烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『烏は主を選ばない』とは、阿部智里の和風ファンタジー小説「八咫烏(やたがらす)シリーズ」の2作目、およびそれを原作とする漫画、テレビアニメ作品である。人の姿をした八咫烏が支配する世界「山内(やまうち)」を舞台に、次代の后選びがきっかけで巻き起こる事件や陰謀を、緻密な世界観の元に描き出しているのが魅力。2012年に原作の小説本が発売されたのに続き、2018年に漫画家・松崎夏未によりコミカライズされ「コミックDAYS」での連載がスタートした。2024年にはNHKでテレビアニメ化されている。
『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』の概要
『烏は主を選ばない』とは、阿部智里の和風ファンタジー小説「八咫烏(やたがらす)シリーズ」の2作目、およびそれを原作とする漫画、テレビアニメ作品である。漫画版は小説の第2巻『烏は主を選ばない』を元に執筆されているのに対し、テレビアニメ版は小説の第1巻『烏に単は似合わない』から第3巻『黄金の烏』までのエピソードを網羅して構成されているため、描かれる物語の範囲が異なっている。いつでも人の姿に転身できる八咫烏が支配する世界「山内(やまうち)」が作品の舞台。次代の統治者となる若宮(わかみや)の后選びをきっかけに、宮中で巻き起こるさまざまな事件や陰謀が、緻密に作りこまれた世界観の中で描かれており、作品の魅力となっている。物語の中心となるのは、若宮の近習である雪哉(ゆきや)と、若宮本人の2人。事件の謎とともに、予想外の展開を見せる后選びの行方が大きな見どころである。2012年6月に原作となる小説の単行本が発売されたのに続き、2018年6月23日には漫画家・松崎夏未によりコミカライズされ、「コミックDAYS」で第1作『烏に単は似合わない』の連載がスタートした。第1作が完結したのは2020年4月11日で、4か月後の8月25日からは第2作『烏は主を選ばない』の連載が始まっている。テレビアニメ化されたのは2024年4月6日からで、NHKにて全20話が放送された。2025年3月26日にはテレビアニメ全話を収録したBlu-rayボックスも発売。原作となった小説『烏に単は似合わない』は、作者の阿部智里が学生時代に執筆した作品で、早稲田大学在学中の2012年に史上最年少で松本清張賞を受賞して話題となった。
『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』のあらすじ・ストーリー
若宮との葛藤と信頼(第1話~第7話)
季節は春。八咫烏が支配する世界「山内」で、若宮(わかみや)の后選びである「登殿の儀」が始まった。后の候補となるのは、有力な4つの貴族(東家・西家・南家・北家)から推薦された4人の姫。皇太子の座にある若宮の后となって優位な地位に立とうと、家を背負った熾烈な争いが繰り広げられる。
同じ頃、若宮の元に雪哉(ゆきや)という少年が近習として仕えることになった。わがままで傍若無人な若宮の言動にうんざりしながらも、言われた仕事を確実にこなしていく雪哉。やがて若宮が、対立する派閥から命を狙われていることを知る。
若宮が対立している相手は、腹違いの兄である長束(なつか)。当初は後継候補だったが、若宮が正当な後継者である「真の金烏」に認定されたため、皇太子の座を奪われた経緯がある。みずから身を引いた長束だが、皇太子への返り咲きを後押しする勢力(長束派)が大きな力を持っており、隙あらばと若宮の命を狙っているのだ。
若宮の傍若無人な行動の裏には、4人の姫たちへの気遣いと、使命を果たすための苦労があることを知った雪哉は、1年だけという条件をつけて若宮の真の味方となる決意をする。
后選びの行方(第8話~第13話)
后候補となる白珠(しらたま)・真赭の薄(ますほのすすき)・浜木綿(はまゆう)・あせびの4人が桜花宮と呼ばれる宮殿に集まり、伝統にのっとった后選びの行事が始まった。だが当の若宮はまったく桜花宮に寄り付かず、姿を見せない日々が続いた。
若宮が不在の中、寵愛を勝ち取るために駆け引きを繰り広げる4人の姫。重要な行事である「七夕の儀式」にも若宮が姿を現さなかったことで、焦りや不信感が次第に高まっていく。
張り詰めた空気の桜花宮で、次々と想定外の事件が巻き起こる。若宮から送られたはずの手紙の紛失、着物の盗難騒ぎ、女房の転落事故、不審者の侵入。
混乱が続く中、后候補の1人である浜木綿が、若宮を暗殺するよう命令されていることを告白する。浜木綿は后候補を辞退し、桜花宮を去っていった。
不穏な雰囲気のまま一年が経過し、いよいよ后選びを行う日がやってきた。残る3人の中から后を選ぶために、初めて桜花宮に姿を現した若宮。姫たちへ順番に話しかけ、隠された真実を明らかにしていく。
白珠にはひそかに想いを寄せる別の男性がいること。真赭の薄が思い描くような結婚生活はあり得ないこと。そして人当たりが良く純粋無垢に見えるあせびに、他人を破滅させる裏の顔があること。宮廷で起こった事件の多くは、あせびが裏で糸を引いていたのだ。
3人の后候補が脱落した後、若宮は途中離脱したもう1人の候補・浜木綿を呼び寄せ、正式に求婚を行った。
未知なる敵との戦い(第14話~第20話)
1年限りという約束の期間を終え、北方にある故郷に戻って平凡な日々を過ごす雪哉。
一方、浜木綿という伴侶を得た若宮は、不穏な事件の調査に乗り出していた。八咫烏を狂わせる謎の薬が闇取引されていること。巨大な猿が北方の村を襲い、八咫烏を食い殺す凄惨な事件が起きたこと。雪哉自身も狂った八咫烏に襲われ、窮地に陥ったところを若宮に救われる。2人はふたたび行動を共にして事件の真相を追っていく。
襲われた村を調べている最中、巨大な猿と遭遇した若宮と雪哉は、猿が人の姿に転生する能力を持つことを知る。人に転生できる以上、都に潜んでいる可能性もあり混乱が広がっていく。
若宮と雪哉は、大猿に襲われた村の唯一の生き残りである小梅(こうめ)に目をつけ、調べを進めていく中で「地下街」に謎を解くカギがあることをつかむ。
地下街には、時間や方向の感覚を麻痺させる死の洞穴があった。雪哉は、地下街の王と呼ばれる男に出会い、情報を渡す条件として洞穴の奥にある「白いカケラ」を持ち帰るよう指示される。雪哉は、若宮と共に猿の襲撃を撃退しながら洞穴の奥へと踏み込み、山積みになった大量の「人間」の骨を発見した。
約束を果たし、謎の薬の売人である治平(じへい)の情報を得た若宮と雪哉。治平は、惨殺された村の生き残りである小梅の父親だった。治平の行方を追う雪哉たちだが、数日後に惨殺された治平の遺体が見つかる。
治平の残したメモから、彼の家に枯れた古井戸があり、その奥に生息する大猿が黒幕だったことを突き止めた。大猿は、治平と別れた妻・初音(はつね)の2人を操り、生贄となる八咫烏を差し出させていたのだ。
事件の真相はわかったが、大猿を取り逃がして根本的な解決には至らず、若宮と雪哉の前にはさらなる困難が待ち受けるのだった。
『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』の登場人物・キャラクター
若宮派の人々
雪哉(ゆきや)

CV:田村睦心
主人公の1人で、抜擢されて若宮の近習を務めることとなる。武勇や知略に秀でた才能を持っており、若宮からの無茶な要求に振り回されつつも、着実に仕事をこなして実績を積み重ねていく。若宮とは時にぶつかることもあるが、彼が直面している苦悩や「山内」の危機を知り、忠誠を誓うこととなる。
若宮(わかみや)

CV:入野自由
もう1人の主人公で、本名は奈月彦(なづきひこ)。「真の金烏」として次の統治者となる皇太子であり、そのため常に命を狙われてきた。貴公子と呼ぶにふさわしい美しい容貌を持っているが、どこか冷めた雰囲気を常に宿している。自分勝手に見える行動の裏には正当な理由があり、誰よりも山内の平和のために尽力している。
澄尾(すみお)

CV:竹内栄治
若宮の護衛を務める青年で、若宮の幼なじみでもあり、雪哉が来るまでは唯一の味方だった。剣の腕前は一流であり、気さくで面倒見のいい性格。公の場以外では、若宮を本名で呼び捨てにしており、友人として接している。
長束派の人々
長束(なつか)

CV:日野聡
若宮の腹違いの兄。元々は皇太子候補の筆頭だったが、弟の若宮が真の金烏であることが認定された際に、身を引いて出家した。今でも長束を皇太子にしようと企む勢力があり、「長束派」と呼ばれている。表向きは対立している2人だが、実際の長束は若宮と仲が良く、若宮が窮地に陥らないように長束派の情報を横流しして支援している。
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目次 - Contents
- 『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』の概要
- 『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』のあらすじ・ストーリー
- 若宮との葛藤と信頼(第1話~第7話)
- 后選びの行方(第8話~第13話)
- 未知なる敵との戦い(第14話~第20話)
- 『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』の登場人物・キャラクター
- 若宮派の人々
- 雪哉(ゆきや)
- 若宮(わかみや)
- 澄尾(すみお)
- 長束派の人々
- 長束(なつか)
- 路近(ろこん)
- 敦房(あつふさ)
- 大紫の御前(おおむらさきのおまえ)
- 藤波(ふじなみ)
- 后候補の4人
- あせび
- 浜木綿(はまゆう)
- 真赭の薄(ますほのすすき)
- 白珠(しらたま)
- 宗家の人々
- 滝本(たきもと)
- 早桃(さもも)
- 捺美彦(なつみひこ)
- 松韻(しょういん)
- 北家の人々
- 茶の花(ちゃのはな)
- 雪馬(ゆきま)
- 雪雉(ゆきち)
- 梓(あずさ)
- 雪正(ゆきまさ)
- 市柳(いちりゅう)
- 一巳(かずみ)
- 喜栄(きえい)
- 六つの花(むつのはな)
- お凌の方(おりょうのかた)
- 玄哉(げんや)
- 東家の人々
- うこぎ
- 双葉(ふたば)
- 遥人(はるひと)
- 南家の人々
- 苧麻(からむし)
- 融(とおる)
- 西家の人々
- 菊野(きくの)
- 顕(あきら)
- その他の人々
- 小梅(こうめ)
- 治平(じへい)
- 初音(はつね)
- 鵄(とび)
- 朔王(さくおう)
- 『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』の用語
- 物語の世界観
- 山内(やまうち)
- 八咫烏(やたがらす)
- 金烏(きんう)
- 宮廷の建物
- 桜花宮(おうかぐう)
- 招陽宮(しょうようぐう)
- 紫宸殿(ししんでん)
- 宮廷の組織
- 山内衆(やまうちしゅう)
- 藤宮連(ふじみやれん)
- 宮廷の行事
- 登殿(とうでん)
- 雛の祭り(ひなのまつり)
- 七夕(たなばた)
- 宮廷以外の建物や場所
- 勁草院(けいそういん)
- 明鏡院(めいきょういん)
- 哨月楼(しょうげつろう)
- 谷間(たにあい)
- 『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 若宮「それでも雪哉…私は、お前が必要だ」
- 真赭の薄「せっかくの求婚ですが、お断りさせていただきますわ」
- 浜木綿「これからは、乙女心を学ぶんだね」
- 若宮「私は全ての八咫烏の長。一羽を救うために全てを捧げる……それが私の喜びだ」
- 雪哉「どうか配下の末席に加えてください」
- 『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 現役大学生が書いた原作
- 特別企画をYouTubeチャンネルで公開
- 十二国記シリーズの読者だった原作者
- 『烏は主を選ばない(八咫烏シリーズ)』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):Saucy Dog「poi」
- ED(エンディング):志方あきこ「とこしえ」