素晴らしき哉、人生!(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『素晴らしき哉、人生!』とは、1946年に公開されたアメリカ合衆国のファンタジードラマ映画である。監督はフランク・キャプラ。
主人公のジョージ・ベイリーは、人生に絶望し橋の上から身投げを図ろうとする。そんな彼の元に見習い天使のクラレンス・オドバディが現われ、彼を救いにやってくる。子供の頃から運に見放されてきた主人公のジョージ・ベイリーが、見習い天使クラレンスの力を借りて人生の素晴らしさを再確認し、生きていく様子が描かれている。友情や家族の絆、本当の豊かさとは何かに気づく物語である。

『素晴らしき哉、人生!』の概要

『素晴らしき哉、人生!』(原題:It's a Wonderful Life)とは1946年に製作されたアメリカ合衆国のファンタジードラマ映画で、日本では1954年2月6日に劇場公開された。第19回アカデミー賞には5部門のノミネート、第4回ゴールデングローブ賞では監督賞を受賞した作品。度重なる不運により人生に絶望した男が、見習い天使の男や友人、家族によって人生の素晴らしさを再確認する様子を描いている。

本作の監督はイタリア出身のフランク・キャプラ。

フランク・キャプラは貧しい家庭で育ち、苦労して映画監督の道に進んだ。『或る夜の出来事』(1934年)、『オペラハット』(1936年)、『我が家の楽園』(1938年)でアカデミー賞監督賞をそれぞれ受賞し、評価された。

主人公のジョージ・ベイリー役を演じたのはジェームズ・ステュアートである。彼は1908年5月20日生まれのアメリカ合衆国の俳優で、主な出演作に『スミス都へ行く』(1939年)、『フィラデルフィア物語』(1940年)、『裏窓』(1954年)、『めまい』(1958年)などがある。
『スミス都へ行く』では主演を務め、作品が大ヒット。一躍スターに躍り出た。また『フィラデルフィア物語』では第13回アカデミー賞主演男優賞を受賞した。
その後も数々の作品に出演。こうした長年の映画界での功績が称えられ、1984年にはアカデミー賞名誉賞を受賞した。

本作の舞台は1945年のクリスマスイブ。主人公のジョージ・ベイリーは住宅金融会社を経営するも様々な不運が身に降りかかり人生に絶望。橋から身投げを図る。そこに見習い天使と名乗る男クラレンスが現われ、ジョージがこの世に存在しなかったときの世界を見せた。
子供の頃から不運の連続で、それでもめげずに生きてきた彼の人生と、彼を取り巻く友人や家族の温かさが描かれている。

『素晴らしき哉、人生!』のあらすじ・ストーリー

ジョージ・ベイリーと2級天使

「彼にもう一度チャンスを」「神様、パパを助けて」

地上にいる大勢の人が、ジョージ・ベイリーの事を想って祈りを捧げている。そんな彼のために、天は天使のクラレンス・オドバディを送り込んだ。人生に絶望し、身投げを図ろうとするジョージを助けるためである。クラレンスは2級天使。この任務に成功すれば翼が貰えるため、彼を助けることにした。
クラレンスはまず、ジョージという人物の人生を振り返ることにした。

ジョージが12歳の頃である。友人達と雪山からスコップに乗って滑り降りるという遊びをしていたところ、弟のハリー・ベイリーが勢い余って川に落ちてしまった。溺れかけているハリーを助けようと、ジョージは川に飛び込んだ。ハリーを救出することができたものの、ジョージは風邪を引き左耳の聴覚を失ってしまった。

その後、薬屋のガウワーの手伝いをすることになる。子どもに薬を届けてほしいと頼まれたジョージは、その薬の中身が毒薬である事に気がついた。ガウワーに伝えようとしたものの、早く薬を届けてこいと話を聞いてもらえない。ベイリー住宅金融に行き父に会うことにしたが、父も会議で忙しく相手にされなかった。
仕方なく薬屋に戻るとガウワーがなぜすぐ届けなかったのかと憤り、ジョージの頬を叩いた。ジョージは泣きながら薬が間違っていた事を説明し、ガウワーは自分のした過ちに気がついて謝罪した。

そんな過去を経て成長したジョージは、旅行のため鞄を買おうとする。するとガウワーから贈り物だと言われ、大きな鞄をプレゼントされた。

メアリー・ハッチとの再会

ジョージは同窓会パーティーに出席する準備を始める。父は富豪のヘンリー・ポッターと役員会議でビジネスのことについて揉め、疲れている様子だった。
ジョージは準備の傍ら父に建築、設計、都市計画の仕事がしたいと夢を語るが、私の仕事を継ぐ気はないのかと聞かれてしまう。だが、「せまくて汚いオフィスで働きたくない」と断り、やっとの思いで学資を貯めて大学へ進学できる喜びを語った。

高校の同窓会に出席したジョージとハリー。かつての同級生たちと懐かしい交流を楽しんでいると、同級生の1人に妹を紹介された。それは子供の頃に会ったことのあるメアリー・ハッチだった。2人は目を合わせると次第に笑顔になり、一緒にダンスを踊った。気づかずプールに落ちてしまうほど夢中に踊った。

2人は濡れた服から着替え、歌いながら帰り道を陽気に歩く。ジョージはメアリーのことを町一番の美人であると評価した。そこで廃墟のグランビル屋敷が見えたので、ジョージは石を掴み2階の窓に向かって投げた。窓を割ることが出来たら願いが叶うのだという。そして「このせまい町を離れ世界に飛び出すんだ!」と将来の夢を語る。そばで聞いていたメアリーも石を投げ、見事に窓を割った。ジョージはメアリーに願いを聞くが、彼女は教えてくれない。

そこに町の人が大慌てでやってきた。ジョージの父が発作を起こしたのだという。急いで向かうも、父は帰らぬ人となった。

消えたジョージの夢

父が亡くなったことで計画していた旅行は中止せざるを得ず、緊急会議に出席するジョージ。ポッターはこの会社は町に必要ないと言い、解散を要求しようとする。しかしジョージの叔父ビリー・ベイリーが反対してくれた。だがポッターはベイリー住宅金融のことを、仲良くなれば誰にでも金を貸す会社だと言い、父を夢想家であると批判した。ジョージは、父の行いを侮辱することは許さないと強く主張し、部屋を出て行く。

その後会社は存続することが決まったが、役員たちはジョージを次期社長とすることに決定した。そこで彼の大学に行く夢は消え去り、貯めていた学資はハリーの大学費用になった。ハリーは大学に進学し、アメフトの選手に選ばれ結婚も決めた。さらに結婚相手の父の会社を継ぐ事になりそうだという。お祝いをしなくちゃと笑顔を見せるジョージだが、複雑な表情を見せる。

結婚

ハリーのパーティーが始まり、庭でタバコを吸いながら旅行のパンフレットを眺めるジョージ。夢は消え、パンフレットを投げ捨てた。そこへ母がやってきて、メアリーのことを話し始める。母はメアリーにアタックするべきだと助言し、ジョージは聞き入れた。
メアリーの家の前まで来たところで、メアリーが窓から顔を出した。ジョージは散歩をしていて、ただの通りががりだと嘘をつく。メアリーは喜んで部屋に招くが、以前とは違う様子のジョージに憤り、口論になる。そんなとき、ジョージの友人でもあるサム・ウェインライトから電話がかかってきた。メアリーはジョージと一緒にいるとサムに伝える。ジョージが電話を替わると、サムに儲け話を持ちかけられた。これは人生のチャンスだと言われるが、断るジョージ。電話を切り、自分に正直に生きる決意をした。そしてメアリーのことを強く抱きしめる。

そしてジョージとメアリーはめでたく結婚した。
大勢の祝福を浴び、車に乗り込む。新婚旅行に行くのだ。幸せそうにキスを交わす2人だったが、自分の会社の前に人だかりができているのが見えた。何かあったのかと駆け寄ると、町民は恐慌のせいでパニックになっていた。叔父のビリーは銀行から返済を迫られ、すべての現金を手渡してしまったという。さらにこの混乱に乗じてポッターが銀行を乗っ取るために、1ドルにつき50セントで株券を買い占めようと動いていた。ジョージは町民を落ち着かせようと話し続ける。だが銀行が再開するまで待てないという町民のため、メアリーは新婚旅行で使うはずだった2000ドルを差し出した。町民にそれぞれ必要な額を貸し出すことにした。

なんとかこの騒動を乗り切り、従業員と乾杯するジョージ。すると先に帰宅していたメアリーから電話があった。メアリーの指定する先にジョージが向かう。そこは思い出深いグランビル屋敷だった。
屋敷の中に入ると綺麗に掃除されていて食事の準備ができていた。雰囲気の良い音楽も鳴り、2人はそこでキスを交わした。こうなることを窓を割ったときに願っていたというメアリー。再び抱きしめ合った。

ポッターの誘惑

ジョージのおかげで町民は家を建てることができ、町にはベイリー公園ができた。

そんなジョージの活躍を目障りに思うポッターは、ジョージを呼び出した。ポッターは彼に、私の元で働かないかと言う。この先子供ができたらお金がかかるし、今の給与では足りないだろうということだった。そして年収2万ドルもの大金を提示し、ジョージを誘う。妻を楽させてやることもできるし旅行にも行けると考え揺らぐジョージだったが、怪しさを感じはっきりと断った。

家に帰って寝室にいるメアリーの元に寄り、なぜ僕と結婚したのかと聞いた。メアリーは、あなたに似た子供が欲しかったからだと言う。ジョージは驚き、妻の妊娠を知った。

8000ドル

やがて戦争が始まり、4人の子供を支えながらメアリーも働いた。ジョージは耳の障害で兵役を免除となり、町での仕事を続けた。

時は流れ、クリスマス前日。ハリーが戦争での活躍を評価され、大統領から名誉勲章を貰ったと紙面に載る。
ジョージの会社には銀行監査官が訪ねてきた。

叔父のビリーが会社のお金を銀行に預けようとしたところ、ポッターに出会う。そこでビリーは、ハリーが名誉勲章を貰ったという新聞記事をポッターに自慢する。その際、新聞と一緒に現金の入った封筒を誤って渡してしまったのだ。こうしてビリーの持っていた現金8000ドルがすべてポッターの手に渡ってしまった。現金がなくなったことに気がついたビリーは、必死に周囲を探すが見つからない。そのことをジョージに話し、2人は見覚えのあるところをさらに探した。しかし見つかる気配はなく、ジョージは失意の中家に帰る。部屋はクリスマスの飾り付けで豪華だったが、ジョージの気持ちは暗いままだった。心配する子供達と妻に苛立った態度で接してしまい、我に返るジョージ。すぐに謝るが、子供達を泣かせてしまった。

そのままジョージは家を飛び出し、ポッターの元へ行く。今すぐ8000ドルが必要なことを言い、彼に助けを求めた。しかしポッターは当然手を貸してくれない。

ジョージのいない世界

ジョージは絶望し、マティーニの店でお酒を飲む。ついに神に祈り始めた。
その後車に乗り木に激突し、またふらふらと歩き出した。途中で道路を走る車にぶつかりそうになったが構わず歩き続ける。そのまま橋の上から川を見下ろし、飛び込もうとした。だが、ジョージより先に老人が落ちた。助けを求める老人に、ジョージはためらいもなく川に飛び込み老人を救った。

老人は天国から来たという。2級天使のクラレンスだと名乗り、ジョージのことを助けるために彼のこれまでの人生を見てきたと言った。しかしジョージは冗談はよせと相手にしない。そして「自分が死ねばみんなが幸せになる」、「生まれてこなければよかった」などとネガティブなことを口にする。そんな様子のジョージを見て、クラレンスは彼の望みを聞き入れることにした。ジョージがこの世に存在しなかった世界を彼に見せるという。

すると雪が止み、ジョージの聞こえなかった片耳が聞こえるようになった。先ほどぶつけた車もなくなっている。ジョージは違和感を覚えながらバーに行くが、自分を知る人は誰もおらず店の主人も別人のようによそよそしい。薬屋のガウワーにも出会ったが、彼は子供に誤って毒薬を処方したことでしばらく逮捕されていた。注意するジョージがいなかったからだ。
これは悪夢に違いないと、信じられない様子で家に帰るジョージ。しかしそこは廃墟で、当然妻と子供も見当たらない。焦って実家に行きを母を呼ぶが、ジョージなんて息子はいないと言われてしまう。母に叔父のビリーはどうしているかと尋ねると、彼は失業のショックで精神病院に入院しているという。そしてベイリー公園は墓地に変わっていた。そこにある墓石を見ると、ハリーの名が刻んであった。9歳の時に溺死したのだ。これも助けるはずのジョージが存在しなかったからである。

元の世界

ジョージによって救われ、縁を結んだ多くの人々

クラレンスはジョージに、1人の人間がいかに大勢の人生に関わっているかということを伝えた。
自分が存在しないことですべてが悪い方向に変わってしまったことを知り、後悔したジョージは再び橋の上に戻ってくる。そして天に向かって、元の世界に戻してほしいと切実に祈った。

すると彼の祈りが届いたのか、再び雪が降り始めた。警官が橋にいるジョージの元に来て心配する素振りを見せる。ジョージは元の世界に戻った喜びを爆発させ、「メリークリスマス!」と叫びながら町を走った。家に帰ると銀行監査官が待ち構えていたが、ジョージは子供達を抱きしめる。そこにメアリーも帰宅し、家族で再会を喜んだ。すると町のみんなが続々と家にやってきた。メアリーの声かけで集まってきてくれたのだ。ジョージのためなら力になりたいとそれぞれお金を持ち寄り、全部で8000ドル以上もの寄付が集まった。みんなの善意に感謝するジョージ。ハリーは「町でいちばんの幸せ者ジョージに」と言い、乾杯する。

そしてジョージは寄付金の中にクラレンスが持っていた本を見つけた。ページを開くと、翼をありがとうという文字が書かれていた。
そこでクリスマスツリーの飾り付けのベルが鳴った。ジョージの子供が、ベルが鳴るのは天使が翼を貰ったからだと言う。ジョージは天に向かってウインクし、笑顔になるのだった。

『素晴らしき哉、人生!』の登場人物・キャラクター

主要キャラクター

ジョージ・ベイリー(演:ジェームズ・ステュアート)

Andykz186
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@Andykz186

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