あなたのことはそれほど(あなそれ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『あなたのことはそれほど』とは、2010年10月号から2017年8月号にかけていくえみ綾が『FEEL YOUNG』にて連載していた漫画、およびそれを原作としたテレビドラマ。漫画は単行本全6巻、ドラマは全10話である。既婚者の渡辺美都が偶然初恋の相手である有島光軌と再会し、不倫関係に陥る様子と葛藤を描く。渡辺美都の夫である涼太の愛情表現がだんだんと歪んでいくのも見どころだ。ドラマ版では美都役を波留が演じ、美都の夫である涼太役を東出昌大、有島光軌役を鈴木伸之、有島の妻の麗華を仲里依紗が演じた。

『あなたのことはそれほど』の概要

『あなたのことはそれほど』とは、2010年10月からいくえみ綾が雑誌『FEEL YOUNG』にて連載をしていた漫画およびそれを原作としたテレビドラマ作品。主人公渡辺美都と初恋相手の有島光軌の不倫関係を描いた恋愛ストーリー。美都は渡辺涼太と結婚をしていたが、初恋相手の有島光軌と偶然再会し、恋に落ちてしまう。有島光軌もまた既婚者であり、妻である麗華は出産のため里帰りをしていた。二人は結婚相手がいるにも関わらず、不倫をしてしまう。本作はW不倫の関係にある男女4人の思惑を描いている。
「あなそれ」という愛称で親しまれており、いくえみ綾の代表作の一つとなっている。不倫をテーマにした作品だが、美都に罪悪感や葛藤やマイナスの感情が一切ない点が特徴。単行本は全6巻、テレビドラマは全10話。単行本6巻の最後には「side story」というタイトルで、渡辺美都の夫である渡辺涼太が主人公として描かれている後日談が存在している。「このマンガがすごい! 2015」のオンナ編では15位に選ばれ、注目を集めた。また大人の恋愛の生々しさが描かれていると評判である。
またテレビドラマ版の制作会社はTBSテレビであり、2017年4月18日から6月20日まで火曜の22時から23時に放送されていた。前クールのテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ(逃げ恥)』と対照的な内容が話題となった。前クールのテレビドラマである『逃げ恥』は、主人公とヒロインの恋愛下手さが印象的な作品で、二人の純情や初心さが見どころであり、性愛よりも精神面の愛情を描いていた。一方で『あなたのことはそれほど』は、不倫をテーマにした作品で、どろどろとした恋愛の感情を描いた作品である。不倫をしているにも関わらず反省を全くしない主人公というのは斬新であり、視聴者からの非難の声も多かった。また主人公の美都役を演じたのは、当時清純派として知られていた波瑠であった。波瑠は本作品にて「新境地を開いた」とコメントしている。

『あなたのことはそれほど』のあらすじ・ストーリー

美都と有島の偶然の再会

渡辺美都(旧姓:三好)は、眼科で受付の事務を行っている29歳。中学生の頃、母が経営しているスナックに客として来ていた占い師に「2番目に好きな人と結婚するとよい」とアドバイスされる。美都は助言通り「2番目に好きな人」だった涼太と結婚をし、穏やかな日々を過ごしていた。ある日美都は偶然初恋の相手と再会を果たす。初恋相手の名前は有島光軌。中学生の同級生であり、美都が激しい恋愛感情を抱いていた相手である。久しぶりの再会に二人は昔話に花を咲かせ、意気投合する。そのままホテルで肉体関係を持ち、それ以降定期的に会うようになる。美都は中学時代の淡い記憶を思い出すとともに、有島に恋をしてしまう。既婚者であることを隠していた美都だったが、ある時有島が既に結婚しており近いうち子供も生まれることを知ってしまう。有島と会えなくなることを恐れた美都は、自身も既婚者であることをばらし、関係を続けたいことを告げる。

美都と涼太のなれそめと結婚生活

美都と涼太の出会いは、美都の職場の眼科であった。涼太はインテリア関係の会社で総務を行っている。ある日ものもらいを患った涼太は病院に行き、そこで眼科の受付をしていた美都に恋心を抱く。涼太は一目ぼれだったが、美都の涼太に対する第一印象は肌がきれいな男性というものでしかなかった。雨の日美都は涼太が傘を病院に忘れているのに気付き、慌てて涼太を追いかけて傘を渡す。また涼太が貰った目薬を無くしてしまい、病院をすぐに再訪してきたことで二人はわずかばかりの会話をした。その時に涼太は一度病院を後にしようとしたが勇気を出して美都をデートに誘う。美都は涼太のデートの誘いに乗り、楽しいひと時を二人で過ごす。美都も涼太の人柄の良さや料理の上手さに惹かれており、二人は交際を始め結婚することになる。涼太は美都の友人から見ても、美都のタイプの男性ではなかった。涼太は温厚な性格をしており、美都にいつも料理をふるまうよき夫となる。涼太は美都に対して一目ぼれしていたため、美都に対して優しい。美都と涼太の関係は平和的だった。

二人は穏やかな結婚生活を過ごしていた。だが、涼太は美都を一番に愛していたが、美都はそうではなかった。美都は「2番目に好きな男と結婚した方がうまくいく」と告げた占い師の助言通りに結婚したのだった。ある夜、涼太は美都が寝ぼけて有島の名前を呼んでいるのを聞いてしまう。熟睡しているのを確認した涼太は、美都の携帯をこっそり盗み、有島という名前がアドレス帳にあるかどうか確認をする。アドレス帳には名前は無かったが、涼太は美都の浮気を疑うようになっていく。美都の親友である飯田香子と偶然出会った涼太は中学時代の美都の話を聞き、占い師のアドバイスについて初めて耳にする。不安になった涼太は美都の携帯を盗み見ることがやめられなくなってしまう。涼太は美都が出かけた日を境に、有島の名前がアドレス帳に追加されたことに気づいてしまう。出かけた日、美都は職場の人と飲み会であると嘘をついて有島と密会をしていた。更に美都に「子供なんていらない」と言われたことから、涼太はますます美都の浮気を疑うようになっていく。

有島と麗華のなれそめと結婚生活

有島麗華(旧姓:戸川)は有島の高校時代のクラスメイト。きびきびとよく動き、面倒見がいいタイプ。妹を大事にしており、高校では学級委員長を務めていた。そのため高校では麗華は同級生から「委員長」というあだ名で呼ばれていた。一方で有島はクラスの中心的な存在であり、派手な同級生たちとよく会話を楽しんでいて、放課後の掃除もさぼっていたりした。おたがいの性格が異なることもあり、あまり接点のなかった麗華と有島。ある日麗華のバイト先である焼肉屋に有島が訪れたことから、会話をするようになっていく。話の流れで「(麗華の)妹かわいーな?」と言う涼太を見て、初めは妹目当てで近づいていると思っていた麗華だったが、やがてお互いの家族について語るようになる。麗華の父は失業中で、母である戸川多恵はパートで一家を養っていた。麗華は妹を大学に行かせるためバイトを行っており、自身の大学進学は奨学金を利用するつもりだった。有島に呼び捨てで名前を呼ばれたことで、麗華は有島を意識し始める。麗華は有島の行動によって揺れ動く自分の心に興味が沸いた。恋愛感情を抱いた麗華はアルバイト中に客として訪れた有島に帰り際キスをする。麗華のキスをきっかけに、二人は交際を始め、結婚に至った。有島はモテることが多く、大学時代は美苗という女子学生から好意を寄せられていた。しかし有島は麗華との交際を選んだ。その後二人は結婚することになる。真面目なタイプの麗華と明るいタイプの有島の結婚は、同級生たちを驚かせた。二人の結婚生活は良好で、麗華は有島の妹の有島佳菜とも仲が良かった。
麗華は出産のために里帰りをし、娘の亜胡を生む。有島は娘を可愛がるが、美都との不倫関係は続いたままだった。有島の娘想いな様子に、同じマンションに住む横山皆美は自分の夫である横山良明と比べてしまう。良明は皆美に対して罵詈雑言を吐くような暴力的な人間だった。また皆美は、育児をそつなく行う麗華に対しても憧憬の感情を抱くようになる。

ある日美都は職場の同僚が陶芸教室に通い始めたことを聞き、自身も陶芸教室に通い始めることにする。そこで地味な女である麗華とたまたま出くわしてしまい、家族構成や子供の名前から、彼女が有島の妻であることを知ってしまう。時折話す陶芸仲間の佐藤美由紀から、美都は麗華についての情報を聞き出していく。ある日美都は麗華が陶芸教室に忘れていった本を届けるという名目で、有島の家を訪れて麗華と話をする。美都の行動に疑問を抱いた麗華は、美都の訪問を有島に報告した。またその後涼太が有島夫妻の前に現れたこともあり、不倫がバレることを恐れた有島は美都に「しばらく会わないようにしよう」とメールをする。
美都は涼太に対して何度も離婚をしようと切り出したが、涼太は離婚に応じようとはしない。

その後美都は有島と温泉旅行に行くこととなり、親友の飯田香子にアリバイ工作を頼む。香子は美都の行動に呆れてしまい、もう二度と自分を巻き込むのはやめてほしいと美都にメールをする。

美都の家出

美都の有島への恋心は冷めることなく、むしろ燃え上がっていく一方だった。
一切不倫をなじることなくなんでも許してくれる涼太に、美都は次第に息苦しさを感じていく。不倫をしていることがわかってもなお、涼太は怒ることなく愛することをやめなかった。美都は気まずさから逃れるために、不倫を公言するようになるが涼太の態度は変わらず笑顔のままだった。涼太は興味本位で有島夫妻に会いに行くなどの行為をしはじめ、恐怖を覚えた美都は衝動的に家を飛び出す。涼太は公園で偶然を装って有島にぶつかり、ジュースをこぼし、それをきっかけに有島夫婦と雑談を行っていた。美都がカプセルホテルに泊まっていたところ、親友の飯田香子から連絡があり、美都は香子の家に行くことにする。涼太は美都が香子を頼りにすると初めから考えていたため、香子に美都を泊まらせてもらうようにすでに頼み込んでいた。浮気をされた涼太に対して同情している香子は、自分勝手な美都に対しては怒っているが涼太のために美都を泊まらせることにする。美都は家出をしている間にも何度も有島に連絡をしていた。有島はその時帰省をしており、不倫がバレることを恐れてなかなか返信をしなかった。ようやく有島から返事が来ると、美都は香子の家を飛び出して有島に会いに行ってしまう。有島は美都に「友達に戻らないか」と提案したが、美都は「友達だったことなんてあったかしら」と返す。

香子からの信用を失いどこにも逃げ場がなくなった美都は仕事を休み、実家に戻って、母である三好悦子が経営するスナックで働くことにした。心配した涼太が美都を迎えに来ると、美都は占いをいっしょにやろうと言い出す。二人は恋愛相性占いをするが、涼太と美都の今の関係はどうしようもなく行き詰っていると占い師に言われてしまう。また別の店で姓名判断も行い、そこで涼太は自分の名前を有島光軌と偽って占いをする。姓名判断における有島光軌の運勢はめったにないほど良いものだった。占いの結果に涼太は機嫌を悪くする。二人は涼太と美都が暮らしていた家へと戻る。

W不倫の結末は

有島は美都との不倫に終止符を打ち、家庭を選ぶことにする。麗華は父が浮気や暴力をふるう環境で育っており、自身は幸せな家庭を築くことを夢見ていたため有島を許すことができない。有島は学生時代に同級生の美里との食事をドタキャンして、家庭内暴力でケガをした麗華を助けに行ったことがあり、麗華の実家の家庭環境についてはよく知っていた。有島は麗華に謝罪をし、もう一度やり直したいと懇願する。麗華は浮気一つで心が乱された自分に興味が湧いたと言い、もう少し様子をみようと提案した。一方美都は涼太に対して離婚を切り出していた。その時美都は生理が来ていないことに気づき、涼太と別れたい一心で妊娠したかもしれないと涼太に告げる。しかし美都の勘違いで、実際に妊娠はしていなかった。

美都を手放したくない涼太はあらゆる手を使い、離婚届を書くことを渋り続ける。涼太は字を間違えたり何を書くか度忘れしたと言って、いつまでも離婚届を書こうとしない。嫌気がさした美都は家を出て安いアパートで暮らす。別居してからも美都は涼太と連絡を取り続けていた。やがて涼太から頭が冷えたので離婚届を郵送して送るというメールが来る。美都は有島に離婚の報告をするが、有島は「うちは絶対別れません ごめんなさい」と返信する。「涼ちゃんの愛は優しい暴力」と美都に告げられた涼太は、最後母の墓地に佇んで、美都との結婚生活を振り返る。一方美都は倒れた母の世話を毎日することになり、永遠に続いていくかもしれない単調な日常に、これは自分への罰なのかもしれないと思う。

その後「side story」では、涼太の後日談が描かれている。上の階の住人によって、涼太の家は水浸しになってしまう。浸水がきっかけで、涼太は上の階の住人である男女と交流をするようになる。この住人たちは姉弟で、姉は占い師、弟はホストをしていた。弟は、不幸な男に同情して入れあげて最終的に捨てられる癖がある姉を心配する。姉は涼太にいいワインが入ったことを理由に、「家に飲みに来てください」と打診する。

『あなたのことはそれほど』の登場人物・キャラクター

主要人物

渡辺 美都(わたなべ みつ)

ドラマ版 演:波留(中学生時代:内田愛)

旧姓は三好(みよし)。仕事は眼科の受付事務。ドラマ版では歯医者の受付をしている。中学時代に有島に一目惚れして以来、有島を忘れられないでいる。実家のスナックの常連の占い師に「2番目に好きな人と結婚するとよい」とアドバイスされ、予言通り「2番目に好きな人」である涼太と結婚することになる。恋をすると周りが見えなくなり、思い込みが激しい一面を持つ。偶然再会した有島に運命を感じ、不倫をするようになる。

渡辺 涼太(わたなべ りょうた)

ドラマ版 演:東出昌大

美都の夫。仕事はインテリア関係の会社で総務をしている。ものもらいの治療のため訪れた病院で美都と出会い、恋に落ちる。趣味は料理。ある日眠りについていた美都の口から「有島くん」という甘い声が漏れたのを聞いてしまい、それから美都の携帯電話を盗み見するのがやめられなくなってしまう。穏やかで優しいタイプだが、美都に対しては一種異様な愛情を抱いている。

有島 光軌(ありしま こうき)

ドラマ版 演:鈴木伸之(劇団EXILE)(中学生時代:小原唯和)

美都とは小・中学時代の同級生。整った顔立ちをしており、昔から女子にモテていた。中学時代は熱っぽい視線を送る美都をあまりよく思っていなかった。高校時代の同級生である麗華と卒業後に交際をするようになり、そのまま結婚する。麗華が里帰りしている間に、偶然美都と出会い、成り行きで不倫をしてしまう。不倫をする一方で、妻を大事に思っており、不倫を続けていることに後ろめたさを抱いている。

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