屍者の帝国(Project Itoh)のネタバレ解説・考察まとめ
『屍者の帝国』とは、作家・伊藤計劃(いとう けいかく)と円城塔(えんじょう とう)による小説、およびそれを原作とした漫画・アニメ映画である。物語の舞台は、生者が屍者として生き返り、産業や文明を支えるようになった19世紀の世界。屍者の秘密と魂の正体について迫る主人公のジョン・H・ワトソンと、仲間達の旅を描いている。日本のSF文学賞・星雲賞日本長編部門と日本SF大賞特別賞を受賞。第2回SUGOI JAPAN Awardエンタメ小説部門で1位を獲得した。
ジャック・セワード
小説版のみ登場するキャラクター。ワトソンの大学時代の指導教官にあたる人物で、実はウォルシンガム機関に所属する諜報員でもある。かつてヘルシングと共に、ザ・ワンが作りあげた屍者の帝国を壊滅させた。かねてよりワトソンの優秀さに目をつけており、ヘルシングと共に彼をウォルシンガム機関に紹介した。
元ネタは、ゴシック・ホラー小説『吸血鬼ドラキュラ』に登場する精神病院の院長、ジャック・セワード。
ロシア
ニコライ・クラソートキン
CV:山下大輝
屍者の王国を調査する為に、ロシア側から派遣された諜報員。カラマーゾフとは同郷の友であり、実は今回の追跡も国の命以前に、彼に依頼される形でワトソン達を彼のもとに導いた。小説版ではカラマーゾフが屍者化したのを見届けた後に、ロシアに戻る。映画・漫画版では、ワトソン達にヴィクターの手記の存在の立証とその危険性を訴える為に、カラマーゾフの手によって屍者化された。
元ネタは、ロシアの長編小説「カラマーゾフの兄弟」に登場する青年のニコライ・クラソートキン。カラマーゾフの元ネタである同小説の登場人物と、友人関係にある。
アレクセイ・フョードロヴィチ・カラマーゾフ
CV:三木眞一郎
ロシアの従軍司祭兼屍者技術者。軍事顧問団の1人としてアフガニスタンに派遣され、ヴィクターの手記のコピーに書かれた情報を基に屍者技術の研究とザ・ワンの追跡を行っていた。だが新型屍者の作り方があまりにも非人道的であった為、これ以上の新型屍者を生み出さない為に屍者を率いて脱走する。その後、アフガニスタン北に屍者の王国を築いた。アレクセイの脱走がグレート・ゲームの新たな火種になる可能性があると懸念したロシア・イギリスの両国は、それぞれにアレクセイを追う為の人員をアフガニスタンへ派遣。結果、イギリスからはワトソンとバーナビー、フライデーが、ロシアからはニコライが派遣され、両国協力をしながら彼の行方を追う事となる。
小説版・映画版・コミック版ともに、最期はヴィクターの手記のオリジナルが存在する事を立証する為に自ら屍者技術を使い、新型屍者になった。
元ネタは、ロシアの長編小説『カラマーゾフの兄弟』に登場する青年、アレクセイ・フョードロウィチ・カラマーゾフ。
原典でもニコライとは友人関係にある為、ニコライの対になるキャラクターとして選出されたと考えられる。
ドミートリイ・フョードロヴィチ・カラマーゾフ
アレクセイの兄。父親を殺した罪で、シベリアへ流刑される。その先で新型屍者にされる。アレクセイが新型屍者をこれ以上生み出してはならないと、強く決意した根底にいる人物でもある。
ニコライ・フョードロフ
アレクセイとニコライの師匠にあたる人物。ロシアでは、国内随一の知識人といわれている。実はザ・ワンの研究仲間である。
小説版では名前のみ登場し、映画・漫画版共に未登場。
日本
山澤静吾(やまざわ せいご)
CV:斉藤次郎
大日本帝国陸軍将校。ヴィクターの手記を追って日本にやってきたワトソン一行のサポート役として、日本編で彼らと共に行動する。薬丸自顕流(やくまるじげんりゅう)という流派の剣士であり、その道の達人でもある。ヴィクターの手記を所持していた大里化学へ潜入した際は、その剣術を使い新型屍者の兵と戦闘をくり広げた。性格も実直で、実に武人らしい人物である。
映画版・漫画版の際にほんとんどの登場人物が削られた日本編において、どちらのバージョンにも登場した数少ない登場人物ともなってる。なお漫画版においては元の役割にくわえ、「西欧列強との技術力の格差を埋める為」という理由で日本政府からヴィクターの手記の確保を命じられてもいる。その為漫画版では、ワトソン一行を裏切って彼らからヴィクターの手記を奪おうとする姿が描かれている。だがその直後、ヴィクターの手記を取り戻しに来たザ・ワン本人が現れた為、ヴィクターの手記の入手は失敗してしまう。
元ネタは、明治時代に実在した軍人・山澤静吾。薩摩藩士の息子として生まれ、軍人として多くの功績を残している。アメリカやフランスといった海外へ派遣された経歴も持つ。露土戦争の際には第三国の戦争を観戦する観戦武官(かんせんぶかん)として派遣されたが、トルコ側の危機を目にし、思わず参戦してしまったという逸話が有名である。
寺島宗則(てらじま むねのり)
日本の外務卿。外交を担当する関係で、日本にやってきたワトソン一行と日本の交渉窓口として働いた。小説版にのみ登場。
元ネタは、明治時代に実在した外交官・寺島宗則。文部卿や元老院議長としても活躍した。電気通信の父の名でも有名で、国内外の電信政策に力を注いだ人物として知られている。長崎~上海・ウラジオストクの間にて、国際電信を開通させた。
川路利良(かわじ としよし)
日本の警視局の大警視。日本編序盤にて、ふんどし姿で潜入捜査をした事で捕まったバーナビーを迎えに行ったワトソンが話をした相手である。小説版のみに登場。
元ネタは、明治時代に実在した官僚・川路利良。日本の警察制度の創設者として知られており、「日本警察の父」と称されている。
大村益次郎(おおむら ますじろう)
日本の兵部卿として活躍していた人物。本編より10年前に屍者を爆弾に仕立てた・屍爆弾によるテロにあう。表向きはそのまま亡くなった事になるも、実は瀕死状態であったところをザ・ワンの屍者技術により救われる。以降は半屍者として生きながらえながら、裏で日本の政治に助力していた。日本編終盤にて登場し、ワトソン一行にザ・ワンの行方に関するヒントを教えた。小説版のみに登場。
元ネタは、明治時代に実在した政治家の大村益次郎。軍人や医師、洋学者としても活躍した。日本の近代的軍制を作り上げ、日本陸軍の創始者・陸軍建設の祖として名を馳せている。
アメリカ
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目次 - Contents
- 『屍者の帝国』の概要
- 『屍者の帝国』のあらすじ・ストーリー
- 小説版
- プロローグ
- 屍者の王国の調査に向かう主人公・ワトソンと仲間達
- ヴィクターの手記を求めて訪れた日本
- 明かされたザ・ワンの目的
- エピローグ
- 映画・漫画版
- 友人との約束を果たすべく屍者技術をめぐる旅に出る主人公・ワトソン
- ザ・ワンの目的とMの企み
- 映画版の終幕
- 漫画版の終幕
- 『屍者の帝国』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- ジョン・H・ワトソン
- フライデー
- フレデリック・ギュスターヴ・バーナビー
- ハダリー/ハダリー・リリス
- ザ・ワン
- ウォルシンガム機関
- M
- エイブラハム・ヴァン・ヘルシング
- ジャック・セワード
- ロシア
- ニコライ・クラソートキン
- アレクセイ・フョードロヴィチ・カラマーゾフ
- ドミートリイ・フョードロヴィチ・カラマーゾフ
- ニコライ・フョードロフ
- 日本
- 山澤静吾(やまざわ せいご)
- 寺島宗則(てらじま むねのり)
- 川路利良(かわじ としよし)
- 大村益次郎(おおむら ますじろう)
- アメリカ
- ユリシーズ・シンプソン・グラント
- レット・バトラー
- ウィリアム・シュワード・バロウズ
- サムズ
- トーマス・エジソン
- そのほかの登場人物
- ウェイクフィールド
- ロバート・ブルワー=リットン
- 『屍者の帝国』の用語
- 屍者(ししゃ)
- 屍者技術(ししゃぎじゅつ)
- 擬似霊素書込機
- ネクロウェア
- 魂
- 新型屍者(グローバル・エントレインメント)
- ウォルシンガム機関
- ヴィクターの手記
- スペクター
- 解析機関
- ピンカートン
- 大里化学
- 『屍者の帝国』の名言・名セリフ/名シーン
- ジョン・H・ワトソン「おかえり、フライデー」
- ハダリー「私は魂がほしい。涙を流すための、悲しみや苦しみを感じるための魂がほしい」
- フライデー「ぼくは、物質化した情報としてここにある。今、ぼくが今こうして存在するのは、あなたのおかげだ。もし叶うなら、せめてただ一言を、あなたに聞いてもらいたい。この言葉が物質化して、あなたの残した物語に新たな生命をもたらしますよう。ありがとう」
- 『屍者の帝国』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 『屍者の帝国』は『虐殺器官』と『ハーモニー』と同世界線の可能性がある
- 映画・漫画版が大幅に改変された原因は放映時間
- 小説版と映画・漫画版の違いに対する評価
- 円城塔も驚いた映画版の設定
- 『屍者の帝国』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:EGOIST「Door」