ダブルキャスト(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『ダブルキャスト』は、1998年にソニー・コンピュータエンタテインメントより発売されたプレイステーション用のアドベンチャーゲームで、「見るドラマより、やるドラマへ」をキャッチコピーに掲げる『やるドラ』シリーズの第1作にあたるサイコ・サスペンス作品。
物語は選択肢によって幅広く分岐し、中でも「ジェノサイド・エンド」は衝撃度が高いとされ、多くの反響があった。
記憶喪失のヒロインを軸に物語は展開していき、主人公たちは所属する映画研究会の活動を通し、起こり始める不穏な事件に巻き込まれていく。

『ダブルキャスト』の概要

『ダブルキャスト』は1998年にソニー・コンピュータエンタテインメントより発売された、プレイステーション用のマルチエンディング型アドベンチャーゲーム。
「見るドラマより、やるドラマへ」をコンセプトに掲げ、フルボイス、フルアニメーションで物語が展開する「やるドラ」シリーズの1作目にあたる作品である。
プレイステーションで発売された4作品は全て「大学生の主人公と、記憶喪失のヒロイン」で設定が統一されており、各作品が四季に対応している。本作はこのうちの「夏」にあたる。
物語は「本線」と呼ばれる1本のメインストーリーから選択肢で細かに分岐していく形となっており、エンディングの数も、グッドエンディング4種、バッドエンディング17種、ノーマルエンディング6種と非常に多い。
劇中の全シーンがアニメーションになっており、企画・原作・アニメーションの制作は、代表作に『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』や『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』などを持つProduction I.Gが担当した。
徹底したアニメーションや、『機動戦艦ナデシコ』で知られる後藤圭二がキャラクターデザインをしたことも話題となり、発売週の売り上げは10万本に達した。
また、1998年にゲーム雑誌『週刊ファミ通』の「新作ゲームクロスレビュー」において、シルバー殿堂入りも果たしている。
1999年にはドラマCDが発売し、ゲームでは音声のなかった主人公の声を鈴村健一が担当。
2000年には廉価なベスト版、2005年にはプレイステーションポータブルへの移植版として、ワイドスクリーンに対応し、設定画の追加などでCGギャラリーを増強した『やるドラ ポータブル ダブルキャスト』が発売された。

飲み会の後に酔いつぶれて道端で寝ていたところを、赤坂 美月(あかさか みつき)という女性に介抱され、名前以外の記憶をすべて喪失した彼女を自宅に居候させることになった主人公。
自身が所属する映画研究部に伝わるいわくつきのシナリオ「かこいめの寝屋」を映画化するにあたり、主演女優を探すことになった主人公は美月を推薦する。
撮影は進んでいくが、彼らは美月を取り巻いて起こり始めた、不穏な事態に巻き込まれていくことになる。

『ダブルキャスト』のあらすじ・ストーリー

美月との出会い

主人公が目を覚ますと、見知らぬ若い女性に膝枕をされていた。
この女性は、飲み会で泥酔してしまい、ゴミ捨て場で酔いつぶれて寝てしまった主人公を助け出し、介抱してくれたのだという。
介抱のお礼にコーヒーを奢ってほしい、という女性とファストフード店に入った主人公は、その女性が彼を助け起こすまでの記憶を全て失っているということを聞く。
覚えているのは赤坂 美月(あかさか みつき)という名前だけで、どこに行ったらいいかもわからない、という美月に、主人公は自分の家に居候することを提案する。
突然の申し出を断られるかと思っていた主人公だが、意外にも美月は乗り気でその提案に乗ってくるのであった。
その後、それなりに2人でうまく生活を回しながらも、大学の夏休み中に彼女の記憶が戻るか、美月に該当しそうな行方不明人の情報が見つかることを期待していた主人公だったが、なかなかうまくはいかなかった。
そんな日々のさなか、美月は少しでもお金の負担を減らしたい、とガソリンスタンドでバイトを始め、休日には2人で一緒に映画を見に行くなどして徐々に信頼関係を築いていく。

ある日、主人公は所属している映画研究部(映研)のミーティングに出席していた。
取り巻きの剛田と花園を従えた部長の篠原は、文化祭に出展する映画についての話を始める。
この数年、映研はなかなか目立った賞を取ることもできず、大学から部室の明け渡しも勧告される始末。
何とか部を存続すべく、篠原が持ち出したのは映研に伝わる「かこひめの寝屋」というシナリオだった。
この「かこひめの寝屋」は男が囲い女(愛人)を拾うという筋書きのものだが、過去に映研がこの映画を撮影した際、主演女優が演技にのめり込むあまり退部者が続出し、最後に残ったカメラマンと女優がラストシーンで投身自殺を遂げたという、重いいわくのあるものである。
何としても完成させるべく主演女優を探しているため、協力してくれる知り合いがいたら紹介してもらいたい、ということで篠原の話は終わった。
同期の二村と思い当たる女性について話をする主人公の脳裏には、美月の姿が浮かんでいた。

撮影開始

主人公の紹介で映研の部室にやってきた美月は、部員たちと篠原から認められたが、美月の相手役になる主演男優の佐久間は、何か思い当たる点がある様子を見せる。
しかしその場は篠原から「撮影中、演者との恋愛はご法度」という映研の鉄の掟を改めて周知されるにとどまり、とりあえずのところ、美月は翌日からの撮影に参加することになった。
その顔合わせの帰り道、美月は自分を目掛けて突っ込んできた不審なバイクに轢かれかける。
更に、主人公宅の電話には、謎の男から「あの女から離れろ」と脅迫まがいの留守番電話が残されていた。

「かこひめの寝屋」の撮影は、験を担ぎたい篠原の提案で、前回の主演女優の墓参りをすることからスタートした。
普段の豪快な様子から、きちんと演じられるか心配する主人公をよそに、意外な演技力を見せた美月は、順調にテイクを重ねていく。
しかし撮影の合間の休憩時間、美月は「以前ここに来たことがあるような気がする」と零しながら不安がる様子を見せた。
後で探してみよう、と声をかける主人公だが、その時美月の言葉を裏付けるように、二村が偶然「赤坂家の墓」を探し当てる。
そして主人公たちは、その墓に美月の名前があるのを見つけるのであった。
美月は動揺したものの、その後も登場シーンを演じ切り、撮影は滞ることなく進んだ。
その日の撮影後の映研の部員総出の飲み会で、佐久間と親し気に会話する美月を見た主人公は、嫉妬心を覚えて先に帰ることにする。
美月はすぐに主人公の後を追ってくるが、バイクに乗って現れた謎の男に襲われる。
主人公が男を撃退したため怪我をすることはなかったが、男に「お前が生きているわけがない」と言われた美月はひどく混乱し、主人公の前で泣き崩れてしまう。

男に襲われた翌日も美月はバイトへ行き、表面上はいつも通りの生活を送る2人だったが、篠原から「主演の佐久間が腕の怪我で参加できなくなったため、佐久間と背格好の似た主人公を、主演男優代理に据えて撮影を続行する」という旨の連絡が入る。
ためらう主人公だったが、美月と至近距離で撮影ができる、という下心もあって断ることもできず、主演男優代理として映研の撮影夏合宿に参加することになった。

撮影合宿

夏合宿は、篠原の実家が所有している、海辺の豪奢な別荘で行われることになっていた。
船旅を終えて到着後、すぐ臨んだ出演したシーンの撮影中、主人公は美月を女性として意識しすぎるあまり、鼻血を出して倒れてしまう。
玄関先で寝転び、自分のせいで撮影が中断されてしまったことで、情けなさを噛みしめていた主人公。
するとその頭上から、突然植木鉢が降ってきた。
咄嗟に身を躱して直撃は免れたものの、明らかに自分を狙うように落ちてきた植木鉢。
一体誰が、と考える主人公の耳に、女性の悲鳴が聞こえてくる。
悲鳴は美月の部屋からのものだった。一行が部屋の中に入ると、ガラスの破片が散乱する部屋の中に美月が倒れている。
「鏡に誰かが映っていて、冷たい目で自分を見ていたので、怖くなって」と説明する美月はひどくナーバスな様子だった。
彼女を1人にすることは危険と判断した一同は、篠原の部屋に美月を移動することを決める。

その夜、寝付けなかった主人公は、埠頭で個人練習をすることにした。
台本を片手に1人、台詞の練習をする彼の元に美月が現れ、練習に付き合うという。
練習が終わり、この日のことを思い出して怯え、落ち込む美月を主人公は励まし、「美月は自分に必要な存在だ」と伝える。
美月は素直に喜んでいることと感謝を伝え、想いが通じ合った2人はキスを交わすのであった。

美月との練習の甲斐あってか、翌日の撮影は順調に進んだ。
しかし、台詞の最後に美月は静かながらも何かが取り憑いたかのような演技をし、主人公の喉を締め上げるというアドリブを見せる。
篠原からのカットの声が掛かると同時に美月は正気に戻り、呆然と自分の手を見つめていた。

不穏の始まり

惹かれあう主人公と美月。

合宿を終えて帰宅した2人だが、突然篠原が訪ねてきて強引に部屋に上がり込んでくる。
篠原は既に2人が同居していることについては把握しているようだった。
話し合いの場を設け、2人は美月が記憶喪失で、主人公の家に保護する形で同居していることを篠原に説明をする。
篠原は2人の言葉に嘘はないと判断したようだが、「映画が完成するまでは、やはり主演女優とスタッフの恋愛は認められない」と2人を諭した。
そして、「皆には内緒にしておく、映画が完成してからは好きにしたらいい」と付け加え、美月を伴って主人公の家を出ていく。
美月はそのまま、篠原の親戚が所有するウィークリーマンションの一室に身を置くこととなった。

その後間もなく、主人公宅に嫌がらせが続くようになった。
マンションの郵便ポストには猫の死骸が入れられ、部屋のドアには罵詈雑言が書き込まれる。
美月がいないことと、連続する嫌がらせに疲弊した主人公は、撮影した映画の編集作業に没頭して過ごす。
程なくして佐久間が怪我から復帰し、撮影が再開した。
久しぶりに美月と顔を合わせることができて喜ぶ主人公だが、篠原の目を気にして話すこともままならない。
フラストレーションを覚えていた主人公だが、出演シーンを全て撮り終えてすぐに、美月が家に戻って来た。
荒れ果て、インスタントの食べ殻だらけの部屋に呆れながらも久しぶりに手料理を振舞おうと台所に立つ美月を見て、主人公は彼女が自分の部屋にいることの喜びを噛みしめる。

するとそこで、主人公の携帯電話に、篠原に電話番号を聞いたという佐久間からの着信があった。
「どうしても2人きりで話したいことがあるから、大学付近にある廃病院まで来てほしい」という佐久間に主人公は了承の返事をし、2時間後に約束を取りつける。
家を出ようとする主人公を呼び止めた美月は、「バイクで襲ってきた男は佐久間に似ていた気がするので、気を付けてほしい」と伝えてくる。

たどり着いた真相

病院の前に佐久間はいないようだったが、朽ち果てた窓の一室に明かりが灯っているのを見て、主人公は建物の中に足を踏み入れる。
すると、暗がりから刃物を持った人影が飛び出し、主人公に襲い掛かってきた。
腕を切りつけられながらも致命傷を免れ、何とか人影を撃退した主人公が後を追いかけていくと、病室で倒れている美月を見つける。
どうしてここにいるのか、と問い詰める主人公に、美月は「主人公が怪我をしたから助けてくれ、と佐久間から電話があった」と経緯を語る。
話を聞いた主人公が窓から外を覗くと、そこにはバイクに乗った佐久間の姿があった。
主人公は怒声を浴びせるが、佐久間はそのままバイクで逃げ出してしまう。
佐久間を追って外へ出た主人公は、「南西総合病院」と書かれた封筒が落ちているのを見つける。
拾って中を改めると、そこには美月がテニスをしている写真が2枚入っていた。

警察沙汰にするべきか否か、判断が付かなかった主人公は篠原を頼ることにした。
怪我の手当をし、気絶してしまった美月を寝かせたまま、主人公は篠原を頼った経緯についての説明をする。
疲弊した様子の主人公に、警察沙汰にせず、自分を頼ったことはいい判断だった、と篠原は声を掛けて労った。
目を覚ましてすぐにパニックに陥り、泣き始めた美月を宥めて篠原に託し、主人公は自宅での映画の編集作業に戻ることにする。
編集をしながら、佐久間が落としていったと思われる封筒と写真について考える主人公。
佐久間がなぜ美月の写真を持っていたのか、この病院は何なのか、と考えながら作業を勧めていく主人公は、編集しているフィルムの中に不可解な点を見つける。
二枚の写真、別荘で自分に落ちてきた植木鉢、嫌がらせ、病院で襲い掛かってきた人影。
そして編集していて見つけた、このフィルムの不可解な点。
これらを推理していくと、唯一全てを実行できた人物がいることに行き当たった主人公は、携帯電話を手に取った。

主人公は、映研の部室に呼び出した美月と対峙していた。
主人公はまず、編集の終わった「かこひめの寝屋」を上映し、美月の利き手がシーンごとに違っていることを指摘した。
そして、廃病院での「佐久間からの電話があった」という美月の発言についても「佐久間が自分の家に美月がいることを知っていたはずがない」と否定する。
美月は留守番電話の伝言を聞いた、と言い逃れをしようとするが、伝言を再生するためには、美月に教えていない暗証番号を押さなくてはならないことを理由に認めなかった。
更に主人公は、佐久間が病院前で落としていった封筒に連絡先が印刷されていた「南西総合病院」へ赴き、精神科医の森崎に会って話をしてきた際の映像を美月に見せる。
映像の中の森崎は、赤坂美月は既に故人であるが、美月の妹の志穂は存命で、自分の担当患者であることを明かし、姉妹の置かれていた境遇を主人公に説明していた。
悪い男に騙されて男性不信に陥った美月は、志穂に恋人ができると交際を邪魔して別れさせ、暴力を振るったという。
しかし、それでも救われることがなかった美月は、自らの命を絶った。
森崎は、こうして心が蝕まれていった過程を、志穂自身が語っている映像資料も提供してくれた。
志穂は自らの中に、主人公が出会った「美月」、凶暴な姉である「美月」、そして本来の「志穂」の3つの人格を持っており、その治療のために森崎のカウンセリングを受けていたことが、映像の中で明かされていく。
美月の本名は「赤坂 志穂」であり、一連の事件の犯人は、志穂が抱える凶暴な姉の人格である「美月」だったのだ。

「ダブルキャスト」

ここまで推理した全てを突きつけると、黙っていた美月は豹変し、「悪い男から守るため、志穂を殺す」と部室を飛び出していく。
するとそこには、篠原や二村をはじめとした、映研の部員たちが待ち構えていた。
主人公から全ての事情を聞いた彼らは、志穂を救うために主人公と協力し、罠を張っていたのだ。
主人公は部員たちに次の指示を出し、自身は美月を追いかける。

美月の人格は、校舎の屋上から飛び降りることで志穂を殺そうとしていた。
主人公は姉の人格の陰に隠れた志穂を呼び戻すため、必死に説得を試みるが、不意打ちで彼女からの攻撃を受けてしまう。
とどめを刺されそうになったその時、佐久間が現れて主人公の窮地を救った。
佐久間は「自分はかつて志穂と交際していたが、美月に邪魔されて別れた」と、自らの過去を告白する。
彼は「かこひめの寝屋」の撮影前の顔合わせの際、死んだはずの美月が目の前に現れたことに驚き、その後は学校を休学してまで、彼女について調べていたのだという。
しかし、その佐久間も不意をついた美月からの攻撃を受けて倒れ、美月は再び主人公に襲い掛かる。
主人公はなんとか彼女を止めると、自ら屋上の柵の向こう側に立ち、ここから自分を押して殺すようにと挑発する。
言われたとおりに主人公を突き飛ばそうと手を伸ばす美月だが、その一瞬、主人公は美月の手を引き、彼女を巻き込みながら空中へ飛び出していった。

それから数日後、力尽きて眠る部員たちを背に、無事完成した「かこひめの寝屋」を見ている主人公と志穂。
主人公が志穂を巻き込んで屋上から飛び降りたのは、「自分と心中する状況を作ることで、美月を消す」という、最後の手段だった。
命がけの荒療治ではあったが、飛び降りた先には二村や篠原の手によって分厚いマットが敷いてあり、彼らは無事、無傷で救助されたのである。
その荒療治は成功し、「美月」は消滅したが、美月として主人公たちと過ごした時間は記憶に留めたまま、志穂は本来の人格を取り戻すことができていた。
巻き込んでしまった映研の部員たちや、大けがを負わせてしまった佐久間への罪悪感を口にする志穂に、主人公は「本来の志穂として仲良くすることが、一番の罪滅ぼしになる」と優しく彼女に声をかける。
志穂は「主人公に出会えたので姉には感謝したい」と言い、主人公にキスをしようとするが、密かに目を覚ましていた部員たちがカメラを構えていることに気が付き、慌てて離れる。
そこで二村が「2人のキスを見るのは初めてではない」と笑いながら、埠頭で2人が抱き合っているのを隠し撮りしていた映像を流し始めた。照れながら慌てふためく志穂。

一大事を共に乗り越えた部員たちの暖かい祝福と冷やかしの声を受け、2人はもう一度キスを交わすのであった。

『ダブルキャスト』のゲームシステム

基本情報

『ダブルキャスト』は全編フルアニメーションで物語が展開する、マルチエンディングのアドベンチャーゲームとなっている。
いわゆるフローチャート型のアドベンチャーで、選んだ選択肢に沿って、展開が細かに分岐しながら進行していく。
総エンディングも数も全27パターンと多く、プレイ周数を重ねることによって出現する選択肢もある。
これによって一周目では知ることができなかった情報なども得られるようになる、到達できなかったエンディングも見られるようになるなど、やり込み要素は非常に多い。
分岐を辿って見ていったシーンやエンディングは、セーブデータ上に「達成率」として表示される。
またフルボイス、フルアニメーションという特色から、一度通ったシナリオは選択肢を出現させずに、通常のアニメーションのように鑑賞することが可能。

リプレイ機能

プレイしたデータのシナリオを、選択肢なしでアニメのように見られる機能。

達成率

全分岐から見た既読率を表す数字で、セーブデータ上にパーセンテージで表示されるようになっている。
様々な分岐を辿ってシナリオを進行することで上がっていき、特定の数値を達成するとキャラクターからのお礼メッセージが流れる。
「おまけ」の出現条件にも関わる重要な要素となっている。

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