341戦闘団(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『341戦闘団』とは広江礼威による青春戦争活劇漫画である。『ゲッサン』の2019年7月号より連載開始。物語の舞台はモルダニア帝国とクラスナヤ共和国という大国同士の戦火渦巻く最前線。そこにやってきたのは本物の戦争を知らないお嬢様・エルミナ・ゲネシェスア・シャウマハ。彼女はモルダニア帝国陸軍騎兵少佐として「341戦闘団」を率いて、数々の困難へと立ち向かっていく。リアルな戦争が題材となっているため、広江の得意とする臨場感溢れる血生臭い戦闘シーンが魅力の作品である。

部下の命を背負う責任の重さに1度は心が折れかけてしまったエルミナであったが、「帰りたい」と嘆く新兵を見て部下を生かして帰す決意を固める。そして、今まさに命を賭して戦場で戦う部下のために指揮官として復帰することを決めて、エルミナはジョシュアとともに戦車に乗る。そんなエルミナの姿にジョシュアは彼女は戦争を知らないが、頭の軽い英雄気取りのバカではないことを悟る。そして、ジョシュアはエルミナに「あんたは俺らを生かして帰せますか」と聞いた。それに対してエルミナが「俺らじゃない私たちよ。私たちは絶対にここを切り抜ける。必ずね」と言った。自身を含めた味方を帰すというエルミナの決意が現れたセリフとなっている。

瀕死の敵兵士と目が合うエルミナ

エルミナの指揮の元敵を追い詰めていく341戦闘団であったが、エルミナの乗った戦車の足元が壊れてしまい身動きができなくなっていた。そんななかで自身に向けて突きつけられた敵戦車の砲身を目にしたエルミナは、自身が「ここで終わってしまうなんて」と絶望する。あわや吹き飛ばされるというところで、味方が到着して敵戦車を倒した。間一髪のところで助かったエルミナは、大破した戦車から男性兵士が出てきて中に取り残された女性兵士を助けようとする姿を目撃する。女性兵士を引きずり上げたはいいが、男性兵士はエルミナと目があってから間もなく、女性兵士ともに炎の中に倒れていき死亡した。この出来事は、一歩間違えれば自分が命を落としていたという事実をエルミナに突きつけた、印象的なシーンである。

ジョシュア・バスカンチェロ「済んだ事です。互いに殺すつもりだった。でもやつらの方に運がなかった。それで終われる話です」

戦争というのは生死をかけた戦いであり、お互いに相手を殺す気で武器を持っている。そうしなければ生き残れないために、お互いに必死となる。エルミナ自身も自身と部下を生かすために必死に策を考えて指揮をしていた。相手も同じく、エルミナたちを殺して帰るつもりで戦いに挑んでいた。しかし、結果はエルミナたちが勝利して生き延びた。もし、援軍が来なければ死んでいたのはエルミナたちであり、運に左右される出来事であった。このような出来事は戦場ではありふれたことであり、いちいちそのようなことに感情を引っ張られていてはすぐに精神的に潰れてしまう。最悪の場合病気除隊になってしまうこともある。ジョシュアの「済んだ事です。互いに殺すつもりだった。でもやつらの方に運がなかった。それで終われる話です」というセリフは戦場で生きる上で必須とも言える考え方であり、彼が過酷な戦場を生き残ってきた証となっている。そして、この言葉はエルミナを強く励ました。

『341戦闘団』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

モルダニア帝国のモデルはドイツ

モルダニア帝国のモデルはドイツであると思われる。1話冒頭にてドイツ機甲団軍歌である「Panzerliedno」の歌詞を引用したものが記載されているほか、戦車のコールサインはドイツ語となっている。

『341戦闘団』は作者のリハビリ作品

作者は2010年頃からうつ病を患い代表作である『BLACK LAGOON』を休載せざるを得ない状況となっていた。その中で、なにも描かない状態にいることに強い不安を覚えるようになり、アニメ『Re:CREATORS』の制作に関わることで物書きとしてのリハビリを行っていた。さらに、漫画を描くリハビリとして「描きたいときに描く漫画」の制作を進めていた。それが、本作である。戦争単体で物語を描くのは難しく、大概のミリタリー作品は怪獣や魔法などのSF要素を絡めたものが主となっている。しかし、作者自身はそういったものに満足がいかなかったため、SF要素を徹底的に排除した内容にしているとのこと。

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