鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ(ラノベ・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ』とは『小説家になろう』にて作者たままるによる日本のライトノベル、およびそれを原作とした『電撃コミックスNEXT』にて連載されているコミカライズ作品。魔法や魔力が存在し、獣人、エルフ、ドワーフ等様々な異種族やドラゴン等の怪物が混在する異世界が舞台。異世界転生したエイゾウ・タンヤが伝説の金属を用いた超越した武器を生み出す鍛冶屋として異種族の仲間と共にスローライフを送っていくハートフルファンタジー。

『鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ』 の概要

『鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ』とはたままるによる日本のライトノベル、およびそれを原作としたコミカライズ作品である。「第4回カクヨムWeb小説コンテスト異世界ファンタジー部門大賞」を受賞。原作は『小説家になろう』にて2018年12月18日より代表作として連載。また、コミックのキャラクター原案はキンタ、作画を日森よしのが担当し、2020年7月3日より『電撃コミックスNEXT』にて連載されている。

物語はブラック企業で長年働き続け、天涯孤独の独身のままアラフォーになった男性・但箭 英造(たんやえいぞう)が異世界で凄腕の鍛冶屋エイゾウ・タンヤとして転生し、生活する様子が描かれている。題材の特徴として、転生する職業が鍛冶屋なのに戦闘描写が描かれている異色の組み合わせが挙げられる。優遇(チート)によって作られる武器の切れ味は凄まじく、ナイフで剣を切ってしまう程の能力を使って依頼やトラブルを乗り越え、助けた仲間(全て女性)と共に暮らして行くのが魅力的である。

『鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ』のあらすじ・ストーリー

異世界生活での出会い

ブラック企業で長年働き続け、天涯孤独の独身のままアラフォーになった男性・但箭 英造(たんやえいぞう)が帰宅途中に白い猫を助けようとして、大型トラックに轢かれて死んでしまった。気づくと真っ白な空間にいた。「やあ、目を覚ましたかい?」と突然、耳元で声がする感覚に襲われるも、周りには誰も居ない。
声の主は「世界を見張るもの(ウォッチドッグ)」と名乗り、あらゆる平行世界を行き来し、悪影響を及ぼさないように世界を監視していたと語るのであった。また、こちらのミスで英造自身が死ぬ運命では無かったが、それを帳消しに出来ないため、お詫びとして優遇(チート)能力を付与しつつ異世界に転生するという提案を持ちかけられる。
「俺が消えても、困るのは上司くらいか」そうして、特に現代の自分自身には未練もなく第2の人生として鍛冶屋を選ぶのであった。

ウォッチドッグによって異世界転生し気がついたのは深い森の中。突如、エイゾウは激しい頭痛と、全身に何かが大量に流れ込むのを感じ、異変が収まった時には脳と身体に新しい知識と覚えのない経験が追加されていた。魔法や生活の中で使われる鍛冶道具、薬草、野菜等は見た事も無いのに知っている。それが優遇(チート)だとすぐに理解できた。近くの一軒家の中には工房や食料等の生活必需品が揃えられていた。家の周辺探索を兼ねて移動していると、虎のような顔を持った女性が腹部に大きな傷があり、出血して倒れているのを発見する。家に連れ帰ると直ぐに血が付いた服を切り、傷口を縫っていく。傷の治療方法は知識として理解出来ているが、初めての事で非常に疲れてしまい、危機を脱した事による安堵感から眠気に襲われ意識を失うのだった。
「おい」と声を掛けられた時には半裸の獣人の女性に馬乗りにされ首を絞められていた。苦しくはなく、エイゾウも本気ではない事に気づき、彼女の問いに素直に答えた。獣人女性はサーミャと名乗り、黒の森の北と西をねぐらにし、久々に東に足を伸ばし大黒熊に出くわして傷を負ってしまったと語る。エイゾウは現時点での地理や周囲の環境に関して情報が欲しい事もあり、サーミャに「傷が治るまでここに住まないか?」と交渉を迫った。住環境を提供する事を条件に成立するのであった。

初めての鍛冶仕事

エイゾウは異世界での生き方を探ってゆく。

サーミャと出会い共同生活が始まる中、エイゾウは工房で能力の確認を込めてナイフ作製を試みる。魔法の竈に火が入り、驚きと感動が混じりながらも作業を進めていく。「知識があるのに、経験は初めてだ」と無意識でも身体は動き、感じるままに金槌を振るって作業を進めていくと不思議に今までに感じていた疑問が払拭されていくのだった。
鉄を叩くときに感じたもの、生活していく中で大きな水瓶一杯に入れた水や家にサーミャを担ぎ上げて運び入れていたが苦ではなかった。以前の自分では考えられない程筋力が増強されている事に気づいたのだった。「この為だったのか」と納得し、1本のナイフを完成させるのであった。綺麗なナイフに驚きと感動の感情が押し寄せる中、切れ味がどうなのかと木の板の上に稲わらを載せて刃を垂直に軽く押していくと、切った音も無いまま木の板まで切断する。「これが優遇(チート)?」と何が起きたか解らず一瞬思考が停止し、手元を見て自分自身に与えられた能力を思い出す。あまりにも切れすぎるナイフに恐怖を持ち、売るには危険と判断し、護身用の武器として持つのであった。

鍛冶屋として商売を始めよう

誰でも扱える事ができる一般向けのナイフの作製を検討するために、詳しい説明もなく試作品として一般、高級、最高級品と格付けされたナイフ3本の中の最高級品をサーミャに試し切りさせた。稲わらに刃を軽く載せて下ろすと、前回と同じ現象が起こるのであった。与えられた優遇(チート)が扱う人に左右されず、作られた道具が高性能となる事をエイゾウは確信する。刃物の扱いを考えている最中、「ナイフがほしい」と訴えたサーミャにエイゾウが狩猟用兼、護身用としてナイフを渡すのであった。数日が過ぎ、サーミャの傷も回復した頃にはある程度の農具やナイフが完成していた。完成した物を売りに行くためサーミャと共に街に出向くのであった。

自由市で商売を始めるが一向に商品は売れない。「やあ、売れているかい」その声にエイゾウが振り向くと衛兵が立っていた。商品として並んだナイフを見て購入の意思を見せた衛兵は「ちょうど新しいナイフが欲しくて探していた」と話し、エイゾウはナイフを売るのであった。初めて自分で作ったナイフが売れた事に喜びを感じ、自然とニヤけている顔をサーミャに見られながら商売をしていくのであった。
商品の売れ行きが伸びず途方にくれ、店じまいを考えた頃、衛兵の集団が現れる。集団の話を聞くと、マリウスと名乗る衛兵からこの店で購入したナイフの切れ味が一級品だったと話していた事が気になり探していたというのだ。「今ある分を全部くれ」そう衛兵達は言い、商品として残っていたナイフが全て売れたのだった。全く売れなかった農具やオノに関しては自宅用にと考え、帰路につくのであった。その道中、エイゾウはナイフが売れた事によって自信をつけ、長剣などに挑戦し、行商人に取り扱ってもらえばと想いを馳せるのであった。

家族の形

自由市より戻り、在庫補充のためにナイフ作りを始めるが「矢じりも作れるか?」とサーミャからの突然の要求に対して、特に問題ないと返答した。満面の笑顔で回復したら狩りに出かけたいと語るサーミャに対して、エイゾウは部屋の増設を検討したのだった。ある晩、エイゾウが矢じり作成作業をしている中、興味深く観察しているサーミャが「これからも一緒に住んでもいいか?」と話し、お前さえよければと答えるのであった。矢じりの完成と共に感嘆の声を上げながら喜ぶサーミャを横目に、この世界でのいつもの日常が作られていると感慨深く感じるエイゾウがいた。
新たに工房でロングソードの作製を試みた。ある程度の工程に関しては優遇(チート)によって1人で完結し、最後に柄頭に自分が作った証として太った猫の座り姿の彫刻を入れてロングソードを完成させたエンゾウは、ちょうど狩りから帰宅したサーミャに「おかえり」と声を掛けた。気恥ずかしそうに「ただいま」と答えるサーミャを見て、前の世界で得られなかった日常が幸せに感じる瞬間だった。

リケとの出会い

自由市で商売をしている時に出会ったのはドワーフのリケだった。「衛兵隊にナイフを売ったのはあなたですか?」と話し、そうだと返答するとナイフを見せて欲しいと懇願し、エイゾウはナイフを渡すのであった。凝視すると、こちらで一番良い商品を見せて欲しいと話す。一目でそれ以上の物があると見抜いた少女に高級モデルのロングソードを見せる。長いこと眺めている様子にしびれを切らし声を掛けると突然、「私を弟子にしてください」と土下座して話すのであった。
リケは修行するため自分の工房を飛び出し、各地の工房を弟達と共に訪ね回って旅をしていると話した。そして、これはと思う工房に弟子入りして自分の技術を磨き、新たな物を生み出し、弟子入りした工房に還元するという。弟達は先に旅立ち、エイゾウに会うため1人でここに残っていた事を告げると、エイゾウは少女1人をほっておけず、弟子入りを許可するのであった。エイゾウはナイフを作る所をリケに見ていて欲しいと話し、優遇(チート)を使って1本のナイフを作製する。リケは出来たナイフに感動してこんな技術はドワーフでも見たことがないと告げた。エイゾウは売り物に出来ない、弟子であり、家族としてリケにナイフを持っていて欲しいと話してナイフを受け取るリケであった。

行商人カミロとの出会い

リケ出会った事で生産効率が上がり、新市街の自由市には定期的に訪れて商品を売る事が出来た。そこで出会ったのは行商人のカミロという人物である。店を持っているため定期的に商品を卸して欲しいと依頼があった。エイゾウとしては願ったり叶ったりであり、二つ返事で引き受けるのであった。また、懸念していた鉄石や炭といった資材調達の解決の糸口となった。そして、特注でエイゾウに依頼があった場合の対応として、1人で黒の森の工房に来れることを条件として頼むのであった。

初めての特注品依頼

扉を叩くと同時に「カミロに言われて、剣を頼みに来た」と大声で叫ぶ声が聞こえてきた。扉を開けて見ると、顔面に大きな傷がある大柄の女性が立っていた。女性は雷剣ヘレンと名乗り、持っている2本のショートソードより頑丈な物が欲しいという依頼について話を始めた。エイゾウは使い方を教えて欲しいと問うと、ヘレンは言葉で説明できないから見て欲しいと答えるのであった。
凄まじいスピードで繰り出される連撃を披露するも、ヘレンはやはり相手がいないとやりづらいと言って、剣舞に感嘆しているエイゾウを指名した。優遇(チート)は戦闘も可能な事を知識として教えてくれる。エイゾウは容赦無く襲ってくるヘレンと打ち合う事が出来た。お互いを認め合い依頼を受けた数日後の朝、初の特注品の完成を迎えた。エイゾウは当初から特注品の値段を依頼者に任せる事を決めていた。ヘレンは戸惑いながらも自分自身で考え、持っている金貨と銀貨を渡すのであった。

因縁の大黒熊

初の特注品の依頼から2日後それは事件として起こった。サーミャより大黒熊が現れた事を告げられ、エイゾウは家族に危害が及ばない為に覚悟を決めるのであった。ヘレンとの模擬戦で得た経験により、戦闘もこなせる事を実感したエイゾウはリケやサーミャを守るため1人で自家製の槍を持ち大黒熊と戦う事を決意する。
家から少し離れた場所に大黒熊がいた。戦闘が始まると巨体のわりに予想以上の素早い攻撃を受ける。瀕死の状態となるもエイゾウは家族を守る為と気合いを込めたとどめの一撃を大黒熊に加えて倒した。槍の切れ味に驚きながらも仕留めた大黒熊に対して、殺めた命は責任をもって弔うと考え死体を背負い歩き始める。途中でエイゾウの帰りが遅い事を心配してこっちに向かって来てたサーミャ達と合流し家路につくのであった。

エイムール家の騒乱

新市街カミロの店にてエイゾウが都に戻ったと聞いた衛兵マリウスの所在を尋ねるも、貴族間できな臭い問題が起きていることを告げられ、関わる事はしないほうがよいと話された。自宅への帰り道、賊と1人の若い女性が争っていた所に出くわし、サーミャと共に撃退する。助けた女性はディアナ・エイムールと名乗り、マリウスからとある方の所に身を寄せるようにと話し始め、それに該当する人物が目の前にいるエイゾウであった。
エイゾウはディアナを黒の森にある自宅へと招いて事の経緯を聞いた。伯爵家の家督を継ぐはずだった長兄が魔物討伐の中で討ち死にをしてしまい、凶報を聞いたマリウスが都に戻って詳細を調べた所、死体には強力な魔物に襲われたと聞いていたにも関わらず、傷口が剣で切られていたのだった。事件が人為的に仕込まれている事にマリウスは、長兄が死んで得する人物が妾腹の子で次兄カレル以外居なかった事と、正妻の子で家督の継承権を持っているのが自分であり、これから起こる厄介事にディアナが巻き込まれてしまう事に気づいたため、エイゾウの所に身を寄せるようにと促したのであった。事情を知ったエイゾウはカミロと今後のことを手紙で話し合った。数日後、カミロの手紙にて都に呼ばれる事となる。

都でマリウスと出会い、「家宝の剣が盗まれてしまったから、あなたには新しい家宝の剣を打って欲しい」と依頼を受ける。盗まれた詳細を聞いて依頼を受けたエイゾウはエイムール家の鍛冶場で宝剣の作製作業を始めた。しかし、いつもと違いを感じ、手応えが無く完成した剣の切れ味も高級品レベルとなってしまう。エイゾウは今作った物よりも護身用のナイフから輝く光の強さに気づき、火床に入れ鍛錬するのであった。そして、出来上がっていくにつれていつもの手応えを感じ、1本の剣を作製した。
次の日、メンツェル侯爵家にて家督の継承権の裁定を仰ぎ、その場でエイゾウが作製した剣は元の家宝の剣をマリウスが切断し、襲いかかってきたカレルを斬り伏せて家督を継ぐのであった。家督の継承権が落ち着き、ディアナは一旦伯爵継承の祝宴のためエイムール家に戻るも、彼女を取り巻く状況が変化したことを心配して、マリウスがカミロと計略しエイゾウの家に押しつける形となった。エイゾウは家族となったディアナにナイフを渡すのであった。

真銀(ミスリル)による鍛造

カミロより1つ依頼を受けた。「こいつを細剣(レイピア)にして欲しい」と渡された鉱物は真銀(ミスリル)であった。初めて鋼以外の鉱物の鍛造に心躍り金槌を振るう。鋼であれば一振りで変化がみられるが、その様子は見られなかった。「手応えがある素材に出会えた」と優遇(チート)の能力を惜しみなく使えることに喜びを感じ、リズミカルに金槌を叩く度に楽器の様な音が響いた。
出来上がったレイピアは羽毛より軽く、試し切りに使った板金さえも手応え無く貫いてしまう物だった。エイゾウは迷いながらも家族全員に問う。「俺はこいつを世に出して良いのだろうか?」その返事にサーミャ、リケ、ディアナは迷い無くエイゾウを受け入れるのであった。

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