アシガール(漫画・小説・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

「『アシガール』」とは、集英社の月刊誌『Cocohana』に連載されていた森本梢子による少女漫画。2012年から2022年まで連載。漫画の他、それを原作とした小説やテレビドラマ作品がある。物語は、現代の女子高生が突然タイムスリップし、偶然出会った戦国の若者に一目惚れをするところから始まる。主人公唯の成長や恋愛模様を通じて、友情や勇気、愛が描かれ、読者に共感を与える作品。感動と笑いがいっぱいの魅力的なストーリー展開が特徴である。

『アシガール』の概要

『アシガール』とは集英社の月刊誌『Cocohana』に連載されていた森本梢子による少女漫画。2012年1月号から2022年2月号まで連載。大人気で10年間にわたり連載された。単行本全16巻完結。それを原作とした小説やテレビドラマ作品がある。2017年9月20日に『小説 アシガール』と題してせひらあやみ著により集英社オレンジ文庫から刊行。2017年には全12回のTVドラマ版がNHK総合テレビの「土曜時代ドラマ」枠でテレビドラマ化され、2017年9月23日から12月16日まで放送された。主演は黒島結菜、相手役は伊藤健太郎。その続編となるスペシャルドラマ『アシガールSP〜超時空ラブコメ再び〜』も2018年12月24日に放送された。2021年1月に行われた投票制の「タイムスリップ作品で好きなドラマランキング」では、「テセウスの船」や「信長協奏曲」を凌ぎ1位を獲得している。また書籍・ドラマの枠にとどまらず2023年8月5日・6日に『音楽朗読劇 アシガール』としてTOYOSU PITで上演された。同誌2023年4月号からは、唯の弟の尊の子を主人公とした、続編となる『たまのこしいれ ―アシガールEDO―』がスタートしている。

『アシガール』のあらすじ・ストーリー

ものがたりの始まり

速川唯(はやかわゆい)は、居眠りが常習で、流行やおしゃれには全く無関心なやる気の無い女子高生。ある満月の夜、天才の弟・速川尊(はやかわたける)が開発したタイムマシンをうっかり起動させ、戦国時代の永禄2年(西暦1559年)へとタイムスリップしてしまう。そこで出会ったのは、黒羽城の城主・羽木忠高(はぎただたか)の嫡男、羽木九八郎忠清(はぎくはちろうただきよ)という若君。一目惚れした唯は、どうにか近づこうと試みるが、平民である自分は城に入ることさえできず、門前払いされてしまう。次の満月の夜、無事に現代に戻った唯は、社会教師の木村(きむら)から若君が戦で命を落としたという史実を教えられる。若君が戦死したのは、まさに唯が訪れた永禄2年だったのだ。唯は再びその時代へ戻ることを決意する。唯は愛する若君を守り、結ばれるために足軽として出世することを誓う。こうして、人類史上初の足軽女子高生「アシガール」が誕生したのだった。

戦国時代と現代を行ったり来たり

再び戦国に戻った唯は、天野信茂(あまののぶしげ)に頼んで小荷駄隊として従軍するが、戦の過酷さに気絶してしまう。その後、羽木軍が勝利を収めたものの、自分の無力さを痛感する。夜、若君の閨に差し出される鐘ヶ江(かねがえ)ふきと入れ替わり、ふくと名乗って若君と会うことに成功。若君は「人はあんな風に殺し合ってはいけない」との言葉に唯に興味を持つが、唯は同衾を恐れて、若君に近づくことができない。そんな唯に優しく「腹が決まったら来い」と言う若君。翌日唯は、若君を守るために再度天野家で雇ってもらえるよう頼み、悪丸(あくまる)との駆け比べに勝ち、雇われることになる。一方、黒羽城に本物のふきが到着し、高山が小垣城を奪うために攻撃を仕掛ける。圧倒的に不利な戦に、唯は現代に戻り、尊に助けを求める。姉から事情を聞いた速川尊(はやかわたける)が秘密兵器を作成してる間、唯は木村先生から戦術を学び時間を過ごす。

現代で1か月を過ごした後、唯は完成した秘密兵器を携え、再び戦国時代に戻る。若君は敵陣に突入し、唯は尊制作の秘密兵器「まぼ兵くん」を手に共に戦うことで、高山軍を混乱させて勝利を収める。唯とのやりとりの中で確信した若君から、「まだ腹は決まらぬか」と聞き覚えのある台詞が告げられる。唯が女であること、鐘ヶ江の娘ふきと入れ替わっていたこと、すべてお見通しだった。

吉田城で和議が行われる際、羽木成之(はぎなりゆき)の手の者により若君は心臓付近を射抜かれ瀕死状態となる。唯は若君を救うために機転を利かせ、タイムマシンで若君を現代へ送る。若君はその後、病院での治療を受けながら、450年後の現実に直面する。そこで滅亡する運命にある羽木家の史実を知ってしまう。正義感溢れる若君は羽木家と唯を救うため、再び戦国時代に戻ることを決意する。戦国時代へ戻り牢にとらわれた唯を救う若君。無事再会を果たした2人だが、実はタイムマシンの燃料切れであと1回しか使えなかったのだ。「唯を必ず返す」と唯の父母に約束した若君はその誓いを守るべく、唯を現代に戻すため「タイムマシンはあと2度使える」と嘘を告げる。

満月の夜、若君は唯に戦国時代の女性の姿を求め、彼女を手元に置きたいという複雑な心情と葛藤しながら、「お前のことは生涯忘れぬ」と別れの言葉で送り出す若君。現代へ戻った唯はタイムマシンの燃料が尽き、再び戦国時代に戻れないことを知り、深い悲しみに沈む。しかし、木村先生からの情報により、羽木家が永禄2年に滅びていないことを示す詫び状が発見されたと聞き、彼女の心に一筋の光が差し込む。これにより、唯は再び若君と運命を共にすることを誓い、戦国時代へ戻る決意をする。

尊は、姉が悲しむ姿を見て心を痛め、無茶をして燃料を作り出し、戦国時代との行き来が一度だけ可能な状態を作り上げる。5ヶ月ぶりに戦国時代に戻った唯は、黒羽城へ向かう阿湖姫(あこひめ)の一行を助けることになる。吉乃(よしの)から、「羽木家領民のために阿湖姫と婚姻を結ぶ」という事実を聞きショックを受ける。「若君が羽木家のために結婚を承知したので、邪魔をしてはいけない」と諭され、心の中で葛藤を抱えながら若君を諦めようとするが、道中で偶然若君と再会し、互いに抱きしめ合う。唯は、若君に会ったら二度と戻らないと決心していたため、脇差〔タイムマシン)を投げ捨てる。それを見た若君は「お前がここまで覚悟を持って戻ったのなら、他の者を娶ることはない」と告げる。

唯のピンチ

その後、阿湖姫は婚礼の準備が滞り気落ちし、唯之助(ゆいのすけ)を伴って城下にお忍にいくが、高山の手の者に襲われ、唯が阿湖姫の身代わりとしてさらわれることになる。若君は、高山宗鶴(たかやまむねつる)の嫡男である宗熊(むねくま)と阿湖姫(実際は唯)の婚儀の承諾を求める手紙が届いたことを知り、高山の城に潜入することを決意する。悪丸とともに長沢城に入り、急いでけむり玉を使って唯の奪還を試みる。牛背山に迷い込むが、黒羽城では若君の行動により騒動が起こり、羽木忠高(はきただたか)の命を受けた小平太(こへいた)と成之が国境の小垣城に向かう。宗鶴も激怒し、山狩りを命じる。

逃げ込んだ山奥の荒れ寺でしばしの憩いを過ごす2人、唯は星空の下で若君に腹を決めたことを告げ、初めてキスをする。しかし、追っ手が迫り、寺の和尚とその弟子・奇念(きねん)とともに急遽出発する。高台から両軍が川で対峙する中、羽木軍の形勢不利を見た若君は、自ら高山に投降して戦を回避しようとするが、唯は反対し、でんでん丸で若君を気絶させ、単身羽木軍へ向かう。戦禍の中、唯は撃たれながらも高山に伏兵がいることを伝え、倒れ込む。無事に羽木軍に合流した若君は、自ら指揮を執り、高山軍の攻撃を防ぐが、唯は熱が下がらぬまま黒羽城の奥御殿で若君の寵姫としての役割を果たすことになり、侍女たちからいじめを受けることになる。戦は膠着状態であったが、強硬派の宗鶴が倒れたことで和議が結ばれ、その後若君はすぐ唯に会いに戻り、「唯、この忠清の妻になれ」とプロポーズをし、今度は長いキスを交わす。

最後の戦い

その後、若君の許嫁となった唯は、戦の際は共に行くと決意を表明する。阿湖姫は松丸に帰る途中、成之から求婚され、野上衆も忠清と和睦、四家の同盟が結ばれる。しかし、夜になり、織田家家臣と宗鶴との密約により和議が破られることが伝えられ、若君は策を講じるために小垣に向かう。唯も追いかけるが、「人は家名のために死ぬべきではない、皆を止めてほしい」と若君から頼まれ、黒羽城に残ることとなる。

高山と織田合わせての大軍が羽木領内へ進軍する中、唯の元に若君から脇差が届けられる。忠高は、唯と助力を申し出た野上元継の申し出を受け入れ、即刻退去を決断。「まぼ兵くん」を使って敵を欺き城を逃げ出した。唯は小垣城に急ぎ、若君と再会する。開城期限を1日延ばすよう頼み、2人は婚礼を挙げる。満月の夜に目覚めた唯は、若君を現代に逃がそうとするが、「お前をここで死なせることはできない」と断られ、尊に希望を託し現代に帰ることを決意する。

その後、唯は現代での生活を送る中で、忠清の供養塔が大手山にあることを知る。悲しむ姉を見た尊は未来の自分に改良型タイムマシンを送ることを思いつく。それにより唯は無事戦国時代へと戻る。その際、伯父からの招待を受け、領地である緑合へ向かう羽木家と改良型タイムマシンで現れた唯が出会う。若君が黒羽城に囚われていると聞いた唯は急ぎ向かうが、若君と高山一成の身内との婚礼の最中に遭遇。唯は席に紛れ込み、若君と共に現代へ逃げ出す。

しかし責任感の強い忠清は、羽木一族を見捨てることは出来ない。唯は再び若君と共に戦国で生きる決意を表明。若君は唯の両親に「唯と戦国に戻ることを許して欲しい」とお願いし、2人は再び戦国時代に戻る。黒羽城近くの森に戻り、城から若君の愛馬を連れ出した悪丸と共に、忠清の伯父の領地へ向かう。途中、道に迷ったり雨に見舞われる中、7日目の朝に領地である緑合に到着。羽木家の皆、帰ってきた若君と唯を見つけ歓喜に沸く。永禄四年春、緑合城で正式な婚礼が行われ、若君と唯はついに名実ともに夫婦となる。その頃、現代の速川家では、唯の家族が2人の行く末を知り、2人の間に四男三女の子供が出来ること、彼らの子孫が明治維新まで続く大名となることを知り喜ぶのであった。

『アシガール』の登場人物・キャラクター

主要人物

速川 唯(はやかわ ゆい) / 演:黒島 結菜

16歳の普通の女子高生。遅刻や居眠りの常習犯。恋愛やオシャレに無関心で、勉強にもやる気がないが、足の速さだけはピカイチで陸上大会で優勝経験がある。ある日、弟の尊が作ったタイムマシンを誤って起動し、戦国時代の永禄2年にタイムスリップ。そこで出会った若君・羽木九八郎忠清に一目ぼれし、彼を守るため奮闘することになる。素性を隠し「唯之助(ゆいのすけ)」と名乗り常に若君の近くにいる。忠清への想いは強く、危険な戦場でも彼を守ろうと駆け回る一途さを見せるが、恋愛に対してはうぶで純情な面もあり、いざという場面で臆することもある。弟の尊曰く、「できるかできないか」じゃなくて「やる」という性格。

羽木 九八郎忠清(はぎ くはちろう ただきよ) / 演:伊藤 健太郎

黒羽城城主・羽木忠高の嫡男で、恋愛にまるで興味のなかった唯が一目惚れするほどの美男子。その容姿は家臣から「あまりの麗しさに神仏も愛でられ」と称されるほどで、戦国時代でも現代でも非常にモテる。しかし、外見だけでなく性格も男前で、常に冷静で周囲に優しさを持って接し、特に好意を持つ女性には腹が決まるまで待つという思慮深さも持ち合わせている。武芸の才能を持つ武将でありながら、戦を好まず、犠牲を出さないよう努める心優しい性格。

羽木家(戦国時代側)

羽木 成之(はぎ なりゆき) / 演:松下 優也

羽木九八郎忠清の腹違いの兄で、父・羽木忠高と側室お久との間に生まれた。母親の身分が低かったため、正室である二条の方が城に迎えられると、お久は城を追い出され、成之は寺で育てられる。母の死後、心に歪みを抱えるようになり、羽木家を手に入れるため忠清の暗殺を企むこともあったが、のちに和解。謀略と洞察力に長けており、唯之助が女性であることや、忠清が唯を好きなこともすぐに見抜く。

羽木 忠高(はぎ ただたか) / 演:石黒 賢

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