フランダースの犬(世界名作劇場)のネタバレ解説・考察まとめ

『フランダースの犬』とは、1975年1月5日からフジテレビ系で放送されたテレビアニメ。イギリスの作家が書いた小説が原作で、『世界名作劇場』の1作目である。両親を亡くして祖父と2人暮らししている少年のネロは、乱暴な飼い主にこき使われている老犬のパトラッシュを保護する。そしてパトラッシュや祖父、ガールフレンドのアロアと貧しくも楽しく過ごしていたネロに様々な試練が訪れるというストーリー。本作は最高視聴率30.1%を記録し、ラストシーンは後世に語り継がれる名場面となっている。

アントワープ

ジェハンが毎日牛乳運びの仕事で訪れる町である。港や教会や学校などがあり、多くの建物が立ち並んでいる。ジョルジュとポールはこの町に住んでいる。

ルーベンスの絵

アントワープの大聖堂にある17世紀のヨーロッパを代表する画家の絵。ネロにとって幼い頃に亡くした母親との唯一の思い出が、このルーベンスのマリア様の絵の前にいる姿だった。また大聖堂には他にも銀貨を払って見られるルーベンスの絵が2枚あり、ネロは死ぬ直前にようやくその絵を見ることができた。

『フランダースの犬』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

放火犯と疑われたネロがアロアとアンドレに励まされる場面

第48話、アンドレからパトラッシュの餌をもらうネロ

風車小屋が火事になり、ハンスに放火犯と疑われてしまったネロは村八分にされて仕事を完全に失ってしまう。おかげでコンクールの絵を描く気力もなくなってしまったが、ネロのことを思い、心から心配するアロアは彼に放火犯ではないと信じていると伝える。さらにアンドレもネロを信じていると語り、パトラッシュの餌を分けてくれた。自分を信じてくれている人がいると元気づけられたネロは、再びコンクールの絵を描き始めた。悲惨な目に遭い、絶望するネロに温かい言葉をかけるアロアとアンドレの友情に心が温まる名場面だった。

ネロがバースの大金を届けた場面

第51話、深く反省しアロアを抱きしめるバース

ある雪の日、バースはコゼツ家や村を揺るがすほどの大金を道端で落としてしまい、大慌てでハンスと共に探しに出る。一方、コンクールの結果に愕然としながら村に帰ってきたネロだが、パトラッシュが雪の中から何かを見つける。それはバースが落とした金貨が入った袋だった。その金貨があれば、ネロもパトラッシュも救われるが、ネロは迷わず袋をコゼツ家に届けに行く。エリーナはネロに感謝し、料理をご馳走しようとするが、彼は断ってパトラッシュを置いて自宅へと戻って行った。その後、戻ってきたバースはネロがお金を届けてくれたことを知る。バースはこれまでネロに冷たい態度を取ってきたにもかかわらず、お金を届けてくれた彼の優しさを感じると共に今までのことを深く反省し、自分の過ちに気づいた。冷たい態度を取ってきたバースを恨むことなく、彼の金貨を拾って迷わず届けに行ったネロの優しさと実直さがバースの心に響いた名場面だった。

ネロ・ダース「僕は今すっごく幸せなんだよ」

第52話、パトラッシュに喋りかけるネロ

コンクールに落選し、絵描きになる夢もパトラッシュと暮らすお金も手に入らず生きる気力を失ったネロは1人で吹雪の中を彷徨い、アントワープの大聖堂へとやって来る。そこではネロが見たくてたまらなかったルーベンスの2枚の絵が公開されていた。ネロは感動して目を輝かせながら絵を鑑賞した後、その場に倒れ込む。そこへネロを探しに来たパトラッシュがやって来て、彼の横に寄り添うように座り込んだ。ネロはいつまでも一緒だと言ってくれているようなパトラッシュに感謝しながら、「僕見たんだよ。1番みたかったルーベンスの2枚の絵を。だから僕今すっごく幸せなんだ」と語る。そしてネロはパトラッシュと共に天国へと旅立った。どれだけ不幸な目に遭っても死ぬ直前まで誰のことも恨まず、幸せだと語るネロの優しさや純粋さが伝わる名言だった。

『フランダースの犬』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

地元ベルギーでは知られていない『フランダースの犬』

本作の舞台となったアントワープは実際にベルギーのフランドル地方にあり、ルーベンスの絵が飾られた大聖堂も存在している。またネロたちが住んでいたブラッケン村は、アントワープに隣接するホーボケンという町がモデルとされている。さらに原作を執筆したウィーダがここを訪れた際に風車小屋が存在していたことや、アロアのモデルと思われる12歳の少女の領主がいたことも分かっている。しかし観光客は日本人ばかりで、地元の人たちには原作の知名度が低く、ほとんど認知されていないようだ。後にホーボケンや大聖堂前にネロとパトラッシュの記念碑が建てられたが、大聖堂前の記念碑はトラックの接触で度々破損していたため、2017年頃に取り壊されて中国が寄贈した新たな石像に置き換わっている。

原作ではネロが自殺するために大聖堂を訪問

原作の小説とアニメのストーリーは相違点が多い。小説は短編のためアニメ版は序盤から中盤までほとんどオリジナルストーリーとなっており、終盤も原作では風車小屋の火事により牛乳運びの仕事が減った後、ジェハンの死が訪れるという時系列となっている。また原作ではネロが自殺するために大聖堂を訪れ、餓死するというストーリーであった。アニメ版の監督である黒田は劇場版の舞台挨拶にて、「悲しくするのをやめて明るさを徹底的に出したかった」と語っており、貧しくてもネロがパトラッシュやアロアやジェハンと一緒にいられるだけで幸せだったという姿を描いている。また原作ではジェハンはナポレオン戦争で負った傷の影響で足が不自由で、リューマチの持病もあり、ネロが6歳の頃には荷車を引けなくなっている。その後、ジェハンは長い間寝たきりとなった末に亡くなっていた。さらにパトラッシュの元飼い主のアンソールは、原作では酔った勢いで起こした喧嘩によって殺されており、ジェハンがパトラッシュの代金を支払うという描写はなかった。

ラストシーンのアイデアはカルピス社長が提案

天使に抱えられるネロとパトラッシュ

アニメ版では最終話でネロが行方不明になり、コゼツ家や村人たちがネロを必死に探していたが、原作ではネロが行方不明になったことに誰も気づかず村人総出のクリスマスパーティーで浮かれていた。そして翌日になってルーベンスの絵を見て微笑むように死んでいるネロを街の人々が見つけ、バースたちが悲しみに暮れるという結末となっている。しかしこの結末を知っているアニメ版の視聴者から、最終話を前にネロたちを助けてほしいと嘆願する声が、フジテレビに多く届いたという。フジテレビ広報部は「子供たちに夢を与える結末にします」としていたが、原作通りの結末にするかどうか悩んだようだ。結果的にアニメ版最終話で、ネロとパトラッシュが天使に抱えられて召されるラストシーンになったのは、スポンサーのカルピスの社長だった土倉の提案だった。土倉は熱心なクリスチャンだったらしく、死は終わりではなく天国への凱旋だという考えを持っていたことから、ラストシーンのアイデアを思い付いたようだ。ちなみにアメリカで出版された『フランダースの犬』は、「こんな結末では可哀そうすぎる」としてハッピーエンドを迎えるように改変されており、ネロが息を吹き返して生き別れたネロの父親が会いに来るという展開になっていた。

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@yoshishi

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