ダークマン(Darkman)のネタバレ解説・考察まとめ

『ダークマン(Darkman)』とは1990年に公開されたアメリカのスーパーヒーロー映画である。監督は『死霊のはらわた』などのホラー映画を得意とするだけでなく、『スパイダーマン』シリーズを手掛けるなどアメコミ作品が好きなことでも知られているサム・ライミ。ギャングの起こした大爆発により全てを失った天才科学者のペイトン・ウェストレイク。重度の火傷を負いながらも死の淵から甦ったペイトンが組織を崩壊させていく。孤独に戦う復讐のヒーロー、ダークマンの生き様が描かれている。

ペイトンが助手のヤナギモトと共に開発を進めていた人口の皮膚。写真からデータを取り再現した人工皮膚を被れば、写真に写る人物と瓜二つの顔になることが可能になる。人工皮膚は完成に近づいていたが、光の下では99時間が経つと形が崩れてしまう不完全な状態にあった。しかし実験中にヒューズが切れたことでそれまで越えられなかった99時間の結果に変化が起こる。暗闇の中であれば100分を越えても形を維持できることが判明したのだ。人工皮膚は光の下では不完全でありながらも、当初は火傷患者のために始まった研究がペイトンの復讐に大いに役立つものとなっていった。

ヒューズ

過剰な電流が流れたことが原因で起こる火災などの危険な事故から守るための装置。決められた数値以上の電流が流れた際に回路を遮断する役割のある電子部品。

脊髄視床路(せきずいししょうろ)

痛みや温度、体に触れる圧などを伝える神経伝達経路。体の感覚を伝える重要な役割を持っており、脊髄と大脳皮質の間で感覚の情報が伝達されている。ペイトンはこの経路が切断されたために痛覚などの原始感覚を失っていた。

『ダークマン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

自身が受けた爆発を再現して敵に大ダメージを与えたペイトン

出典: eiga-pop.com

研究室をデュラントの率いるギャングに襲われ、自身が建物の外にまで吹き飛ばされるほどの大爆発に巻き込まれたペイトン。彼はこの時の状況を再現してスマイリーを殺害する。ガスの充満した室内にライターと、前後に頭を揺らす鳥の置物を用意。鳥の長い嘴がライターのスイッチを押し火をつければ爆発が起きるというものだ。自身が受けた苦痛を同じように敵に受けさせたペイトンであるが、スマイリーはペイトンのように生き延びることは叶わず死亡。ただ敵を倒していくのではなく、敵の倒し方にペイトンの抱く憎悪や復讐心の強さが窺える。

ペイトン 「良心を鍛えてるんだ。」

ルイスとの決戦にて、ペイトンに足を捕まれ地上数百メートルの高さでぶら下がっている状態のルイスがいた。ペイトンが手を離せばルイスは落下して即死である。しかしペイトンは掴んだまま離さなかった。そんなペイトンに自身を殺すよう煽りながらも、手を離せばこれまで様々な悪事を働いてきたルイスよりも悪人になるのだと言うルイス。そんな覚悟がペイトンには無いと思っていたのだろう。だがペイトンはそのような迷いを既に手放していた。話し終えたルイスに対し、ペイトンは迷う素振りを見せることもなく足を掴んでいた手を離す。叫び声と共に落下していくルイスを見届けペイトンは「良心を鍛えているんだ。」と静かに呟いた。元々善良な人間であったペイトンは、自身の中の正義感と復讐心の間で苦しんできたヒーローだ。一人また一人と敵を殺し、復讐を進めていく度にペイトンの中のダークマンは輪郭を強めていくこととなった。

ペイトン「私は誰でもあり…誰でもない。どこにでもいてどこにもいない。"ダークマン"と呼んでくれ。」

黒幕のルイスを倒したことでペイトンとジュリーを襲う脅威は無くなった。ジュリーはペイトンの姿が変わってしまっても、彼とその後も一緒に生きていこうとする。しかしペイトンは復讐を果たしたことでダークマンとしての自我をはっきりと意識していた。ジュリーの前から去っていくペイトンを彼女は追いかける。しかし人工皮膚を被り雑踏に紛れたペイトンの行方はすぐにわからなくなる。それでも必死に見つけ出そうとするジュリー。姿が変わっても一緒にいようとしていた愛する女性に彼は「私は誰でもあり…誰でもない。どこにでもいてどこにもいない。"ダークマン"と呼んでくれ。」と最後の言葉を胸の内で送る。そこにはもうペイトンは存在していなかった。愛する女性と生きていく未来ではなく、闇の中ひとりで生きていくことを選んだダークマン。ペイトンがダークマンである由縁がこのシーンまでに描かれてきており、最後にダークマン誕生の瞬間を表したセリフである。

『ダークマン』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ライミのアメコミを愛する執念から生まれた『ダークマン』

『ダークマン』はライミがユニバーサル・ピクチャーズと組んだ、初のメジャー作品である。ライミはアメコミ作品を愛しており『ダークマン』は彼のアメコミ好きから誕生した。しかし誕生に至るまでの道のりは非常に険しいものである。彼はそれまでアメコミ作品に関わろうとしては多くの失敗を経験していた。アメコミを原作にした映画を出そうとしては上手くいかず、ティム・バートンが『バットマン』シリーズから離れる際に後を引き継ごうとするも、こちらも失敗に終わる。他にも『マイティ・ソー』の企画を持ち込むなど様々な案を考えるがどれも実現はしなかった。彼のやりたいことが叶わない現実に、とうとう自分でヒーロー作品を生み出す方向にライミは舵を切る。こうして誕生した作品が『ダークマン』なのであった。

マクドーマンドの前にジュリー役の候補に挙がっていたジュリア・ロバーツ

当初ヒロイン役にはニーソンの希望で、彼の恋人であるジュリア・ロバーツが候補に挙げられていた。しかし演技のテストで彼女が照れから演技が上手くできずに不採用となり、後にマクド-マンドがヒロイン役に決まる。またジュリアはその後『ダークマン』と同じ年に公開された『プリティ・ウーマン』で大活躍し、一流ハリウッドスターへの道を一気に駆け上がっていくこととなる。そしてニーソンとは破局していた。

『死霊のはらわた』シリーズの主人公アッシュの人工皮膚を被ったペイトン

本作のラストでジュリーの前からペイトンが姿を消す際、彼はジュリーの知らない人物の人工皮膚を被り雑踏に紛れていく。その時に変装した姿が『死霊のはらわた』シリーズの主人公アッシュ・ウィリアムズを演じたブルース・キャンベルであったことが当時話題となった。『死霊のはらわた』ファンにはたまらない演出である。しかしライミは当初、キャンベルを主演にしようとしていたのだが、その案は却下されていた。キャンベルとライミは自主映画を制作していた頃からの盟友なのだ。『ダークマン』の他にもキャンベルは『スパイダーマン』シリーズの全てに登場しており、ライミの多くの作品に出演している。

『ダークマン』の主題歌・挿入歌

主題歌:ダニー・エルフマン「Main Titles」

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