七つの魔剣が支配する(ななつま)のネタバレ解説・考察まとめ

『七つの魔剣が支配する』とは、宇野朴人による電撃文庫のファンタジーライトノベルおよび、2023年7月から放送された魔法と剣が交差する世界を舞台にした異世界ファンタジーアニメである。独特の美学と複雑なキャラクターが特徴で、主人公たちの成長と冒険を描く。魔剣を巡る戦いと友情の物語は、多くのファンを魅了している。アニメは小説の魅力を色鮮やかな映像で表現し、緊張感あるストーリーラインが視聴者を引き込む。

魔に呑まれる

魔に呑まれたオフィーリア。

「魔に呑まれる」とは魔法使いが術式の暴走や呼び出した存在によって再起不能となる、あるいは行方不明になる、または発狂して他者に危害を加えるなど魔道を極めた末に迎える悲劇的な結末を指す。これらの事態は、魔法使いの存在そのものが何らかの「魔」によって不可逆的に侵食されることによって引き起こされるのだ。このような終末は全ての魔法使いにとって恐怖の対象でありながら、同時に魔に深く触れた証として、ある種の名誉ある死とも捉えられている。魔に呑まれた魔法使いの最期は、彼らを看取る者が命を懸けても立ち会うべきものとされるほど重要な意味を持つとされており、「お迎え」という慣習によってその最後の瞬間が尊重されている。この慣習は、魔法使い社会において深い共感と尊敬をもって受け入れられているものであるのだ。

呪文

呪文は、魔法使いが魔法現象を引き起こすために用いる文言であり、そのイメージと現象を結びつける役割を果たす。呪文の長さは「○節呪文」として区別され長さが増すごとに魔法の効力も強まるが、それに伴い魔力の消費量も増大し、身体への負担も大きくなる。そのため、1年生が二節呪文以上を使うことは困難であり、通常は2年生の後半から可能となる。呪文には対抗属性が存在し、相反する属性の呪文を使用することで、魔力の出力差があっても相殺することが可能。また、同じ呪文でも使い手のイメージが異なると、その表記も変わる。
例えば、切断呪文「グラディオ」は「斬り断て」と表記され、物質を微細なレベルで断ち切る能力を持つ。クロエ=ハルフォードの「鋼鉄斬りの切断呪文」は、一節の呪文で鋼鉄を断ち切る特異な技。
火炎呪文「フランマ」は「火炎盛りて」と表記され、火葬呪文「イグニス」は「焼いて浄めよ」と表記され、アルヴィン=ゴッドフレイが得意としている。炸裂呪文「フラルゴ」は「爆ぜて砕けよ」と表記され、電撃呪文「トニトウルス」は「電光疾りて」と表記され、ミシェーラ=マクファーレンやステイシー=コーンウォリスが得意としている。
起風魔法「インペトウス」は「吹けよ疾風」と表記され、リチャード=アンドリューが得意。遮蔽呪文「クリペウス」は「仕切りて阻め」と表記され、熟練した使い手は特定の形をした遮蔽物を作り出すことができる。
硬直呪文「プロイベーレ」は「凝りて留まれ」と表記され、起風魔法の対抗属性を持つ。凍結呪文「フリグス」は「氷雪猛りて」と表記され、治癒呪文「サナヴルネラ」は「繋がり治れ」と表記され、亜人種を治療する際にはその生体構造を正確に理解する必要がある。
麻酔呪文「アルトムソムナム」は「眠りに落ちよ」と表記され、麻痺呪文「インペデイエンドム」は「芯まで痺れよ」と表記される。激痛呪文「ドロール」は、与える痛みに応じて表記が変わり、「圧され潰れろ」などと表記。押し込み呪文「イクストルディートル」は「強く押されよ」と表記され、拘束呪文「コリゲンシヨネム」は「固く縛れ」と表記される。

絶界詠唱(グランドアリア)

絶界詠唱(グランドアリア)は、現実を塗り替えるように異空間「絶界」を展開する詠唱。これは、魔道を極めた魔法使いが到達する頂点であり、通常は歴史ある家系の末裔や条理を超えた存在のみがこの力を手にすることができる。絶唱は非常に稀で、魔に呑まれた者でさえこの力に到達することはほとんどない。ただし継承によってこの力を行使することは可能で、キンバリー最上級生の中でも特に優れた者であれば、絶唱を使うことができるとされる。絶唱は、通常の呪文とは異なり、詩や歌のような長さと意味を持って紡ぐ。その効力は非常に強大で、単に魔法現象を起こすのではなく展開された空間は外界から隔絶され、術者が定めた新たな法則が支配する別世界となる。絶界内では、通常は不可能な死者の蘇生さえ一時的に可能。絶界に囚われた者は、術者が術式を解除するか、術者が死なない限り脱出することはできない。侵入も非常に困難で基本的に絶界は短時間しか維持できないが、強力で完全な対抗属性を持つ者であれば、絶界を相殺することが可能。絶界が崩壊する際には空間に亀裂が入り、世界全体に広がった後、眩い光と共に完全に崩壊する。崩壊後絶界内に取り込まれていた者は、どれだけ移動していたとしても、取り込まれた時点の位置に戻される。この力は、その使い手にとっては最大の武器となり得るが、同時に大きな責任も伴う。絶界詠唱は、魔法使いの究極の技として、その神秘と力を今もなお保ち続けている。

感情的な魔法則(ヒステリックセオリー)

感情的な魔法則(ヒステリックセオリー)は、神によって定められた魔法使いの世界律を侵した際に発動する、極端な修正力のこと。この修正力は、魔法使いがルールを破った時に、通常の範囲を超えた反応を示す。神話や伝承において神々が設けた規則に反する行為に対しては、しばしば厳しい罰が与えられると語られており、感情的な魔法則もその一例と考えられる。この魔法則は、魔法使いが自らの力を過信し、禁じられた領域に踏み込むことの危険性を示す警告として機能していると言える。

剣関連

魔法剣

魔法剣は、呪文の詠唱が間に合わない短い距離での戦闘を想定し、領域魔法と剣術を融合させた技術体系。この技術は「ソードアーツ」とも称され、特定の距離を「一足一杖の間合い」と呼んでいる。使用される「杖剣」という短剣は、33〜56センチの長さであり、魔法行使にも適す。通常、魔法使いは「白杖」と呼ばれる専用の杖を使用するが、状況に応じて杖剣を使い分ける。かつて、魔法使いが剣を持つことは不名誉とされていたが、大歴1134年に起きた事件がきっかけで魔法剣が誕生した。この事件では、呪文の早撃ちで知られる大魔導士ウィルフ・バダウェルが剣士によって命を落とした。魔法剣は、魔法使いと普通人の護身術として、また魔法戦闘においても有利な技術として重宝されている。特に力が拮抗する戦いでは、戦闘の決着が近距離でつくことが多いため、魔法剣の扱いが重要なアドバンテージとなる。しかし、魔法剣の普及により、魔法使い同士の傷害事件が増加するという問題も生じた。それでも、杖剣の有無による戦力の不均衡を考慮すると、魔法剣は必要悪として社会に定着した。伝統的な魔法使いの在り方を尊重する者たちからは批判もある。例えば呪文学の教師ギルクリストは、使い魔を侍らせることで自衛が可能であるため、剣を使う必要はないと主張。魔法剣に関するこれらの見解は、今日でも多くの議論を呼んでいる。

基幹三流派

基幹三流派は、現代において広く学ばれている魔法剣の三つの主要な流派を指す。これにはラノフ流、リゼット流、そしてクーツ流が含まれる。
ラノフ流は、基幹三流派の中で最も多くの修練者を持つ流派。開祖ラノフ=エヴァーツによって確立されたこの流派は、領域魔法を用いて自身の周囲の地面に干渉し、足場を加工する技術を基本としている。地に足の着いた戦法を得意とし、相手の動きを読んでカウンターを取ることが特徴。オリバーはこの流派の正統な使い手であり、「遭遇の瞬き」や「隠れる尻尾」といった技を駆使する。
リゼット流は、攻撃的な戦闘スタイルを特徴とする流派で、刺突を主体とした技が多く見られる。開祖リゼット=ラファルグによって創始されたこの流派は、雷属性や風属性との相性が良く、領域魔法を用いて刺突の威力を高めることに重点を置く。オリバーの同学年であるミシェーラやリチャードもこの流派を修めており、「勇の一突」という技は、初心者が格上の意表を突くためによく用いられる。
クーツ流は、基幹三流派の中でも特に使用者が少なく、高度な技術とセンスが求められる流派。複雑な足運びと繊細な技術を要求され、他流派の技術を取り入れて修練する者が多い中で、純粋なクーツ流の使い手は稀。ロッシなど、オリバーの同学年にも修練者はいるが、「純粋クーツ」と呼ばれる者は非常に少ない。クーツ流では、「氷面歩き」や「浮動」といった独特の足運びが基本とされ、これらは摩擦を減らしながら移動するために用いられる。「引の転回」や「切り流し」といった技は、クーツ流の代表的な技として知られている。特に「引の転回」は、相手の攻撃を受けた瞬間に回転し反撃する技で、極端に摩擦を減らした足場が必要。また、「切り流し」は反発属性を用いて呪文のベクトルを変え、被弾を避ける技。
これらの流派はそれぞれ独自の特色と技術を持ち、魔法剣士たちによって受け継がれ、発展してきた。それぞれの流派が持つ技術や戦法は、魔法剣士たちの戦いにおいて重要な役割を果たしている。

領域魔法

領域魔法は、魔法剣の発展と共に生まれた、呪文よりも基本的な魔法行使である。魔法使いは一般人とは異なり、自己の近くの空間までをも「自己」として認識する能力を持っており、この「領域」内でのみ領域魔法を行使することができる。五感を使わずとも、「領域」内で起こることを感じ取ることが可能であり、訓練によってその精度を高めることが可能。例えば、クロエのような達人になると、背後に降る雨粒の数を正確に把握することさえ可能である。通常、領域魔法の行使には杖が必要であるが、壁面歩行や水上歩行のような特定の技術は杖なしでも実行できる。魔法剣が登場する以前は、そのコントロールの難しさと実用性の低さから、あまり重視されていなかった。しかし、現在では魔法剣と組み合わせて使用されることが一般的であり、その応用範囲は非常に広い。目眩ましの「眩む鬼光」やフェイントの「重たき羽毛」、足場を加工する「沈む墓石」や「躓く墓石」など、多種多様な技が存在する。また、特定の属性に特化していなければ使用できない技もある。魔法使いは一般人と比較して自己をより強力にコントロールする能力を持っており、体内の魔力を巧みに操ることで身体機能を強化したり、重心を制御することが可能。これらの技術の習熟度は、決闘や迷宮での戦いにおいて大きな影響を与える。

魔剣

魔剣は、魔法剣の発祥以来約四百年にわたって深化されてきた術理の総称。多くの流派が興亡を繰り返す中で、魔剣はその歴史を通じて進化し続けてきた。現在も新たな魔剣を提唱する者は絶えず、過去二百年間は六つの魔剣が維持されていたが、ナナオによって七つ目の魔剣が生み出された。魔剣は使用者にとって秘奥であり、その術理の詳細は公にされることはない。使用者が自らを明かすことも少なく、その実在すら疑われることがある。魔法剣を教えるガーランドでさえ、魔剣の使用者に関する質問には答えることができなかった。魔剣の使い手同士は、互いに魔剣の使い手であることを直感的に感じ取ることができるとされている。これは「魔剣同機の法則(グランドアーツ・シンクロニシティ)」と呼ばれ、オリバーがナナオと初めて立ち会った際に感じた戦慄も、この直感が原因だった。
第二魔剣「己へと奔る影(クーレウンブラ)」は、セオドール=マクファーレンが使用者。領域魔法により自身の存在率を前方に移動させ、世界の修正力を制御して剣の一撃に乗せる魔剣。この魔剣は膨大なエネルギーを持ち、命中した部位を粒子レベルで消し飛ばすほどの威力を発揮する。
第四魔剣「奈落を渡る糸(アングスタヴィア)」は、オリバー=ホーンが使用者。未来の可能性の一つを観測し、その未来へ現在を収束させる魔剣。実力差があっても勝利の可能性があれば、それを実現することができる。ただし極度の集中が必要であり、心身を戦闘に向けて整える必要があるため、奇襲には不向き。元の使い手であるクロエの命と共に失われたとされていたが、息子のオリバーによって継承されていた。しかし、彼は正当な使い手ではなく、使用には大きな肉体的負荷が伴う。
第五魔剣「死せる胡蝶の夢(パピリオソムニア)」は、デメトリオ=アリステイディスが使用者。この魔剣は相手が「斬る」「斬られる」の境界を意識できなくなるように仕向け、無意識のうちに自分だけが傷つく結果を選択させることで、勝利を手にするのだ。
第七魔剣は、ナナオ=ヒビヤが使用者で、名称はない。時空を斬ることで、敵が一足一杖の間合いに入った瞬間に光速よりも速く斬り伏せる魔剣。ナナオがミリガンの魔眼を攻略するために生み出したもので、オリバーの直観によって秘匿されている。ナナオ自身も術理を完全には理解しておらず、ミリガンとの戦い以降、再現できていない。

体質関連

無垢の純白(イノセントカラー)

魔法使いにおける特異な体質であり、魔力循環の強さと、水晶のように透明で滞りない魔素の流れを持つ髪質をが特徴。この体質は非常に珍しく、魔法使いの中でも特に高い素質を持つ者にのみ見られる。両極往来者(リバーシ)と同じく、魔法使いとしての優れた能力を保証する指標とされており、その持ち主は魔法の才能に恵まれていると言える。無垢の純白は、魔法使いの世界において、その存在が確認されるだけで注目を集めるほどの珍しい体質。

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