木島日記(漫画・小説)のネタバレ解説・考察まとめ

『木島日記』とは大塚英志原作、森美夏画による漫画及び大塚による小説である。漫画は1998年5月号から2003年まで連載され、単行本は4巻まで刊行された。漫画では未完であったが、2017年に小説『もどき開口 木島日記完結編』が刊行され、小説の形で物語は完結した。同原作者及び漫画家による三部作の第二部にあたり、第一部として『北神伝綺』、第三部として『八雲百怪』がある。仮面の男の書店店主・木島平八郎が主人公のオカルト伝奇ミステリーで、昭和初頭の複雑怪奇な世相がその魅力である。

「組織」が木島に与えた役割である。実験によって発生したものをこの世に「あってはならないもの」とそうでないものに仕分けする。仕分けられた「あってはならないもの」は木島や根津の手によって処分される。

『木島日記』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

人間コンピューター

人間コンピューターの導き出した回答

来る大戦を前にした日本では電子計算機(コンピューター)の研究は不可欠であった。しかし、それを構成する真空管は量も質も任では十分に確保することができない。その代替としてアーヴィング博士は様々な個性を持ったサヴァン症候群の子どもたちを集め、それぞれの思考を繋ぎ合わせることで人間電子計算機を構成することを計画した。但し、子どもらが思考するだけでは成立せず、それを集約する役目としてシャーマンの美蘭が選ばれた。しかし、最初の実験は失敗に終わる。「日本と米国が開戦した場合どうなるか」という問いに「日本の全面降伏」という軍部の意図しない答えが導き出され、更にその回答のために複数の回路(子ども)が断裂した。アーヴィング博士は成功を主張するも認められず、計画は終了となった。

根津の覚醒

母親の首を掲げる根津

タブーから解放された人間は「超人」たりうるという瀬条景鏡の仮説を証明するための実験体とされた根津。人里離れた村で発見された彼は既に三大タブーのうち、人を食す「食人」と更に母親を犯すという「近親婚」まで達成していた。最後に瀬条が用意した実験は「殺人」にまつわるものだった。国家に反逆する集団の隠れ里に放たれた根津は、国家による粛清の名目のもと次々に住人たちを殺していく。彼が最後に殺した人間は、彼自身の母親であった。母殺しまで達成した根津を人間兵器として称賛する瀬条。ただし、兵隊として大量生産することにそぐわない存在であったため、兵隊の雛型を作る研究から戦場での勇者を作る研究へと変更せざるを得なくなってしまった。

木島の悲しい過去

月の肉が張り付いた木島の顔

「組織」の研究者となった木島は、実験体の女性・月と出会う。非人道的な実験を繰り返され、言葉すらままならない月であったが、木島の支援により徐々に人間味を増していく。その様子に心惹かれた木島は、いつしか失われた彼女の記憶を取り戻したいと思うようになる。そんな中、月が組織に移送されることが決まる。木島は組織が月に更なる非人道的な実験を行うことを恐れ、月を連れて逃げ出そうとする。しかし、施設から逃亡しようとする中、月の記憶が甦り、それに耐えきれなくなった彼女は自殺してしまう。失意に落ちる木島は組織の行っていた生き返りの実験を月に施すが、失敗して月は破裂する。その時の肉片は未だ木島の顔に張り付いている。

『木島日記』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

公開されなかった実写映画

木島日記は『木島フヰルム』というタイトルで原作者の大塚英志プロデュース、向田優監督、石井岳龍監修で実写化映画が2013年頃製作されていたが、予告編4本が公開されているのみで2024年現在一般向けには公開されていない。ただし、同タイトルで木築憲一による実写映像がニコニコ動画にて公開されている。本作は『木島フヰルム』のプロモーションビデオに近い作品である。木築が映像制作した経緯として、木築が自主的に制作していた漫画版『木島日記』のプロモーションビデオを、原作者で木築の出身校である神戸芸術工科大学で教鞭もとっていた大塚が気に入り、買い取ったことがきっかけだとしている。

『多重人格探偵サイコ』と繋がる世界観

木島日記は同じく大塚英志原作の漫画『多重人格探偵サイコ』と世界観が繋がっている。時系列としては、『多重人格探偵サイコ』の世界は『木島日記』より未来の世界と位置付けられている。『多重人格探偵サイコ』に登場する科学者グループ「ガクソ(学窓会)」は『木島日記』における瀬条機関及び東方協会を前身としており、また「清水老人」と「清水義秋」、「御恵てう(ミセス・ジョークマン)」と「ナオミ・アーヴィング」は同一人物である。

民俗学者が探偵小説に関わりがあるのは「あるある」

原作者の大塚は『木島日記』を含む偽史三部作をバディの探偵もののシリーズだと称しているが、その理由は登場する実在の民俗学者それぞれが探偵小説の要素を持っているからだとしている。ある評論家は柳田國男の観察眼はホームズ並みだから彼が主人公の探偵小説がおもしろいと言っていた。また、折口信夫は探偵小説のファンであった。さらに、小泉八雲はニューオリンズの新聞記者時代に殺人事件の死体描写で名を馳せた新聞記者だったとか、ゾンビを最初に描いたことでも知られるといった様々な逸話がある。このような事象を大塚は「民俗学者あるある」だとしている。

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