さよなら、人類(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『さよなら、人類』とは、2014年に公開されたスウェーデンのコメディ・ドラマ映画。第71回ヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映され、金獅子賞を獲得。第88回アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされた。過去にカンヌ国際広告祭で何度も受賞を果たしているロイ・アンダーソンが監督を務め、同監督の手掛ける『リビング・トリロジー三部作』の3作品目として制作された。舞台は戦時の不況にあったスウェーデン。登場人物たちの日常が、哲学的で奇妙なユーモアをもって描かれている。

物語序盤で、サムが訪れた理容室にいた理容師。元はフェリーの船長だったが海に出るたびに船酔いするため、義理の弟が経営する床屋で働き出した。
しかし、客の前で散髪は軍隊で習ったことがある程度と打ち明けてしまったことで、恐れをなしたサムが逃げ出す原因となった。

恋するフラメンコの講師(演:ロッティ・トルンロース)

黒い服の女性がフラメンコの講師

フラメンコ教室の講師。レッスンを受けにくる若い男性の生徒に恋をしており、レッスン中にダンスの動きを直す振りをしながら、密着して胸や腰を触っていた。念願かなって彼とレストランに行くが、振られてしまう。

ロッタ(カフェバーのママ)

サムとヨナタン行きつけのカフェバーのママ。1943年の黄金期には美貌で人気を集めており、片足を引きずりながら得意の歌を口ずさみ、お客に酒を配っていた。

『さよなら、人類』の用語

営業アイテム3点セット

「3点セット」のうちの1つ、ヴァンパイアの牙を実演販売するヨナタン

サムとヨナタンが売っているジョークグッズの定番商品で、「笑い袋」「ヴァンパイアの牙」「大佐の笑顔のマスク」の3点を指している。

ブラスバンド(軍楽隊)

スウェーデン軍が擁する、ブラスバンドの楽隊。主に場面転換で登場し、時間軸などをずらす役割を担っている。

『さよなら、人類』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

何度か登場する「元気で何より」という言葉

本作では様々な登場人物たちが、電話口で何かにつけて「元気でなにより」と口にする。しかし、この言葉の明るさとは裏腹に、彼らの生命感の乏しさや画面全体に漂う色彩の欠落ゆえか、そのたびにどこか「ご愁傷様」とでも言われているかのような錯覚を覚える。
暗い時代性を強調した作風の一方で、あえて繰り返されるこの「元気で何より」という言葉は、作品全体の哲学的、社会風刺的な雰囲気を形づくる重要なモチーフといえる。

『さよなら、人類』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

独特すぎる空気感と深くて浅そうな人生の数々

ここまで個性がくっきりと表れている映画も珍しいのではないかともいえる、唯一無二の視点を持つ作品である本作。起承転結なんてあったものではなく、強いて言うなら全てのシーンが「結」ともいえる作品だが、それがまた滑稽でもあり、本作最大の魅力でもある。完成に4年を費やしたというが、視聴者からは納得する声が多く上がった。深い作品というのは一見浅く見えるものでもあるが、本作も同様で「浅く見えるのに、気付けば独特の世界観にのめり込んでしまう」という不思議な何かがある。
コメディとはいえ、いわゆるギャグを飛ばして笑いを誘う類のものではなく、空気感と間合いだけで視聴者を笑いに誘い込み、「笑いってこういう風にも生まれる」と教わっているかのような本作は、まさにロイ・アンダーソン監督にしか作れないものといえる。
極論を言えば雰囲気を楽しむものであって、ストーリーを楽しむものではないとも考えられる本作は、なんだか「好き勝手に作ったから、君たちも好き勝手に観て、好き勝手に論評してくれ」とでも言われているような、そんな気持ちになる魅力にあふれている。
これはロイ・アンダーソンの繰り出す『リビング・トリロジー三部作』の最終章だが、この作品単体でも十分楽しめるものとなっている。本作を観賞した後、『散歩する惑星』と『愛おしき隣人』を観たくなるかどうかは視聴者次第だ。

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