山と食欲と私(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『山と食欲と私』とは2015年9月からWEB漫画サイト『くらげバンチ』で連載開始された信濃川日出雄によるアウトドア漫画。『くらげバンチ』では最速で100万アクセスに到達した。
主人公・日々野鮎美(ひびの あゆみ)は単独登山が趣味の27歳会社員。そして絶景の中で食べる「山ごはん」も欠かせない。登山途中に出会う人々や鮎美の日常のエピソードを、登山と料理を通して綴る。
毎回再現性の高い「山ごはん」を鮎美が頬張るシーンや、実在する山からの絶景が見所である。また随所に登山のノウハウも紹介されている。
藪蚊が支配人代理を務める、架空の山小屋。長野に移住したサヨリが住み込みでアルバイトをする。藪蚊の意向に反して、若い女性客はなかなか増えず年配の女性客が大半を占めている。
『山と食欲と私』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
日々野 鮎美「山ガールって呼ばないで」
登山中に他の登山客から「お、なんだ女の子だ」「『山ガール』ってやつね。よく見かけるようになったな」と言われ、鮎美が返した言葉が「『山ガール』って呼ばないで」だ。と当初は「山ガール」ブームに乗って見た目や服装重視で登山を始めた鮎美だったが、本格的に登山を始め、年齢的にも「山ガール」と呼ばれるのを嫌うようになった。山と本気で向き合い、登山に情熱をかける鮎美の気持ちが伝わる名セリフである。
比辻 道信「富士山はいろんな意味で日本一。日本一高いのに日本一『山を知らない初心者が登る山』でもあるんです」
鮎美が登山を始めてすぐに参加した初心者向け富士登山ツアーで、あまりのしんどさに鮎美が思わず「なんでこんなに必死に登らなきゃいけないの…」と呟くと、それを聞いた登山ガイドの比辻(ひつじ)が「富士山はいろんな意味で日本一。日本一高いのに日本一『山を知らない初心者が登る山』でもあるんです」と言うのだ。富士山は日本一高い山であり、岩と砂礫ばかりで歩きにくく、景色も単調なため過酷で退屈な山である。しかし有名さゆえに慣れない初心者がわざわざ列を作って登る。だがこの苦しい富士登山を経験すれば、日本のどの山に登っても楽しいと感じるだろうということなのだ。鮎美はこの話を聞いていなければ、登山は苦しいだけだという印象だったと振り返る。鮎美の興味を登山へ導いた重要な言葉である。
海苔野 浜絵「やりたいことがあるなら自分も背負えよ」
鮎美が「山に登りたい」「山で料理をしたい」と言うのに合わせ、山を調べて鮎美を連れてきていた海苔野(のりの)。登山にもあまり興味を持てていなかった海苔野が鮎美のために動いていたある時、他の登山客からマナー違反を指摘され怒鳴られてしまう。不満が募った海苔野は、「○○したい」と言いつつも、自ら動こうとしない鮎美に対して「結局あゆみん(鮎美のこと)はお客さんみたいについてくるだけ。私たちはツアーガイドか?引率の先生か?あゆみんが言い出したことなのに、いつの間にか私たちがおんぶする側になってしまうんだ」と、鮎美に対して今までの不満をぶちまける。そして「やりたいことがあるなら自分も背負えよ」と言う。鮎美は「恥ずかしくて消えたい」と思うほど落ち込むが、この言葉が鮎美を自分で計画し、自分で責任を持つ単独登山女子へ成長させる意識改革の始まりとなる。
日々野 雨子「目的から逆算して必要となることを徹底的に考えろ。やるべきことに優先順位をつける癖を身につけろ」
鮎美が初めて自分で登山計画を立て挑んだ羊蹄山登山。事前計画と同伴に協力した叔母の雨子は、登山に必要なものは体力よりも「計画力」だと考えていた。羊蹄山のような1日がかりで登るような厳しい山に対して「山で料理をしたい」とお気楽な希望を出してきた鮎美に、雨子は「今回は山頂に立ち、無事に下山することに目的を絞ろう」と修正提案をする。そして鮎美が登山計画を立てるにあたり「目的から逆算して必要となることを徹底的に考えろ。やるべきことに優先順位をつける癖を身につけろ」とアドバイスするのだ。
すぐにこの言葉通りとはいかなかったが、鮎美の登山に対しての心構えを大きく変えさせる重要な言葉となった。
『山と食欲と私』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
打ち切りがきっかけで生まれた作品
2015年、作者である信濃川日出雄は、2つの雑誌で描いていた連載を廃刊などの都合で打ち切られてしまい、仕事がなくなってしまう。その時、以前交流があった、『くらげバンチ』の編集者に連絡を取ったところ、お互い登山やアウトドアを趣味にしていることがわかった。そこから山やアウトドアを題材にした漫画をやろうという話に繋がったのだという。
「倉毛」の名が様々な箇所に登場
物語にこっそりと登場する「倉毛(くらげ)」の名前。作品が連載されているサイト名『くらげバンチ』から取ったものと推測されている。藪蚊とサヨリが働く山小屋「倉毛平小屋」や、黒蓮の知人の材木屋のものだというトラックにも「(有)倉毛材木店」と書かれている。
登場人物の愛用のギア
コミックのカバーを取ると、その巻に登場する人物の体重、愛用のギア(道具)とその重量が描かれている。登山ウェアのブランドも実在のブランドをもじったものが多い。登場人物たちがどんなギアを普段愛用しているのかを知ることができる。
鮎美考案の飯炊き歌
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目次 - Contents
- 『山と食欲と私』の概要
- 『山と食欲と私』のあらすじ・ストーリー
- 単独登山女子・鮎美
- 登山と山ごはんに目覚める鮎美
- ラーメンの汁事件
- 単独登山女子への成長
- 仲を深めた高尾山登山
- 3泊4日の八ヶ岳単独縦走
- 若き父の足跡を辿る鮎美
- 『山と食欲と私』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- 日々野 鮎美(ひびの あゆみ)
- 鮎美と登山を楽しむ仲間たち
- 小松原 鯉子(こまつばら こいこ)
- 瀧 サヨリ/瀧本 サヨリ(たき さより/たきもと さより)
- 瀧本 健次郎(たきもと けんじろう)
- 鮎美の会社の社員たち
- 鰐壁 大器(わにかべ だいき)
- 蛭村 直樹(ひるむら なおき)
- 浜栗 藍(はまぐり あい)
- 蜂峰 丈(はちみね じょう)
- 鮎美の家族
- 猪口 いるか(いのぐち いるか)
- 猪口 雅敏(いのぐち まさとし)
- 双葉 紗子(ふたば しゃこ)
- 双葉 朝里(ふたば あさり)
- 日々野 透(ひびの とおる)
- 日々野 鶴三(ひびの つるぞう)
- 日々野 雨子(ひびの あまこ)
- 佐藤 空美(さとう そらみ)
- 鮎美が山で出会った人々
- 佐藤 ヤマメ(さとう やまめ)
- 井森 太郎(いもり たろう)
- 男鹿 たかし(おが たかし)
- 男鹿 ますみ(おが ますみ)
- 兎内 幸生(とうち ゆきお)
- 鯰江 洋子(なまずえ ようこ)
- 沙魚野 マキ(はぜの まき)
- 時鳥 のぞむ(ときとり のぞむ)
- 大神 隆則(おおがみ たかのり)
- 黒蓮 七実(こくれん ななみ)
- 薮蚊 繁(やぶか しげる)
- 鷹桑 秀平(たかくわ しゅうへい)
- 甲 ヒロム(かぶと ひろむ)
- 虻沢 登志郎(あぶさわ としろう)
- 香山 栄螺(かやま さざえ)
- 平目 あおい(ひらめ あおい)
- 平目 秋人(ひらめ あきひと)
- 伊藤松 貞夫(いとうまつ さだお)
- 里杉 浩二(さとすぎ こうじ)
- 秦野桂 誠也(はたのかつら せいや)
- 小楢川 竜介(こならかわ りゅうすけ)
- 都影 ユウジ(とかげ ゆうじ)
- 蝗 太志(いなご ふとし)
- 六科 広宣(ろくしな ひろのぶ)
- 六科 元(ろくしな はじめ)
- 有波嘉 涼太(ありはか りょうた)
- 比辻 道信(ひつじ みちのぶ)
- 古賀 浩二(こが こうじ)
- 古賀 直美(こが なおみ)
- 安手 太一(やすで たいち)
- 鍬形 昭昌(くわがた あきまさ)
- 白鷺 拝次(しらさぎ はいじ)
- 山下 舞弓(やました まゆみ)
- その他
- 福地 貝帆(ふくち かいほ)
- 榊 恵留(さかき える)
- 鶯谷 三次郎(うぐいすだに さんじろう)
- 室伏 慈也子(むろふし じやこ)
- 鷹桑 晴多(たかくわ はるた)
- 葦登 あずさ(よしのぼり あずさ)
- 荒金 鯵子(あらかね あじこ)
- 羆 光治(ひぐま みつはる)
- 砂井 雅之(すない まさゆき)
- 海苔野 浜絵(のりの はまえ)
- ポール・グリーズマン
- 『山と食欲と私』の用語
- 単独登山女子(たんどくとざんじょし)
- メスティン
- シュラフ
- 倉毛平小屋(くらげだいらごや)
- 『山と食欲と私』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 日々野 鮎美「山ガールって呼ばないで」
- 比辻 道信「富士山はいろんな意味で日本一。日本一高いのに日本一『山を知らない初心者が登る山』でもあるんです」
- 海苔野 浜絵「やりたいことがあるなら自分も背負えよ」
- 日々野 雨子「目的から逆算して必要となることを徹底的に考えろ。やるべきことに優先順位をつける癖を身につけろ」
- 『山と食欲と私』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 打ち切りがきっかけで生まれた作品
- 「倉毛」の名が様々な箇所に登場
- 登場人物の愛用のギア
- 鮎美考案の飯炊き歌
- 作品から生まれた記念日「山ごはんの日」
- 多くの企業とのコラボレーション