大江戸妖怪かわら版(児童文学・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『大江戸妖怪かわら版』は香月日輪により執筆され、2006年に理論社より刊行された文庫本シリーズ、およびそれを原作として『月刊シリウス』に連載された漫画作品である。人を傷つけ人に傷付けられながら生きてきた人間の少年・雀は、次元のすき間からボロボロになって「魔都大江戸」に落ちてくる。魔人の「鬼火」に助けられた雀は、妖怪や異形の者たちに優しく接してもらううち、次第に心を開く。魔都大江戸で生きることを決意した雀が、奇想天外な妖怪たちと暮らし、成長していく様を描いた作品である。

雀は魔都大江戸に落ちてきてから、鬼火の元で養生していた。雀は現代で心身共に傷めつけられており、人を信じることさえできずにいた。しかし鬼火の家の者たちに優しくされて体も心もよくなっていく中で、食べるものがおいしいと感じること、景色が美しいと感じることができる自分に気が付く。
自分が生きてきた世界とは違う世界にいることがわかった雀に、帰りたいなら帰る事ができると伝える鬼火。元の世界に帰るか、それとも残るか、自分で決めろといわれた雀。鬼火は雀が落ちてきたときのひどい状態を知っていたが、それでもお前の故郷だから恨むのはやめろという。時空を超えて落ちてきた世界とは時間の進み方が違うから、元の世界に戻れば雀が恨んできた人もきっと変わっていると諭された。「恨むものがいない、だからもう恨まなくていいんだヨ」と優しく言われた雀は泣きくずれた。

お小夜「いい子にしてればまた会えるよね!きっとまた神サマがお願いを聞いてくれるよね!きっと会いにくるから きっと」

雀と同じように時空のゆがみから大江戸に落ちてきたお小夜。大きな呉服問屋の娘で厳しくしつけられたお小夜は、皿を割って怒られるのが怖くて押入に入った。消えてしまいたいと強く思ったことで大江戸に落ちてきた。桜丸に拾われたお小夜は雀、ポー、桜丸に案内され大江戸の町を楽しむ。きれいな着物を着たり、好きな物を食べたり、大きな声を出したり、お小夜は今までしたことがなかったことを堪能する。ドジョウを食べ、美味しいスイーツも食べ、海ではカッパのタロと相撲も取った。カッパのタロのお母さんが迎えに来た時、ふと母親のことを思い出すお小夜。お小夜の暮らしていたところと大江戸では時間の流れ方が違うので、長ければ長いほど向こうの時間はもっと進んでしまう。それでも雀たちはお小夜が自分で帰る決断をするまで待った。菊月太夫に暴れ馬から守ってもらったことで、昔母にも命がけで守ってもらったことを思い出し、帰ることを決意したお小夜。鬼火の旦那と時空を飛ぶとき、大好きな雀、ポー、仙女と間違えた桜丸を思い放ったセリフが「いい子にしてればまた会えるよね!きっとまた神サマがお願いを聞いてくれるよね!きっと会いにくるから きっと」だった。

雀「何言ってんだよ!死にそうな大怪我じゃねぇか!頼むからちゃんと休んでくれよ!」

日吉座の座敷牢に閉じ込めていた雪消が栄之進の影武者によって連れ去られた。白鬼である雪消の封印が解けたら人食いの悲劇が繰り返されてしまう。桜丸や鬼火に伝えてくれと頼んだ雀は雪消の元へ急いだ。雪消の額に貼ったお札がとられたとき、雪消の白鬼が目覚める。簡易的に作った封印の座敷牢は栄之進の家臣もろとも刻まれた。そこにやってきた雀を見ると、元々雀に好意を寄せていたこともあり雀を食おうとする。その間に入って雪消にやられたのは鬼火だった。雪消の鋭く長い爪が鬼火の左肩に刺さった。鬼火は自らの血で雪消の額に封印を施し爪を抜いた。鬼火の肩からは人間ではとても耐えられないくらいの血が流れ出ている。大丈夫だという鬼火と一緒に神田の住まいに帰宅した。血を落とし包帯を巻いた状態で日吉屋へ雪消の完全封印をしに行くという鬼火に向かって雀が思わず叫んだセリフが「何言ってんだよ!死にそうな大怪我じゃねぇか!頼むからちゃんと休んでくれよ!」である。今まで現代で与太者の死に際など見たことがあった雀だったが、大切な人を失うことの怖さを知った瞬間だった。

ポー「雀のあれは〝生まれ直し”をしているのかも知れないねぇ」

鬼火が雪消に刺されたくさんの血を流し、大切な人を失うのではないかと大きな不安に襲われた雀。「最近少しは大人っぽくなってきたかな?」と思われていた雀だったが、この一件で鬼火への接し方がまるで子供のようになってしまった。
桜丸も「元に戻っちまったか」と笑うが、ポーは「雀のあれは〝生まれ直し”をしているのかも知れないねぇ」という。

大江戸に一人落ちてきて妖怪や魔人などにも恵まれて、今ではすっかり1人で暮らしている雀。しかし知らない世界で、たった1人の人間が暮らすのは無理することもあるだろう。ポーは生まれ直しをしている雀に対し、ここには甘えられる者、頼れる者もいるのだからゆっくり成長すればいいとつぶやいた。

雀「俺は帰るよ 自分の家へ」

大浪花に雷馬が直撃すると聞き取材に行った雀。大浪花には鬼火の分身ともいうべき修繕屋がいた。修繕屋と共に大浪花の色々なところにいき、名物もたくさん食べ楽しんだ。修繕屋は鬼火と一緒で時空を移動できる。今も大浪花と雀が暮らしていた10年先の日本を行き来している。そのため雀が大江戸に帰るとき、修繕屋に「俺はお前を元いた世界に帰すことができるんやで?ホンマにええんやな?」と聞かれた。その際に雀がきっぱり言ったセリフが「いいんだ 俺は帰るよ 自分の家へ」だった。ただこの後、修繕屋が大江戸に遊びに行くと告げると、レトルトのカレーを持ってきてくれと頼んでいる。

『大江戸妖怪かわら版』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

修繕屋は『下町不思議町物語』の高塔と同一人物

大浪花と現代を行き来しているもう1人の鬼火、修繕屋は関西弁を話し大江戸に遊びに来た時は女性に変身しているなど、非常に不思議な存在。この修繕屋、実は『下町不思議町物語』に出てくる修繕屋の高塔と同日人物。高塔も丸メガネをかけ着物を着用している。2人の違いといえば、高塔は常に煙管を吸っている愛煙家という点。

作者の去就がかかった作品だった『大江戸妖怪かわら版』

――Q3.連載デビューまでに、挫折しそうになったことは?また、どのように立ち直りましたか?

高橋:オリジナルのネームを一年くらいやってボツになった時です。その後、コンペのお話を色々いただいていたので、それをいただけるだけでもまだ希望はあるのかなと思って出し続けてました。

「大江戸妖怪かわら版」がだめだったらやめようかなとも思ってました。連載決まったときに泣いて、そのあと雑誌掲載まで一年かかってそこで挫折しそうになって雑誌に載ったときに立ち直りました。

雑誌に1、2話が載るまでの一年間、連載できることを信用してなかったですね。

出典: akibablog.blog.jp

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