大江戸妖怪かわら版(児童文学・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『大江戸妖怪かわら版』は香月日輪により執筆され、2006年に理論社より刊行された文庫本シリーズ、およびそれを原作として『月刊シリウス』に連載された漫画作品である。人を傷つけ人に傷付けられながら生きてきた人間の少年・雀は、次元のすき間からボロボロになって「魔都大江戸」に落ちてくる。魔人の「鬼火」に助けられた雀は、妖怪や異形の者たちに優しく接してもらううち、次第に心を開く。魔都大江戸で生きることを決意した雀が、奇想天外な妖怪たちと暮らし、成長していく様を描いた作品である。

日吉屋で蘭秋と並ぶ看板役者の藤十郎。

蘭秋と同じく日吉座で看板役者を務めている水虎という妖怪。出身は尾張。魔都大浪花の京で神舞いの華節の元修業していたが神舞いの担い手にはなれないといわれ挫折。悩んでいたところ役者を探しに来ていた菊五郎にスカウトされた。いい男の代名詞ともいえるくらいのイケメン。コミックス第9巻で鬼火に間違われないようにと女になってやってきた修繕屋にほれ込んでいた。雀が大浪花にいき華節にあった際には、藤十郎の活躍を涙を流し喜び扇子を託された。藤十郎はその扇子をもらい喜んだ。

雪消(ゆきげ)

お札が張られた結界の中でしか生きられない雪消

日吉座で新春興行を見た雀は、物語がシンデレラに近いことに驚く。座長の菊五郎に話を聞くと、娘の雪消が書いているという。どうしても会いたくなった雀は菊五郎に頼み会いに行った。雪消は結界府が張り巡らされた座敷牢に閉じ込められていた。菊五郎は鬼の妖怪だが混血であるため人食いはしない。娘の雪消は本質が人食いの先祖返りによる白鬼として生まれてしまった。コミックスの第5巻で、幼い頃好きだった川小僧の子を食べてしまったことで白鬼だったことが分かったと告げている。それ以降、菊五郎が雪消の母親の血で書いた護符で固く封印している。雪消は上級武士の家計である保坂家の放蕩息子・栄之進に結婚相手としてさらわれた。その後白鬼となってしまった雪消に襲われた雀をかばって鬼火が大けがを負う。鬼火が死ぬことはなかったが、雀はこの事件で大切な人を失う怖さを知ることになった。食べられそうになった雀だが、その後も菊屋の菓子を持って雪消のところに遊びに行っている。

『大江戸妖怪かわら版』の用語

場所

魔都大江戸

時空のゆがみから雀が落ちてきた魔都大江戸は妖怪や異形の者たちが暮らす街。江戸時代が元になっていて大江戸城や墨田川、神田なども登場する。昼は空に龍が飛び、夜になると大蝙蝠が舞う。墨田川には大蛇が住み、飛鳥山には化け狐、大江戸城には骸骨が暮らす。うさぎが営む定食屋では一つ目の女性が給仕をし、狸の唐辛子売や卵を売る鶏などもみられる不思議な街。雀はこの大江戸の長屋で、隣近所の妖怪たちにもよくしてもらいながら生きている。日本を支える独立国家であり東に位置している。

魔都大浪花

魔都大江戸同様、日本を支える独立国家であり西に位置するのが大浪花。ここにも妖怪や異形の者たちが暮らしている。大浪花は町中に水路が張り巡らされており、舟に乗って色々なところに行くことができる。方向転換などはロータリーがあり向きを変えることができる。水龍が暮らす琵琶湖を持っているため、水質はすこぶる良い。また水の中には常に垢舐めが大漁に放たれており、きれいな水が保持されている。派手好きで商人気質の町の人たちは、外部から来た人にも友達のように接する。食文化が発達しており町民はこれを誇りとしており、雀が定食屋でうまいうまいと食べるとそれを聞いた知らない人たちが喜んで色々とおごってくれた。薄味でも出汁の効いた食べ物は絶品。鬼火の分身ともいえる修繕屋は大浪花と現代を行き来している。

竜宮

川と海、空に1つずつ存在している妖怪が暮らすエリア。桜の季節、大江戸に遊びに来ていた娘を助けたことで招待された雀が取材にいったのは空の竜宮。ここには天空魚と呼ばれる空を舞う魚を育てていることで有名。天空魚を作ることができる職人が最もえらいとされ、役人は最も下層な暮らしをしている。階段だらけだが重力がないため老人でも子供でも疲れることはない。天空魚を飼うためのギヤマン(ガラスの細工物のこと)を作る町と親交が深い。空の竜宮のてっぺんにある鎮守の森には竜宮の水源があり神聖な守り神の像が暮らしている。ここにある石から無限水が湧き出ているため、この地から水が枯れることはない。

店など

大首かわら版屋

雀が勤めているかわら版屋。ここには雀のほか、ポー、キュー太も務めている。仕事場であるが草子(冊子本)があり自由に出入りできる。近隣住民はここで草子を読み、碁を打ったりする。雀の情報源となることも多い。

うさ屋

大首かわら版屋の向かい側にある定食屋。夜には酒なども出しているので鬼火や桜丸などもよく訪れている。雀はここで朝食をとることが多いが、給仕のお節ちゃんや板さんからおまけをもらうなどかわいがってもらっている。店を切り盛りするのは大きなうさぎの妖怪。旬の食材を使った料理のほか、雀たちが日吉座に舞台見物に行くと出前してくれるし、花見の弁当も作ってくれる。

菊屋

魔都大江戸にある菓子屋。八丁堀の百雷はこの菊屋の菓子の大ファン。はじめて大江戸に来た奴には菊屋の菓子をあげないと気が済まない。店主は狸のような妖怪で、年末には餅なども作っている。日吉座の脚本家である座敷牢にいる雪消も菊屋の菓子が大好き。雀は雪消と知り合い豆大福を持っていってから、今もたびたび菊屋の新作菓子を差し入れしている。

日吉座

魔都大江戸にある人気の芝居小屋。大江戸三大座の1つとされている。三大座は王春、焔、日吉の3つ。王春は和事、焔は荒事、日吉は和事、荒事の融合といわれている。日吉座の看板役者は蘭秋と藤十郎。座長の菊五郎は鬼の妖怪で、娘は先祖返りしてしまった白鬼(人食い鬼)の雪消。日吉座の奥にある封印された座敷牢に住む脚本家で、日吉座の演目は雪消が書いている。

『大江戸妖怪かわら版』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

鬼火「だからもう 恨まなくていいんだヨ」

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