ウォンカとチョコレート工場のはじまり(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』とは、2023年12月に公開されたミュージカル・ファンタジー・コメディ映画である。
ウィリー・ウォンカの若かりし日の冒険の物語であり、夢と挫折、友情が甘くもほろ苦く描かれている。
1964年に出版され、映画化もされているロアルド・ダールの小説『チャーリーとチョコレート工場』の原点を描いた作品である。
ティモシー・シャラメが主演であるウォンカ役を演じ、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズによって公開され、2023年の興行収入第8位の映画となった。

自分に自信を持てないでいる男性である。
決死の覚悟でバーバラにプロポーズをしたものの、途中で自信をなくし返事を聞く前に諦めてしまう。
ウォンカが作ったチョコレートを食べ自分に自信を付け、プロポーズに再挑戦し無事バーバラと結婚する。

日本語吹替:増子敦貴(GENIC)

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の用語

ホバーチョコ

ウォンカがイギリスに降り立った翌日に、ギャラリーグルメの空き店舗の前で販売したチョコレートである。
チョコレート・カルテルの3人がホバーチョコの味見をした。ホバーチョコには、ペルーのマシュマロ、ロシアの塩キャラメル、日本のサクランボが使用されており、あまりのおいしさにチョコレート・カルテルの3人の表情が緩んでしまった。しかし、商売敵のため「最悪のチョコレートだ」、「チョコレートはシンプルであるべきだ」、「ヘンテコだ」と口々に批判した。
ウォンカは批判されたことに驚き、少し悲しそうな顔をするが、「残念です。では次に起こることも嫌でしょうね」と笑って話すと、突然有名ショコラティエ3人の体が浮かび上がった。
ウォンカはこの現象について、チョコレートの中のホバー(アブ)が卵から孵り、羽ばたいているからであると説明した。
映画最後にはチョコレート・カルテルがまたホバーチョコを食べ、3人は空高く吹き飛ばされ、どこかへ飛んで行ってしまった。

Silver Lining(ひとすじの光)

チョコレートを食べたことがないというヌードルにウォンカが作ったチョコレートである。雷雲と太陽の滴を材料にして作った。
試食したヌードルは、「食べなきゃよかった。これからチョコレートのない毎日がつらくなる」と悲しい顔をしたが、ウォンカは「それなら毎日チョコレートをあげる。一生分のチョコレートをあげるよ」と約束した。約束の交換条件として、チョコレートを売り借金を返すためにスクラビンの宿から数時間抜け出す手助けをしてほしいとウォンカは提案した。

ナイトライフ

ウォンカとヌードルが動物園に忍び込むために、動物園の警備員に食べさせたチョコレートである。
夜遊び気分を味わえるチョコレートで、外側はシャンパン味、次に白ワイン、赤ワインのフレーバーが続き、最後に寝酒のポート酒のフレーバーを味わうことができる。
フレーバーと共にノリノリ→感傷的→大胆という風にテンションが変わり、最後に睡魔に襲われる。
再度動物園に忍び込む際にもウォンカたちはナイトライフを警備員に食べさせ、秘密金庫の金庫番の女性グウィニーにも食べさせた。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の名セリフ / 名シーン

ウォンカ夫人「素敵なことはすべて夢から始まるの。だから夢を追い続けて」

ウォンカにチョコレートを作っているシーン

本作には2つのキーワードがあり、その1つが夢(Dream)である。この言葉は、ウォンカの母からウォンカに送られた言葉である。
幼き日のウォンカはギャラリーグルメに自分のチョコレート店を持つという夢があったが、自信を持てずにいた。その夢は叶うことのない「ただの夢かな?」とウォンカは不安そうな表情で母に問いかけると、「素敵なことはすべて夢から始まるの。だから夢を追い続けて。あなたがチョコレートを披露するとき、ママはあなたの隣にいるよ」と母はウォンカに声をかけた。
そしてウォンカはギャラリーグルメで自分のチョコレート店を持つという夢を追い続ける。そして、夢を叶えることにより、病気で亡くなった母をもう一度近くで感じることができるとウォンカは信じている。
孤児ヌードルが家族と過ごす夢についてウォンカに語った際に、ウォンカはヌードルを自由の身にすることを約束する。自分の夢だけでなくみんなの夢も叶えたいというウォンカの素直で優しい心がうかがえる。
映画の最後には、ウォンカは母を近くで感じることができ、ヌードルも母に再開を果たし、2人の夢が叶う。

ウォンカ「Living there, you'll be free. If you truly wish to be.(そこに住めば、あなたは自由になる。もしあなたが本当にそれを望むなら)」

ウォンカが想像の世界に向かうように見える、映画公開前のプロモーション画像の1枚

本作のもう1つのキーワードである想像(Imagination)に関係する、サウンドトラック『Pure Imagination』内の一節である。
「Living there, you'll be free. If you truly wish to be.(そこに住めば、あなたは自由になる。もしあなたが本当にそれを望むなら)」の「そこ」とは、この一節の前にある「There is no life, I know to compare with pure imagination(そこには人生はない、純粋な想像と比べるとね)」というリリックにかかる。すなわちpure imagination(想像の世界)に住めば自由になると言っているのである。ウォンカのチョコレートのアイデアはまさしく想像力の賜物であるが、想像の世界=空想の世界とも解釈できるダークさも感じさせる。
もともと『Pure Imagination』は1971年公開の『チャーリーとチョコレート工場』サウンドトラックにも収録されている。『チャーリーとチョコレート工場』自体も全てはウォンカの空想の世界であり、ウンパルンパはウォンカの空想上の友達であるという説があるほどである。そのため、本作も『Pure Imagination』をサウンドトラックとして使用していることは、これまでの世界観に通ずると言える。
本作では、ウォンカとロフティが工場予定地である廃城を訪問し、ウォンカは廃城でチョコレート工場の完成像を想像する。想像が膨らみ素晴らしいチョコレート工場が完成するが、空想上の友達説もあるウンパルンパのロフティと廃城を訪れていることも相まって、もしかするとチョコレート工場の完成も全て空想の中なのかもしれないという不安感や儚さを残す作りとなっている。

ウォンカ夫人「大事なのはチョコレートではなく、それを誰と分かち合うかよ」

この言葉は、ウォンカの母がウォンカに作ったチョコレートに添えられていたメッセージである。
ウォンカは無事チョコレート貯蔵庫から生還し、裏帳簿の秘密を暴きチョコレート・カルテルを一掃したときに初めて母からのチョコレートの包みを開けた。具体的な年月には触れられていないが、おそらく数年~十数年は食べず肌身離さず持っていたチョコレートである。
チョコレートの包みを開けるとゴールドの紙に母からのメッセージがあり、そこに「秘密を教えるわ。大事なのはチョコレートではなく、それを誰と分かち合うかよ。ママより」と書かれていた。そしてウォンカはヌードルに歩み寄り母のチョコ???ートを分ける。アバカス、パイパー、ロッティ、ラリーにもチョコレートを分け、皆と一緒にウォンカはチョコレートをほおばる。
世界一のチョコレートを作りたいウォンカに「大事なのはチョコレートではない」という言葉をかけたことでウォンカに気づきを与える。そして、何年も食べずに大事に持っていたチョコレートを仲間と共に分かち合う素晴らしさを学ぶ。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の裏話・トリビア・小ネタ・ / エピソード・逸話

ワーナー・ブラザース・ピクチャーズがウィリー・ウォンカのキャラクター権利を再取得

1971年にジーン・ワイルダー、2005年にはジョニー・デップが『チャーリーとチョコレート工場』でウィリー・ウォンカを演じた。

2016年10月、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズはロアルド・ダールの小説『チャーリーとチョコレート工場』(1964年)のキャラクターであるウィリー・ウォンカの権利を再取得し、映画作成を発表した。しかし、この発表のたった2カ月前に、映画『チャーリーとチョコレート工場』(1971年)でウィリー・ウォンカを演じたジーン・ワイルダーが死去しており、新たな映画化には否定的な意見が多かった。これに対しプロデューサーのデイビッド・ヘイマンは、ジーン・ワイルダーとジョニー・デップが演じた『チャーリーとチョコレート工場』とは全く違う、ウィリー・ウォンカの起源となるような映画を作ることを発表した。
発表時には批判的な意見が多かったものの、映画公開後にはガーディアン紙などは、壮観で、想像力豊かで、甘く、面白いなどと作品を評価した。レビューサイトのRotten Tomatoesでは、322人の評論家がレビューし、82%が肯定的な評価をしたと記録されている。

ウォンカ役として検討されていたトム・ホランド

左がティモシー・シャラメ、右がトム・ホランド
2人はどことなく雰囲気が似ており、映画界でも比べられることが多い。並べて見比べると違いが分かるが、並んでいなければ間違えられることもあるという。

Kyoka_Nakano
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@Kyoka_Nakano

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