ファーゴ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ファーゴ』とは、ジョエル・コーエンによるアメリカ合衆国・イギリスのクライムサスペンス映画。
雪が降り積もる街、ミネソタ州ミネアポリス。多額の借金を抱えた自動車販売員のジェローム・“ジェリー”・ランディガードは、妻を偽装誘拐して裕福な義父から身代金をせしめる計画を企てる。ジェリーは妻の誘拐をチンピラの男2人に依頼するのだが、そこで予想外の事態が頻発。ジェリーの誘拐計画が次々と犠牲者を生み、最悪の展開へと転がっていく様子を描いている。個性豊かな登場人物が見所の作品。

『ファーゴ』の概要

『ファーゴ』とは、1996年公開のアメリカ合衆国・イギリスのクライムサスペンス映画。監督・脚本を務めたのはジョエル・コーエンで、ジョエルの弟であるイーサン・コーエンも脚本に携わっている。
ジョエルとイーサンは「コーエン兄弟」として共同で映画製作をしており、デビュー作の『ブラッド・シンプル』(1984年)を皮切りに、『赤ちゃん泥棒』(1987年)、『バートン・フィンク』(1991年)、『ビッグ・リボウスキ』(1998年)などの映画作品を次々と世に生みだしてきた。中でも『バートン・フィンク』は、1991年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール、監督賞、男優賞の3部門で受賞を果たし、国際的な知名度を上げた。
『ファーゴ』では、第69回アカデミー賞で主演女優賞、脚本賞を獲得。さらに1996年のインディペンデント・スピリット賞で作品賞や監督賞を含む6部門を受賞するという快挙を成し遂げる。2014年には本作のリブート作品となる『FARGO/ファーゴ』がテレビドラマ化され、アメリカ合衆国のFXチャンネルで放送された。ドラマでは『ファーゴ』に着想を得たというノア・ホーリーが脚本を務めている。

本作の興行収入は約2400万ドルを記録し、『赤ちゃん泥棒』以来のヒットに恵まれた。また、過度な暴力描写があることからR15+指定となっている。

本作の舞台は1987年のミネソタ州ミネアポリス。自動車販売店で営業担当をしているジェローム・“ジェリー”・ランディガードは、多額の借金を抱えていた。そこでジェリーは妻であるジーン・ランディガードを偽装誘拐し、ジーンの裕福な父親から身代金を貰うというとんでもない計画を企てる。早速チンピラの男2人にジーンの誘拐を依頼するジェリー。だがチンピラたちはジーンを車で運んでいる道中、はずみで警官と目撃者を射殺してしまう。偽装誘拐がきっかけで殺人事件が発生し、ブレーナード警察署の署長であるマージ・ガンダーソンが捜査に動き出す事態になった。
ジェリーの誘拐計画が次々と犠牲者を生み、最悪の展開へと転がっていく様子を描いている。ミネソタ訛りで話す個性豊かな登場人物が見所の作品。

『ファーゴ』のあらすじ・ストーリー

偽装誘拐の計画

自動車販売店営業担当のジェローム・“ジェリー”・ランディガードは多額の借金を抱えていた。そこでジェリーは妻のジーン・ランディガードを偽装誘拐し、裕福な義父のウェイド・グスタフソンから身代金8万ドルをせしめる計画を企てる。
ジェリーは自動車修理工のシェプ・プラウドフットから、誘拐の実行役としてカール・ショウォルターとゲア・グリムスラッドというチンピラを紹介してもらった。その夜、ジェリーは酒場で小男のカールと大男で無口なゲアに計画を説明し、身代金は山分けするということを伝える。カールとゲアは了承し、ジェリーの用意した車のキーを受け取った。

しかし後日、義父のウェイドに以前から持ちかけていた投資話がまとまりかけたため、偽装誘拐を取りやめようとするジェリー。中止の連絡をしようとカールたちに電話を掛けたが、彼らは電話に出なかった。結局、ジェリーはウェイドから「私は銀行じゃない」と言われて金を貸してもらえず、投資話も無くなってしまう。車に戻ったジェリーは雪かきブラシでフロントガラスの雪を削りながら、怒りを爆発させる。そして雪かきブラシをその場に投げ捨てた。

一方、カールとゲアは車でジーンの住む家にたどり着き、窓を割って家に侵入する。突然の侵入者に慌てふためいて逃げるジーンを捕まえ、車の後部座席に押し込んで車を走らせた。

殺人事件

通報現場で遺体を発見したマージ・ガンダーソン(左)

カールとゲアがジーンを車に乗せてブレーナードの雪道を走っていると、突然警察車両に呼び止められた。仕方なくカールが路肩に車を止めると、警察官はカールたちの車にナンバープレートが付いていないことを指摘する。そして「車の中を詳しく見せてもらう」と言って警察官が車内を覗き込んできたため、ジーンの誘拐がばれてしまうのではないかと焦ったゲアが警察官を射殺した。その後、ゲアは「目立たないところに移動させろ」と警察官の死体移動をカールに指示する。指示通りにカールが死体を引き摺っていると、そこに偶然男女2名が乗る車が通りかかった。彼らは死体を引き摺るカールを目撃すると恐怖で顔を滲ませ、車のスピードを上げて必死に逃げる。だがゲアがすかさず車で追いかけて2人の車を横転させ、銃を取り出して2人を射殺するのだった。

翌朝、通報を受けてブレーナード警察署・署長のマージ・ガンダーソンが身重の体で殺人事件の捜査に乗り出した。マージは現場に着き、警察官と男女2人の死体を発見する。その後、マージは殺された警察官が死ぬ直前にメモしていた犯人の車の情報を元に、その車が目撃されたというモーテルを訪ねることにした。

身代金の引き上げ

ジーンが誘拐されてから数日が経ち、ジェリーはカールからの電話で「状況が変わった」と言われ、予期せぬ殺人事件が発生したことを知る。ただの偽装誘拐ではなくなり、ジェリーは「金が足りない。身代金の8万ドル全額をよこせ」とカールに言われてしまう。
そのためジェリーは妻のジーンが誘拐されたことを義父のウェイドに言い、「身代金が100万ドル必要だ」と金額を引き上げてウェイドに伝えた。するとウェイドが「こんなときこそプロに頼むべきだろ」と警察を呼ぼうとしたため、ジェリーは「交渉は僕がする」と言ってウェイドを必死に止めるのだった。

後日、署長のマージは犯人の車が目撃されたモーテルの通話記録から、自動車修理工をしているシェプを突き止める。さらに犯人の車がジェリーの会社のものであることも調査で明らかになった。マージは早速ジェリーの会社を訪ね、ジェリーを聴取する。「盗まれた車はない?」とマージが尋ねると、ジェリーは「ありません」とはっきり答えた。

身代金の受け渡し

身代金受け渡しの日、交渉場所にやって来たのはジェリーではなくウェイドだった。ジェリーを信用していないウェイドは、100万ドルを持って自分で車を走らせたのだ。

とうとう受け渡し時刻になり、カールがやってくる。カールはジェリーではなくウェイドが受け渡し場所にいるのを見て、「あんた誰だ」と叫んだ。そして怪訝な表情のまま、「面倒は御免だ。金を置け」とウェイドに要求するが、ウェイドは頑なに「娘を解放してから金を渡す」と言う。するとカールは苛立ちを抑えきれなくなり、銃を取り出してウェイドの腹部を撃った。倒れたウェイドは力を振り絞って自分の銃をカールの方に向け、顎を撃ち抜く。反撃されたカールは呻き声を上げながらウェイドに向けて数発の弾丸を撃ち込み、金の入ったブリーフケースを奪って車に乗り込んだ。

その後、一足遅れてジェリーが受け渡し場所に行き、ウェイドの死体を発見する。警察に計画がばれてしまうことを恐れたジェリーはウェイドの死体を車のトランクに押し込み、その場を去るのだった。

新たな殺人

身代金の受け渡しを済ませ、車の中で止血を試みるカールはブリーフケースの中に8万ドルを軽く超える大金が敷き詰められていることに気が付いた。カールはそこから8万ドルだけを抜き取って、残りの金を独り占めしようと目論む。車を降りて雪原にブリーフケースを埋め込み、カールは埋めた地点に目印の赤い雪かきブラシを立てた。

その後アジトに戻ったカールは、ゲアがジーンを殺害してしまったことを知る。ゲアが「急にわめきだしたんだ」とカールに殺害の経緯を話すと、カールは驚きつつも分け前である4万ドルをゲアに渡した。すると「車もだ」とゲアが言い出したため、カールは「冗談じゃない。俺は撃たれたんだぞ、車は俺のもんだ」と言い、背を向けて車に向かう。次の瞬間、ゲアが斧を持ってカールに襲いかかり、カールは殺害されてしまった。

一方、マージは再度ジェリーの会社を訪れて聴取を始めた。マージが執拗に車の在庫確認をジェリーに要請すると、追い詰められたジェリーは「分かりました、確認します」と嘘を言って車で逃げ出してしまう。マージはその後、地元住民からムース湖に怪しい男がいるとの情報を掴み、1人で警察車両に乗り込んでムース湖へ向かった。すると付近に犯人の車と小屋があるのを発見する。マージが恐る恐る小屋に近づくと、小屋の付近にゲアが立っているのが見えた。ゲアはウッドチッパーでカールの死体を粉々にしており、カールの足首が機械から飛び出ているのが確認できる。マージが拳銃を構えて「警察よ」と叫ぶと、気が付いたゲアが逃げ出した。マージは逃げるゲアに銃を撃ち、見事足に命中させる。撃たれたゲアはその場に倒れ込んだ。

平穏な日常

ゲアを逮捕し、マージは警察車両にゲアを乗せる。道中でマージは金のために殺人を犯したゲアに対して、「そんな金よりも人生には価値があるものがあるわ。見てごらんなさい、美しい日よ」と言った。そんなマージの言葉に、ゲアは何も返さなかった。
その後、モーテルに潜んでいたジェリーも他の警察官たちによって逮捕され、事件は終わりを迎える。

その夜、穏やかな日常に戻ったマージは夫のノーム・ガンダーソンと寝室で肩を寄せ合う。するとノームが「発表された。3セント切手だ」と、自分の描いた絵が切手のデザインに選ばれたことをマージに話した。ノームの報告を受けて「やったじゃない」と喜ぶマージ。2人は「愛してる」と互いに言い合い、幸せを再確認するのだった。

『ファーゴ』の登場人物・キャラクター

主要キャラクター

マージ・ガンダーソン(演:フランシス・マクドーマンド)

吹替:塩田朋子(ソフト版)/高島雅羅(テレビ東京版)
本作の主人公で、ブレーナード警察署の署長を務めている女性。あと2ヶ月で子供が生まれる予定の妊婦だが、殺人事件の捜査を行うタフさを持つ。警察官と男女2人が殺された事件を捜査し、現場の調査や聞き込みを行った。犯人のゲア・グリムスラッドを追い詰め、銃でゲアの足を撃って見事に逮捕する。夫のノーム・ガンダーソンと仲が良く、互いに支え合って幸せに生きている。

ジェローム・“ジェリー”・ランディガード(演:ウィリアム・H・メイシー)

吹替:佐古正人(ソフト版)/古川登志夫(テレビ東京版)
自動車販売店で働く営業担当の男性。行き当たりばったりで、浅はかな考えをする人物。多額の借金を抱えており、妻のジーン・ランディガードを偽装誘拐して裕福な義父のウェイド・グスタフソンから身代金をせしめる計画を企てた。チンピラのカール・ショウォルターとゲア・グリムスラッドにジーンの誘拐を依頼するが、その結果多くの犠牲者を出してしまう。最後はモーテルに潜んでいたところを警察官たちに見つかり、逮捕される。

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