かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-（映画）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

早坂に「ファーストキスでディープキスするなんて、会長に絶対に変態だと思われてますよ」と案じられたかぐやは、「恋人といろいろ経験している翼が“ディープキスは本当に好きな人とするもの”だと言っていたのだから、何も間違っていない」と言い張る。念のため渚に連絡し、「初めてがディープキスでもおかしくないわよね。参考までにディープキスしてからどれくらいで性交渉したか教えてちょうだい」と伝えた際、彼女が恐る恐る告げてきたのが「…40秒位？」という驚愕の数字である。

白銀やかぐやのやや見当外れのアドバイスがことごとく当たってしまったがために、渚と翼の恋愛は極めて順調に進んでおり、本作開始時点ではすでに性交渉も済ませている。それにしても「初めてディープキスしてから40秒で性交渉に至った」というのは、ようやくファーストキスをしたばかりのかぐやにとっては衝撃の情報であり、実際浮かれていたのが「もしかしたら早坂の言っていることが正しいのかもしれない」と一瞬で真っ青になっている。
『かぐや様は告らせたい』がコメディ分多めの恋愛漫画であることをいきなり思い出させてくれる、本作最初の笑いどころである。

白銀「これこそが俺の求めていたものだ…」

藤原の家で開催されたクリスマスパーティーで、交換会用に白銀が用意したのはハンカチというごくごくありふれたプレゼントだった。もっと気の利いたものを買えばよかったと後悔する白銀は、「誰かが“プレゼントにはふさわしくないジョークグッズ”をウケ狙いで持ち込んでいれば、自分の地味なプレゼントの印象が和らぐ」と考えて、パーティーに参加した面々に期待する。
そして最後の最後、自分が引いたプレゼントが武骨な手錠であることが判明した際、「いくらなんでもこんなものを贈るなんて」と周囲の者たちがブーイングする中、白銀は静かに歓喜を噛み締めながら「これこそが俺の求めていたものだ…」と言い出す。

この時の白銀の心情を知れば、彼が「誰かに思い切り不評を買ってほしい」という思いを抱えていたことは理解できるが、この場にいた者たちは当然それを知らない。なので「少し前に過労で倒れた会長が、手錠を抱きしめながら妙なことを言い始めた」と受け取るしかなく、その壮絶な絵面もあって混乱する。
本作終盤は白銀とかぐやの擦れ違いが重なり、徐々にシリアスな雰囲気が強くなっていく。そのタイミングで挟まれるこのシーンは、強烈なギャップもあって捧腹絶倒の一幕となっている。

白銀とかぐやの和解

白銀が自分のために用意してくれた、しかし「さすがにこれはない」と言って取り返そうとしたプレゼントは、木彫りの高級けん玉だった。さすがのかぐやも言葉を失い、「確かにこれを女性へのプレゼントにするのは厳しい」と笑みをこぼす中、白銀は「だから見せたくなかったんだ」と不貞腐れる。そんな彼に向けて、かぐやは「今の私が幻滅しているように見えますか」と問いかける。
白銀はかぐや自身がもっとも嫌う“氷かぐや”を、彼女がどうしてそうなってしまったのかを推し量った上で「可愛い」と言ってくれたのだ。白銀が「自分のもっとも醜い部分を受け入れてくれた」からこそかぐやも同じように彼の弱さを知りたいと願い、それは今こうして叶ったのだ。やっと白銀と思い描いていたような関係になれたことに安堵と歓喜と感激を覚えたかぐやの顔には、輝くような笑顔があった。

誤解と勘違いと擦れ違いを繰り返した末に、白銀とかぐやがようやく恋人として一歩を歩み始めた名シーン。これまで2人の軌跡を応援し続けたファンにとっても感無量となること必至の場面である。

『かぐや様は告らせたい-ファーストキッスは終わらない-』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

「石上とつばめとミコのエピソード」などがカットされている

原作の「クリスマス編」と呼ばれるエピソードをアニメ化した本作だが、その全ての出来事をまとめるには時間が足らず、いくつかの場面がカットされている。中でも大きいのが、白銀とかぐやの和解の裏で繰り広げられていた、石上とつばめとミコの物語である。
石上の想いを真摯に受け止めようと考えたつばめは、体を許すことになるかもしれないと覚悟しつつ、クリスマスパーティー後に彼を自室に誘う。自分の想いはつばめに通じたのか、それにしてもいきなり2人切りは早すぎるのではないかと歓喜と困惑に翻弄される石上だが、つばめがそこまでしてくれたのは「自分はあと3ヶ月で卒業するし、そうなれば会うのは難しいし、付き合うのは多分無理だけど、本気で自分に告白してくれた石上に良い思い出を残してあげたい」という同情が理由だと知って、あまりに軽率な彼女とそんなことにも気付けず喜んでいた自分自身に失望。引き留めようとするつばめをその場に残し、「そういうことは本当に好きな相手とするべきだ」と言って彼女の部屋を去る。

この時、つばめのマンションの前にはたまたまミコが立ち寄っており、打ちひしがれた様子で飛び出してきた石上を見て“つばめと何かあった”ことを直感。まさか彼女に乱暴なことをしたのではないかと問い質すと、石上は泣きながら「何もない」と答え、ミコは自分が思っているより遥かに複雑な事態になっていたことを知る。一方、「どうやら石上とつばめはうまくいかなかったらしい」ことを察したミコは、その事実に安堵している自分に気付いて戸惑う。
以上が石上とつばめとミコのエピソードの概要である。他にも和解後の白銀とかぐやのデートシーンも大幅に省略。これらは「本作が主題としている“白銀とかぐやの和解”にあまり余計な要素を持ち込みたくない」、「映画の尺を時間内に収めるためのエピソードの取捨選択」といった理由から削られている。