地下室のメロディー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『地下室のメロディー』とは、 アンリ・ヴェルヌイユによる1963年のフランスの犯罪映画。
刑期を終えて出所したシャルルは、青年のチンピラであるフランシス・ヴェルロットを誘ってカジノの地下金庫から大金を強奪する計画を企てる。さらにフランシスの義兄であるルイ・ノーダンを運転手役として仲間に入れて綿密な計画を立てた。そしてカジノで計画を実行するのだが、予想外の出来事が起こってしまう。フランシスが金庫に忍び込んで金を盗み出すシーンが見所の作品。アラン・ドロンとジャン・ギャバンの二大スターが共演した。

『地下室のメロディー』の概要

『地下室のメロディー』は、1963年3月19日に公開されたアンリ・ヴェルヌイユによるフランスの犯罪映画。

本作で監督を務めたアンリ・ヴェルヌイユは、1920年10月15日生まれのトルコ共和国出身の映画監督・脚本家。『La Table aux crevés』(1952年)で初の長編監督デビューを果たし、それから『過去をもつ愛情』(1955年)、『ヘッドライト』(1956年)などの映画監督を務めた。
本作はフランス映画界の二大スターとも呼ばれているアラン・ドロンとジャン・ギャバンが共演した映画作品である。アラン・ドロンはフランス出身の元映画俳優で、その美しい容貌から特に1960年代から1970年代にかけて人気を博した。主な出演作品に、パトリシア・ハイスミス原作の『太陽がいっぱい』(1960年)、『若者のすべて』(1960年)、『サムライ』(1967年)などがある。一方ジャン・ギャバンはフランス出身の映画俳優・歌手で、戦前から戦後にかけて活躍した。主な出演作品には『陽は昇る』(1939年)、『現金に手を出すな』(1954年)、『ヘッドライト』(1956年)などがある。本作は、1963年のゴールデングローブ賞で外国語映画賞を受賞している。

主人公のシャルルは5年間の服役の末、釈放されて家に帰る。妻のジネットからは「もう罪を犯さないで」と言われるが、シャルルはカジノの地下金庫から10億フランもの大金を盗み出す計画を企てていた。そして青年のチンピラであるフランシス・ヴェルロットとフランシスの義兄であるルイ・ノーダンを仲間に誘い入れ、計画を実行する。その後、大金を盗み出すことに成功したように見えたのだが、予想外の出来事が起こってしまう。
シャルルとフランシスが犯罪計画を実行する様子を描いていて、フランシスが金庫に忍び込んで大金を盗み出すシーンが見所の作品。

『地下室のメロディー』のあらすじ・ストーリー

大儲けの願望

ビリヤードをするシャルル(左)とフランシス(右)

5年の刑期を終えて刑務所を出たギャングの老人・シャルルは、列車を乗り継いで妻のジネットのいる家へと帰ってくる。そしてシャルルは出迎えてくれたジネットと久しぶりのキスを交わし、レストランに食事に行った。レストランでシャルルは、「もう罪を犯さないで」とジネットにお願いをされるが、シャルルは何か大きなことを成し遂げて大儲けしたいと考えているのだった。

その後、帰宅したシャルルは昔の悪い仲間の男から「金儲けをしないか」との電話を受ける。後日、シャルルがスーツに身を包んでその男の経営するサウナ店に訪れると、男はコート・ダジュールにあるカジノの上面図を広げた。そしてカジノの地下金庫から大金を強奪するという計画をシャルルに話し始める。だが、男は自身が病弱である事を理由に「俺抜きでやってくれ」とシャルルにお願いをした。快諾したシャルルは新たな仲間を手に入れるため、かつて同じ刑務所の同房だったチンピラのフランシス・ヴェルロットに電話を掛ける。その計画を聞いたフランシスは了承し、仲間入りを果たした。さらにシャルルはフランシスの義兄であるルイ・ノーダンを大金強奪計画の仲間に誘い入れる。

周到な準備

シャルルはカジノの地下金庫に10億フランの大金があることをフランシスとルイに話し始めた。カジノには舞台付きのホールがあり、その舞台裏には屋上に出る梯子があるとシャルルは言う。この舞台裏から屋上に出るルートを使用するため、シャルルは「一週間で舞台裏に出入りできるようにしろ」とフランシスに指示をした。一方のルイは運転手役をシャルルから任される。

それからフランシスは金持ちのセレブという設定で、運転手役のルイと共に高級車でカジノ近くのホテルへ宿泊した。そして「盗み出した大金を隠す金庫を確保しろ」というシャルルの指示を受け、フランシスはホテルにあるプールの更衣室をあらかじめ借りることにする。それからプールに行き、バーで働くスタッフのバーマンにチップを支払ってお客の情報を収集した。

数日後、フランシスはカジノの舞台に向かい、踊り子の1人であるブリジットと仲を深める。こうして簡単にカジノの舞台裏に出入りできるようになり、他のスタッフとも顔見知りになることができた。

計画の確認

踊り子のブリジットと恋仲になったフランシスは、彼女と食事をするためにホテルの部屋に招いた。その食事の途中で別の部屋に泊まっているシャルルから電話があったが、フランシスは無視してブリジットと一緒の時間を過ごす。
後日、電話の件でフランシスがシャルルの部屋を訪れると、シャルルは「やる気が失せた」と言う。フランシスは昨日折り返しの電話をしなかったことを謝ったが聞き入れてもらえなかったため、舞台裏に出入りできるようになったことをシャルルに話した。するとシャルルは「これからは時間厳守だ」と言い、フランシスを許すのだった。

その後、シャルルたちはカジノの下見に行く。そこでカジノの内部や警備体制を観察すると、週末にカジノのオーナーたちが売上金を地下金庫に運び出すことが判明する。そのため決行日は週末の金曜日に決まった。

決行の前

フランシスはブリジットを部屋に招き、「来週一緒にパリへ発とう」と彼女を誘う。しかしブリジットは元恋人と会う約束があると話し、「もっと早く言ってくれたら」と気まずそうな様子をフランシスに見せた。それを受けたフランシスは「勝手にすればいい」と怒りを見せ、ブリジットと喧嘩別れしてしまう。怒りが抑えきれなかったフランシスは部屋に掛けてあった絵を壁に投げつけた。
その後フランシスはシャルルから電話を受け、「決行の夜12時がくるまでリラックスして神経を休ませろ」と言われる。

一方、シャルルの部屋で準備をしていたルイは、突然「仕事を降りたい」と言い始めた。「びびったのか?」と尋ねるシャルルに、「金を使い切れば、また楽に稼ぎたくなる」とルイは述べる。さらに「仕事はするが、お金は要らない」とシャルルに言う。金銭感覚のずれを心配するルイに対してシャルルは「勝手だが、約束は守れ」と言うのだった。

計画当日

フランシスはブリジットを一目見たいと思い、カジノの舞台を訪れた。そして賑やかな会場で踊りを披露するブリジットの姿をしばらく見つめる。

その後、フランシスはプレゼントの箱を持って舞台裏に侵入し、舞台で使った木の板の裏に隠れた。そして踊り子とスタッフたちが帰るのをじっと待ち、皆が帰った後にプレゼントの箱の中からライトと拳銃を取り出す。そして屋上へと続く梯子を登るが、途中で天井の蓋についた金具を床に落としてしまう。大きな音が響いたものの、誰にも気付かれることはなかった。
そして天井の蓋を開けて屋上へと進み、ライトで光を点滅させて下で待っているシャルルとルイに合図をする。合図を受けたシャルルたちは車をカジノの入り口の前まで移動させた。

合図を終えたフランシスは屋上にある通気口に侵入する。フランシスは腹ばいになって通気口を進んで、カジノのエレベーターのシャフトに辿り着いた。そして目出し帽を被ってエレベーターの屋根から内部に入り、拳銃を取り出す。フランシスはそのまま地下金庫に行き、「手を上げて動くな」とカジノの売上金を管理するオーナーと他のスタッフたちに拳銃を突きつけた。こうしてフランシスは金庫から10億フランもの大金をバッグの中に詰めて盗み出す事に成功した。そしてルイの運転する車に乗り込み、ホテルのプールにある更衣室の換気口にお金を隠すのだった。

予想外の事態

大金を盗み出した翌日、フランシスはシャルルからの電話で「すぐ海岸にこい」と言われた。そこでフランシスはシャルルから昨日のカジノで起きた強盗についての新聞を見せられる。そこにはカジノの舞台を鑑賞する客の写真が一緒に載せてあり、舞台を見つめるフランシスの顔がはっきり写っていた。シャルルは「現金を違う場所に隠して、しばらく隠れ家に潜伏するしかない」と言い、フランシスにバッグを取りに行くように指示をする。フランシスはシャルルの指示を受けて更衣室の換気口から大金の入ったバッグを取り出し、すぐに逃げようと試みた。しかし、ホテル周辺やプールには警察が複数人おり、カジノのオーナーが「バッグは豚革で洒落たものだった」と警察に外観を詳しく話している。それを聞いたフランシスは焦り、プールの底にバッグを沈める行動に出る。そして警察の目をやり過ごそうとしたのだが偶然にもバッグが開いてしまい、中から大量の紙幣が浮かび上がってきた。やがてプールは紙幣でいっぱいになり、フランシスは為す術もなくその光景を見つめるのだった。

『地下室のメロディー』の登場人物・キャラクター

主要キャスト

シャルル(演:ジャン・ギャバン)

日本語吹替:森山周一郎(東京12チャンネル版旧・新/NETテレビ版)
本作の主人公であるギャングの老人。5年の服役の末に出所する。簡単に大金を稼ぐため、カジノの地下金庫から10億フランを盗み出す綿密な計画を立てた。チンピラのフランシス・ヴェルロットとフランシスの義兄であるルイ・ノーダンを仲間に誘い入れる。カジノの下見中、電話に出なかったフランシスに注意をするなど時間に厳しい様子を見せた。そして一度10億フランを手に入れるが、フランシスがプールの底にバッグを入れたせいで紙幣が水面に浮かび上がり、計画は失敗に終わる。

フランシス・ヴェルロット(演:アラン・ドロン)

日本語吹替:堀勝之祐(東京12チャンネル版・旧)/野沢那智(東京12チャンネル版・新/NETテレビ版)
チンピラの青年。シャルルと刑務所の同房で仲良くなったことをきっかけに、カジノの地下金庫の大金強奪に誘われる。持ち前のルックスでカジノの舞台に出ている踊り子のブリジットと恋仲になり、舞台裏に自由に出入りできるようになる。そして地下金庫に侵入し、一度10億フランを手に入れた。その後警察の手から逃れるため大金の入ったバッグをプールの底に入れるが、中身の紙幣が出てきてしまい失敗に終わる。

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