お前、タヌキにならねーか?(おまタヌ)のネタバレ解説・考察まとめ

『お前、タヌキにならねーか?』(略称『おまタヌ』)とは、漫画家の奈川トモによる「タヌキ」を題材にした、動物もの兼妖怪ファンタジー漫画である。Webコミック配信サイト「comicPOOL」にて2021年から連載を開始。さまざまなWeb漫画のランキングに名を連ねる大人気Web漫画の1つとなっている。
本作は、化け狸のこがね丸と人間の野々原雪を中心にオムニバス形式で話が進められる。さまざまな問題を抱える現代人が、人間社会で暮らす化け狸達達と交流をしながら、それぞれに抱えるものと向き合っていく。

『お前、タヌキにならねーか?』の概要

『お前、タヌキにならねーか?』とは、漫画家の奈川トモ(ナガワ トモ)による漫画である。略称は『おまタヌ』。ジャンルは動物もの妖怪ファンタジーもの、両方の側面を持つ。「がんばりすぎてるあなたの心に寄り添うハートフルタヌキストーリー」というキャッチコピーのもと、Webコミック配信サイトの「comicPOOL」(コミックプール)にて2021年から連載が開始された。
作品公開当初はXを通して連載を行っていた。当時は「タヌキシリーズ」の名で連載しており、『お前、タヌキにならねーか?』は連載が行われる際につけられたタイトルである。以降は『おまタヌ』の通称で呼ばれる事も増える。
comicPOOLで連載を開始した2021年には、株式会社KADOKAWAが行っているユーザー参加型の漫画大賞「次にくるマンガ大賞 2021 Webマンガ部門」にノミネートされる。またその翌年2022年には、TSUTAYA主催のユーザー参加型漫画大賞「第6回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」にて7位にランクイン。さらに翌年の2023年に行われた「次にくるマンガ大賞 2023 Webマンガ部門」にて5位にランクインをし、同年に行われたWeb漫画を対象とした漫画の総選挙「WEBマンガ総選挙2023」にて6位にランクインした。Web漫画の前線で活躍する、大人気Web漫画の1つとなっている。
基本的には1話完結型だが、ストーリーの根底に関わると思われる設定に関する話は、数回にわけて連載される場合がある。「いじめ」や「自殺」、「差別」や「社会的な人間関係」等、重たい題材を取り扱う話が多い。だが、作品全体が明るく前向きな雰囲気がある事やタヌキや狐などの動物達の可愛らしさもあわさり、ファンからは癒し系漫画として高く評価されている。

本作のストーリーは、化け狸のこがね丸(こがねまる)と人間の野々原雪(ののはら ゆき)を中心に、オムニバス形式で綴られていく。人間に扮しながら、人間社会で暮らしているこがね丸を筆頭とした化け狸達や化け狐達。彼らと、雪を中心としたさまざまな悩みや問題を抱えた現代人の交流、そこから生まれていく人々の成長や変化が描かれていく。

『お前、タヌキにならねーか?』のあらすじ・ストーリー

タヌキになったOL

OLとして働く野々村雪(ののむら ゆき)は、ある日、仕事ばかりの毎日に疲弊し、自殺を図ろうとする。だがその時、化けタヌキのこがね丸に出会う。こがね丸は、同じ化けタヌキ達が人間になりたがって人間社会で暮らすようになってしまったので、山に住むタヌキの数を増やす為に人間をタヌキに勧誘してる最中だった。疲れていた雪は、こがね丸に誘われるがままに、彼の使う「変化の術」によってタヌキになる事を選ぶ。
タヌキになってこがね丸と一緒に過ごしている内に、雪は忘れていた「生きる」という感覚を思い出す。すると雪の変化の術が解け、元の人間の姿に戻る。こがね丸は人間に戻った雪を人間社会に送り届けようとするが、雪の方はまた仕事ばかりの日々に戻るのかと絶望してしまう。すると、その雪の気持ちに呼応して変化の術が発動し、雪は再びタヌキに戻る。
タヌキの方が性にあっていたと気づいた雪。以来、彼女はこがね丸を通じてタヌキと人間、両方の社会で生活をしていくようになる。

こがね丸の抱える過去

こがね丸は雪の件以降も変わりなく人間をタヌキに勧誘し続けていく。その傍ら、雪の方は人とタヌキ、両方の生活を続けていた。こがね丸以外の化けタヌキや化けキツネの知り合いも増えていき、次第に雪の周りは賑やかなものになっていく。
ある日、雪はこがね丸が何か秘密を抱えている事を知る。さらに雪は、こがね丸の秘密を知っている柿葉寺(かきのはてら)の住職・緑雲(りょくうん)から、こがね丸に深入りをしないように忠告されてしまう。
動揺する雪。だがこがね丸の持つ優しさを知っていた彼女は、これからも変わりない態度で彼と接していく事を決める。雪のこがね丸に対するまっすぐな気持ちに触れた緑雲は、彼らの関係を静かに見守る事にする。

化けイタチ・藤万(とうま)の襲撃

ある日、化けタヌキ達による化け祭りが開催される。化け術を競う祭りで、一番になった者には褒美もあるとのこと。こがね丸はもちろん、仲間の化けタヌキ達も張り切って祭りに参加する。しかしこの褒美は、こがね丸の命を狙う化けイタチの藤万(とうま)が用意した罠だった。
藤万は、「貂の妖」(てんのあやかし)と呼ばれる凶悪な妖怪を封じる祠を守る祠守り(ほこらまもり)である。しかし祠守りの役割をまっとうするため、山から離れる事ができない現状を憎んでもいた。そんな時、貂の妖本人にそそのかされ、自由を手に入れるためにこがね丸暗殺を企て始めてしまう。どうやら貂の妖が封じられた原因に、こがね丸がなんらかの関与をしているらしい。
藤万の襲撃に気づいたこがね丸自身の奮闘により、なんとか事態は収集。一連の事を通して藤万の苦しみを知ったこがね丸は、代案として自分と藤万が友達になる事を提案する。藤万はそれを拒否するが、しかし心の底では彼の言葉に心を揺さぶられていた。
そんな2人の姿を目の当たりにした雪は、こがね丸の抱えている秘密の事を思い出す。それが2人の関係と何か関りがあると察した彼女は、こがね丸の抱えるものを気にし始める。

貂の一族が隠していた秘密

化け祭りからしばらく経ったある日。こがね丸は藤万の側近の化けイタチ・一識(いっしき)と九世(くぜ)から、貂の一族の様子がおかしい事を聞く。貂の一族は藤万が生まれた一族の名で、化けイタチの中でも最も権力がある一族であった。
こがね丸は貂の一族の様子を見に、一族の邸に忍び込む。そこで彼が目にしたのは、藤万の両親がすでに他界しており、藤万の弟である暁万(きょうま)が一族の新当主になっていたという事実だった。暁万は側近の化けイタチ・岩十(いわと)と共に亡き母からの遺言を守って、彼女の死を藤万にバレないように画策していたのだ。
藤万側が一族を怪しんでいると知った暁万は、意を決して母の死を兄に告げる。真実を知った藤万は悲しみにくれてしまう。
藤万を元気づけるため、こがね丸は一識と九世、そして仲間の化けタヌキや化けキツネ、雪の力を借りて藤万を励ますための宴会を開く。藤万はそれに驚くが、すぐに意図に気づき、彼らとの宴会を楽しむ。

こがね丸と土竜の関係

ある雨の日、こがね丸は緑雲と一緒にかつて柿葉寺でタヌキとして暮らしていた人間・古谷(ふるや)のもとに向かう。古谷が営んでいる洋服屋で談笑していると、そこへ妖怪の土竜(もぐら)が雨宿りをしにやってくる。土竜はかつて貂の妖と戦ったとされる存在であり、人間に対しても少々敵対心を持っている様子だった。
以降、こがね丸と土竜が出会う事はなかったが、ある日、こがね丸の友人である化けタヌキの楽太郎(らくたろう)が、道に倒れていた土竜と遭遇する。空腹で倒れていた土竜に、楽太郎はその時持っていた家族や自身が働く旅館「狸楽庵」(りらくあん)の従業員用に買っていた土産の一部をあげる。そうして恩を返したがる土竜に、楽太郎はいつか狸楽庵に来てほしいと誘う。それが、その後に起こる狸楽庵の窮地を救うきっかけになるとは、楽太郎も土竜もまだ知らなかった。

『お前、タヌキにならねーか?』の登場人物・キャラクター

タヌキ

こがね丸/黄金丸

『お前、タヌキにならねーか?』の中心核にあたる化けタヌキ。黄金色に似た毛色のタヌキで、人間に化けている時は、その色が髪色に現れる。人間時は常に黒いキャップ帽を被った若者に変化している。山に住むタヌキが減ってきたという理由から、タヌキの数を増やすため、変化の術を使って人間をやめたい者達をタヌキに勧誘している。とはいえ、強制的にタヌキに勧誘するつもりはない模様。その証拠に、タヌキでの暮らしを体験した後に人間に戻りたいと願った者には、かけていた変化の術が自然と解ける仕組みにしてある。また、タヌキになった元人間の中で「タヌキの野性的な生活には慣れない」という者達には、移住先として知り合いが住職をしている柿葉寺という寺を紹介している。
性格はマイペースかつ天然。人間の姿の時は美青年ではあるものの、元がタヌキのせいで人間文化に乏しい一面があわさってしまい、トンチキな発言をする事が多い残念なイケメンに仕上がってしまっている。だが、「タヌキにならない人間には用はない」と言いながらも、今にも死にそうな人間を助けてやったり世話を焼いたりする面もあるため、根はとても心優しいタヌキである模様。
そうした穏やかさを持つ反面、同じ変化の術を使うイタチ達からは「バケモノ」と恐れられるほどに強い力も保持している。また実は、かつて凶悪な妖怪として恐れられた「貂の妖」を封印する際に一役買った黄金丸(こがねまる)というタヌキと同一人物である事も作中で明かされている。なぜ、こがね丸だけが異様に力が強いのか、どのような家族のもとで育ってきたかなどの詳細な過去は不明だが、最低でも貂の妖が猛威を奮っていた江戸時代よりも前に生まれた存在である事は確かだ。
自分がタヌキにして命を救った人間・野々原雪のことを気にかけている節がある。

リン

人間社会に混ざって暮らす、メスの化けタヌキ。子どもの頃に排水溝でおぼれていたのを人間の和一(かずいち)に助けられ、その恩を返すために彼の祖母が店主を務めている「文福薬湯堂」(ぶんぷくやくゆどう)で住み込みの従業員として働いている。物語登場当時は、タヌキである事を隠して働いていたが、ある時、店主のおばあちゃんにバレてしまう。以降は人間とタヌキ、両方の姿で過ごすようになる。また、自身の恩人である和一に恋をしている事も明かされている。
明るく快活かつ勤勉な性格。人間社会に馴染むために必死で人間文化の事を学んだらしく、化けタヌキ達の中で一番人間社会への造詣が深い。ほかにも、この性格を活かして、文福薬湯堂の看板娘としてお店が繁盛するように奮闘し続けている。お店全体が和の雰囲気でできているからか、人間時は着物姿でいる事が多い。外出時は洋服も着るため、別に洋装が嫌なわけでない模様。タヌキの姿になると、頭に小さな花をつけている。
同じ化けタヌキのこがね丸とは友人同士。彼経由で人間である雪とも知り合っている。雪と知り合って以降は、女性同士、時々街へ2人で遊びに行っている模様。

タヌキチ/田沼小吉(たぬま しょうきち)

人間社会に混ざって暮らす、オスの化けタヌキ。人間の女性・リクと夫婦として一緒に暮らしている。リクとは、タヌキであった頃に大怪我をしていたところを助けられたのがきっかけで出会った。とはいえ、タヌキチ自身は自分がタヌキである事は明かしておらず、「田沼小吉」という名の人間としてリクと共に暮らしている。なお、リクの方は彼がかつて自分が助けたタヌキである事にうっすらと気づいているようだが、それを追求する姿勢は見せていない。
人間社会で生きてはいるものの、まだ完全に人間文化を理解しきれてはおらず、小学生向けの教材で文字の練習をするなど、日々勉強を続けている。そのため、仕事らしい仕事に就くことは適わず、在宅ワークで仕事を行っているリクの代わりに専業主婦として家事に精を出す日々。料理が一番得意だという。

1215chika
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