悪魔はそこにいる(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『悪魔はそこにいる』とは、2014年に公開されたアメリカのホラー映画。小規模なインディペンデント映画として海外を中心にリリースされ、低予算ながらホラーというジャンルの不条理や不可解さという様式美を踏襲した、王道ともいえる作品である。『悪魔はそこにいる』というのは邦題で、原題は『Raised by Wolves』だが、2020年から放送されている、同タイトルのドラマシリーズとは完全な別作品。若者たちが廃墟となった農場で不可解な恐怖と遭遇し、次第に狂気と疑心暗鬼の中で崩壊していく姿を描いている。

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物語のラストシーン。仲間たちと同じく亡霊となってマイキーの前に現れたアーネスト・プレインソングは、「イエスの証と神の言葉のために、その者たちは獣も像も拝まず、額や手に銃の刻印を受けなかった。彼らは生き返り、イエスと1000年統治した。他の死者は1000年後まで生き返らなかった。」と呟く。これは彼がかつて率いていたカルト教団の教義そのものであるが、実は新約聖書の『ヨハネの黙示録』(20章)を元にした引用である。
ただし、アーネストの語る内容は本来の聖書から意図的に歪められている。
原文では「獣の刻印(666)」だが、彼はこれを「銃の刻印」に置き換えている。これは、聖書の終末思想を独自に解釈し、暴力と血を救済の印として正当化するアーネストの異常な教義を象徴している。
『ヨハネの黙示録』には「獣を拝まず、刻印を受けなかった者は復活し、イエスと千年王国を統治する。他の死者は1000年後まで蘇らない」と記されており、この千年王国思想(ミレニアリズム)は歴史上、しばしばカルトの教義として利用されてきた。
宗教観の違いから日本では馴染みが薄いが、聖書の核心部分を都合よく改変して語るという行為そのものが、キリスト教文化圏では強烈な恐怖と異常性を伴う。
このセリフは、アーネストの狂気と、事件そのものがまだ終わっておらず、マイキーたちが巻き込まれていたことを静かに示唆する、不気味な一言となっている。

『悪魔はそこにいる』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ホラーの「入門編」として最適な本作『悪魔はそこにいる』

ホラー作品慣れしている視聴者からは「ややありがちな印象を受ける」という評価が目立った本作だが、このような作品は、それゆえに「王道」ともいえる。
そのため、ホラーをあまり見たことがない人にとっての、入門編にピッタリの1本として本作を推す声もある。極限まで不気味さや得体の知れなさは引き出しているものの、いわゆる「怖さ」は控えめとなっており、ホラーというジャンルの持つ理不尽さや、オカルト要素を楽しむにはうってつけということだ。
ちなみに本作の原題は『Raised by Wolves』で、意味は、直訳すると「狼に育てられた」となる。ちょっとしたイディオムなのかもしれないが、これがなぜ『悪魔はそこにいる』という邦題になったのかは不明。ホラー作品は往々にしてこういったことがよくあるが、邦題と原題の違いに着目して映画を視聴してみるのも、意外と面白いのかもしれない。

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