シジュウカラ(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『シジュウカラ』とは、坂井恵理による恋愛漫画作品。2018年から2023年まで『JOUR』にて不定期連載された。夫も息子もいる女性漫画家と、18歳年下の男性漫画家との10年間にわたる恋愛模様を描く。繊細な心理描写、性的虐待・搾取、児童虐待、貧困、ネグレクトといった社会問題を果敢に描く姿勢が評価され、第23回文化庁メディア芸術祭・審査委員会推薦作品に選ばれた。2022年には山口紗弥加、板垣李光人主演でテレビドラマ化もされた。

綿貫忍(わたぬき しのぶ/演:山口紗弥加)

本作の主人公。物語の始まった時点で40歳。
郊外の町で、父親、母親、兄一人という家庭に育つ。
高校時代は漫画研究会所属。
その後『月刊スパイス』誌にてササキシノブ名義で漫画家デビューするものの売れず、アシスタント生活を20年間送っていた。
40際の誕生日を目前に控えたところで、かつてささき蜜柑名義で発表した漫画『地獄にホットケーキ』が電子書籍で大ヒット、思わぬ大金を手に入れ、新作のオファーを受けたことから、改めて漫画を描き始める決意をする。
一回り年上の夫綿貫洋平と息子の悠太の三人家族。洋平とは、地元の居酒屋で出会った。最初は幸せな結婚をしたと思っていたものの、悠太が生まれた後、まだ小さい悠太の子育てと家事、漫画の両立に悩んでいた時期に洋平の浮気を知る。以来、夫婦の仲は微妙。
物語後半では、ドロドロした漫画を描く漫画家としてそれなりに成功し、アシスタントを二人抱える身となる。病に倒れた洋平に代わって、悠太の学費も払っている。
最終的には、洋平とは離婚し千秋とパートナー関係になり、ササキシノブ名義で冬子やみひろに取材した『名もなき詩』を発表。

綿貫洋平(わたぬき ようへい/演:宮崎吐夢)

忍の夫。物語の始まった時点で52歳。
忍と同じ郊外の町でごくごく普通の家庭に育ち、成績も優秀、それなりに大きな企業に就職した典型的な日本の中流男性。一回り年下の忍と結婚する際、「家でできる仕事だから」漫画家を続けることを許すなど、本人は理解のある夫だと思っている。
しかし、相手の気持ちを考えない面があり、忍を繰り返し「おばさん」呼ばわりするなど、モラハラ気質も。悠太が幼い時には子育てにやつれた忍にうんざりして冬子と浮気するなど、自己中心的で身勝手な人間でもある。
物語開始時点で夫婦の仲は冷めきっていたが、それでもセックスだけは忍に要求していた。
物語中盤で大病に倒れ、職場からは半ば追い出される形で早期退職。
忍に執着していた時期もあったが、スナックのママと出会うとあっさり離婚を承諾。しかし、ママに騙されて退職金を持ち逃げされてしまう。住む場所にも困って忍や悠太に迷惑をかけ、今度はかつての浮気相手冬子のもとに転がり込む。しかし、身体を壊していた冬子の病状が深刻になると、冬子を見捨てて南の国から来たホステスに入れあげ、またしても貢いだ挙句、借金を踏み倒して海外に逃亡してしまう。

綿貫悠太(わたぬきゆうた/演:田代輝)

忍と洋平の息子。物語開始時点で13歳。
忍の愛情を存分に受けて、素直な少年に育つ。洋平のモラハラ気質にも気づいていて、そんな態度では忍に去られても仕方ないと、指摘することも。忍と千秋の関係を知った時は、しばらくショックで忍と口を利かなくなったが、すぐに和解していた。
物語後半では、大学生になって関西の大学に進学。関西の大学に進学したのは、自分が離れた土地で自立することで、母親を父親から解放したかったから。早々に、彼女もできて大学生活を満喫している模様。
物語最終盤では、大学を卒業して社会人に。残念ながら、大学時代の彼女とは別れてしまっていた。

橘家

橘千秋(たちばな ちあき/演:板垣李光人)

漫画家志望の青年。物語の始まった時点で22歳。
一見漫画家らしからぬ、いかにももてそうな雰囲気の美青年。
忍と同じ郊外の町で、あまり働かない父親と、母親の冬子の間に生まれる。
幼いころから、両親は喧嘩が絶えず、父親は母親に暴力をふるい、母親からもあまり構われないなど、過酷な環境で育つ。その時、繰り返し読んでいたササキシノブの漫画が救いであり、漫画家を目指したきっかけにもなっている。
中高生の時、隣人星宙の母親から半ば強引にセックスに誘われたのをきっかけに、近隣の女性たちに身体を売っていた時期がある。当時は自覚がなかったがこの出来事が心の傷となっており、思い出すと涙が出たり何もできない状態に陥ったりすることも。
当初はあまり面白くないギャグマンガを描いていたが、忍との出会いをきっかけに自らの性被害や売春を強要されたの体験を描いた『となりのおばさんに買われていました』をチアキというペンネームで発表。大きな話題となる。その後、しばらく2作目が続かない一発屋状態に陥っていたが、『となりのおばさんに買われていました』の映画化をきっかけに新作も売れ始め、物語終盤ではテレビ出演も多い売れっ子漫画家になっている。

橘冬子(たちばな とうこ/演:酒井若菜)

千秋の母親。「女の子は勉強なんてできなくていい」と言うような両親のもとで育ち、「コギャル」全盛時代の高校生の時には援助交際。19歳で結婚して千秋を生み、ようやく幸せになると思ったのもつかの間、夫は働かず、彼女に暴力をふるう。洋平との不倫がばれたことをきっかけに、その夫にも離婚されてシングルマザーにと、男性を翻弄しているようで、男性に翻弄される人生を送ってきた。
千秋に対しては決して良い母親ではなく、千秋が売春で稼いだ金をうすうす事情を知りながら懐に入れるほど。
夜の街で長年働いてきた無理と不摂生がたたって健康状態は日ごとに悪くなるばかり、もう若くないから、と、夜の仕事も失ってしまう。
その後、忍に自身の体験を話すことでやや前向きさを取り戻すものの、病状は進行しており、最終的には帰らぬ人となる。

橘家の隣人

山口星宙(やまぐち せいら/演:榊原有那)

千秋の隣人で幼馴染。母親が父親の妾で、千秋同様複雑な家庭に育つ。小さなころからずっと千秋が好きで、度々アプローチをかけるが、母親が千秋を性的虐待した張本人であるため、受け入れてもらえない。結局、千秋とよく似た男性と不倫の末、自身もシングルマザーに。非正規の保育士と夜の仕事を掛け持ちしながら、息子のちはるを育てていたが、千秋への思いを断ち切るためと、毒親である母親から離れるため、ちはるを連れて故郷を離れる。移住先では、仲居の仕事を頑張っている模様。

星宙の母親(せいらのははおや)

千秋の隣人。娘の星宙と二人暮らしで、夫には他の家庭がある。冬子とは学校の同級生で、援助交際もしていた模様。学校ではグループのボスタイプ。中学生の千秋に性的虐待を行い、売春をそそのかした張本人。そのことを、まったく悪いことと思っておらず、忍に一喝される。

漫画研究会の仲間

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