宇宙家族カールビンソン(あさりよしとお)のネタバレ解説・考察まとめ

『宇宙家族カールビンソン』とは、1983年より連載されていたあさりよしとおのSF漫画作品である。『プチアップル・パイ』『月刊少年キャプテン』『アフタヌーン』で掲載され、それぞれ1から連載を行ったため、3つの世界観に分かれている。SFコメディドラマ作品のタイトルをもじった題名に、「昭和」を感じさせるパロディ。基本はギャグで笑えるのに、しっかりと重さもある作品となっている。

『宇宙家族カールビンソン』の概要

『宇宙家族カールビンソン』とは、1983年より連載されていたあさりよしとおのSF漫画作品である。1988年にはOVA化もされている。本作は徳間書店の『プチアップル・パイ』、徳間書店・講談社の『月刊少年キャプテン』、講談社の『アフタヌーン』の3誌で掲載され、それぞれ1から連載を行ったため、3つの世界観に分かれている。通常は、もっとも長期にわたって連載された少年キャプテン版の『宇宙家族カールビンソン』を指す。なお、プチアップル・パイ版の連載中に少年キャプテン版の連載が始まり平行連載されていたが、同名作品にもかかわらず設定が異なるため、プチアップル・パイ版は途中からタイトルに「元祖」と記載されるようになった。
アメリカのSFコメディドラマ作品『宇宙家族ロビンソン』のタイトルをもじった題名に、「昭和」を感じさせるパロディ。基本はギャグで笑えるのに、しっかりと重さもある作品となっている。
登場人物の中には異形の宇宙人、凄まじい設定を持つ宇宙人も多くいるが、「地球の文化」をあっさり受け入れる度量や主人公のコロナに対する責任が愛情へと変わっていく様子が愛おしい作品。万人受けするかはともかく、一読の価値がある。

宇宙暦昭和47年。異星人の旅一座の宇宙船が、未知船と衝突事故を起こした。惑星アニカに墜落した未知船の救助に向かう旅一座だが、生き残っていたのは赤ん坊ただひとりだった。彼らは赤ん坊の母星からの救助が来るまでアニカに留まり、未知船に代わって遭難信号を発しながら、家族を演じて赤ん坊の成長を見守るのだった。

『宇宙家族カールビンソン』のあらすじ・ストーリー

少年キャプテン版

出典: ameblo.jp

宇宙を股にかける旅芸人一座の宇宙船が、未知の宇宙船と衝突事故を起こしてしまう。自分たちの船は軽い損傷で済んだが、相手の船は大破しながら近くの惑星アミカに墜落する。救助に向かうものの、生存者は両親の犠牲によって助かった赤ん坊が一人だけ。見たことのない型の宇宙船で、彼らがどこから来たのかも分からない。生き残っているのも赤ん坊なのでどうにもしようもない。旅の一座は救難信号を出し、この子の星の迎えが来るまで面倒を見よう、ということになり、一座の大芝居が始まる。

アフタヌーン版

第一話のタイトルが『ロスト・イン・ユニバース』となっているが、これは作者、雑誌側のヤラセだった。権利の問題もあり、「新しいタイトルを応募した結果、『宇宙家族カールビンソン』になった」と嘘告知をした経緯がある。内容はキャプテン版とは違うパラレルワールド式で、コロナの一家の素姓が不明。原住民の間で「星(宇宙船)が落ちると新しい仲間が増える」という都市伝説的な話題がはびこっているなどの変更がある。

『宇宙家族カールビンソン』の登場人物・キャラクター

美唄町の住人

コロナ

本編の主人公で唯一の地球人。謎の宇宙人(地球人)の船にいた、唯一の生存者。母星の習慣に従い、小学校低学年辺りまでストーリーが展開される。
ワガママで甘えん坊な所もあるものの、子供の日におもちゃを買ってもらう、雷が落ちやすい場所が分かるなど、それなりに利発。出自については何も知らされておらず、家族写真を見た人物から「似てない」「養子じゃないか」と言われた時は大泣きするほど、「両親」を慕っている。

実の両親は、接触事故の際、コロナをカプセルに入れて、自分たちの体をクッション替わりにしてコロナの命を守った。お盆の時期におかあさんの姿を真似て現れ、束の間娘との時間を過ごしている。「何も嫌なことなんかない」という言葉に安心し、「こっちに来てはいけない」と言い残し、恐らく成仏した。コロナがその時いた場所は、一座が両親を埋葬した場所であり、おかあさんたちはお盆の存在(先祖の霊が帰って来る)を思い出し、改めてコロナの親代わりを勤めていくから安心してくださいと念じた。

なお、アフタヌーン版では絵柄の変化もあってか、ギャグ顔をすることがなくなり美少女風の様相。性格面では少し無邪気さや天然さが増している。

おかあさん

コロナの母親役。見た目は巨大なネズミ型宇宙人で、一座の座長。本当の両親への申し訳からコロナを引き取り(「管轄外だから」として、警察も引き取ってくれなかった)、なるべく地球の風習にのっとった生活をさせるよう心掛けている。常識人だが、それがために余計なストレスをしょい込むことも。とはいえ、一座の面々やアニカ住民の手助け、気遣いもあってこの大芝居を切り盛りしてもいる、まさに肝っ玉母ちゃん。

おとうさん

コロナの父親役。宙に浮いたロボットのような風貌だが、食事は可能。目つきが怪しい上、言動も基本的に支離滅裂でボケ倒しの多いキャラ。しかし腐っても父であり、ひとたびコロナが泣く、ピンチに陥るなどすると、多彩な戦闘形態に変形。娘を守るため奮闘(大概一撃で片が付く)する。住民からは「オッサン」もしくは「旦那」と呼ばれており、その戦闘力からいざという時には頼りにされることも。おかしいのは味覚もであり、おかあさんの作る料理を普通に食べる半面、自身で料理する際は科学実験としか思えない描写がされている。なお、出来上がったものは金魚鉢に一滴汁を垂らしただけで水が煮えて魚が溶けていた。劇中登場した主な料理は「スイカの大和煮」「サバメロン」「ヨーグルト雑炊」など。また、塩じゃけや米飯にピーナツバターを塗った弁当を披露し、他者の食欲を減退させたこともある。
その正体は、ウエスナー星という惑星で死神の異名で呼ばれた軍人。元は生身の肉体だったが、「神の時代の遺物」たるマシンに意識を移殖。他にも同様の経緯でロボット兵となった兵士がいるが、彼らとは違い志願してのこと。理由は「最も危険な場所で闘いたい」から。自殺志願者でも戦闘狂でもなく、「死ぬわけにはいかない」という気持ちからくるもの。死神というあだ名は民間人を巻き込んでの市街戦以降ついたものだが、その任務の際に自分の妻子を殺した経緯があるため、逃げることも死ぬことも許されないと自分に戒めたのだった。その後、断片的に語られる情報から、恐らく自分の手で故郷を破壊、精神状態が現在の様相になった模様。名前はトリー准将。トリーというのはロシア語で3番目。つまり、3号機。

ターくん

またの名をリスのター君。コロナのペット役。どの版でも大概ロクな目にあっていない。むき出しの脳のドアップなど、絵面的にグロテスクな部分を強調されることもしばしば。おかあさんから改めてコロナに関する礼を言われた時は「僕も皆も、嫌だとは思っていません。コロナちゃんが楽しんでくれればそれでいいんです」といった言葉を掛けるなど、好青年である。特技はカリフラワーの真似。頭部の触角が目で、泣く時はここから涙が出る。

キャプテン版では、故郷惑星では名家セリブラム家の御曹司だった。一度老執事(タ―君曰く「しわが増えた」とのことだが、読者も含めた他星人にはどっちがどっちか区別つかない)が迎えに来たことがあるが、「家が欲しがっているのは僕じゃなくて後継ぎ」「ここなら自分でいられる」として、一人で帰らせた。ただコロナが別のペットを欲しがるなどの理由から、自ら押し入れに閉じこもっていた時期もある。

ベルカ

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