悪魔はそこにいる(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『悪魔はそこにいる』とは、2014年に公開されたアメリカのホラー映画。小規模なインディペンデント映画として海外を中心にリリースされ、低予算ながらホラーというジャンルの不条理や不可解さという様式美を踏襲した、王道ともいえる作品である。『悪魔はそこにいる』というのは邦題で、原題は『Raised by Wolves』だが、2020年から放送されている、同タイトルのドラマシリーズとは完全な別作品。若者たちが廃墟となった農場で不可解な恐怖と遭遇し、次第に狂気と疑心暗鬼の中で崩壊していく姿を描いている。

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『悪魔はそこにいる』の概要

『悪魔はそこにいる』とは、2014年に公開されたアメリカのホラー映画。監督はミッチェル・アルティエリ。小規模なインディペンデント映画として海外を中心にリリースされた。上映時間は約76分。低予算ながらホラーというジャンルの不条理や不可解さという様式美を踏襲した、王道ともいえる作品である。
『悪魔はそこにいる』というのは邦題で、原題は『Raised by Wolves』だが、2020年から放送されている、リドリー・スコット監督による同タイトルのドラマシリーズとは完全な別作品。
若者たちが廃墟となった農場で不可解な恐怖と遭遇し、次第に狂気と疑心暗鬼の中で崩壊していく姿を描いている。この若者グループの人間関係や、過去に農場で起こったカルト教団関連の大量殺人事件が絡み合いながら物語が進行する。
ラストシーンのセリフには、新約聖書の『ヨハネの黙示録』20章を元にした千年王国思想(ミレニアニズム)が暗示的に引用されており、キリスト教圏における宗教的イメージやカルト的世界観が物語の根底に潜んでいることを示唆している。

『悪魔はそこにいる』のあらすじ・ストーリー

「悪魔殺し」の現場へ向かう若者たち

1973年、先住民保留地区の若者を中心に結成されたカルト教団の指導者、アーネスト主導で「悪魔殺し」と称した大量殺人事件が発生した。数ヵ月にもわたる連続殺人のすえ、教団のメンバーは互いに殺し合う事態に発展した。この事件で唯一生き残った少女がいたが、彼女は命こそ助かったものの、精神を蝕まれてしまっていた。
時は流れ、数十年後。先住民特別保留地区で暮らすフィッシャー、レイ、ジョーイ、マイキーは、フィッシャーのガールフレンドのハーモニー、そしてドナとオードリーの姉妹の7人は、暇を持て余していた。かつて大量殺人事件が起こった教団跡地の農場に使われていないプールがあり、そこがスケボーにはうってつけの場所だと知った彼らは、その農場に行くことを決めた。
道中、メンバーたちは先住民特別保留地区が地元ではなく、農場で何があったかを知らなかったマイキーとハーモニーに事件の話を聞かせるのであった。

何時間も車を走らせ、ようやく農場に着いた7人はスケボーをして遊ぶことにした。
マイキーはカメラが趣味だったのでその時も当然カメラを回していたのだが、そこに突如、知らない男が映り込んだ。驚いたマイキーは他のメンバーに声をかけて映像を確認するが、いざ確認すると何も映っておらず、一同は困惑する。彼らは農場を探索して確かめることにした。
予期せず始まった肝試しだったが、壁一面に血文字が描かれた部屋に驚いたくらいで、誰も怖がっている様子はなかった。レイとジョーイはふざけてアーネストの名を連呼し、フィッシャーとハーモニーもイチャイチャ始める。ジョーイとドナに至っては行為を始める始末だった。
そんな仲間達をよそに黙々と家中の撮影を進めるマイキーだったが、カメラを固定し、音をボリュームを上げて聞いていると、「彼がいる」と囁く声が聞こえてきた。振り向くと、背後には見知らぬ男の姿があった。
その後も決定的瞬間を求めて家中を撮影していると、ジョーイが突然耳から血を流し、「あいつがいる」という趣旨の言葉を言い残して、その場から消えてしまう。

恐怖の始まり

マイキーが慌ててフィッシャーを探しに納屋へ向かうと、そこにはオードリーがいた。ドアの開いた部屋の前に立っていたオードリーだが、何者かが彼女を部屋に引きずり込み、ドアが開かなくなってしまう。閉じ込められたオードリーは間もなく部屋から出てきたが、背中に怪我を負って倒れてしまった。部屋の中を覗いてみるが、何か獣のような影は見えるものの誰もいない。さらにドアには鍵がなく、彼女が閉じ込められたこと事態が異様な事態だといえた。
オードリーの傷は深く、すぐに病院に運ぶ必要があると判断した彼らは農場を立ち去ろうとするが、なぜか車のエンジンが壊されていて立ち往生することになってしまう。
彼らは一連の出来事をジョーイの行き過ぎた悪ふざけだと思い、彼を探しに家に戻ることにした。しかし、ジョーイの帽子と衣服だけが、壁に血文字の描いてあった部屋に残されている。身の危険を感じた彼らはジョーイの捜索を諦めて全員で車の中に立てこもることを決めたが、建物を出てすぐに現れたジョーイが、レイを連れ去ってしまった。
フィッシャーが助けに向かうと、レイは血まみれで倒れていた。救出を試みるフィッシャーだったが、明らかに正気の状態ではないジョーイに阻まれて断念。レイを置いて逃げることになる。

車に戻ると、オードリーの状態がさらに悪くなっていた。ここで立ち往生するわけにはいかないと判断した彼らは、助けを呼ぶためにオードリーを担ぎ、歩いて農場を出ることにする。パニックの中で彷徨い歩く一行だったが、重傷を負っているはずのオードリーが突然豹変して襲ってきた。ハーモニーが咄嗟に彼女を石で殴り殺し、彼らはオードリーの亡骸をその場に置いて農場を出ようと歩を進めるが、しかし、どういうわけかどれだけ歩いても、農場から出ることができない。

そこにレイの兄であるタズから電話がかかってきたので、マイキーは彼に助けを求める。
しかしそこでドナが突然強い力に引っ張られるかのように、農場の中に引きずり込まれてしまった。安全地帯だと思われていた車の中にもいつの間にか不気味な落書きがされており、ハーモニーも姿を消す。事態は悪化するばかりだった。
いなくなったハーモニーを探していたマイキーとフィッシャーだが、ジョーイが襲い掛かってきた。必死に身を守った結果、ジョーイも命を落としてしまう。
そこで縛りつけられていたハーモニーを見つけた彼らは彼女を助けるが、ハーモニーも正気を失っており、助けてくれたはずのフィッシャーを刺すのであった。
ハーモニーから逃げ回りながらもマイキーがフイッシャーを助けに戻ると、アーネストが死んだはずのジョーイ達と共に現れた。マイキーは彼らに襲われ、落ちたカメラは倒れたフィッシャーを映し出す。

そこには、カルト教団におけるアーネストの教えが詠唱される中、息を引き取ったはずのフィッシャーが立ち上がる姿が記録されていた。

『悪魔はそこにいる』の登場人物・キャラクター

主要人物

マイキー(演:エヴァン・クルックス)

先住民特別保留地区で暮らしている若者グループの一員。仲間のオードリーに片思いしているが、奥手な性格で気持ちを伝えられずにいる。先住民特別保留地区の出身でないことから、1973年に農場で起こった悪魔殺し事件について知らなかった。
カメラで動画を撮影するのが趣味で、肝試し当日に撮影していた映像を軸に物語が進行していく。

フィッシャー(演:モンティ・ギア)

先住民特別保留地区で暮らしている若者グループの一員。グループのリーダー格で、マイキーの親友でもある。オードリーに想いを寄せつつも奥手なマイキーの恋が実るよう、率先してサポートしてくれている。冷静で面倒見のいい性格ではあるが、若者らしく危機管理能力には欠ける一面を持つ。

ハーモニー(演:レオア・ハイヨン)

先住民特別保留地区で暮らしている若者グループの一員。フィッシャーのガールフレンド。

ジョーイ(演:マイケル・ハドソン)

先住民特別保留地区で暮らしている若者グループの一員。明るく元気だが、悪ふざけがすぎる一面もある。交際しているわけではないようだが、ドナと肉体関係を持っている。

レイ・レイ(演:ハサン・マフムード)

先住民特別保留地区で暮らしている若者グループの一員。少々変わっており、すべてにおいて「ノリ」で行動している節がある。

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