大江戸妖怪かわら版(児童文学・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『大江戸妖怪かわら版』は香月日輪により執筆され、2006年に理論社より刊行された文庫本シリーズ、およびそれを原作として『月刊シリウス』に連載された漫画作品である。人を傷つけ人に傷付けられながら生きてきた人間の少年・雀は、次元のすき間からボロボロになって「魔都大江戸」に落ちてくる。魔人の「鬼火」に助けられた雀は、妖怪や異形の者たちに優しく接してもらううち、次第に心を開く。魔都大江戸で生きることを決意した雀が、奇想天外な妖怪たちと暮らし、成長していく様を描いた作品である。

大江戸に落ちてきた雀を救ったのが鬼火。魔人の中でも一目置かれている存在らしく、大江戸城に暮らす東方(将軍)とも付き合いがある。普段はザンバラ髪で着流しスタイル。常にキセルをもっている(くわえている)。丸い黒メガネをかけているのは魔道が漏れるのを防いでいるためといわれる。強い力を持っていることはわかっているが、どのくらいの妖力があるのか真相は不明。雀の名付け親。大江戸の人たちからは鬼火の旦那と呼ばれ敬われている。雀に大首を紹介し、この世界で生きていくという選択肢を与えた。雀が悩んだり困ったりしたときには鬼火のところにやってくる。大浪花にいる「修繕屋」は鬼火のもう一人の自分。修繕屋とは次元の狭間で出会っているし、お小夜を現代に帰したのも鬼火なので非常に高い能力を持っていることは間違いない。雀にとっては大江戸で拾ってもらった恩人であり、父親のような兄のような存在。大江戸の神田に暮らしている。

桜丸

魔人の「桜丸」は雀のよき友人であり、取材の際は欠かせない相棒となっている。

別名風の桜丸。赤い瞳と赤い髪、桜の柄の着物を着ている。風をとらえて飛ぶことができる桜丸は、雀が取材する際のいい相棒となっている。飛ぶといっても飛行しているわけではなく、高い跳躍力で飛び上がり風をつかみ浮遊しているようなイメージ。足場の悪い所では飛ぶことはできない。コミックス1巻第1話では、炎蛇による火災が起き、雀の取材に付き合っている。大江戸に落ちてきたお小夜を広い雀の元に届け、その後、雀とポーと一緒に大江戸見物をした。外見が美しいためお小夜からは天女と間違えられている。見た目は美しい桜丸だが腕っぷしも強く、絡んできた酔っ払いを軽くあしらう場面も見られた。額と首に彫り物があるため魔人と判別できる。雀のかわら版の大ファンで、用心棒もかねて取材についていくことも多い。コミックス2巻では吉原で遊女に囲まれ、8巻では大浪花の道頓堀で地元の女性に囲まれている。かなりのイケメンである。

百雷(ひゃくらい)

怖い風貌だが甘いものが大好きな八丁堀「百雷」も雀のことを気にかけてくれる。

狼人間の百雷は八丁堀同心。雀が大江戸に落ちてきて間もない頃から知っている。甘いものが大好きで特に菓子処「菊屋」の菓子が大好物。町の人たちからは「八丁堀の旦那」などと親しまれている。雀に初めて会った時も、お小夜にあったときも菊屋の菓子を食べさせている。
コミックス第11巻で雀が百雷の仕事を取材に行った際、見回りで町民からお金をもらっているのを見た雀は「賄賂ではないか?」と勘繰る。
町民は見回りに来てくれるから未然に犯罪を防ぐことができ、しかも袖の下のお金は自分の手下を雇用するために使っているという。雀は改めて百雷のすごさを知った。
人気役者である女形の蘭秋が百雷を慕っており告白されている。まんざらでもない百雷だが子孫を残す使命があるためお付き合いはしていない。コミックス10巻では人型の体が弱い妹「初花」が登場し、妹にはめっぽう甘いことが分かっている。

妖怪

姿も形も様々で、猫や犬、カエルのような形のものから、何とも形容しがたい異形のものもいる。

ポー

仕事が遅れ大首に怒られているポーは、キュー太と同じく雀の同僚だ。

雀の同僚であり友人。大首の元で働いている猫の妖怪。文芸担当者で「いい朝だね。生まれ変わった気分だよ」と毎朝話す気障な性格。大型で二足歩行、緑の目と銀の毛をもつダンディな妖怪。外地「大倫郭」から来た渡来人で、いつもパイプを持っている愛煙家。ハンチング帽とチェックのベスト、黒のブーツがいつものスタイル。雀は取材などポーと行動することが多い。大江戸で雀がどこかで働きたいと考えているとき、「雀の目で見た大江戸をかわら版にしたら?」と大首に頼んでくれた恩人でもある。博識で色々なことを知っているポーは、雀に大江戸のことを教える先生的な面も持っている。桜丸とは飲み友達で、常に雀の近くで見守ってくれている。

キュー太(白助)

雀の同僚であるキュー太は人気の絵師。

白い布を樽にかぶせたような見た目のキュー太。元は白助と呼ばれていた妖怪。雀と共に大首の元で挿絵師として働いている。最初は顔がなく話もできない状態だったが、雀が顔を描いてあげると言葉を紙に印刷して吐き出し、意思表示できるようになった。
白助という名を嫌っており、お化けのQ太郎に似ていることから雀がキュー太と名付けた。かわら版の絵を担当しており、その腕前は役者絵の指名がくるほど。雀が見聞きしてきたことを聞いて絵にするのだが、まるで見てきたかのような出来栄えといわれている。絵草子屋の店頭にもキュー太の絵が飾られている。雀が取材などで遠出をするとき、いつも置いてけぼりとなり怒っている。

大首

かわら版屋で雀を雇っている大首はケチで怒鳴ってばかりいるが、雀のことを温かく見守っている。

雀が勤めるかわら版屋を営む大首は顔だけの妖怪。大きな顔は真っ赤で眼は金色。強面だが人情に厚く、雀のことも大切に思っている。かわら版屋で朝まで原稿を書いていることが多い雀に、「徹夜しないで布団に入って寝ろ」と怒るシーンもあった。
かなりケチらしく、桜丸や雀たちは大首を吝虫(しわむし)と表現している。大浪花に雷馬を取材に行きたいと金を貯めた雀だが、かなりの金を積んでも首を縦に振らなかった。結局、雪消(ゆきげ)が10両の金を積み大浪花に行くことができた。小さく真っ黒な楕円から手足がはえた働き者の手下を多数雇っている。

留吉・末蔵

留吉と末吉は刷り師をしている蜘蛛の妖怪。腕が6本ありその腕を駆使して至急な仕事にも快く応じてくれる。はじめて雀が仕事を依頼しに行ったとき、その容姿に恐怖を感じたが、2人の人柄を知り信頼を寄せる仕事仲間となった。留吉が彫り師で末蔵が刷り師。
コミックスの第5巻、雀が雪消のことにかまけて仕事をさぼり大首に大目玉を食らった。今日中に作り上げたいと無理をいったときにも、雀の為だと奮闘し仕上げてくれた。待っている間雀が寝てしまった際も布団をかけてあげている。

蘭秋(らんしゅう)

雀と大江戸の町を歩く蘭秋(右)

蘭秋は伏見の白虎一族出身という高貴な狐妖怪。生まれつき妖力が低く一族にいることができなかったため大江戸にやってきた。藤十郎同様、日吉座の菊五郎に見いだされ役者となった。女形として日吉座の看板役者となり、今では大スター並みの人気者。舞台では「芍薬・牡丹・百合・蘭秋!」と大向うからの掛け声が上がる。見目美しい女形の蘭秋は男だが、八丁堀の百雷に心を寄せ告白もしている。百雷と付き合うことが叶わなかったが、百雷もまんざらではない。コミックス第6巻では花見客に絡んだ大蛇の妖怪が百雷をバカにしたことに憤怒し飲み比べで見事に勝利。勝負の後に百雷の胸の中で気持ちよさそうに眠っていたが、実は酒豪。水鳥の蘭秋は酒を飲んでも酔わないたちだった。雀とも仲が良く、雀の元には新作舞台の招待がたびたび届いている。

藤十郎

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