世編』に登場。一族の先行きを案じ、火焔鳥を他国から取り寄せる(ただの鳥だった模様)。不死身になった場合のシミュレーションのような夢を見せられるが、500年後には自分と同じ顔をした子孫ばかり、1000年後には記憶が溜まり過ぎ発狂するため5分ごとに記憶喪失装置にかけられる身になっていた。太陽が巨大化したのか、何もかもが解けた状態でもまだ死ねず、シリーズを通して登場する超常的存在、火の鳥から「お前は死ねない」と言われ絶望する。実際には史実通り、高熱の果てに死去。
【山野辺マサト】
『未来編』に登場。地下で暮らす五つの国がコンピュータに政治を任せたため、核戦争で滅亡。世捨て人的に暮らしてた猿田博士の下に逃げ込んでいたため難を逃れるも、火の鳥により望まずして、ただ一人不死にされる。
他作品からも「死ねない」ことについて考える・『宇宙クリケット』編
『銀河ヒッチハイクガイド』というシリーズ小説の第三弾に、全くのわき役で「不死身になってしまった男」が登場する。初めは喜んだものの、次第に「不死であること」に不満を抱き、生きがいを求めるようになる。そして、極めて高度な計算能力を持った宇宙船により、「アルファベット順に知的生物(個人)を馬鹿にする」ということを生きがいにするようになる。何でもいいから「やること」がほしかったのだろう。
死ねないワッハマンに対し周囲の人物が死亡

第一話より。
死なないワッハマンに対して、他の劇中人物は「死にかける」、もしくは「死亡する」。初期はギャグタッチで、終盤近くは「挑発のため殺される」というシリアスな形。初期に登場したチョイキャラまでも遺影で再登場、というのはワッハマンにとっていろいろな意味でショックだったのではないだろうか。
ドクロ顔の彼のほうがよほど死を連想させるのに、死んでいくのは親しくなった人たちだけ。最終的な孤独を恐れて、「思い出せないのではなく思い出したくないだけ」と指摘もされていた。しかし、それも過去「守れず殺された人々」のこともすべて思い出して、受け入れて立ち向かうことになる。そうするしかなかったのだから。
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目次 - Contents
- 『ワッハマン』の概要
- 『ワッハマン』のあらすじ・ストーリー
- 1万年前のアトランティス文明の生き残り
- 記憶を失い浮草のように生きるワッハマン
- 宿敵との戦いに挑むワッハマン
- 『ワッハマン』の登場人物・キャラクター
- 主な登場人物
- ワッハマン
- パパ
- レミィ(ハンババ)
- 長沼内規(ながぬま ないき)
- 竹村(たけむら)
- 梅田甲三(うめだ こうぞう)
- 鮫洲(さめず)
- DNAコピー人間
- インガー・W・C・ミュンヒハウゼン
- ゲルダ
- 破戒僧(謎の怪僧)
- 拳法の達人女
- クジラ
- 石田ルミ(いしだ るみ)
- イシュタル
- オシリス
- プロトタイプ・レミィ
- 綾重(あやしげ)
- 『ワッハマン』の用語
- アトランティス
- オリハルコン
- 防衛庁技術本部第四研究所特別分室
- 『ワッハマン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 「死ねない」ということ
- 他作品からも「死ねない」ことについて考える・『火の鳥』編
- 他作品からも「死ねない」ことについて考える・『宇宙クリケット』編
- 死ねないワッハマンに対し周囲の人物が死亡