排気ガスサークル(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『排気ガスサークル』とは、DONZUによって製作され、2013年5月から2022年12月にかけて配信されたアドベンチャーフリーゲーム。「夢の先へと案内してくれる列車」が停まると噂される駅のホームから、白黒の世界に迷い込んでしまった主人公が、襲いくる敵や数多の陰謀に巻き込まれながらも、懸命に自分と向き合っていく物語。伏線の張り巡らされた完成度の高いストーリーと、個性的なキャラクターが生み出す独特の世界観が高い人気を誇った。

『排気ガスサークル』の概要

『排気ガスサークル』とは、DONZUによって製作されたフリーゲーム。2013年5月から2022年12月にかけて配信された。物語の大半が白黒で、不気味な演出も多いが、ホラーゲームではなくアドベンチャーゲームである。すやまたけしによる短編小説『素顔同盟』とBUMP OF CHICKENの『乗車権』に影響を受けた。対応機種はWindowsのみ。
エンディングは、通常、トゥルー、バッドの3種類。探索、キャラクターとの会話の他、簡単な操作の戦闘を繰り返しながら、いずれかのエンディングに進む。

投身自殺が絶えない駅のホーム。そこは「乗車券があれば誰かが迎えにくるらしい」と噂が流れている場所だった。学校や家で孤独を感じていた主人公は「本当に願いがかなうとしたら」と一抹の希望を抱いて、とあるメモを片手にホームに立つ。突然耳鳴りに襲われ、気づくと周囲から人、音、さらに色までもが失われ、白黒の世界に1人で立っていた。ホームには見慣れない電車が停まっている。主人公は、誰かに背中を押され、ホームにメモを落としながら電車に乗り込んでしまった。そのまま電車は走り始め、物語が始まる。

個性的なキャラクターデザイン、随所に出てくる哲学的な問答、他に類をみない独特な物語が人気を博した。配信終了を惜しむ声も多い。
2014年11月29日には、ゲームの前日譚となる単行本『排気ガスサークル Another Day』が発売されている。

『排気ガスサークル』のあらすじ・ストーリー

始まり

駅の噂を聞く主人公。

事故防止の策も虚しく、投身自殺が相次ぐとある駅。数多くの命が失われ続けていることから「呪いだ」と噂され始めていた。その年は、すでに10人もの命が失われており、駅の話はワイドショーでも取り上げられるようになる。主人公は一枚のメモを片手に、噂の駅に向かう。

駅のホームでも、主人公は「呪いでも、本当にそんなものがあるとしたら」と考える。すると、突然耳鳴りに襲われ、気づけば白黒の世界に立っていた。目の前には見覚えのない電車が停まっている。呆然とする主人公の背後に一つ目の何者かが立ち、首に縄をかけようとしていた。それを阻止するように、白い男の手が別方向から伸びてきて、主人公の背中を強く押す。思わず、主人公はメモをホームに落としながら電車に乗り込んでしまった。そのメモを拾い上げる白い男を残して、主人公を乗せた電車は発進する。

塊の中

電車には、仮面をつけて頭巾を被った男が乗車していた。彼は「この世界で『人』である君に出会えたのもなにかの縁」と、主人公に世界の掟を伝授した。名前を口にしてはいけないことと、顔を隠すこと。そうしなければ、名前や顔が欲しい者に襲われてしまうという。忠告を聞いた主人公は、次の駅に到着すると「塊」と呼ばれる電車から下りた。

見知らぬ場所を進んでいくと、フードを着た仮面の男に出会った。彼は、主人公がこの世界に迷い込んでしまったのだと知ると、塊に乗り降りできる乗車権を譲ると約束してくれた。その代わり、生まれたばかりの影の面倒を見て欲しいと、主人公に人型の黒い影を紹介する。

駅に向かう途中、主人公らは屑という存在に襲われるが、市松柄のマフラーを巻いた男が乱入して守ってくれた。フードの人に葬儀屋と呼ばれたマフラーの男が戦力に加わり、屑との戦闘が始まる。

戦闘後、葬儀屋の男は、主人公に葬儀屋へ来るよう呼びかけた。現在いる場所よりは安全だと、その案にフードの人も同意する。会話していると、突然美しい歌声が辺りに響く。歌声の主は、この世界の終わりを謳うヘンベインだ。フードの人は別れの挨拶をしてから、乗車権になる仮面を外して消えてしまった。葬儀屋の男に促され、主人公はその仮面をつけることになる。

葬儀屋の本拠地

フードの人からもらった乗車権が、なぜか使えない状態になっていた。そのため、ノーチェと名乗った葬儀屋の男の提案で、仮面を葬儀屋の管理者に見せることになる。
葬儀屋には、眼帯を装着してシルクハットを被った紳士・リヒト、管理者で、片目を長い前髪で隠した女性・ルーナがいた。彼らの調べで、主人公の仮面は縁が少しだけ欠けていることが判明する。代わりになる仮面を、葬儀屋たちが保管しているものの中から探してくれることになった。

その間、主人公は葬儀屋内を散策することになる。そこで、鍵師と名乗る男に出会う。彼は、主人公が仮面の欠片を手に入れれば、それを基にして戦いで使える仮面を作成してくれるという。それらを説明した後、鍵師は葬儀屋に客が来たことを告げて去っていった。

来客は、真っ黒のマスクを身につけたイーアという男だった。イーアは、自身がMAG団に所属していることを自己紹介し、この世界には4つのグループがあることを教えてくれる。消えてしまった世界の絶対的存在である主を、屑の欠片を集めて新たに創ろうとしている葬儀屋とMAG団。そして、森にのみ生息し、敵味方なく襲っているヒヨス派。最後はどこにも属さない者たちだ。イーアは、主を蘇らせて世界を元に戻せば、主人公も帰れるとMAG団へ勧誘してきた。ルーナも「MAG団にある仮面も見て来たらどうだ」と提案したため、主人公はMAG団のアジトへ行ってみることにした。

蜘蛛男の襲撃

MAG団のアジトへ向かう塊に乗っていると、突如ヒヨスに襲撃された。イーアはヒヨスを倒しに飛び出していったため、主人公も後を追うことにする。

イーアを探していると、ティアラを頭に載せた姫と出会う。姫は、逸れてしまった王子を探していた。姫と一緒に探索を続けると、蜘蛛の糸で縛られたイーアを発見する。糸の周辺には、数多くの屑の仮面が転がっていた。その奥からは、全身に蜘蛛を纏った不気味な男が現れた。蜘蛛男の正体は、ヒヨスの影響で気が狂った王子だった。緊迫した状況を見たイーアは、自身の後ろにある仮面を着用するよう主人公に支持する。その仮面は主人公に従えている影を強化できるという。仮面をつけると影の姿が変わり、戦えるようになった。

蜘蛛男を倒すと、王子が意識を取り戻す。すぐにヘンベインの歌声が響き始めた。姫と王子は消えていった仲間を想い、崩壊する世界に留まる決意を固め、主人公に逃亡を呼びかける。固く手を結んだ2人を置いて、主人公らは駅に向かった。

主人公は、駅に白い男が佇んでいるのを目撃した。イーアに白い男の話をすると食いついたため、主人公はこの世界に来た経緯を話す。イーアは「お前は誰かに呼ばれてここへ来たのではないか?」と考察した。白い男は、何度も会いに来るような存在ではないという。イーアは情報を集めるためにも、改めて行動範囲の広いMAG団に入ることを勧めた。

MAG団のアジト

MAG団は、リーダーのレッド、副リーダーのグリーン、参謀のブルー、そして彼らをサポートするワッピを中心に、戦隊ヒーローのような組織になっていた。レッドはすぐ主人公を受け入れ、ヘンベインについて調べる情報部員に任命した。

MAG団は、2つの場所を管理して弱い屑らを保護している。しかし、その1つである保護エリア2がヒヨスに侵食され、徐々に森と化していた。状況調査に向かった主人公は、傷ついた屑を治療しているヒーラーと知り合う。彼女と親睦を深めていると、屑の1人が「不審な白い男が森に入っていくのを見た」と報告してきたため、主人公と影は探しにいく。

森の中を捜索すると、白い猫の様な男がやってきた。猫の様な男も白い男を追っており、イーアと協力して探しているらしい。彼はすぐに白い男を追って行ってしまった。この世界でもヘンベインが歌いはじめ、主人公は急いでアジトに引き返すことになる。

アジトでは緊急会議が開かれた。先ほどの歌は各地で響き渡り、世界のほとんどがヒヨスに食われた。しかし、イーアが「葬儀屋でも歌は聞こえたが無事だった」と報告すると、ヘンベインがMAG団や葬儀屋を攻撃しないことをブルーは不審がった。答えが出る前にワッピが飛び込んできて、保護エリア2にいた屑たちがヒヨス化して共食いをしていると知らせる。すぐにレッドとグリーンが現地へ向かった。ブルーの指示で、主人公もレッドたちを追うことになる。

保護エリア2での戦闘

主人公が保護エリア2でレッドを探していると、ヒヨスである無口な女と、笑う女が現れる。笑う女は主人公に詳しい様子で話しかけてきたが、レッドが「そいつらはヒヨスだ!」と乱入してくると素早く逃げていった。追いかけようとするが、ヒヨスによって狂ったMAG団員が立ちはだかったため取り逃してしまう。

狂ったMAG団員を倒した後、さらに奥を探索すると、苦しむ屑たちに優しく話しかける存在がいた。レッドが「ここを狂わせているのはお前か!」と叫ぶと、その正体はヒヨスに食われたヒーラーだった。ヒーラーは「どうしてヒヨスだけ助けないのか。私は、いかなることも許す」と宣言し、ヒヨスを敵とみなす主人公らに攻撃を仕掛ける。

ヒーラーを倒すと、ヘンベインの歌が響き始めた。正気に戻って謝るヒーラーの足には、森と一体化した屑たちがまとわり付いていている。なんとしてもヒーラーを助けようとレッドは躍起になるが、駆けつけたイーアに殴り飛ばされ、ヒーラーを残して主人公たちは森を去ることになった。

イーアとともに来たリヒトやノーチェは、ワッピから主人公らが戻っていないと聞いて駆けつけてくれたのだ。無事レッドたちがアジトに帰還すると、功労者のワッピが泣きながら出迎えた。

かくれんぼ

世界が崩壊するスピードが速くなっているため、急いで主の再生に向けて動き始める。しかし、葬儀屋とMAG団がこれまでに集めた屑の欠片の数では、主を創れないと判明した。次の案が浮かぶまで、ひとまずMAG団にある欠片を葬儀屋に運ぶことになった。

主人公が葬儀屋に向かっていると、また塊が停止した。外に出ると、MAG団の情報部員をしているスキアに出会う。彼は、地形が変わったせいで帰りに道が分からなくなっていた。スキアと原因を探していくと、今度はマーリンという男が現れた。彼は連れ人を探しているらしく、主人公と一緒に行動することになった。

人懐こい小さな屑と出会うが、かくれんぼで遊んであげると途中で見失ってしまう。ヘンベインの歌が聞こえ始めたので、主人公らは慌てて小さな屑を探し始めた。森の奥へ行くと、ヒヨスである異様な屑と出くわす。小さな屑は、すでに食われてしまっていた。この森がおかしくなっている原因が異様な屑だとわかり、戦闘が始まる。

異様な影を倒すと、森が消え始めたため主人公らは急いで駅に向かう。しかし、歌とともに発生した地震のせいで道が変わっていた。困り果てる主人公らの前に、例の白い男が現れる。「げっ!ブロスじゃないか」とスキアは嫌そうに名を呼ぶが、白い男・ブロスの後を着いていくと駅に到着できた。しかし、ブロスはすぐに姿を消してしまった。

作戦会議

乗り込んだ塊が進んだ先は葬儀屋だった。スキアは仕事をするためにそこで別れ、マーリンは主人公と一緒に葬儀屋へ行くことにした。

葬儀屋には、ブルー以外のMAG団のメンバーも集まっていた。すると、保護エリア1でマーリンの探し人がいたという情報が集まる。そのため、主人公はマーリンを保護エリア1に送り届け、ついでにMAG団に残っているブルーを葬儀屋に連れていく。

ブルーは、主が創れないならヒヨスの主を直接攻撃することを提案した。そして、この作戦の実行役に、主人公はノーチェ、リヒトとともに選ばれた。森へ行こうとする主人公に、イーアが「白い男を見かけたら迷わず叩け」と声をかけてくる。イーアはかつて、ヒヨスの主に食われて屑と化し、運よく口と耳は残ったが、残りの体はヒヨスの主に食われてしまった。その食われた部分からなる存在がブロスだという。イーアは「アレはきっとこの世界の鍵に違いないからな」と改めて忠告した。

葬儀屋への攻撃

ヒヨスの森では、笑う女と無口な女が現れた。笑う女は主人公を挑発するように長々と話す。ノーチェが笑う女の話は時間稼ぎであると看破すると、彼女は真相を語り始めた。この森の先に、あらゆるものを食らう化け物がいたが、ヒヨスの森まで食らってしまうため、笑う女は葬儀屋にある欠片を食べればいいと教えたのだった。主人公らはルーナやMAG団の安否を確かめに引き返すことになる。

葬儀屋に戻ると、すでに集めた欠片全てに加えて、ブルーまで食べられてしまっていた。さらに、ルーナは気絶しており、ワッピはひどく震えている。その近くで放心していたグリーンによると、ブルーは化け物に敵わないと気づき、葬儀屋にある全ての欠片と彼自身を引き換えに、残った仲間を見逃すように交渉したのだった。

化け物を倒しに行くと息巻く満身創痍のレッドを引き止めていると、突然、猫の様な男が化け物退治に名乗り出る。彼は、イーアと保護エリアの屑を救出していたらしい。主人公も猫の様な男に同行して、化け物が逃げた暗い森へ行くことを即決した。

暗い森

暗い森に向かう塊の中で、再び仮面の男と対面する。仮面の男は「このまま化け物に世界が食われていくのは見ていられない」と話し、共闘が決まった。

化け物から生まれた加虐的な影を倒しながら進み、最後に化け物を全員で倒すと、今まで食らった大量の仮面が転がった。その中からブルーのマスクを見つけ出し、主人公はレッドたちに届ける。

ノーチェは、MAG団のアジトと葬儀屋、ヒヨスの森以外のエリアが全て消滅し、ルーナも消えてしまったと主人公に伝える。そして、主が創造できないのであれば、ヒヨスの主を倒す他ないという結論も述べた。さらに、主人公は保護エリアから無事救出されていたマーリンと再会する。彼は未だに見つかっていない連れ人を探すために、主人公とともに行きたいと願い出た。レッドらもヒヨスを倒しに行こうとするが、主人公と影、マーリン以外は、なぜか乗車権に拒まれて塊に乗り込めない。仕方なく、3人で目的地にいくことになった。

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