あさドラ!(浦沢直樹)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『あさドラ!』とは日本の漫画家・浦沢直樹が描くヒューマンSF漫画。2018年10月から小学館の漫画雑誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載が始まった。戦後の名古屋・東京を舞台に、主人公の少女浅田アサが飛行士としてたくましく成長していく姿が描かれている。また、突如現れた巨大怪獣の謎を追うというストーリーも絡んでくる。タイトルはNHKの連続テレビ小説、いわゆる「朝ドラ」に由来している。タイトルの別表記は『連続漫画小説あさドラ!』である。

伊勢湾台風で家族が行方不明になってしまったアサと弟妹は、きぬよの世話になることになった。
親代わりとしてアサたちを迎えたきぬよは「人生大事に生きることだけは徹底的に教えるよ」と教育方針を宣言する。
厳しくも温かくアサと幼い姉弟たちを育てようとする、きぬよの名セリフであった。

仲井戸慶一「学者に捨てるものなどない、研究者にゴミなどないんだ!」

生物学の研究者、仲井戸慶一のセリフ。
元々は師匠である淀川教授が、自分のメモや資料をぞんざいに扱った仲井戸に言ったセリフだった。
置き場所を貸してくれている叔父の野呂が淀川教授の資料を捨てようとした時に、「学者に捨てるものなどない、研究者にゴミなどないんだ!」と資料をかき集める。
教授の研究に懐疑的だった仲井戸が、本気で巨大怪獣に立ち向かおうとし始めたことが伝わる名セリフであった。

浅田アサ「まだこの手があるわ」

高校生になったアサが巨大怪獣に遭遇したときのセリフ。
背中のファスナーが怪獣の弱点の可能性が出てきた時に、アサはロケット弾を放つ。しかし背びれのようなものに守られた怪獣には直撃せず、効果がなかった。
諦めようとする仲井戸にアサは「まだこの手があるわ」と力強く言う。アサの作戦は飛行機の予備燃料を背中に落とし、発煙筒で火をつけることであった。
最後まで諦めないアサの覚悟が伝わる名セリフである。

正太と巨大怪獣の戦いのシーン

巨大化した正太と怪獣との戦いのシーン。
ミッキーから受け取った薬を飲んだ正太が見た幻覚だったが、「強くなりたい」と願った正太の願望も反映されている哀しいシーンでもある。

『あさドラ!』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

映画監督のポン・ジュノも大絶賛

映画『パラサイト 半地下の家族』で作品賞、監督賞など6部門でアカデミー賞を受賞したポン・ジュノ監督も浦沢直樹の大ファンで、『あさドラ!』の1巻が発売となった時に「この時代の最強のストーリーテラー、浦沢直樹に感謝の心を贈る」というコメントを寄せている。

過去の名作のパロディ・オマージュが散りばめられた作品

ちびまる子ちゃんのようなアサ

『ALWAYS 続・三丁目の夕日』を思わせるシーンの展開や、少女時代のアサの服装が『ちびまる子ちゃん』とそっくりだったことなど、昭和を舞台とした作品からのオマージュと思われる描写が多い。
また幻覚の中、ウルトラマンのように巨大化して戦う正太の名字は早田(はやた)であり、ウルトラマンに変身するハヤタ隊員と同じである。
この他にもまだ気づいていないオマージュやパロディがある可能性が大きい。

『あさドラ!』は浦沢流怪獣漫画の集大成

作者の浦沢直樹は幼い頃からゴジラやウルトラマンといった特撮作品を好んで見ていたとインタビューで語っている。
「これじゃない」と違和感を感じる怪獣と、「これだよね!」と思える怪獣の両方を見てきた浦沢は、自分にとっての「ベストな怪獣とは」を常に考えてきた。
今回の『あさドラ!』は幼い頃から怪獣を見てきた浦沢が、満を持して描く怪獣漫画でもある。

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@crab10257

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