「子供を殺してください」という親たち(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『「子供を殺してください」という親たち』とは、押川剛のノンフィクションを原作に鈴木マサカズが漫画化した作品。現代社会の家族が抱える闇を追及しており、様々なメディアにも取り上げられた話題作である。病に蝕まれたそれぞれの登場人物達は、一歩間違えれば犯罪者になる可能性を孕んでいる。主人公の押川剛がそうなる一歩手前であらゆる伝手や手段を取り、救出を試みる話である。原作の『「子供を殺してください」という親たち』は2015年07月1日に発売。

押川剛「それは子供たちの心の叫びだ」

優秀であれと厳しく育てられた子供が、最終的に暴行罪で逮捕され、精神病院で一生を過ごすことになる。そんな保護対象者の事を考えた際に、「それは子供たちの心の叫びだ」と思わず飛び出た押川の言葉である。
救いを求めて押川の元へ訪れる問題を抱えた親たちは、「子供を殺してくれませんか?」と懇願する。追い詰められての言葉なのだろうが、世間体を気にしてばかりいたり、愛情の欠けた育て方をすれば、いずれその業は必ず親へと跳ね返ってくる。子供が問題行動を起こすのは、子が親たちへの復讐をしているのだ、と現実を突きつける厳しい言葉である。

押川剛「あんた医者の前に人間か?」

保護対象者が治療による回復の兆しが見えないどころか病状が進行していた為、押川は保護対象者の主治医のもとを訪れる。入院が必要な状態であると医者に説明をすると、医者は快く思っていない様子であった。医者の言い分は、医者として病気で苦しんでいる人々の受け皿になる覚悟が毛頭ないことが分かるものだった。強い憤り感じて思わず押川は「あんた医者の前に人間か?」と言い放った。医者にも「ぴんきり」があると分かる、重要なセリフである。

押川剛「どうしようもないクソ親のことは、おまえからけじめをつけてもいいんじゃないか?」

定規で手を叩くなどの体罰を行いながら、勉強する事を過剰に求める子育てをした母親と、自分の子供に対して常に無関心な父親。今でいう「毒親」に育てられた保護対象者の一番の薬は、親に対して見切りを付けさせることだと考えた上で、押川は保護対象者へ「どうしようもないクソ親のことは、おまえからけじめをつけてもいいんじゃないか?」と助言した。
対象者が何より一番言われたかっただろう言葉を押川に言ってもらえた事、「親を捨ててもいいんだ」と心が解放された事により、対象者は少しずつ回復に向かっていく。縛られているのは親ではなく子であったという事が分かる重要な言葉である。

『「子供を殺してください」という親たち』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

カットだらけのテレビ取材

「枠にはめたがるのは、テレビの世界でも同じだな」 押川剛

出典: ebookjapan.yahoo.co.jp

単行本の最後には原作者・押川剛が後書きを掲載しており、記者の取材を受けた際の話やテレビ出演をした際のエピソードが語られている。
ある時テレビの取材を受けた際、保護対象者を保護する際に起こった様々な出来事などに対して、テレビでは本当のことはなかな言わせてもらえず、ちょっとでも批判を受けそうな言動は全カットされたらしい。その時に「こういったイメージで」と枠にはめたがるのはテレビ業界でも同じだな、と思ったそう。メンタルヘルスの分野に対して色々な支援方法や支援団体が登場し、選択肢は増えたものの、表で語られるのは綺麗事ばかりで、本当に「やばい」家族の問題に対してはあまり触れられてはいない。メディアも「あまり公にしてくれるな」という国の意向に忖度しているように思ったそうだ。現場で活動している押川剛だからこそのリアルな話である。

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