16bitセンセーション(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『16bitセンセーション』とは、みつみ美里、甘露樹、若木民喜の3人が手掛けた日本の同人漫画作品で、美少女ゲームの制作現場で活躍する若者たちの群像劇である。主人公は、19歳の女子大学生・上原メイ子。彼女は大学の教育学部に通う傍ら、「アルコールソフト」という美少女ゲーム制作会社でCGの制作を担当し、後には原画も手がけるまでに成長していく。この物語はバブル景気が崩壊した1992年から始まり、美少女ゲーム産業の発展や影響力のあるゲーム、そしてその中で起こる様々な出来事を描いている。

『16bitセンセーション』の概要

『16bitセンセーション』とは、みつみ美里、甘露樹、若木民喜の3人によって創作された日本の同人漫画で、1990年代にピークを迎えた美少女ゲームの制作現場が舞台となっている。大学の教育学部に在籍しながら「アルコールソフト」という美少女ゲーム制作会社でCG制作を担当し、後に原画も手がけるようになる主人公・上原メイ子(うえはらめいこ)を中心に物語が展開される。本作は、初めは「同人漫画」としてスタートしたが、2020年よりKADOKAWAから『16bitセンセーション 私とみんなが作った美少女ゲーム』というタイトルで商業版が発売されている。
この物語は、日本が未だバブル景気に湧いていた1992年から始まる。美少女ゲーム産業の発展や影響力のあるゲーム、その中で起こる出来事を中心とした群像劇である。また、美少女ゲームの制作現場の実話を元にした半自伝的な作品として知られており、 その詳細な描写とリアルな描写が高く評価されている。
2023年にはこの物語がテレビアニメ化され、その際には物語の設定が大きく変わった。 アニメ版では、現代のイラストレーターが1992年にタイムスリップして原作漫画に登場するゲーム制作会社にやってくるというストーリーに書き換えられている。

『16bitセンセーション』のあらすじ・ストーリー

漫画版

新たな舞台と新たな挑戦

美少女ゲーム制作会社で、実力をつけていくメイ子(左)。

時は1992年。前年にはソビエト連邦が崩壊し、冷戦時代は終わりを告げた。そして、この年、空前のバブル景気に湧いていた日本経済にも暗雲が立ち込めていた。一方、大学に進学した上原メイ子(うえはらめいこ)は、「パソコンショップR」でパートタイムの仕事を開始。実際、パソコンショップRは美少女ゲームの制作と販売も手がけており、店舗の2階は美少女ゲーム制作会社「アルコールソフト」の開発部門となっていた。
メイ子は以前のアルバイトの学童保育で絵をよく描いており、絵が得意だった。そのことを知った「てんちょー」こと六田勝(ろくたしょう)は、彼女を2階の「アルコールソフト」のオフィスに連れて行く。逃げ出したスタッフの代役としてアルコールソフトの補助グラフィックデザイナーとして使うことにしたのだった。パソコンについての知識はほとんどなく、美少女ゲームについても全く知らなかったメイ子だが、他の先輩スタッフ、とりわけ下田かおり(しもだかおり)から多くを学んだ。かおりはアルコールソフトのメイングラフィック担当のデザイナーで、メイ子に美少女ゲームのグラフィック制作のノウハウを教えた。メイ子は、かおりたちから学んだ知識と技術を活かし、美少女ゲームの制作に励んでいった。メイ子はかおりに気に入られ、次回作以降も手伝うことになった。さらにはかおりの推薦で原画も担当し、原画家としてのデビューを果たしたのである。その後、メイ子が原画を担当した新作ゲーム『こみっくパラダイス』は大ヒットを記録し、アルコールソフトの名を広く世に知らしめることとなった。

意見の対立と新ブランドの誕生

かおりは、『ときめきメモリアル』や『DESIRE』などの影響を受け、「Hな部分だけでなく、恋愛をしっかりと表現したゲーム」を作ることを提案した。ここで、2つのゲームについて簡単に説明しておく。『ときめきメモリアル』は、コナミが1994年に発売した恋愛シミュレーションゲーム。プレイヤーは物語の主人公となり、架空の学園「ときめき学園」で学園生活を送りながら、異性キャラクターとの交流や恋愛を楽しむことができる。また、『DESIRE』は、シーディークエストが1994年に発売したアドベンチャーゲーム。プレイヤーは主人公の少年「加賀美龍」を操作し、不思議な力を持つ謎の少女「イリス」を守るため、異次元の世界「虚無の地」での冒険を楽しむ。話を元に戻すと、てんちょーやシナリオライターの「キョンシー」こと五味川清(ごみかわきよし)の反対に遭い、意見はまとまらなかった。反対の理由は明らかにされていないが、新しいアプローチが成功する保証がどこにもない以上冒険は冒せないということが考えられる。それでも、かおりは美少女ゲームの未来に大いなる可能性を感じており、てんちょーには内密に行動を起こそうと考えていた。キョンシーは当初かおりの計画に反対の立場をとっていたが、かおりの情熱とビジョンに感銘を受け、かおり支持に回った。こうしてかおりはキョンシーを巻き込んで大作を完成させた後、てんちょーとの路線対立からアルコールソフトを辞める決意をした。かおりは最後はてんちょーに引き留められたが、今度はこれにキョンシーが反発、反旗を翻した。その結果、かおりのアルコールソフトとキョンシーのスピリッツソフトという、同床異夢の2つのブランドが誕生することになった。

アルコールソフトの拡大と挫折

かおりがプロデューサーの仕事に没頭できるように、アルコールソフト社は双子の高校生女子、キキララこと小山千里(こやませんり)と小山万里(こやまばんり)を新たなシナリオライターとして雇うことになった。やがてメイ子が描いた原画による新作ゲーム『こみっくパラダイス』の発売に漕ぎつけた。結果は大成功。ソフトは爆発的に売れ、アルコールソフトは業容の規模を拡大することになったのである。1996年当時は、美少女ゲームもPC-98からWindowsへの移行が進行していた時代だった。アルコールソフトも例外ではなく、Windowsへの移行を模索していた。Windowsに馴染めないプログラマーの「マモー」こと六田守(ろくたまもる) が退職を申し出たが、キキララの説得により残留することになった。同時に、てんちょーは、ソフトのコンシューマー向け移植などを目指して、有名なプロデューサーである市ヶ谷金人(いちがやかねと)との取引に投資するが、ダイヤモンドスタジオが破産し、市ヶ谷は姿をくらましてしまう1億円も投資していたアルコールソフトは破産こそ免れたものの大きな損害を被り、コンシューマー向け移植の話も立ち消えとなった。

新たな企画と新たな挑戦

一方、メイ子は次回プロジェクトの提案の場で、コミケを舞台にしたゲームを作りたいと述べた。かおりはメイ子の意気込みに期待する一方で、その企画が市場で受け入れられるかどうかについて心配していた。しかし、キョンシーの助言により解決策を見つけることができた。また、美少女ゲーム専門雑誌の特集記事は、ライバル企業「シューティングスター」のゲームが独占していたが、てんちょーが状況の打開を試みた。やがて、メイ子の企画であるアルコールソフトの新作『こみっくパラダイス』が発売される。美少女ゲームのグラフィッカーとして活躍するメイ子は、ゲームの成功によりコンシューマ化のオファーを受けた。さらに、メイ子の提案した企画も進行し、90年代後半の展開が始まった。

冬夜とコノハの出会いと挑戦

1996年の夏のこと、美少女ゲーム会社「シューティングスター」の社長・山田冬夜(やまだとうや)が、アルコールソフトのイラストレーター・秋里コノハ(あきさとこのは)と出会うことになる。そして、冬夜はコノハを「お姉様」と呼び、崇拝するようになる。その後、冬夜は自身のビデオゲーム会社「シューティングスターズ」を立ち上げる。そして2023年にはその会社の最高経営責任者(CEO)に就任し、テレビに出演するなどして著名人となった。しかしながら、冬夜の活躍とは裏腹に、彼女の会社は経営難に直面し、最後に残された道はアメリカの大手企業との合併のみとなった。その結果、コノハが危険に巻き込まれることとなったのである。
冬夜は自社の倒産を防ぐためにこの合併に応じたのだが、仮に合併に応じていなかった場合、会社は倒産し大勢の社員たちが路頭に迷うことになっただろう。しかし、その後、合併先の「プラネットゲームズ・ジャパン」のCEO、グレン・フォークナーによりコノハは拉致されることとなった。グレンはコノハの創作力を思いのままに利用しようとしたのである。

アニメ版

タイムリープと新たな挑戦

ある日、秋里コノハ(あきさとこのは)が古いゲームショップで手に入れたゲームを開くと、突然光に包まれ1992年にタイムリープする。新しい状況を受け入れるのに苦労しながらも、彼女はイラストレーターとして雇ってくれる小さなゲーム会社「アルコールソフト」に転がり込み、美少女ゲームの黄金時代を築いた伝説のスタッフたちに出会う。コノハは彼らと共に、16ビットパソコンで美少女ゲームを作ることになるのである。当初、美少女の最先端を知っている自分なら無双できるはずと意気込むコノハだったが、使い慣れたツールはこの時代には存在せず悪戦苦闘することになる。また、メインイラストレーターとして活躍する未来がわかっていたのだが、ゲーム業界が低迷しているこの時代では辛酸を舐めることになったのである。

過去と現実の狭間で

ゲームを完成させ、2023年に戻ってしまった秋里コノハは、再び底辺イラストレーターとして過ごす。彼女は「アルコールソフト」での充実した日々が夢か現実かわからない中、再度タイムリープに成功する。やがてコノハは、2023年のアルコールソフトの足取りを追って秋葉原の店をはしごし、最後に訪れた店で、アフロの店長と出会う。コノハは「PC98専用のゲームしか作らない」と意固地になるマモーこと六田守(ろくたまもる)を連れ戻す役目を任される。家の前で寝泊まりしながら説得を試みるも、寝ている間にマモーを見失ってしまう。夏コミを過ぎると作業が間に合わないため、それ以上マモーを待っていられなかった。
コノハが落としたゴミ袋から守がダイヤモンドスタジオ社長・市ヶ谷(いちがや)の店のカードのようなものを見つけ、そこから市ヶ谷の内情を調査しようという流れになる。やがて市ヶ谷が現れ、マモーの父の会社のゲームをコンシューマー化するという話を持ち込む。

未来を変える決意

アルコールソフトの社員がコンシューマー移植作業に大忙しな中、コノハはマモーの命令で市ヶ谷が経営するコスプレクラブを張り込むことになる。コスプレクラブに行く道すがら、過去に一緒にゲームを買った山田冬夜(やまだとうや)に出会う。彼女と話をしている中、てんちょーが現れ、コノハを店の中へ招き入れる。その後、アルコールソフトは、市ヶ谷に騙され10億円の借金を背負う。コノハは借金返済のため、マモーと協議し、自身の未来予知能力を活用して「最高のゲーム」制作を決定した。コノハは10億円稼ぐ目標に追われるアルコールソフトのチームに合流し、最高のゲーム作りに向けて熱心にプレゼンを行った。
マモーがタイムリープして1985年のエコーソフトという会社に辿り着く。社長の名前はエコーで、また、アシスタントや飼い犬の名前もエコーであった。ただし、便宜上、アシスタントはエコー2、飼い犬はエコー3と呼ばれている。この会社では美少女ゲームを作っているようだ。マモーはゲーム作りに誘われ、PC98を使用することを条件に承諾するが、彼らは普通の人間とは何かが違うようだ。1985年当時の技術である「ラップスキャン」も公開され、原画の上にサランラップを被せて油性のマジックで図案を写し、そのラップをパソコンのモニタに貼り付けて、グラフィックソフトでその図案をマウスでなぞって線画を取り込む技術が描かれている。
さらに、エコー2がさまざまなコスプレを披露して守に点数を付けてもらうパートがあり、これは重要な伏線となっている。また、タイムリープ後に守の実体が消えそうになったのをエコー1(社長)が腕に触れ、手首に文様を付けて止めるシーンもある。コノハがタイムリープ後に実体が消えることはなかったため、守のタイムリープはイレギュラーであると考えられる。
アルコールソフト全社員一丸となって取り組んだプロジェクトが完結を見る。遂に会社の命運をかけた最新作が完成したのだ。アルコールソフトのメンバーは打ち上げに繰り出す。気づくと季節はもう冬になり、秋葉原には雪が降っている。マモーは打ち上げには参加せず、散策をしながらタイムリープについて考えていた。

最終決戦と新たな旅立ち

ある日、コノハは、ゲームショップ店主から過去の名作美少女ゲームを譲り受けた。彼女がゲームのパッケージを開くと、突然見たこともない世界にタイムリープした。そこは、美少女ゲームの黎明期、1992年の東京・秋葉原だった。やがてコノハは、アルコールソフトというゲーム制作会社で働き、美少女ゲームを創りあげていくこととなった。
アルコールソフトのメンバーがコンシューマー移植作業に大忙しな中、コノハはマモーに命じられ、市ヶ谷が経営するコスプレクラブを張り込むことになる。道中、過去に一緒にゲームを買った冬夜に出会い、話をしている中、てんちょーが現れ、コノハも店の中へ入る。
その後、アルコールソフトは、市ヶ谷に騙されて10億円の借金を背負うことになった。後に市ヶ谷は詐欺容疑で逮捕されるが、借金は残ったままだった。そこで、コノハはマモーと供に、この借金を返済するために、未来を知る自分の能力を使って「最高のゲーム」を作ることを決意する。そして、コノハは、アルコールソフトのメンバーたちのもとに向かい、一世一代のプレゼンをおこなった。「10億円稼ぐ」という目標に対する彼らの不安を払拭しようとしたのだ。
舞台は変わって2023年の秋葉原。コノハは秋葉原に帰還し、守と再会する。そこで、この街の様々な変化を目の当たりにする。美少女ゲーム制作会社ブルーベルは人妻喫茶に変わり、アルコールソフトはアメリカに移転していた。コノハはこのアキバでゲーム制作に取り組むことを決意する。守もまたゲームを作ることを宣言し、2人は一緒に作業を開始する。物語の中では、コノハの大好きな美少女ゲームの世界がアメリカ風に変化するだけでなく、日本のメーカーがアメリカ企業に買収されるなどの変遷が描かれる。
突然UFOが出現し、守が1985年の秋葉原で出会ったエコー2が現れる。そして、エコー2に導かれてUFOの光のなかから現れたのはエコー1であった。エコー1は予想外の行動に出る。コノハのファンだと言ってサインを求めてきたのだ。サインをもらって気をよくしたエコー1はコノハにゲームの入った箱を渡し、「これは、これからあなたが完成させるゲームです」と告げる。コノハがゲームのパッケージを開けると七色の粒子が飛び出す。エコー1は「これは人間の想像力です」と説明。エコー1たちがコノハたちの前から去り、舞台はふたたび秋葉原ドームへと変わる。
秋葉原の街にヘリコプターが飛来。ゲーム制作の手伝いにアルコールソフトのメンバーが駆けつけたのだ。ヘリコプターの中からメイ子、かおり、てんちょー、キョンシーが登場する。彼らが作業場に着くと、双子のシナリオライターであるキキララや広報の橋本も合流。そして、ついに彼らの手によって、歴史を塗り替える美少女ゲーム『わたしの大切なもの』が完成した。物語は、コノハが運命の相手である守との再会を果たし、また念願のゲームを完成させハッピーエンドにて幕を閉じた。

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