G線上のあなたと私(漫画・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『G線上のあなたと私』は集英社の『Cocohana』に掲載された、いくえみ綾による少女漫画。突然婚約破棄された小暮也映子。偶然耳にした曲をきっかけに大人のバイオリン教室に入り、北河幸恵、加瀬理人と次第に親しい関係を築いていく。それぞれが恋愛・仕事・家族などの悩みを抱えながらも、バイオリンを通じて自分に向き合い、生きる価値を見出していく。人間模様もしっかりと描かれていることで、恋愛の甘さだけではない大人の物語として楽しめる。テレビドラマ化もされ、リアリティのあるセリフが多くの視聴者の共感を呼んだ。

『G線上のあなたと私』の概要

『G線上のあなたと私』は集英社の『Cocohana』の2013年1月号に読み切りで掲載された後、不定期で2018年6月号まで連載された。単行本は全4巻。2019年10月期のTBSテレビ系火曜ドラマでテレビドラマ化された。作者のいくえみ綾は北海道出身の女性漫画家で、2000年『バラ色の明日』で小学館漫画少女部門、2009年『潔く柔く』で講談社漫画賞少女部門を受賞している。
TBSテレビ系火曜ドラマ『G線上のあなたと私』では主人公・小暮也映子を波留、加瀬理人を中川大志、北河幸恵を松下由樹が演じた。
少女漫画に登場することが多いのは王子様のようなイケメンだが、いくえみ作品のキャラクターはすごくかっこいいわけではなく、どこにでもいそうなのになぜか惹かれてしまうという特徴がある。「いくえみ男子」と呼ばれる彼らは、いくえみ作品の最大の魅力である。『G線上のあなたと私』では加瀬理人がそれに当たり、不器用かつ予測不可能な行動をとる理人をテレビドラマでは中川大志が演じ、女性視聴者の心をわしづかみにした。
寿退職当日に突然婚約破棄された小暮也映子。その帰り道に立ち寄ったCDショップで『G線上のマリア』を聴き、自分でこの曲を弾きたいと強く思ったのをきっかけに大人向けのバイオリン教室に通うことを決意する。パート主婦の北河幸恵は、姑には教室通いを良く思われていないが、ピアノが得意な娘と一緒に演奏することを目標にしている。加瀬理人は大学生。兄の婚約者だったバイオリン講師・眞於に好意を寄せており、偶然再会したことをきっかけに彼女の教室に通い始める。それぞれが悩みや複雑な気持ちを抱えつつ、バイオリンを通じて成長する男女3人の恋と友情の物語。

『G線上のあなたと私』のあらすじ・ストーリー

大人のバイオリン教室での出会い

結婚を控え、寿退職した小暮也映子(こぐれやえこ)。その当日、突然婚約者から「ほかに好きな相手ができた」と婚約破棄された。恋人だけでなく仕事も同時に失い、意気消沈のまま立ち寄ったCDショップで聴こえてきた「G線上のマリア」という曲に惹きつけられ、この曲を自分で演奏してみたくなる。仕事を辞めたため持て余す時間と、貯めていた結婚資金をバイオリン教室に通うために使うことを決めた。教室の体験レッスンで一緒になった大学生の加瀬理人(かせりひと)と、パート主婦の北河幸恵(きたがわゆきえ)とともに月曜日の午後7時、講師・久住眞於(くずみまお)のグループレッスンを受ける。眞於は理人の兄の元婚約者で、兄が交際相手として初めて家に連れてきたときから、理人が想いを寄せている相手でもある。
バイオリンは始めたばかりの3人だが、眞於は教室で開かれる発表会への参加を提案。なかなか上達せず焦る3人は、カラオケボックスに集まりレッスン以外でも練習するようになる。失恋で傷ついた也映子、兄の元婚約者の眞於に気持ちを受け入れてもらえる可能性のなさに悩む理人、嫁姑問題に頭を悩ませている幸恵。年齢も性別も違う3人だが、時間を共有するうちにお互いの状況を話すようになり、距離が縮まっていく。

2回目の発表会

音程がとれなかったりしたものの、気持ちよく演奏できた初めての発表会が無事終わり、次の発表会で演奏する曲は「G線上のマリア」に決まる。この曲は也映子にとって特別であり、幸恵の娘・多実(たみ)にピアノ伴奏をしてもらったりと練習にも熱が入り、也映子・理人・幸恵の結束力もますます強まっていた。
眞於のことで思い悩む理人は、発表会が終わったら彼女に想いを伝え、断られた場合は教室も辞めると也映子に宣言する。也映子は理人を応援する一方で、辞めるという言葉にショックを受け残念に思う。
そんな中迎えた発表会当日。幸恵は姑が倒れて入院したため発表会には参加できなかったが、発表会で演奏する自分を病院で思い浮かべていた。也映子と理人は2人でステージに立ち、無事に演奏を終える。その直後、理人は也映子の目の前で眞於に想いを伝えたが、あっさりとふられてしまう。その後、也映子は居酒屋で理人を励ましながらも、このまま理人が教室を辞めてしまうのを残念に思い、号泣しながらバイオリンを続けようと訴える。酔った理人はそんな也映子を笑い飛ばし、帰り際には雑踏の中ではぐれた也映子を見つけて駆け寄り、「ナンパされていなくなったのかと思った。今日かわいいから。」と発言する。酔いのせいだと思いながらも、也映子は激しく動揺するのだった。

婚活と3人コンサート

発表会に参加できなかった幸恵に、也映子は理人と3人でミニコンサートをしようと提案。2回目の発表会が終わって気が抜けていた也映子だったが、ミニコンサートを「3人コンサート」(3コン)と名付け、練習を重ねる。理人が教室を辞める寂しさをごまかすようにバイオリンを練習し、婚活も始めた也映子。参加した婚活パーティーでカップル成立したが、相手との価値観の違いに気づき交際を断る。婚活に時間を使うよりもバイオリンを練習したいと思った也映子は、3人コンサートに向けてより一層練習に打ち込む。
幸恵の姑は無事退院し、幸恵に対して嫌味を言うことが減り態度が軟化。理人は、一緒に居酒屋でバイトを始めるなど想いをまっすぐに向けてくる、同じ大学に通う結愛(ゆうあ)に自分を重ね、眞於にふられたこともあって結愛と付き合い始める。3人の生活は少しずつ変化しはじめ、3人コンサート当日がやってきた。とても緊張する3人だったが、それぞれの家族や友人を招待したコンサートは大成功。コンサートを企画した也映子には理人と幸恵から感謝の気持ちが伝えられる。それを嬉しく思いながらも、也映子は3人でレッスンに通っていた頃に後戻りしたいと強く思って願った。理人が教室を辞め、幸恵ともすれ違いが重なり、也映子は燃え尽きたようにバイオリンの練習をしなくなってしまう。

じれったい也映子と理人

也映子は街で偶然、元婚約者の智史(さとし)と再会する。也映子は智史にずっと無職で何をしていたのかと聞かれ、自分のやりたいことをやっていた、と過去形で答えてしまったことでバイオリンへの熱が冷めつつあることを自覚する。久しぶりに連絡してきた理人と電話で話すうちに、也映子は理人に対する複雑な気持ちを伝えてしまい、気まずくなってしまう。一方、理人は結愛との関係が続いていた。3人コンサートが終わり、理人がバイオリン教室を辞めることで理人が自分の方を向いてくれると思っていた結愛。しかし以前と全く変わらない関係への不満と本音を結愛は理人に伝え、友達に戻ることを告げた。理人は自分の気持ちがわからなくなり也映子に相談するが、也映子は「もしかして理人は自分のことを好きなのではないか」と思い、ストレートに聞いてしまう。2人の間にはますます気まずい空気が流れ理人はその場から去ってしまうが、也映子は理人への気持ちが恋心だと自覚し始めた。
そんな中、バイオリン教室の建物が老朽化のため取り壊され、教室は移転することが決まる。その知らせを伝えるために理人と会った也映子は、理人から結愛と別れたと報告を受け、自分の正直な気持ちを伝えるが、そのことを激しく後悔。だが理人も自分の気持ちに素直になり、それを伝えるために也映子に会いにくるのだった。

『G線上のあなたと私』の登場人物・キャラクター

主要人物

小暮也映子(こぐれやえこ)

演:波留
本作の主人公。25歳の元OL。明るい性格で頑張り屋。実家暮らしで、いとこである晴香(はるか)と仲が良い。晴香と結婚の日取りが重ならないように調整していた。
寿退職当日に婚約者に一方的に婚約破棄され、恋人も仕事も突然失った。呆然としたまま立ち寄ったCDショップで耳にした「G線上のマリア」。激しい戦場の映像とともに流れる、荘厳で美しい旋律に自分を重ねる。「婚約者をもっと殴ってやればよかった」「自分を癒すには1発では足りなかった」と涙し、この曲を自分で弾きたいと強く思う。
時間と貯金を持て余すことになった自分の状況を「神様がくれた休暇」と捉え、大人向けのバイオリン教室に通うことで少しずつ生きる気力を取り戻していく。
前向きに婚活を始めるが、思うように進まないのは「結婚すること」を目的としているからだと気づく。今本当にやりたいことであるバイオリンに全力を注ぐ中で、バイオリン仲間の理人に惹かれていくが、それが恋だということにはなかなか気づかない。

加瀬理人(かせりひと)

演:中川大志
19歳の大学生。也映子のバイオリン仲間。無口で不愛想だが、恋には不器用な憎めないイマドキの若者。
同じ大学に通う結愛に好意を寄せられており、バイト先の居酒屋を突き止められて一緒に働いている。両親と兄夫婦と賑やかに暮らしているが、兄とは衝突することも。兄の元婚約者だった眞於に初めて会った時から片想いしていたが、想いを伝えることはできないままだった。兄と破局した眞於と偶然再会したことから再び想いが募り、彼女が講師を務めるバイオリン教室に通い始める。うまく弾けるまで自主練習をする負けず嫌いなところや、姑との関係で悩む幸恵を励ますなど優しい一面もある。

北河幸恵(きたがわゆきえ)

演:松下由樹
パート主婦。41歳。也映子のバイオリン仲間。夫、小学5年生の娘、姑と暮らす。
平凡な日々の中で、パート以外で堂々と外出できる週1回のバイオリン教室をとても楽しみにしている。目標は娘のピアノと一緒に演奏すること。バイオリン教室通いを良く思っていない姑に嫌味を言われたりするが、良き理解者である娘に支えられ、姑とうまく付き合おうと努力している。也映子と理人と3人で同じ時間を共有し、打ち解けていく中で次第に変化する2人の関係を、年長者らしく時には助言もしながら優しく見守る。お酒が好きで、嬉しいことがあると夜中に1人缶ビールを飲むこともある。

久住眞於(くずみまお)

hirohinamama1975
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