お前、タヌキにならねーか?(おまタヌ)のネタバレ解説・考察まとめ

『お前、タヌキにならねーか?』(略称『おまタヌ』)とは、漫画家の奈川トモによる「タヌキ」を題材にした、動物もの兼妖怪ファンタジー漫画である。Webコミック配信サイト「comicPOOL」にて2021年から連載を開始。さまざまなWeb漫画のランキングに名を連ねる大人気Web漫画の1つとなっている。
本作は、化け狸のこがね丸と人間の野々原雪を中心にオムニバス形式で話が進められる。さまざまな問題を抱える現代人が、人間社会で暮らす化け狸達達と交流をしながら、それぞれに抱えるものと向き合っていく。

主な物語の舞台

貂烟山(てんえんざん)

凶悪な妖怪「貂の妖」が封印されている祠がある山。封印が解けないように、化けイタチの一族である貂の一族から輩出された者が、祠守りとして山に住んでいる。
タヌキの立ち入りを禁止する決まりがあるようだが、こがね丸は無視して山に入っている。ほかにも、時折人間や化けキツネが山に迷い入ってしまう事がある模様。

どんぶり山

どんぶり山付近にあるドンブリ遊園地の光景。
奥にある山がどんぶり山をモチーフにしたと思われるアトラクション「ドンブリヤマウンテン」。

化けタヌキ達が住む山、もしくはその近辺の地域のこと。詳しい居場所は不明だが、作中の登場人物達の言動から「首都圏内にあるのではないか」と読者間では推測されている。
「ドンブリン」というゆるキャラが存在。他にも、「どんぶりやまどうぶつえん」「ドンブリヤマ遊園地」「ドンブリゾートスパ」といった観光地にくわえ、「クリームハムカツプリン」という名物品もある。観光に栄えた地域である模様。

文福薬湯堂(ぶんぷくやくゆどう)

文福薬湯堂の店前。

化けタヌキのリンが、人として働いている薬湯店。店主のおばあちゃん、それから彼女の孫の和一が共に運営している。
店主が化けタヌキに理解がある事もあり、化けタヌキ達の集い場として作中に多く登場する。

柿葉寺(かきのはてら)/タヌキ寺

柿葉寺が紹介された雑誌を思い返す元人間のタヌキ。

こがね丸の力でタヌキになったものの、山での生活に馴染む事ができなかった元人間のタヌキ達が暮らしている寺。住職である緑雲の指導のもと、修行をしつつ、タヌキの姿のまま寺での生活を謳歌しているタヌキが多い。そうした光景が話題を呼び、地元の者からは「タヌキ寺」という愛称で親しまれている。

『お前、タヌキにならねーか?』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

こがね丸「人間やめるなら、タヌキにならねーか?」

『お前、タヌキにならねーか?』の中心核である化けタヌキ・こがね丸のセリフ。本作の第1話で、もう1人の物語の中心核である人間の雪が自殺を図ろうとした際に、こがね丸が彼女にかけたセリフとなっている。
オムニバス形式である本作は、基本的になんらかの事情で「人間をやめたい」「生きることがしんどい」といった苦しみを抱えている人間が、こがね丸の力でタヌキになるところから話がスタートする。この「人間やめるなら、タヌキにならねーか?」とこがね丸が雪に声をかけるシーンは、そうした『お前、タヌキにならねーか?』の作風が最初に描かれた場面と言っても過言ではない。多くの読者に愛される事となった漫画『お前、タヌキにならねーか?』の始まりを告げる、伝説的な名シーンである。

野々原雪「タヌキにも泣きたい時があるんだ…こんなことしか出来ないけど…幸せな夢を見られますように…」

雪が自身の恩人であるこがね丸を自分の部屋に招いた際に、心の中で呟いたセリフである。
たまたま自分の部屋にこがね丸を招く事が出来た雪。日々のお礼もかねておもてなしをするが、その最中にこがね丸が雪の部屋で昼寝を始めてしまう。その時、雪は彼が涙を流しているのを目にする。
普段はおおらかで、どんな事があっても寛容的に受け入れ、タヌキとして楽しそうに生きているこがね丸。そんな彼の姿ばかりを見ていた雪にとって、こがね丸が眠りながら涙を流している姿は衝撃的で驚いてしまう。だが同時に、タヌキにもタヌキなりの辛さがある事を彼女は察する。
『お前、タヌキにならねーか?』は、あくまでも人間達の生きにくさを題材とする話が多い。だが、その傍らで化けタヌキや化け狐達など、人間以外の動物達が抱えている者にも焦点を当てることがある。一見マイペースに生きている彼らにも、それぞれに抱える悩みがあるという事実は、どんな人であれ、皆何かを抱えながら生きているというメッセージ性も含まれているようにも見て取る事が可能だ。
泣いているこがね丸のために「タヌキにも泣きたい時があるんだ…こんなことしか出来ないけど…幸せな夢を見られますように…」と願う雪の優しさからは、このシーンに隠されたメッセージ性に対する願いそのものにも見え、本作に内包された切なさと温かさの両方を感じられる名セリフだ。

雪の母「ユキ生きててくれてありがとう。どんな風に生きたって構わない。 タヌキだっていいのよ。自分のように思うように生きてさえいれば」

雪の母が、自分の娘がタヌキになった経緯を知った際に口にしたセリフ。
昔から人の事を気遣い、自分の事で心配させまいとしてきた雪。そんな娘の姿を見ていた雪の母は、いつも彼女の身を案じていた。それは雪が大人になってからも変わりなく、彼女が大人になり家を出てからしばらくしたある日、娘の様子を見にサプライズで雪のもとを訪れる事にする。だが、その先で待っていたのは、タヌキとなって暮らしている雪の姿だった。
驚く雪の母。だが、その驚きは、娘が日々の暮らしの疲れから自殺を図ろうとしていた事実を前に、すぐに娘が生きていてくれたという事実への感謝へと変わる。「ユキ生きててくれてありがとう。どんな風に生きたって構わない。 タヌキだっていいのよ。自分のように思うように生きてさえいれば」というセリフからは、雪の母親である彼女にとって、娘の雪がどれだけ大事な存在であるのかが伺える。母が娘を思うセリフに、このエピソードが公開された当時、公開先であったXのコメント欄には多くの子どもがいる読者からの共感が寄せられた。読者の心を胸打った名セリフである。

『お前、タヌキにならねーか?』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『お前、タヌキにならねーか?』は作者のスランプがきっかけで生まれた漫画

1215chika
1215chika
@1215chika

目次 - Contents