トロピカル〜ジュ！プリキュア（トロプリ）のネタバレ解説・考察まとめ

『トロピカル〜ジュ！プリキュア』の概要

『トロピカル〜ジュ！プリキュア』とは、人々の“やる気”を奪う「あとまわしの魔女」の魔手から人々を守る伝説の戦士プリキュアの活躍を描いたアニメ作品。キャッチコピーは「メイクでチェンジ！ムテキのやる気！」、「みんなで一緒にトロピカっちゃおー！」。
「女の子だって暴れたい」をテーマに続いてきた『プリキュア』シリーズの第18作目の作品で、略称は「トロプリ」。「海」と「コスメ」をコンセプトとしており、爽快なシナリオと敵も味方もとことん明るく前向きな作風が好評を博した。前作『ヒーリングっど♥プリキュア』がコロナウイルスの影響で一時製作中止に追い込まれた余波で、本作は例年より1か月遅れで放送が開始された。東京オリンピックの中継のため放送休止が続いた期間もあるため、『プリキュア』シリーズの中でも特に話数が短いことで知られる。

あとまわしの魔女の攻撃によって人魚たちは“やる気”を奪われ、海の底にある人魚の国は壊滅的な被害を受けていた。人魚の国グランオーシャンの女王は、「地上が襲われ、人間たちのやる気までも奪われたらこの世は終わる」と警戒し、唯一難を逃れた人魚の少女ローラを地上に派遣する。そこで伝説の戦士プリキュアを見つけ出し、あとまわしの魔女の侵攻に備えろと言うのだ。ローラは密かに次期女王の座を狙っており、「これで手柄を挙げれば野望の達成は確実だ」と調子に乗りまくっていた。
その地上では、夏海まなつ（なつうみ まなつ）という少女が海辺にある「あおぞら市」への転校を済ませ、新しい学校での生活への期待に胸膨らませていた。そんな折、まなつは浅瀬で「プリキュアを探せと言われてもどうすればいいのか」と頭を抱えていたローラを発見し、「人魚がいた」と大騒ぎする。

「この人間がプリキュアなら話は早い」と考えたローラは、まなつにプリキュアに変身するためのトロピカルパクトを渡す。折しもあとまわしの魔女の召使たちが地上への侵攻を開始し、ローラを守ろうと奮闘するまなつの想いに応えるようにトロピカルパクトが作動し、彼女はプリキュアに変身する力を得る。
まなつとローラは他にもプリキュアに変身する資格を持つ少女たちを探し、力を合わせてあとまわしの魔女の召使と彼らが操る怪物ヤラネーダを撃退していく。そんな中で彼女たちは絆を深め、無二の親友と言っていい仲となっていくが、やがてグランオーシャンの非情な掟がそれを引き裂いていく。

『トロピカル～ジュ！プリキュア』のあらすじ・ストーリー

グランオーシャンの危機とプリキュアの誕生

夏海まなつ（なつうみ まなつ）は、中学への入学を機に生まれ育った離島から海辺にあるあおぞら市に引っ越すこととなる。これから始まる中学生活に胸膨らませながら街を歩いていたまなつは、海岸で人魚の少女を発見して大騒ぎする。
その人魚の少女ことローラは、海の底にある人魚の国グランオーシャンからやってきた使者だった。グランオーシャンはあとまわしの魔女と呼ばれる怪物とその召使たちによって“やる気”を奪われ、壊滅的な被害を受けていた。「地上の人間からも“やる気”が奪われたら世界は滅ぶ」と考えた人魚の国の女王は、唯一難を逃れたローラに伝説の戦士プリキュアを探すよう命じ、彼女を地上に派遣。密かに次期女王の座を狙うローラは、「これで手柄を挙げれば私が次の女王で確定だ」と内心大喜びしながら地上までやってきたのだった。

「この人間がプリキュアなら話は早い」と考えたローラは、まなつにプリキュアに変身するためのアイテムであるトロピカルパクトを渡す。この時はまったく動かなかったものの、直後にあとまわしの魔女の召使のチョンギーレがヤラネーダという怪物を率いて地上への攻撃を開始。捕まったローラを助けようと奮闘するまなつの意気に応じるようにトロピカルパクトが光り出し、彼女をプリキュアへと変身させる。
ヤラネーダを撃破され、チョンギーレは撤退。まなつはいきなり変身したことに驚きつつもローラを助けられたことを喜び、そのローラは「こんなに簡単にプリキュアが見つかるなんて幸先がいい」と喜ぶ。かくして、新たなプリキュアの物語が幕を開けるのだった。

トロピカる部の創立

互いにノリが良くて能天気なまなつとローラはあっという間に意気投合し、2人は新たなプリキュアを探すこととなる。最初に仲間になったのは、まなつのクラスメイトの涼村さんご（すずむら さんご）だった。さんごはファッションに関する知識が豊富で、自身もかわいいものを好んでいたが、自分に自信が無くすぐに他人に流される癖があった。我の強いローラから「そんなのくだらない、自分を信じなくてどうする」との言葉をかけられたさんごは、他人とぶつかるでもなく己の意志を貫くまなつに憧れ、友達になってくれた彼女を助けたい一心でプリキュアへと覚醒する。
1つ上の上級生である一之瀬みのり（いちのせ みのり）は、文学部に所属する物静かな少女だった。アンデルセンの『人魚姫』を特に好んで読んでいたみのりは、本物の人魚であるローラに出会って感激し、気をよくした彼女から「プリキュアになってみないか」とトロピカルパクトを渡される。みのりは「自分には無理だ」と諦めていたが、自分の小説を読んで「おもしろい、続きが読みたい」と言ってくれたまなつとさんごがヤラネーダ相手に窮地に陥るのを見て動揺し、「あなたには足があるんだから、やりたいことがあるならもっと自分を信じるべきだ」とのローラの言葉に一念発起。3人目のプリキュアとなり、まなつたちの危機を救う。

2つ上の上級生である滝沢あすか（たきざわ あすか）は、不良も軽々と振り回して投げ飛ばすほどの力の持ち主で、「あんなに強い人が仲間になってくれれば心強い」とまなつたちは盛り上がる。全員でスカウトに赴き、特にローラは熱心に彼女を口説くも、「自分が女王になりたいからって人を利用しようという考えが気に入らない」とあっさり断られてしまう。
しかし、学校での活動拠点として「トロピカる部」を作ろうとしていたまなつたちが、生徒会長の白鳥百合子（しらとり ゆりこ）に「部室の空きがない」ことを理由に申請を却下されたことを知ると、あすかは百合子に張り合うように協力的になる。倉庫として利用されていた屋上の部屋を使わせてもらう許可を得てこれを掃除する中、新たなヤラネーダが出現。苦戦するまなつたちを救うため、あすかはローラからトロピカルパクトを受け取りプリキュアへと変身。ここに4人のプリキュアがそろい、同時に学校での彼女たちの拠点となるトロピカる部も創立するのだった。

ローラの覚醒

まなつたち4人のプリキュアは力を合わせ、ヌメリーやエルダ、バトラーといったあとまわしの魔女の召使たちが作り出すヤラネーダを撃退していく。それを応援し、自分にできる形でサポートしていくローラもまた、彼女たちの仲間として親友として受け入れられていく。
ある時、みのりと体が入れ替わってしまったローラは、生まれて初めて“人間の足”で陸地を思うまま歩き回り、自由にまなつたちと交流し、「私も足が欲しい、まなつたちともっと一緒にいたい」と考えるようになる。なんだかんだでプリキュアチームがローラを中心に結束していることを見抜いたあとまわしの魔女の召使たちに捕らえられたローラは、連れ去られた先であとまわしの魔女からその想いを指摘され、「自分に従えば望みを叶えてやる」と唆される。

「自分の望みは自分で叶える」と啖呵を切ってなんとか逃げ出したローラは、グランオーシャンの女王に保護され、プリキュア発見の成果を称えられる。女王はさらに後は他の者に任せて休んでいてもいいと言葉を続けるも、ローラは「まなつたちを放っておけない、彼女たちと一緒に戦うことが私の今一番やりたいことだ」と言い切って飛び出していく。
その頃、まなつたちは連れ去られたローラを助けようと焦り、その隙を突かれてヤラネーダの猛攻に晒されていた。この場に辿り着いたローラは、自分の無事を知って安堵した拍子に気を失うまなつを見て激昂。出立する際に女王に渡されたマーメイドアクアパットの力で新たなプリキュアへと変身し、ヤラネーダを撃退する。これ以降、人間への変身能力を得たローラは、転校生として学校にも通い始め、トロピカる部にも部員として堂々と出入りできるようになった。

人と人魚の非情な定め

ローラを新たな戦力として加えたまなつたちは、その後も次々とヤラネーダを撃退。それぞれの私生活の面でも、さんごはメイクアップアーティストという夢を見出し、みのりはかつて酷評されて以来折った筆をもう1度手にして創作活動を再開し、あすかは無二の親友でずっと仲違いしていた百合子との和解を果たして再びテニスを始めるなど、大きな成長を遂げていった。
まなつとローラは相変わらず仲が良かったが、ある時2人は「自分たちが子供の頃に会っていた」ことを思い出す。実はグランオーシャンには「人間と人魚が交流した時、その記憶を全て消す」という絶対的な掟が存在し、これは女王ですらもが順守しなければならないものとされていた。まなつたちのことが大好きになっていたローラは「一緒に戦ってくれた彼女たちのことを忘れろというのか」と抗議するも、女王は「これは必要なこと、その時が来ればあなたにも分かる」と同情と憐憫の眼差しを向けるのみだった。

まなつもまた衝撃を受けるも、「こうして思い出せたのだから、ずっと忘れたままなんてことはきっとない。記憶を失ったとしても私たちは会えば必ず友達になれる」とローラを励まし、この先どんな運命が待っているとしても友達でいようと誓い合う。
一方、度重なる攻撃の失敗にも関わらず、あとまわしの魔女は相変わらず自ら動こうとはしなかった。それでも召使たちが地道に集めた“やる気”は規定量に達しつつあり、あとまわしの魔女の究極の目的とされる愚者の館の解放が近づいていた。愚者の館が解放された時に何が起きるのかは召使たちも知らず、ただ「世界が終わる」、「あとまわしの魔女が不老不死を得る」といった噂だけが囁かれていた。

あとまわしの魔女の消滅

あとまわしの魔女の正体は「破壊の魔女」と呼ばれる怪物で、今から数百年前にただこの世を滅ぼすためだけに生まれた善も悪も無い存在だった。ある時、人間たちの決死の反撃で傷ついた破壊の魔女は、体を癒すために開眼近くの洞窟に身を潜めるが、そこにアウネーテという少女がやってくる。アウネーテは明らかに怪物然とした破壊の魔女を見ても驚くことなく、彼女が傷を負っていることを知るとせっせと介抱し、食べ物を運び、昔からの友人のように様々なことを語って聞かせた。当初「変な人間だ」と好きにさせていた破壊の魔女だったが、力が回復しても本能のまま彼女を滅ぼすことがどうしてもできず、「明日また会いましょう」との彼女との約束を破って姿を消す。
しかし再び人間を襲い始めた破壊の魔女の前に立ちはだかったのは、プリキュアへと変身したアウネーテだった。破壊の魔女はどうしても本気でアウネーテを攻撃できなかったが、それは彼女も同じだった。やがて日が暮れると、破壊の魔女は「お前との決着は“あとまわし”だ」と言い残して海の中に撤退。翌日も、その翌日も「あとまわしだ」と言い続けて己の宿命である“プリキュアとの決着”を、アウネーテとの関係を自ら終わらせることを拒み続けた末、破壊の魔女は自分が何者だったのかも忘れ、あとまわしの魔女になっていたのだった。

愚者の館が開かれることを知ったまなつたちが自身の拠点に攻め込んできたことを知ったあとまわしの魔女は、自らこれを迎撃しようとするも、その際に「もうアウネーテは寿命でとっくに死んでいること」、「2度と彼女に会うことはできないこと」を理解して絶望する。「アイツに会えないのならこの世界に未練はない」と全てを滅ぼそうとするあとまわしの魔女に、まなつは「あなたが本当にやりたかったことは、破壊ではなくアウネーテと友達になることだ」と指摘。ずっと目を背き続けてきた真実を突きつけられたあとまわしの魔女は、まなつの言葉を認めて泡となって消えていく。仕え続けてきたあとまわしの魔女が消滅したことを受け入れられないバトラーが暴れるも、まなつたちがこれを成敗したことで世界の危機は去る。
戦いは終わり、あすかの卒業が近づいていた。まなつたちにとってはローラとの別れの時でもあり、全員が「一緒に過ごした思い出を忘れたくない」と心から願っていた。しかしあとまわしの魔女とアウネーテの悲劇を知った彼女たちは、「人間と人魚は寿命が違う、親友になった人間が死んでしまった後でも生き続けなければならない人魚はその絶望と悲しみに耐えられない。破滅の魔女ほどの力を持つ存在でもそうだった」と理解し、いつか再開することを夢見て記憶の消去を受け入れる。

かくしてローラのことも、自分たちがプリキュアだったことも忘れてそれぞれの日々を送るまなつたちだったが、ある時そのローラがひょっこりと地上に顔を出してあっさりと再会。実はローラはあとまわしの魔女を失って戦う理由を無くしたチョンギーレたちに、自分とまなつたちのことを教えてほしいと依頼していたのだった。人魚でも人間でもない彼らは記憶を消されておらず、「迷惑を掛けた詫び」としてきっちり約束を守り、「そんなおもしろい人間がいるなら見てみたい」と考えたローラが掟を破って地上に向かったというのが真相だった。
再び出会ったまなつとローラは記憶を取り戻し、さんご、みのり、あすかとも再会。「掟なんて私が女王になって変えてやる」と豪語するローラも加わって、「トロピカる部」改め「もっとトロピカる部」は改めて始動していくのだった。

『トロピカル～ジュ！プリキュア』の登場人物・キャラクター

トロピカる部のメンバー

夏海まなつ（なつうみ まなつ）／キュアサマー

CV：ファイルーズあい

あおぞら中学校の1年生。とことん明るく、前向きで、物怖じしない少女。大荷物を背負ったまま船の手すりで大車輪を成功させるなど、運動能力は抜群にいい。口癖は「トロピカってる～！」で、自身の価値観で特に輝かしく感じるものを見るとたびたび口にしている。
ローラに出会った際も「本物の人魚だ」と驚きこそすれ怖がるようなことは一切なく、すぐに彼女と親しくなる。子供の頃にもローラに会ったことがあり、この際は彼女を人魚だと認識していなかったため記憶を奪われなかったものの、物語中盤まではずっと忘れていた。

変身すると、白を基調とした戦士キュアサマーになる。このタイプのプリキュアは「白キュア」と称されることが多いが、キュアサマーは七色のグラデーションのついた独特の髪をしていることから「虹キュア」ともカテゴライズされる。
まなつの性格もあってとにかく突撃傾向で、ヤラネーダとの戦いでは先陣を切って立ち向かうことが多かった。

涼村さんご（すずむら さんご）／キュアコーラル

CV：花守ゆみり

まなつのクラスメイト。ファッションへの造詣が深く、自身もかわいらしいものを好む。一方ですぐに周りに合わせて流されるところがあり、「私には自分の意見が無い」と自信が持てないでいた。まなつやローラとの出会いで、それぞれに我は強いのに他人の意見も素直に受け入れる2人の在り方に憧れ、影響されていく。
引っ込み思案な性格自体は生来のもので、まなつやローラに引っ張られつつ彼女たちの抑え役に回ることが多かった。それでも次第に「自分のやりたいこと」と真摯に向き合い、やがてメイクアップアーティストという夢を見付ける。