イーグル(かわぐちかいじ)のネタバレ解説・考察まとめ

『イーグル』とは、かわぐちかいじの政治漫画である。1998年から2001年まで『ビッグコミック』で連載された。新聞記者城鷹志は、唯一の肉親である母を事故で亡くす。悲しみの中、突如アメリカ大統領選挙候補者の1人ケネスから密着取材を指名された。アメリカに渡った城は、ケネスから自分の子供である事を告げられる。動揺しながらも、彼はアメリカ大統領選挙を戦うケネスの取材を行う。その取材の過程で母親が何者かに暗殺された事に気付く。事件の真相に迫りながら、アメリカの抱える政治的問題が描かれていく。

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アフメド・ザマル

トルコ系移民の男性。航空産業ユーイング社の労働組合副委員長を務めている。かつてユーイング技術部に在籍していたエリート技術者でもある。委員長のコズリョフと熾烈な権力闘争を繰り広げている。

その正体は企業側のスパイであり、労組の情報を流していた。更にコズリョフを失脚させるべく、ケネスに彼の弱みを録音したテープを売って裏金を受け取る。だがケネスに貶められ、日頃から行なっていた裏金取引が明るみに出て逮捕されてしまう。

マリア・ステファーノ

キューバ出身でマイアミの坂場で働くレイチェルの実母。

1978年にキューバから難民船で渡米し、1979年にアメリカ国籍を取得した。売春、麻薬で逮捕歴が3回あり、夫に対する離婚訴訟をケネスが担当した経緯がある。その際、ケネスに対して燃える様な恋心を抱いた。

ケネスの養子であるレイチェルの母という事で、ノア陣営に引き取られる。そこで彼らに利用され、ケネスの政治スキャンダルの手駒とされた。マリアは娘のレイチェルを「ケネスとの不倫の末に生まれた子供」とマスコミの前で発言する。これによりケネスの養子であるレイチェルが、彼の隠し子ではないかと世間に疑念を持たれた。その後、鷹志との出会い、ケネスの説得、レイチェルのマリアへの感謝の想い等に触れ、改心する。そして自らのケネスとの不倫発言を撤回した。これによりノア陣営は大打撃を受けてしまう。

ウォルター・クロンダイク

シカゴ・トリビューン紙の名コラムニストを務める男性。アメリカ言論界の伝説と呼ばれる敏腕記者である。

ハリー・S・トルーマンの時代からアメリカの政治を見続けてきた。マリアのスキャンダルを暴いた鷹志を評価し、エラリーを副大統領候補にしようとするケネスの本意と、白人層が多数派でなくなりつつあるアメリカの未来について語り合った。また、「クロンダイク・アワー」という対談番組を有し、グラントとの対談を行う。

ゲイリー・ケリガン

国際連合平和維持軍最高顧問を務める男性。階級はアメリカ海兵隊少将で、後に中将へ昇進。

ベトナム戦争時は中尉でC中隊の中隊長として活動した。ベトナム戦争時のケネスの上官でもあり、戦場では冷静な判断を下す。歴戦の軍人だが、独り言でベトナム戦争を下らないと言い切っている。戦争の本質を見抜き、政治家を嫌っていた。だがケネスから国家安全保障担当大統領補佐官のポストを引き受けるよう依頼され、グラントからもアメリカ軍最前線である第12海兵師団長のポストの後任を依頼される。悩んだ末に最終的にケネスに就き、活躍した。

クルーニー

南部ミズーリ州出身の男性で、ケネスの護衛責任者を務める刑事。階級は警部である。

人種差別が根強い州に生まれた為、人種差別自体には否定的。一方で人種差別に起因した冤罪事件が原因で白人女性レイプ犯の汚名を着せられた黒人の親友と、彼の事を気にかけていた小さな田舎町の警察署長だった父を失った苦い過去を持つ。これにより人種差別の根絶は不可能と諦めていた。ケネスの事も当初は冷めた目で見ていたものの、次第に彼の人柄に惹かれていく。

サイモン・ジョーンズ

ジョージア州に住む白人男性。銀行員として働き、妻子を養っている。

白人優位思想を持ち、大統領選挙で躍進するケネスに不快感を抱く。そして白人有色人種の大統領誕生を阻止すべく、ジョージア州のケネスの演説会でケネスの暗殺を目論む。演説会で彼を銃撃し、逮捕された。ケネスはボディーアーマーを身に付けていた為命に別状は無かった。逆にケネスはこの事件で英雄視される。

ダニエル・ニコルズ

ユタ州出身で25年のキャリアを持つフリーの政治記者。才能はあるものの、機会に恵まれずに政治記者として働く。妻とは大分前に別居状態となっている。

ケネスと鷹志の親子関係を見抜き、暴露本を出版して名声を得ようとする。金では動かず、あくまでもジャーナリストとしての野心がある人物。

最終的に彼の行動を危険視したデュランの独断により、暗殺されてしまう。表向きはガス漏れに見せかけられており、事故として処理された。

城富子(じょう とみこ)

日本で小料理屋を切り盛りしていた女性。鷹志の母であり、彼を1人で育て上げた。だがガス漏れによる一酸化炭素中毒により他界する。

両親は不発弾を掘り出して屑鉄屋に売る裏家業をしていたが、彼女が3歳の頃に不発弾の暴発により死亡する。その後大人になると居酒屋で働き始めた。当時の沖縄は本土復帰前だった為、アメリカ海兵隊員が客として多く来訪している。その中にケネスがおり、彼と恋仲となった。そして鷹志を身籠るものの、ケネスはベトナム戦争へと派兵されて離別してしまう。それでも1人で鷹志を出産し、一人前に育て上げた。

死後は遺言により、鷹志の手によってケネスの住むアメリカと繋がっている海に散骨される。その中の遺骨の一片は鷹志が大切に肌身離さず身に付けていた。

自宅の茶箪笥の上にアメリカ海兵隊員と写した写真を飾っていた。だが事件後には何処かへと消えている。この写真の紛失が、鷹志に富子の死への違和感を抱かせた。

物語終盤に真相が明らかとなり、富子はウィリアムの差し向けた資格のデュランに暗殺されていた事が判明する。またケネスは今も尚、富子の事を愛していた。

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@mathew138

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